( ^ω^)ブーンが神候補から能力を受け取ったようです

9: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:23:31.34 ID:ORt/bIX+O
  

第十話「空(くう)」


( ^ω^)「ふんっ!」

ブーンは槍を突いては引き、突いては引き、を繰り返しクーを攻める。
が、クーはどれも寸前の所で最小限の動きで避ける。その顔にはどこか余裕が見えた。

川 ゚ -゚)「どうした? そんなものか」

( ^ω^)「まだまだ!」
と言うと、ブーンはまた槍をクーに突く。

川 ゚ -゚)「またそれか。ワンパターンだな」

が、ブーンは槍を突いたままにし、引かなかった。
そしてそのまま一連の流れでクーに向かってその槍をなぎ払う。

川 ゚ -゚)「!!」

( ^ω^)「これならどうだお!」



10: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:24:57.00 ID:ORt/bIX+O
  

が、槍は動きがそこで止まる。

川 ゚ -゚)「……だが甘い」

(;^ω^)「おっ!?」

ブーンのその攻撃はあっさり止められてしまった。
クーがブーンの槍を手で掴んでいたからだ。

(;^ω^)(なんて動体視力……! これは何かの能力かお……?)

動揺するブーン。
それを見て平然と答えるクー。

川 ゚ -゚)「何を驚いているんだ? 私にとってはこんなこと屁でもないんだが」

川 ゚ -゚)「さて……」

と言うと、クーは掴んでいた槍を払い投げた。
槍を掴まれていたブーンは、槍を払い投げられた勢いで少しバランスが崩れる。



11: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:26:19.42 ID:ORt/bIX+O
  

(;^ω^)「!!」

川 ゚ -゚)「スキあり、だ」

と、クーは一瞬よろめいたブーンに近付き、腹に正拳突きをかました。

(;゜ω゜)「ぐっ!」

重い。
これが女の子の力なのか、とブーンは思う。
だが、ブーンとて一発でやられるほどヤワではない。
殴られた後、すぐ槍を自分の元へ引き戻し、構える。

川 ゚ -゚)「耐えたか」

( ^ω^)「当たり前だお! こんなんじゃやられないお!」

(;^ω^)(ホントはめちゃくちゃ痛ぇお! なんだおこのパワーは!)

(;^ω^)(槍を掴まれた時……僕が動かそうとしてもピクリともしなかったお)



12: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:28:23.30 ID:ORt/bIX+O
  

(;^ω^)(一体どうすれば……)

ξ゚听)ξ「……ブーン!」

色々と考えこむブーンに向かってツンが叫ぶ。
その声を聞き、ブーンはハッと我に変える。

(;^ω^)「……そうだったお。僕はもう負けられないんだお…!」

( ^ω^)「考えてる暇はないんだお! 僕は攻めて、攻めて、攻めまくるお!!」

( ^ω^)「行くお!」

ブーンは先程と同じく、槍を突きまくる。
クーも先程と同じく避けるが、次第についていくのが厳しくなってくる。

川;゚ -゚)(……ッ! スピードが増している……!)

( ^ω^)「とうっ!」

ブーンがかけ声を発して放った一撃は、ようやくクーの脇腹をかすめた。



13: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:29:24.05 ID:ORt/bIX+O
  

川;゚ -゚)「……!!」

クーの白い空手衣はそこの部分だけ破れてしまう。

( ^ω^)「ようやくかすめたお! この調子で……!」

と、ブーンが言い、また攻撃を仕掛けようしたと瞬間、クーはバックステップしブーンと距離をとった。



14: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:31:24.26 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……少し舐めていたよ」

(;^ω^)「……お?」

川 ゚ -゚)「私も本気でいこう」

クーはまた先程の戦う構えに戻る。
そして突然、その構えのことを説明し出す。

川 ゚ -゚)「この形は自然体と言ってな……基本の構えだ」

川 ゚ -゚)「だが周りの空気と同調し、本当に自然と一体になれれば、この構えは私にとって無敵の構えとなる」

川 ゚ -゚)「……さぁこい」

クーはその構えでブーンを待つ。
ブーンは攻撃を仕掛けよう、と思うも体が動かない。

(;^ω^)(こ……これはニダーの時とは違うお……!! 僕自身が……僕自身がクーを恐れているんだお……!)



15: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:32:19.92 ID:ORt/bIX+O
  

ブーンは空手はやったことがない。
だが、わかる。
構えを見るだけでもわかる。

クーはもはや空手の達人の域に達していること。
無駄も隙もないのだ。
どこに攻めてもダメージを与えられる気がしない。

ブーンの額からは嫌な汗が流れ落ちてくる。



16: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:35:09.43 ID:ORt/bIX+O
  

だがブーンはそれを拭い、再びクーに攻める。
ブーンはクーの肩をぶっ叩いて動きを止めようと考え、槍を振りかぶる。

( ^ω^)「喰らうお!!」

そしてブーンは槍の柄がちょうど当たるように叩き落とす。

川 ゚ -゚)「……甘い」

と、クーは両手で円を描くかのように手をゆっくりと回していた。
そこにブーンの渾身の力を込めた槍が叩き落とされてくる。

( ^ω^)(さすがにこれは腕でガードしても反動が響く……! 余裕ぶっこいてられる暇はなくなるはずだお……!)

が、甘かった。



17: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:37:17.81 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「円力…"弾"!!」

( ^ω^)「!?」

と、槍は弾かれ、ブーンは槍をあさっての方向へ振りおろしてしまった。

(;^ω^)「な!」

だがそんなブーンに関わらず、クーの攻撃は続く。

川 ゚ -゚)「円力…"拳"!!」

と、またクーは先程と同じく、ブーンの腹に2度目の正拳突きを繰り出した。
だが、威力は段違い。

(;゜ω゜)「がっ!!」



20: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:40:42.33 ID:ORt/bIX+O
  

ブーンの口からは血と胃液が混じったようなものが吐き出される。

(;´ω`)「がはっ! ゲホッ!」

ξ;゚听)ξ「ブーン!!」

ツンは思わずブーンの元へ駆け寄ろうとする。
が、ブーンはツンの方へ手の平を広げ、それを制した。

(メ;^ω^)「心配いらないお…!」

ξ;゚听)ξ「ブーン……」

(メ;^ω^)(威力が全然違うお……! これはやっぱり能力としか……!)



22: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:43:15.33 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……どうやらキミは私が能力で攻撃していると思っているようだな」

(メ;^ω^)「!! 違うのかお!?」

川 ゚ -゚)「残念だが違う。私は"円"の力を利用しただけだ」

(メ;^ω^)「円……!?」

川 ゚ -゚)「そうだ。円。それは全てを受け流し、それは全てを弾き飛ばす」

(メ;^ω^)「??」

ブーンにはその話がなかなか理解出来なかった。
が、クーは話を続ける。



24: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:45:53.95 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……キミの槍を弾き飛ばした時も、もちろん円の力だ。
私が両手で作った円の流れの上にキミの槍が入ってきた。
その時、私は円の流れに沿って手の甲でキミの槍を弾き、流した」

川 ゚ -゚)「攻撃の時も同じだ。右手を、キミを殴るインパクトの瞬間に回転させ、殴った。それだけだ。」

(メ;^ω^)「……」

正直、やっぱりブーンは話がちんぷんかんぷんだった。
というか説明が長くて半分は聞き流していた。

だが、このままただ攻めるだけでは絶対に勝てない。それだけはわかった。



25: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:48:57.41 ID:ORt/bIX+O
  

(メ;^ω^)(このままではいかんお……何か策は……)

川 ゚ -゚)「……急に黙り始めたな。ならばこっちからもいくぞ」

クーは走ってブーンの元へ急接近。
そしてクーは先程の待ちの姿勢からはうって変わって、ブーンを狙って次と次と攻撃を繰り出す。

と、ブーンは槍を元のペンへと戻した。

(メ;^ω^)(とにかく思い付くまでは避けまくるしかないお!)

川 ゚ -゚)「元に戻しただと……? 何のつもりか知らんが、無駄だ」



27: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:50:44.68 ID:ORt/bIX+O
  

ブーンはクーの攻撃を避けて避けて、避けまくる。

と、ブーンの鼻めがけてクーの正拳突きが飛ぶ。
ブーンはこれもとっさに顔を引いてなんとか避ける。

(メ;^ω^)「あぶ……」

(メ;゜ω゜)「ぐ!!」

衝撃。
鈍痛。
何故だ。
突きは避けたはず。
……違う。
この痛みは足……それもふくらはぎだ。

ブーンはすぐ何が起こったかを把握しようとする。

そして、理解する。

それは回し蹴りだと。
死角からの攻撃で気付くことが出来なかったのだ。



28: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:54:19.08 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……そんなものか。ブーンよ」

(メ;´ω`)「くっ……!」

ブーンのふくらはぎは赤く腫れ上がってしまっている。
それほど強烈な蹴りだったのだ。

川 ゚ -゚)「次の攻撃で終わりだな……ブーン……」

だが、こんな絶体絶命な状況の中、ブーンの目にはかすかに光が見えていた。

(メ;^ω^)(今のはかなり効いたけど……なんだか急に閃いたお……)

(メ^ω^)(クーに勝つ方法を!!)



30: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 19:58:06.08 ID:ORt/bIX+O
  

(メ;^ω^)(……でもそのためには……一発殴られることを覚悟しないといけないお)

(メ^ω^)(……絶対耐えてやるお!!)

クーもようやくブーンの目に光が戻って来たことに気付く。
クーはそれを多少気にしたものの、かまわずブーンに向かっていく。

川 ゚ -゚)「円力"豪"!!」



31: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:00:07.44 ID:ORt/bIX+O
  

(メ;^ω^)「これは……!!」

川 ゚ -゚)「……終わりだ!」

クーは殺気のこもった拳を、思いっきりブーンの顔面に叩き込む。

クーの拳、腕は殴る際に螺旋運動をし、それによって威力は最大級のものとなっていた。

(゜ω゜(♯)「ぶぉっ――!!」

ブーンは首から頭が取れてしまいそうな程の衝撃を受け、思わず体が浮く。



32: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:02:18.48 ID:ORt/bIX+O
  

クーは勝った、と確信する。

と、その時。
ブーンが倒れざまに何かをクーの後ろに投げた。
ペンだ。

川;゚ -゚)「何!?」

クーの後方でペンは槍に変わる。
クーは一瞬の油断からか避けるのが遅れる。
槍は右肩の皮膚を捉えた。

川;゚ -゚)「――!!」

クーの空手衣の右肩の部分は裂け、そこからは血が溢れていた。

(メメ;´ω`)「……キミの……負けだ……お」

クーはその微れるような声を自分のすぐ近くで聞いた。
ブーンはクーが槍に気をとられているうちに懐に潜り込み、投げたペンとは別のペンをクーの首元に突きつけていたのだ。



34: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:05:16.49 ID:ORt/bIX+O
  

血が、汗が、道場の床に滴り落ちる。
クーの空手衣の右腕部分はすでに赤く染まっていた。
道場には二人の荒い呼吸の音のみが響く。

(メメ;´ω`)「……このペンを槍に変えたら……どうなるかわかるかお……?」

川;゚ -゚)「……」

ブーンの言う事の意はすなわち死。
クーの額からは冷や汗が流れる。

なのに、クーの目からは焦りの色は消えていた。
何か……覚悟を決めたような、目をしていた。

(メメ;´ω`)「……だから今回の所は退いてほs」

川 ゚ -゚)「……殺せ」

(メメ;´ω`)「ほ?」



37: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:10:11.83 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……勝負に負けた私はもうシャキン様の役に立てない……だから……殺せ」

(メメ;^ω^)「な……何言ってるんだお! 自分の命よりそのシャキン様の方が大事って言うのかお!」

川 ゚ -゚)「あぁ。そうだ。だからブーン。私を殺せ」

(メメ;^ω^)「嫌だお! 僕はキミと友達になるんだお!」

川 ゚ -゚)「殺せ!」

(メメ;^ω^)「嫌だお!」

川 ゚ -゚)「殺s」

(メメ;^ω^)「!」

と、そこで突然クーの声が途切れる。



40: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:12:53.73 ID:ORt/bIX+O
  

クーの頬には平手が入っていた。
道場に乾いた音が響く。
そして平手を入れた人は他でもない、ツンであった。クーは頬を押さえながら、そのツンに問う。

川 ゚ -゚)「……なんのつもりだ」

(メメ;^ω^)「ツン!」

ξ゚听)ξ「……クーさんだっけ? ブーンがせっかく逃がすって言ってるんだから逃げなさいよ」

川 ゚ -゚)「……話は聞いていただろう。私は死ななければ」

ξ゚听)ξ「……」

(メメ;^ω^)「ツン?」



43: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:16:16.94 ID:ORt/bIX+O
  

ξ#゚听)ξ「……軽々しく死ぬなんて言わないで!!」

川 ゚ -゚)「!」

(メメ;^ω^)「!」

ブーンとクーはツンが突然怒鳴ったことに驚く。
怒鳴ったツンの顔には怒りと悲しみが混じっていた感じで、拳を強く握りふるふると震えていた。

ξ#゚听)ξ「一回負けたから死ぬ? ざけんじゃないわよ! ただ一回負けただけじゃない!」

ξ#゚听)ξ「まだ全然何でも出来るじゃないの! 私は私を守るため死んでくれた人を知ってる! 自分のエゴで死ぬなんて馬鹿げてるわ! あなたはただの弱虫よ!」

川 ゚ -゚)「!」

ξ#゚听)ξ「この馬鹿! そんな弱虫なんか死んじゃえ! 馬鹿! 馬鹿!」

(メメ;^ω^)「言ってることが矛盾してるお……」



45: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:22:02.51 ID:ORt/bIX+O
  

川 ゚ -゚)「……」

クーはじっとツンの顔を見つめる。
ツンの顔には涙が流れ始めていた。

ξ;;)ξ「な、なによ」

川 ゚ -゚)「……わかった。君達に免じて……私は退くことにする」

(メメ;^ω^)「クー…!!」

川 ゚ -゚)「変な奴だな、キミ達は。私は敵だというのに」

そしてクーは微笑み、ツンを見つめ、問う。

川 ゚ -゚)「……キミの名前はツン……だったか」

ξ;;)ξ「……そうよ」

川 ゚ -゚)「……ツン」

川 ゚ -゚)「ありがとう……」
ξ;ー;)ξ「……いいってことよ」

(メメ;^ω^)「……あれ? 僕には?」



48: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:24:22.48 ID:ORt/bIX+O
  

ξ゚ー゚)ξ「……じゃあブーン。帰りましょう」

(メメ;^ω^)「ねぇ僕には? ねぇ僕には?」

ξ゚听)ξ「うっさい!」

ブーンはペンをポケットに戻す。
そしてクーが道場の真ん中で見守るなか、二人は道場を後にする。
と、道場の扉を開けようとする前にブーンは振り返り、クーに向かって話し出す。

(メメ^ω^)「クー! 怪我させてごめんだお! また会おうおー!」

川 ゚ ー゚)「……あぁ。またな」

(メメ^ω^)「おっ!」



50: 光圀(樺太) :2007/04/09(月) 20:26:56.48 ID:ORt/bIX+O
  

ブーンはクーに手を振る。
その姿にツンは微笑みつつ、扉を開ける。


――が、その時。
バリン、とガラスの割れる音。
飛び散るガラス。
それと共に飛んでくる人。

(メメ^ω^)ξ゚听)ξ「!?」

川 ゚ -゚)「あ……!」

そしてそいつは突然来たかと思うと、クーの顔面を殴る。
クーの口からは血が吐きだされる。
クーはその場に倒れ込んだ。

(メメ;^ω^)「ク―――――!!!」

うずくまるクー。
そのすぐ横に立つのは一人の男。

(・∀ ・)「弱い奴は粛清、ってね」



第十話 おわり



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