(^ω^)が三国志の世界へ迷い込んだようです

  
3:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:36:01.22 ID:KX7r9+hR0
  
曹操は遠くにいながら袁紹軍の大きな声が聞こえるのを知って、全軍に檄を飛ばした。

曹操「袁術軍は所詮数だけの烏合の衆!
俺たちの兵になど、敵うはずがない!
各員、奮闘せよーっ!!」

兵士「おおーっ!!」

曹操の言葉を聞くと、兵士達は武器を掲げて声を上げた。

曹操「うむ、それでこそ俺の兵だ!
では夏侯惇は延津を、夏侯淵は白馬を守れ!
1人たりとも敵兵を入れるな!!」

夏侯惇「了解です、孟徳」

夏侯淵「分かったよ、孟徳!
頑張ってね、お兄ちゃん!!」

夏侯惇「無理はするなよ?淵」

夏侯淵「お兄ちゃんこそ!
じゃあねっ!!」

そういうと惇、淵の両将は曹操軍の軍勢から離れてそれぞれの持ち場へ向かった。



  
4:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:36:56.84 ID:KX7r9+hR0
  
曹操「では曹仁は右翼へ、曹洪は左翼へ!
劉備たちはそれぞれについていけ!!
許チョ、先鋒はお前に任せる!
突撃して、敵の動揺を誘え!!」

曹仁「任せてもらおう!」

曹洪「了解だ、お前ら、ついてこい!」

曹洪はブーンと周倉を引きつれ、自分の配置場所へと走っていった。
曹仁は右翼へ、許チョは先頭に立った。

曹操「準備は整った!
これより、俺たちは乱世の鬼となる!
全軍、突撃ぃーっ!!」


袁紹軍兵士「曹操軍、来ます!」

袁紹「よし、城門を開け!
迎えうつのだ!!」



  
5:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:38:30.17 ID:KX7r9+hR0
  
袁紹は兵士に門を開けるよう伝え、自分は下がった。
そして文醜を軍の先頭に立たせ、顔良を右翼へ行かせた。
こちらも、準備は万端である。

袁紹「よし、これで準備は整った!
なあ祖授!」

祖授「そうですなぁ。ただ、先鋒が許チョと関羽というのはまずいかと。
文醜だけでは正直心もとないですなぁ。
なので、弓兵を文醜の後ろに配置させて、奴らをけん制しましょうや」

袁紹「そ、そうか。
では、弓兵部隊は文醜の後ろについて援護しろ!」

袁紹はその手配を手早く済ました。

袁紹「よし、迎えうて!!」

袁紹が向かってくる曹操軍に剣を向けると、兵士達は一斉に城門から走り出て、

許チョ「・・・・・きた」



  
6:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:39:52.79 ID:KX7r9+hR0
  
許チョはその様子を遠巻きながらに見ていた。

関羽「(来たか・・・・・)
では俺が先駆けよう。許チョ殿は俺の後に」

関羽はそう言うと、先頭の許チョを抜き、たった1人で突出した。

許チョ「・・・・・・待てよ」

関羽に先を越された許チョは、怒ってその関羽を追い越してしまった。

関羽「待て許チョ殿!
ここは俺が・・・・・」

その許チョを関羽がさらに追い越す。
それにまた許チョは怒った。

許チョ「待てって・・・・・言ってるだろぉーがーっ!!」

あっという間に関羽を追い越してしまった。



  
7:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:40:50.57 ID:KX7r9+hR0
  
関羽「(!なんという・・・・・これは使えるかもな)」

関羽は目の前の許チョを追い越すのではなく、許チョの隣についた。

関羽「許チョ殿!俺が先に敵兵を倒すか、許チョ殿が先に倒すか、
勝負してみないか!?」

許チョ「・・・・・・・俺、負けないからーっ!!」

そういうと許チョは馬を走らせ、向かってくる敵兵に突っ込んでいった。

関羽「(やはり・・・・・ああいう性格か。
吹っかけたのは正解だったな)」

関羽は許チョが負けず嫌いな性格だとふんで、吹っかけてみたのだ。
関羽は負けじと許チョに続く。

その許チョはというと、敵兵士を馬でガンガン蹴散らしながら進んでいる。
その上から戟で邪魔な兵を斬り、進んでいく。



  
8:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:42:35.87 ID:KX7r9+hR0
  
関羽は許チョの後ろにつき、堰月刀で兵士を斬りながら進む。

関羽「(以外に楽だな。ここは許チョ殿に任せておけば・・・・・)」

関羽がそう思っていると、突然目の前の許チョが落馬した。

関羽「許チョ殿っ!?」

許チョ「あいたた・・・・・」

許チョはむくりと起き上がった。
その左肩には、矢が刺さっている。

関羽「!?まさか前方には・・・・・」

関羽の思った通りだった。
前方には、文醜率いる弓兵部隊が待ち構えていた。

文醜「第2隊、放てぇーっ!!」



  
9:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:43:44.37 ID:KX7r9+hR0
  
文醜は剣を関羽に向けた。
その切っ先の向こうには、関羽喉元がある。
文醜率いる弓兵部隊の第2隊が、その関羽の喉元めがけて矢を放った。

関羽「くっ、おあああああっ!!!」

関羽は堰月刀を目の前で振り回しながら、なんとか矢の雨をしのいだ。
だが関羽の乗っていた馬に矢が当たり、関羽も許チョと同じく落馬した。

関羽「うお・・・・・!!」

雨のように降ってくる矢を、堰月刀ですべて叩き落す。

関羽「(このままでは分が悪い!
なんとか距離を・・・・・)」

関羽は降りそそぐ矢の雨の中を、堰月刀を振り回しながら進んでいく。
そして20mぐらい進んだところで、弓兵部隊の矢が切れた。

文醜「うっ、どうしたんだお前らぁ!」
弓兵「矢が切れました!一旦退く必要があるかと!」

関羽「(!今ならっ!!)」

関羽は文醜に向かって走った。



  
10:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:45:23.14 ID:KX7r9+hR0
  
文醜はそれに気づいたが、気づいたときには関羽は文醜の頭上にいた。

文醜「うっ、わぁぁぁー!!」

関羽は文醜の頭から腹部まで、堰月刀で叩き斬った。
斬られた部分から、血が噴出す。

関羽「敵将、この関雲長が討ち取ったっ!!」

関羽は堰月刀を掲げ、大声で叫んだ。

兵士「ぶ、文醜殿が・・・・・
に、逃げろー!!」

兵士たちは関羽の声を聞き、逃げ出した。

関羽「張飛よ!敵を逃がすなよ!!」

張飛「あいよっ!わかってらぁー!!」

関羽はすぐそこまで迫っている張飛に向かって叫んだ。
ここで敵を逃がさすすべて倒せば、敵の士気はますます下がることだろう。



  
13:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:47:24.26 ID:KX7r9+hR0
  

関羽はそばで倒れていた許チョを起こした。

関羽「許チョ殿、大丈夫か」
許チョ「・・・・・・・自分で、起きれる!」

許チョはそういうと関羽の手を振りほどき、自力で立ち上がった。

関羽「許チョ殿、先の勝負はそなたの勝ちだな。
次はどっちが多く敵を倒せるか、勝負といこう!!」

許チョは背中についた砂をはらうと、負傷した肩を押さえながら言った。

許チョ「・・・・・・お前、やっぱ嫌い!
    ・・・・・・でも、負けないーっ!!」

そう言うと許チョは逃げる敵の軍勢に突っ込んで行った。

関羽「敵は任せたぞ、許チョ殿、張飛!
   俺は・・・・・」

関羽は東の方を見た。
関羽の目には、袁紹軍の兵糧庫が映っている。
その兵糧庫が燃え上がる様子を、関羽は想像していた。



  
14:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:48:35.81 ID:KX7r9+hR0
  
その頃ブーンたちはというと・・・・・

(^ω^)「はっ、はっ、はっ!!」

軽快なステップで敵を斬っていくブーン。
かたや周倉は、敵兵の剣を奪って左手に敵兵の剣、右手に自分の剣を持って戦っている。


(^ω^)「すごいお!周倉は2刀流なのかお?」

周倉「いや、そういうわけではない!
ただ単に敵が多いのでな、こうした方が効率がいい!」

周倉は喋りながらズバズバ敵を斬っていく。
その目は真剣そのものだ。

取り込み中か、と思いながらブーンも敵を斬っていく。

だが、突然周りが慌しくなった。
敵兵たちは突然城の方へ走っていく。
ブーンが敵兵のあとを目で追っていると、城から煙が昇っているのがわかった。



  
15:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:49:36.95 ID:KX7r9+hR0
  
周倉「先鋒部隊がやってくれたようだな!
   武運、俺たちもここを突破して先鋒部隊に続くぞ!」

(^ω^)「わかったお!もう敵はほとんどいないお!!」

周倉とブーンは並んで敵陣に突っ込んだ。
だがブーンの予想通り、敵はいない。

(^ω^)「ここもさっさと焼き払うお!
そしたら先鋒部隊に加勢しに行って一気に攻めるお!!」

ブーンは周りを見渡しながら言った。
だが、物影から1人の男が馬に乗って出てくるのを2人は見た。

(^ω^)「!誰だおっ!?」

顔良「・・・・・お久しぶりです、お二方」

顔良は剣を鞘にしまっている。
ブーンとしては、彼と戦いたくない。
彼を友達だと思っている。
顔良がブーンを友達と思っているかは、彼にはわからないが。



  
16:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/01(火) 23:50:52.28 ID:KX7r9+hR0
  
顔良は鞘に手をかけた。
それを見てブーンは叫んだ。

(^ω^)「やめてくれお、関良!剣を抜いたら、戦わなきゃいけないお!!」

その言葉を聞いた顔良は、手を鞘から離した。

顔良「私は、顔良です。関良では無いのです」

(^ω^)「関良は、関良だお!顔良じゃないお!!
    みんなみんな、待ってるお!
    関良が帰ってくるのを、みんなで待ってるお!
    だから、もう戦うのをやめるお!!」

顔良「私は・・・・・・顔良です!」

そういうと顔良は手綱をひき、馬を走らせた。
そのまままっすぐブーンたちに迫ってくる。

周倉「くそっ、避けるぞ!」

周倉はブーンの手を引っ張った。
だが、ブーンはそこから動こうとしない。

周倉「武運!だめだ、ここは・・・・・」

それでも、ブーンは動かない。
ブーンはずっと顔良の目を見つめていた。
そこにまだ、自分が映っているのか知りたかった。



  
18:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/02(水) 00:01:58.91 ID:EXzhO/aK0
  
顔良「・・・・・・」

顔良は何も言わず、何もせず通り過ぎてしまった。
顔良はそのまま、陣を出て城の方へ向かっていく。

周倉「追うぞ、武運!」

(^ω^)「・・・・・」

周倉「   武運!!」

(^ω^)「・・・・・追いかけるお」

ブーンは城に向かって走り出した。
周倉は、それに黙ってついていく。
かける言葉が、周倉には見つからなかった。

それからほどなくして、顔良は文醜のいる先鋒部隊の配置場所へと着いた。
兵糧庫が襲われたのなら、ここは突破されているはずなのである。
顔良ははやる気持ちを押さえながら馬を下りる。



  
20:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/02(水) 00:12:17.28 ID:EXzhO/aK0
  
ひどいものであった。
辺り一面、人の死体でいっぱいだった。
人の上に人が重なり、地面は血で赤く染まっている。
袁紹軍は、戦力を全面に集中していた。
ここを抜けるのは容易ではないが、ここを抜いたなら勝ちは相手にある。
それだけ袁紹はこの先鋒部隊を頼りにしていたのだった。
だがそれも、曹操軍によって全滅してしまった。

顔良「(私も、いつかはこのように・・・・・・なってしまうのか。
    武人である以上、戦死は避けられない。
    私は最後、誇らしいと思える死を迎えられるのだろうか・・・・・)」

顔良はそんなことを考えながら文醜を探していた。
希望は捨てていない。
まだ、生きていると信じている。

顔良「(お願い、生きていてよ)」



  
22:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/02(水) 00:18:09.91 ID:EXzhO/aK0
  
顔良「(お願い、生きていてよ)」

願いながら、祈りながら死体を確認していった。
どれも、文醜ではない。
だがどの死体も、かつては精鋭部隊として配属されていた者ばかりだった。
元顔良の配下の者までいる。
家族を養う為に戦っていた者もいる。
戦争とは、かくも辛いものだと顔良は思った。
以前ならば、こんな事を考えることはなかった。
ただ、目の前の敵を斬ればよかった。
なのに、今は申し訳ない気持ちで胸がいっぱいだ。

顔良「(なぜ、私は泣いている・・・・・?
    涙なんて、流したことはなかった。
    悲しみなんて、過去に捨ててきた。
    文醜と一緒に、国の為に戦う武将になろうと決めたその日から、
    どれだけ人を斬ったろう?
    それによって、どれだけの人が悲しんだのだろう?)」

思わず顔良の頬を涙が伝う。
感じたことの無い感情に、顔良は耐えられなかった。



  
24:1 ◆0S5frHLuDM :2006/08/02(水) 00:29:54.63 ID:EXzhO/aK0
  
その感情を抑え、顔良は文醜を探しだした。
顔良は死体の山をかき分け、文醜の鎧を見つけた。
鎧は主人の体をまだ守っている。
一心不乱に死体をかきわけ、鎧を引っ張って、その鎧の主人の顔を確認した。

間違いなく、文醜だった。

顔良「うそだ・・・・・」

顔良は愕然とした表情で、文醜を覗き込んだ。
文醜は何も言わない。
首から胴にかけての大きな斬り傷が、鎧までも切り裂いて残っている。
鎧は真っ赤に染まっているが、今だ主人の体を離れようとはしない。

顔良の抑えていた感情は、大粒の涙となって流れた。
その涙は文醜の鎧についた血を、ほんの少しだけ洗い落とした。

顔良はしばらく泣き続けたあと、何かを決意したような表情を浮かべ、立ち上がった。
もう、涙は流れていない。

顔良は馬に乗り、兵糧庫へ向かって駆け出した。
手には自分の剣ではなく、文醜の剣を持っている。

顔良「(私が文醜のためにしてやれることは・・・・・・
    文醜を斬った者を、私が斬ることだ)」

顔良の決意は固いようだった。



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