(^ω^)が三国志の世界へ迷い込んだようです

  
4: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:45:36.57 ID:YuLC5JKC0
  
顔良は馬を走らせ、兵糧庫へたどり着いた。
兵糧庫は既に敵兵によって陥落しており、あちこちから炎が上がっている。

顔良「(文醜・・・・・あの子は先鋒部隊の一番前にいた。
    なら、敵先鋒部隊の先頭にいた者でないと、先鋒部隊は抜けない)」

顔良はすぐ傍に倒れている兵士を見つけた。
腹部から血を出して、苦しんでいるようだ。

兵士「だ、誰か助けてくれ・・・・・」

兵士は助けを求めている。
顔良はその兵士に近づいていった。

顔良「助けが、欲しいのか」

顔良はかがみ込んでその兵士を見つめた。

兵士「た、助けてくれ。血が止まらないんだ・・・・・」

顔良「良いだろう。だがその前に、質問に答えろ」

顔良は剣を抜いて兵士の首元に突きつけた。



  
5: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:47:12.27 ID:YuLC5JKC0
  
兵士「ひっ・・・・・・!?」

顔良「先鋒部隊にいた、文醜という武将を斬った男は私の考える限り、先鋒部隊で最も強い武将だ。
   先鋒部隊で一番強い武将は誰だ?」

兵士「し、知らねぇよ!それより、早く助けてくれ!このままじゃ・・・・・」

顔良「質問に答えろ」

顔良はさらに剣を首元に近づける。

兵士「ひっ・・・・・!!
   な、名前は知らねぇよ。
   け、けど髭の長い奴が『敵将討ち取った!』って言ったのは聞こえた!
   お、俺が知ってるのはそれぐらいだよ!!」

顔良「髭・・・・・・まさか」

顔良の思いつく限り、髭の長い男というのは彼しか思いつかない。
関羽だ。
寛大な心で顔良を迎えてくれた、関羽だ。

兵士「お、教えたからさっさと助けてくれ!
   意識が・・・・・」

顔良「・・・・・良いだろう。お前を苦しみから救ってやる」

顔良は剣を兵士の首元に突き立てた。



  
6: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:48:36.29 ID:YuLC5JKC0
  
兵士「っ!!・・・・・・・」


顔良は剣についた血をぬぐい、鞘にしまった。

顔良「(・・・・・・関羽殿が、文醜を斬ったというのか。
    あの関羽殿が・・・・・いや、あの男が!!)」

顔良は馬に駆け寄り飛び乗ると、馬を走らせた。
向かうは、関羽の元である。

その10分後、ブーンたちが兵糧庫についた。
しかし兵糧庫にも顔良はいない。

(^ω^)「誰もいないお。顔良はどこにいるんだお」

ブーンは辺りを見渡しながら言った。

周倉「ここにいないとすれば・・・・・袁紹の元か?
   もう右、左翼は壊滅させた。
   残っているのは袁紹のいる、本陣だ」

周倉が息を切らしながらいう。
周倉といえど、この距離はきついものがある。
しかし一方のブーンはまったく応えていないように思える。

(^ω^)「なら急ぐお。先鋒部隊はもう本陣を攻めてるはずだお」

ブーンが敵本陣へ走り出そうとする。



  
7: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:50:14.11 ID:YuLC5JKC0
  
周倉「待て、お前・・・・・きつくないのか?」

周倉がそれを止めた。

(^ω^)「体のことはどうでもいいお。
    今は顔良が心配だお」

そういうとブーンは敵本陣に向かって走り出した。
それを、周倉は心配そうに見つめながら後を追った。


その頃関羽は・・・・・。

夏侯惇「淵!無事だったか!」

夏侯淵「お兄ちゃんこそ!だいじょうぶなの?」

夏侯惇と夏侯淵は配下の兵に守備をまかせ、先鋒部隊へ駆けつけた。
右、左翼に面していた白馬と延津は、右、左翼が壊滅になったので守る必要がなくなったのだ。
最低限の兵をお互いに残し、夏侯惇と夏侯淵は合流となった。

夏侯惇「関羽率いる先鋒部隊は既に、敵本陣へと攻め込んでいる。
    急ごう」

夏侯淵「うん!」



  
8: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:51:38.81 ID:YuLC5JKC0
  
関羽は敵本陣前で襲い来る敵兵を、バッサバッサと斬っている最中だった。
意外にも城門の守備がかたく、抜くことができない。
城門の上からは弓兵が矢を放っているので、単身突入すれば危険なことになる。

関羽「くそ、こう敵が多くてはやりづらい!
   誰か応援を呼んでこい!!」

関羽は敵兵を斬りながら兵に向かって叫んだ。

兵士「伝令!敵武将が、単騎でこちらに向かってきています!!」

兵士は遠くから見える様子を見て言った。

関羽「なに!?」

後方の部隊を馬で蹴散らし、邪魔な者は剣で斬り進みながら敵将が向かってくるのが関羽にも見える。

関羽「あれは・・・・・まさか」

関羽の目に向かってくる敵将の顔がはっきりと映った。

顔良「私の名は顔良!道を、開けろっ!!」



  
9: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:55:23.77 ID:YuLC5JKC0
  
関羽「顔良・・・・・」

顔良はとうとう関羽のいる先鋒が見える所まで進んでいた。
復讐の時は近い。
そう思うと自然に剣に力が入る。

邪魔な者は剣と馬でなぎ倒していく。
もう、関羽はすぐそこだ。

関羽「来たか・・・・・!」

顔良がついに関羽に迫った。
顔良は関羽に向かって剣を振り下ろす。
それを、関羽は受け流し、馬を堰月刀で斬りつけた。

顔良「うっ・・・・・!!」

顔良の馬は関羽を通り越して倒れ込み、顔良は地面に放り出された。

関羽「顔良!なぜここに・・・・・」

顔良「私があなたに剣を向けたことで、その理由が分かりませんか?」

関羽「・・・・・俺を、斬ろうというのか。
   何故だ!」

顔良は起き上がった。



  
10: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 21:58:15.80 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「その身に覚えが無いのですか?
   あなたは私の、いちばんの親友を斬りました」

関羽「親友?
   俺は・・・・・」

顔良は関羽に向かって走った。
剣を構え、関羽の心臓めがけて走り出す。

関羽「うっ!!」

関羽はそれを受け止めた。
顔良のその細い体からは想像もできない、強い力で押される。

顔良「あなたが斬った私の親友の名は、文醜。
   覚えがあるでしょう?先鋒で弓兵を率いていた、あの武将です・・・・・!!」

関羽「なんだと・・・・・?あの、武将が文醜とは・・・・・」

関羽は顔良を押し返す。
押し返され、顔良は地面に倒れた。

顔良「大切な、大切な親友をあなたは殺した!
   あなただけは・・・・・お前だけは許さない」

関羽「顔良・・・・・すまん。
   だが、その文醜は俺にとっての敵だった。敵ならば斬るしかない。
   それぐらいお前にも、分かるだろう」



  
11: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:00:24.44 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「その通りです。文醜はあなたにとっての敵でした。
   しかし、今の私の最大の敵は関羽、あなただ!!
   お前が文醜を敵として殺したように、私もお前も敵として殺すっ!!」


関羽「(戦うしか、無いのか・・・・・!!)」


周倉「見えたぞ、武運!」

周倉は顔良がいる方を指差した。

(^ω^)「周倉、顔良は関羽と戦ってるお!」

周倉「ああ、まずいな!関羽は顔良を、斬ってしまうかも知れん!!」

(^ω^)「そんなことさせないお!!」


関羽「はっ、はっ、はぁっ!!」

関羽は堰月刀を顔良に向かって振り回す。
顔良はそれを剣で受け止めるが、どうやら関羽は本気の様だ。
完全に、殺すつもりで武器を振っている。
堰月刀の煌きは、かつての友人への同情すら感じさせない。

顔良「くっ、関羽!あなたには絶対に負けない!
   文醜の仇は必ず・・・・・!!」



  
12: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:02:49.93 ID:YuLC5JKC0
  
関羽と顔良が戦っている様子を、祖授は城門の上から見ていた。

祖授「押されているな、顔良は。
   ひとつ、手を貸してやろう・・・・・。
   弓兵部隊、関羽を狙え!!」

祖授は弓兵部隊を関羽に差し向けた。

関羽「なに!?奴ら・・・・・」

関羽は弓兵部隊が自分を狙っていることに気がついた。
同じく顔良も、それに気づいた。

顔良は関羽から離れて祖授に向かって叫ぶ。

顔良「祖授殿!これは関羽と私の戦いだ!!
   邪魔立てすると、許さぬぞ!!」

祖授「なに!?手助けをしようとしているのではないか!
   それを邪魔だと!?お前・・・・・」

顔良「それが邪魔だと言っているのだ!これ以上の邪魔は・・・・・」

その時だった。
うかつにも、顔良は関羽に背を向けていたのだ。
関羽はその隙を逃がさず、顔良の頭上に向けて堰月刀を振りかざした。



  
13: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:04:32.43 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「なっ・・・・・・」

関羽「死ね、顔りょ・・・・・・」


その関羽を、横からブーンが突き飛ばした。

関羽「うおっ!?」

関羽はそのまま吹っ飛ばされ、堰月刀を落としてしまった。

(^ω^)「何してるお!今の関羽、顔良を殺そうとしてたお!!」

関羽「だが!今奴は敵なんだぞ!
   やらなければ、やられるのだ!!」

(^ω^)「顔・・・関良は友達だお!
    関羽だってそう思ってるんだお!?」

関羽「それはっ・・・
   俺だって、本当は助けたい。
   だが、奴が敵になる理由を作ったのは俺だ・・・・・」

関羽は顔良を見た。
しかし顔良は関羽でなく、ブーンを見ている。



  
14: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:06:29.30 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「なぜ、そこまでして私を友達だと言うのです!
   それが、私にとっていちばん辛い事だって、武運には分からないのですか!?」

(^ω^)「関良・・・・・」

顔良「関羽は、私の親友である文醜を斬りました。
   私は関羽だけは、許せません。
   けど武運、あなたは私をそれでも『友達』だと言う!
   友達を斬ろうとしている『昔の友達、今日の敵』を、今でも『友達』だと!
   何故です!?何故私の剣を・・・・・迷わせるんです!!」

その言い合いの様子を、祖授も見ていた。
祖授はひそかに兵に指令を出した。
あの武運という男を、殺せと。

(^ω^)「関良はブーンのこと、嫌いなのかお・・・?」

顔良「私は・・・・・自分でもどうしたらいいか分かりません。
   関羽の事は殺したいほど憎い。
   けど、あなたがそうやって言い続けるから、殺せなくなってしまった。
   親友の仇を、また友達として見る様になってしまった・・・・・」

関羽「・・・・・」

関羽はそれを黙って聞いていた。

(^ω^)「戻ってくるお!みんなみんな、待ってるお!!」

関羽「俺のしたこと、お前にとって許されることではない。
   ただ今は・・・・・本当に、申し訳なく思っている」



  
15: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:08:32.15 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「関羽・・・・・あなたを、やはり文醜の仇として見てしまいます。
   そう思うと、殺したくてたまらなくなります。
   あなたを許すには、まだ時間がかかります」

関羽「顔良、すまない」

関羽は顔良に深々と頭を下げた。

顔良「申し訳ないです。
   ・・・・・私はもうあなたがたとは戦えません。
   袁紹殿に話をつけてきます」

(^ω^)「袁紹にかお?」

顔良「ええ。彼には大きな恩がありますから。
   その部分も含めて、話をするつもりで・・・・・」

顔良はそう言いながら剣を鞘に収めようとした。
だが、剣に祖授の率いる弓兵部隊が密かにブーンを狙っているのが映った。

顔良「なっ・・・」

(^ω^)「どうしたお?顔良」

既に弓兵部隊は弓を引き絞っている。

弓兵部隊が矢を放つより速く、顔良は動いた。



  
16: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:10:15.06 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「っ!!・・・・・・・」

(^ω^)「か、関良っ!?」

関羽「顔良!!」

顔良はそのまま地面に崩れるように倒れこんだ。

ブーンと関羽が顔良に駆け寄る。

関羽「顔良、お前武運をかばって・・・・・」

顔良「・・・関羽・・・殿。
   これで・・・あな・・・たを、殺さずに・・・済みました」

(^ω^)「関良!なんでこんなことしたおっ!!」

顔良は口から血を吐きながら、応える。

顔良「これ・・・で、あなたに恩返しが・・・できましたね」

顔良は苦しそうに、応えた。

(^ω^)「お、恩返し・・・?」



  
17: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:12:19.53 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「私に、楽しむことを・・・、生きることの、楽しみを・・・あなたは私に教えた・・・。
   それまで人を斬ることしかしてこなかった、私を・・・友達として最初に迎えたのが・・・あな・・・た」

顔良はさらに口から血を吐いた。

(^ω^)「死んじゃやだお!関良の戦いは、まだ終わってないお!!」

顔良「・・・私の名前は顔良・・・
   あなたに嘘を、ついたこ・・・と、本当に・・・」

(^ω^)「なに言ってるお!関良は、関良だお!
    顔良なんかじゃないお!
    剣術ができて、人にやさしい関良だお!!」

顔良「ま・・・た、私のことを関良と・・・呼んでくれるのですか・・・?」

(^ω^)「そうだお!だから死なないでくれお!
    お願いだお・・・・・」

ブーンの頬を、涙が伝った。

それを見た顔良の頬にも、ひとすじの涙が零れ落ちた。

顔良「ああ・・・・・出来ること、なら・・・・・」

顔良は血で塗れた手でブーンの手を握り返した。
弱弱しく・・・。



  
18: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:14:17.40 ID:YuLC5JKC0
  
顔良「あなたたちと・・・過ごした、あの日に・・・
   帰りたかっ・・・・・・」

顔良の手が、握っていたブーンの手からすべり落ちた。



  
19: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:16:34.67 ID:YuLC5JKC0
  
その後袁紹軍は曹操軍に詰め寄られ、退却を余儀なくされた。
顔良と文醜を失った今、戦力は無いに等しい。
祖授はまだ生きているが、彼は戦闘には出ないので役には立たない。

その日のうちに袁紹軍は退却し、公孫サンが所有していた城は曹操のものとなった。
もちろん、公孫サンが治めていた地域も全て曹操の支配下に置かれた。
これで、曹操は中国大陸で最も大きな勢力となったわけである。

劉備「ありがとうございました」

曹操「今回の働きには大いに感謝する。
   出来れば望んで俺の下で働いて欲しいが、そうも行くまい?」

劉備「ええ。あなたには仕えたくありません。
   弟たちも、そう思っているはずです」

曹操「恨まれたものだな。
   まあいい。行くがいい劉備よ。
   次に会う時は敵としてだ。覚悟しておけ」

劉備「分かっています。
   ・・・それでは、失礼します」

劉備は曹操と会話を交わした後、城を後にした。



  
20: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:18:18.52 ID:YuLC5JKC0
  
行く当てもなく、ただ人のいる方に向かって馬を走らせていく。
その旅の途中で、小さな湖を見つけた。
劉備たち一行は、そこで野宿することにした。

その夜の月は満月だった。
湖のほとりでブーンは腰を下ろして座り込んだ。

(^ω^)「(きれいな月だお。
     顔良と一緒にお茶を飲んだときも、満月だったお。
     ブーンも、あの頃に戻りたいお)」

満月を映す湖を眺めながら、ブーンはふと昔を思い出した。
しかし、思い出せば思い出すほど辛くなる。

その時、劉備がブーンに近づいてきた。

劉備「・・・眠れないの?」

(^ω^)「眠れないお。みんなはもう寝たのかお?」

劉備は関羽たちがいる方向に振り返った。
見れば、関羽たちはいびきをかきながらぐっすりと眠っている。



  
21: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:20:40.81 ID:YuLC5JKC0
  
劉備「ああ、寝ちまったよ。
   長旅だし、みんな疲れてるんだろうね」

(^ω^)「ブーンも疲れたお。できればしばらくは、戦いたくないお」

劉備「武運・・・ごめんね、あたしに力がなくて。
   もっと力があれば、関良だって・・・」

(^ω^)「・・・・・空を見るお。今日は空いっぱいに、星が輝いてるお」

ブーンは夜空を指差した。
空には大、小の星たちが空いっぱいに光り輝いている。
その光を湖面が映し、湖はえも言えぬような絶景となった。

劉備「きれいだね・・・・・武運?」

劉備はブーンを横顔を見ようとした。



  
22: 愛のVIP戦士 :2007/02/12(月) 22:23:22.67 ID:YuLC5JKC0
  
ブーンは、夜空を見ながら涙を流していた。

(^ω^)「ううっ・・・・・」

劉備「武運・・・・・ごめんね」

劉備はブーンをそっと抱き寄せた。

劉備「ごめんね・・・・・本当にごめんね」

(^ω^)「うっ、うわああああああああああ!!!!!!!!!」

ブーンは劉備の胸の中で、泣き続けた。

公孫サンという恩師の死。


顔良という友達の死。


それは、ブーンが元の世界でも体験したことのなかったことであった。



第2部『曹操の台頭』 完



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