( ^ω^)の内藤小説 1998年

23: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:51:41
  

気付くか気付かないかの微妙な振動が布を通して太ももに伝わる。

(*^ω^)「おっ!」

いやこの男には敏感に伝わっているようだ。

折りたたみ式の携帯電話を手馴れた動作で開ける。

( ^ω^)「ドクオからかお」

彼のメールは非常に簡素なものだ。冷たいといえば冷たいが、彼が絵文字を使ったところで気持ち悪いと言われるのが関の山だ。

その辺は彼も心得ていて用件だけを簡略に述べた文だけを送ってくる。

( ^ω^)「・・・ドクオも頑張ってるみたいだお」

内容は、今日は少し長引きそうなのでショボン達にもその旨を伝えて欲しいとの事、そして今日もあまり成果は挙げられなかったという事。

『長引く』、『成果』というのはもちろん行方の分からなくなったひろゆき氏の調査の事だ。



24: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:52:49
  

ここ数日は一人ずつ交代でその調査をしていた。

三人ともそれぞれ多忙な日々を過ごしていたがその合間を縫って調査をしているのだ。

できれば、応援を頼みたいところだが案件が案件なので今のところ三人しかこの事は知らない。

その三人が一人ずつ調査するというのは、あまり賢いやり方ではない。万が一何者かに襲われたとしても不思議ではないからだ。

ショボンの提案もあってあまり深入りしないこと、そして連絡を密に取り合うことなどを決めた。

( ^ω^)「ひろゆきの奴・・・患わせやがってお」

それでなくても目の廻るような忙しい日々。

そこにこんな面倒を押し付けられては確かに愚痴の一つでも零したくなるだろう。

つい先日までおもしろそうだとはしゃいでいたのはすっかり忘れている。



25: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:53:33
  

( ^ω^)「おっ!もう時間かお・・・」

携帯電話をポケットにしまい掲示板に戻る。

人気が高いというのも考え物だ。ゆっくり休憩することも出来やしない。

なにせあの掲示板は昼夜問わず稼動しっぱなしだ。ニートがたくさん居るというのも本当なのだろう。

( ^ω^)「・・・」

足を動かしながらふと考える。

こんな巨大な掲示板の管理人がいなくなったのは実は大変な事なのではないだろうかと。

( ^ω^)「・・・まぁいいお」

そうすぐに思い直し、走り出す。

実際、管理人が居なくてもこの掲示板は成り立っているのだからと。



26: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:54:54
  

その頃、ショボンも慌しく掲示板内を動き回っていた。

ある所ではテキーラを出したり、腹筋の指示をしたり。

またその合間に例の件の調査もしていた。独自の情報網を駆使して少しでも情報を集めようとしていたが成果は思わしくなかった。

今日はドクオが外回りの日なので、彼が何か持ち帰ってくれたらと期待するが、そううまくはいかないだろう。

(´・ω・`)「それにしても・・・なぁ」

彼がこうため息とともにこぼすのには理由ある。

あまりにも情報が出てこない。

誘拐、拉致、呼び方はいくつかあるが決して穏やかな事件ではないはずだ。

しかし、大枚はたいてかなり深いところまで精通している情報屋に仕入れにいっても文字通り何も出てこなかった。



27: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:56:03
  

これは同時に幾つかの事を意味している。

裏で誰かが情報をコントロールしているか、どこにも情報が流れない程、犯人が巧妙なのか。

もしくは誘拐自体が存在していないのか。

いずれにしろ厄介な事に巻き込まれたのは間違いない。

こうなると一人で行動するのも控えたほうがいいのかもしれない。

(´・ω・`)「まいったなぁ・・・」

どうやら思ったより根が深そうな事件になりそうだ。

(´・ω・`)「釣りでした・・・とかないよね」

もちろんそれが一番いい形なのだが。

考えなければならないことはまだ沢山ある。やはりあの時のFOXの様子はおかしかった。

大体、管理人が誘拐されるという一大事にしては対応がお粗末すぎる。

何かを隠している、のは疑いようもない事実だが、イマイチ真意を測り兼ねた。

(´・ω・`)「・・・」

何か行動を起こさなければいけないだろう。

ドクオじゃないが、嫌な予感がする。

そしてこの種の予感が当たることは既に自分でも理解していた。



28: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:56:56
  

('A`)「あぁ・・・やってらんね・・・」

今日は一体どれほど歩いただろうか。万歩計でもつけてそれをFOXに見せ付けてやりたい気分だった。

('A`)「神経使いすぎだっつの・・・」

ドクオが怒りの矛先を向けているのは、FOXだけではない。

情報屋と接触する、というのはなんとも神経をすり減らすことだろうか。

特に最近では情報屋が消されるといったことも増えているので、彼らも用心に用心を重ねている。

それで骨を折る上、成果が芳しくないときたらドクオじゃなくてもたまらないだろう。

('A`)「ふわぁ」

欠伸をして伸びをする。

ふと周りを見渡すと幸せそうな家族やカップルが歩いている。



29: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 20:57:54
  

だから公園は嫌いなんだ、と心の中で毒づく。

不条理が集まる場所。公園がそれだとドクオは考える。

同時に家族やカップルは公園を幸せの集まる場所だと考えるだろう。それが不条理だ。

('A`)「・・・」

このベンチの硬さも、上空を飛び回る鳥も、全てが嫌いだ。

('A`)「・・・ん?」

目を凝らして視線の焦点を合わせる。

はとに餌を与える年寄りをその先に認める。公園ではよくある光景だ。

そうやって老人が可愛がって、はとに餌を与えるため異常な数のはとが押し寄せ、糞などの衛生面で問題になっている。

それで餌を与える人も少なくなってきているはずだ。

しかし、ドクオが違和感をもったのはそんなことではない。



30: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:00:30
  

('A`)「チッ・・・」

不自然な動きにならないようにゆっくりと立ち上がる。

そしてあくまでも自然に歩を進める。

少しの緊張感も筋肉に伝えず、頭の中には最低限の警戒と対処法を張り巡らせる。

ゆっくりとその場を遠ざかる。見えないがおそらく大分離れただろう。

ここで大事なのは意識を後ろに持っていかないこと。

その僅かな違いで身体の重心が後ろよりになり、緊張感を漂わせる。

その緊張感に自分で気付こうものならば、修正をしようと慌てる。それからはもう深みにはまるだけだ。

('A`)「・・・」

どのくらいの距離を歩いただろう。

とっくに公園の敷地内を出て、普通の歩道を歩いていた。

そこでようやく警戒を解く。

('A`)「あーもう・・・面倒くさいよ、ママン・・・」

念には念を。

帰り道とは違う方向に足を向かわせる。

それほど年というわけでもないのにも関わらず彼の背中からは哀愁が漂っていた。



31: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:11:35
  

―――――――――――――――――――



('A`)「……というわけだ」

(´・ω・`)「…ふむ」

(;^ω^)「マジですかお…」

ほとんどの人間が寝静まり、一部の人間が活発になる時間帯。

三人はショボン宅で穏やかでない話をしていた。その内容はドクオが今日、いや昨日遭遇した出来事についてだった。

(´・ω・`)「あまりいい対処とは言えないね」

(;'A`)「……mjdk?」

(´・ω・`)「ま、いいけどね」

文字通りガックリ、とうなだれるドクオ。



32: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:12:40
  

( ^ω^)「何がまずかったんだお?」

(´・ω・`)「……いやいいんだ。忘れてくれ。どうせ尾行されてたのなら同じだし。闘りあうような真似しなかっただけ良かったよ」

そう言って少し考える顔になる。

ショボンがこういう顔をするときは良くない事態に陥った時だ。

それを分かっているドクオはさらに落ち込む。

( ^ω^)「ドクオ……やってくれたお」

大して状況も分かっていない内藤が辛辣な言葉を吐く。

(;'A`)「ッ…」

( ^ω^)「なんておwwwそんな本当っぽいこと言わないおwww」

(;'A`)「…次はお前が狙われるかもな」

( ^ω^)「おっおwww…w…w…」

(;^ω^)「…あり得るってレベルじゃねーお!!」

頭脳でも肉体でも劣る自分に今更気付く。



33: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:14:11
  

(´・ω・`)「冗談はそこと顔までにして」

いつものようにショボンが制止する。

(´・ω・`)「これからのことだけど、一人で調査するのはやめよう」

( ^ω^)「全精子レベルで賛成ですお」

('A`)「…俺も」

馬鹿な会話をしているようで、危機察知能力はそこそこ備わっているようだ。

(´・ω・`)「ドクオの尾行のこともあるし、調査の仕方をもう少し考えてみよう」

('A`)「…えーと、さっき俺の対処が良くなかったとか言ってたけど、はっきり言ってくれないか?」

(´・ω・`)「ん。まぁ簡単に言うと尾行が一人ってことはあんまりないんだよね。それだけ」

('A`)「あのじじいだけじゃなかったてことか…」

鳩に餌を与えて老人。ドクオはそいつを尾行だと判断して撒いた。

(´・ω・`)「その老人が尾行だってのはあり得る。でもわざわざ姿を現す必要はないからね」

('A`)「釣られたってわけね。正直テンパってました」

( ^ω^)「キョドル童貞哀れだおw」

ここぞとばかりに攻撃する内藤をショボンが目でたしなめる。



34: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:15:32
  

(´・ω・`)「とにかく、僕はもう一度FOXと話してみる。このままじゃなにがなにやら…」

言い終わらないうちにテキーラをあおる。

それにあわせるように内藤とドクオもグラスを空にする。

( ^ω^)「……ちょっといいかお?」

内藤がいつもは見せないような神妙な顔つきになる。

(´・ω・`)「ん?」

('A`)「どうした?」

二人の目を交互に見て口を開く。

( ^ω^)「……何か凄く嫌な予感がするんだお」

(´・ω・`)(今頃…)

('A`)(今頃かよ……)

口に出してツッコミたいのは理性で抑えつつ、うんうんと頷く。



35: ◆P.U/.TojTc :2007/01/29(月) 21:16:52
  

(´・ω・`)「大丈夫だよ、ブーン」

('A`)「あぁ、心配しすぎだ」

( ^ω^)「……二人とも…」

口だけの励ましとも知らず、涙腺を緩ませる内藤。

( ^ω^)「……それからもう一つ」

怪訝な表情で内藤を見返すドクオとショボン。

( ^ω^)「…うんこをもらしちゃったお…」

('A`)「……」

(´・ω・`)「……」

……。





( ^ω^)ブーンがうんこをもらしたようです



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