( ^ω^)の内藤小説 1998年
- 8: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:19:57
――第一章―――
('A`)「おせーよ!」
(;^ω^)「すまんお。中々警察がしつこくて…」
(´・ω・`)「何かあったのかい?」
(;^ω^)「まぁ特に話す事でもないお」
('A`)「ウダウダ言ってねーで行こうぜ。あんまり待たせちゃまずいだろ」
( ^ω^)「おっ!行くお」
(´・ω・`)「一体何の話だろう…」
三人は待ち合わせ場所だった喫茶店を出て、外を歩いた。
- 9: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:24:19
その間中ずっとドクオが寒いと嘆いていたが、歩いているとそこまで寒いというわけでもない。
街中にはちらほらマフラーを巻いて歩いている人も居たが、子供などは薄着で元気に走り回っていた。
まだまだ今は秋なのだ。
( ^ω^)「おっ!そういえば何で僕らが呼ばれるんだお?」
('A`)「さぁ…いい予感はしないがな」
( ^ω^)「でも最近はそんなに問題もなかったのにお」
(´・ω・`)「逮捕者も出てないしね」
内藤と同じく、ドクオとショボンも某巨大掲示板のマスコット的役割を果たしている。
この三人は自他共に認める、人気TOP3だ。
- 10: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:27:00
( ^ω^)「せっかくの休みをどうしてくれるんだお」
ぶつぶつと文句を垂らしながら進む。
時折、掲示板の住人らしきキモヲタが声を掛けてくるが無視を決め込む。
鯖落ちしている時に外を出歩いているのがばれたらちょっとした祭になるかもしれない。
('A`)「あー…ここだったっけ?」
(´・ω・`)「うん。…久しぶりだ」
軒並み高層ビルが立ち並んでいる中で群を抜いて高い超高層ビル。
ここが某巨大掲示板を管理している団体の本社ビルである。
( ^ω^)「さっさと行ってさっさと帰るお!」
馬鹿でかい入り口を通り、内部に入る。
半端な美人顔をした受付の女性に用件を伝えるとすぐに案内係が飛んできた。
案内係に従ってエレベーターに乗り込み、62階で降りると、ある部屋の前まで案内された。
( ^ω^)「おっ!ここかお」
こちらです、という案内係の声を聞き終わる前に内藤はドアのノブを回した。
- 11: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:30:16
「遅かったね」
(´・ω・`)「すいません…お久しぶりです、FOXさん」
( ^ω^)「おっお!FOXさん久しぶりだお!」
FOX「休みの所悪かったな」
('A`)「えぇホントに」
コラ、とショボンがドクオを窘める。
男――FOXはにやにやしてその様子を眺めていた。
( ^ω^)「それで話っていうのはなんだお?」
FOX「あぁ…まぁ掛けてくれ」
長机と椅子、そしてホワイトボードだけの会議室のような部屋。
椅子もただのパイプ椅子で座るとひんやりとした温度が肛門を中心に広がった。
(*^ω^)「……」
(*'A`)「……」
(´・ω・`)(こいつら……)
- 12: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:34:24
FOX「君達をここへ呼んだわけはだな」
様子がおかしい二人を知ってか知らずかFOXが話を重々しく切り出す。
FOX「実は……彼の行方がここ数日わからないんだ」
(*^ω^)「彼って誰だお?」
FOX「…ひろゆき氏だ」
一瞬、その場が沈黙に包まれる。
('A`)「…ま、そんな珍しい事でもあるまい」
(´・ω・`)「…確かに」
(*^ω^)「ひろゆきって誰だお」
FOX「そうも言ってられないんだ」
肛門をずらして何かのポイントを探してガタガタしている内藤を無視してFOXは続ける。
FOX「脅迫文が届いた」
('A`)「…」
(´・ω・`)「…」
(*^ω^)「ひろゆきってだれ………アッー!ビクッビクッ!」
- 13: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:37:38
FOX「だが目的も要求も書かれていなかった。書かれていたのはひろゆき氏を誘拐したとだけ」
絶頂に達した内藤をあくまでも無視してFOXが続ける。
FOX「君達も知っているだろうが、ひろゆき氏を良く思っていない輩は沢山居る」
(´・ω・`)「これもそいつらの仕業だと?」
眉間に皺を寄せたショボンが問う。
FOX「可能性はある」
('A`)「…やれやれ」
向かいに座っているFOXの話を聞こうと、前寄りになっていた身体を背もたれに戻してドクオが溜め息を漏らす。
内藤は未だ放心状態だ。
(´・ω・`)「その脅迫文とやらを見せてもらえませんかね?」
FOXがポケットを探りビニール袋に包まれたそれをショボンに投げやった。
(´・ω・`)「…ふむ」
- 14: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:39:54
『ひろゆきを誘拐した』
FOXの言う通りただそれだけ。
白地の紙にワープロで打ったと思われる黒の書体。
('A`)「これが届いたのはいつ?」
FOX「二日前だ。ひろゆきが姿を消したのは三日前」
('A`)「……イタズラ…じゃないのか」
FOX「タイミングを考えるとイタズラじゃないだろう。…誘拐…拉致と言った方がいいかもしれん」
そう言って目をつむる。
(´・ω・`)「で、僕らにどうしろと?」
FOX「言わなくても分かるだろう」
- 15: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:46:06
FOXの表情は険しさを増す。
('A`)「捜せってか…。警察には?」
FOX「それも言わなくても分かるはずだが」
この某巨大掲示板は警察などの介入を酷く嫌う風潮がある。
無論、警察に介入されると困る事があるからだ。
(´・ω・`)「……」
FOX「君達が忙しいのは百も承知だ。だから何とか時間を上手く使ってくれ」
('A`)「……」
身勝手とも思えるFOXの言葉にドクオも顔を歪ませた。
( ^ω^)「ひろゆきって誰だお?」
FOX「正直、彼がいなくては急激な成長期にある掲示板は成り立たない。なんとか彼を連れ戻して欲しい」
- 16: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 18:57:32
腕時計にちらっと目をやり、席から立ち上がる。
FOX「残念だが、時間がない。頼んだぞ、こっちでも出来る限りのことはする」
('A`)「ちょ…」
唖然とするドクオを尻目に、FOXは足早にドアの方へ向かい部屋を出て行く。
余りにも乱暴な打ち切り方だった。
('A`)「…ったく。強引な奴だ」
更に顔を歪ませ、吐き出すようにドクオが言う。
(´・ω・`)「…やれやれ」
面倒を押し付けられた、というのがショボンの表情にありありと出ていた。
( ^ω^)「ひろゆきって誰だお」
('A`)「…」
(´・ω・`)「…」
頭をボリボリ掻きながら宣う内藤を見て、二人は同時にため息をついた。
- 17: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 19:06:07
――――――――――――――――
それから数十分後、三人は行く前に待ち合わせた喫茶店で薄くまずいコーヒーを飲みながら話していた。
( ^ω^)「ひろゆきって管理人だったのかお……」
二人からの説明を受けてようやく理解した内藤が呟く。
('A`)「で、だ。どう思う?」
ドクオが問う相手はもちろん内藤ではなくショボンだ。
(´・ω・`)「どうって……厄介だなぁと」
('A`)「そうじゃなくて何か感じたんじゃないのかよ」
(´・ω・`)「あぁ…」
仕方なく、といった表情でショボンが話し出す。
- 18: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 19:17:11
(´・ω・`)「おかしいよね」
('A`)「何が引っ掛かったんだ?」
(´・ω・`)「全部といえば全部」
しょぼれくれた顔で強く断言する。
( ^ω^)「どういうことかわかりやすく頼むお」
(´・ω・`)「いやまぁ、単純に捜索を頼むにしても、僕らじゃなく
掲示板お抱えの探偵まがいの組織に任せておけばいいしね」
('A`)「…まぁ…確かにな」
既に小難しそうな顔をしている内藤の代わりにドクオが相槌を打つ。
(´・ω・`)「それにあの犯行声明も別に何かを要求しているわけでもない。
しかしFOXは『脅迫文』と言った。まぁこれは僕の考えすぎかもしれないけどね」
('A`)「何にせよ妙な様子だったことに変わりはない」
知らず知らずのうちに二人の顔が険しくなる。
- 19: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 19:25:32
(´・ω・`)「まぁ、向こうもこっちがおかしいと思うことは承知で言ってきたんだろうけど」
('A`)「…嫌な予感がするんですけど」
(´・ω・`)「…僕は確信だよ」
( ^ω^)「おっおっ。それで結局どうするのかお?」
話の内容を理解しないまま結論を求めるのは内藤の悪い癖だ。
しかし、内藤に分かるように説明するとなると数時間は覚悟しなけらばならないので二人ともあえて何も言わないが。
(´・ω・`)「うん。とりあえずは彼らの言うとおり捜してみるしかないだろうね」
('A`)「・・・」
声にならないため息をついて、不細工な顔を更に不細工な顔にしてドクオが椅子にもたれる。
- 20: ◆P.U/.TojTc :2007/01/26(金) 19:27:56
( ^ω^)「おっ!面白そうだお!やるおやるお!」
呆れた顔でドクオが見る。ショボンはニヤッと口元を綻ばす。
(´・ω・`)「まぁとにかく詳しいことは明日にでも考えよう。
せっかく今日は久しぶりの休日なんだからね」
ショボンのその言葉を合図に、三人は会計を済まして外に出る。
やはり外はそれなりに寒く、暖かい室内に居た三人は身を震わせた。
面倒くさいなぁ、と思う者。
只事じゃ済まないな、と密かに覚悟する者。
木枯らしで女子高生のスカートがめくれないか、と期待している者。
思いはそれぞれ。しかし奇しくも辿る道は同じものとなる。
もちろんこの時三人がそれを知るわけもない。
そして
この奇妙な事件の始まりが後に想像もし得ない結末を迎えることも…
第一章 終わり
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