( ^ω^)ブーンの妄想が現実になってから1年後

462: 名無しさん :2007/07/29(日) 07:16:56
交差の果てに沈む鋼の身体。
視界のすみに映ったそれを、不要な情報として即座に捨てる。
満身創痍の双騎士は、2人の量産型と見えていた。

爪゚ー゚)「参るぞ姉上!」
爪゚∀゚)「応とも!」

先程までは数人の量産型を相手どり苦戦していたが、人数が対当ならば。
たとえ鎧が砕かれていても問題なく、すでに不要の段階。
1対1ならリーゼの大剣二本で十分、片腕のレーゼの機振剣ならば十二分。

爪゚ー゚)「アーマーセパレート!!」
爪゚∀゚)「大回天!!」

レーゼは動かない片腕を残し、一挙動でコートごと鎧を脱ぎ捨てる。
リーゼは両手にもった大剣を、回転による遠心力で制御した。
そうして、互いに相手に向かって疾く駆ける。

量産型「玉砕とは無様!鎧を捨てて耐えられるか!!」
爪゚∀゚)「鎧はあるとも!」

2組1対。先頭の量産型の蹴りを、レーゼの前に出たリーゼの大剣が弾き落とす。
回転は止まらない。続く刃が量産型の連攻を悉く相殺する。
リーゼの2本の大剣は、妹を守る鎧を担う。

爪゚ー゚)「そしてっ!」
量産型「し、死角から…!?」

リーゼに止められた量産型の後ろから、もう一人の量産型がリーゼの側面をつこうとした瞬間。
死角を縫って現れたレーゼが、量産型二人の間を駆け抜けた。
すれ違いざまに聞こえた鳴動は、震える刃の威力音。

爪゚ー゚)「私が刃だ!」
量産型「…」

超高速振動で物体を寸断する剣の前には、鋼程度の肉体では抗えない。
量産型の体は音もなく崩れ落ち、戦いは終わった。



463: 名無しさん :2007/07/29(日) 07:28:38
いつのまにか、あれ程蠢いていた人形たちの姿は見えなくなっていた。
地面は人形たちの残骸で埋め尽くされ、ジョルジュ量産型も最後の一人を残し沈黙している。
双騎士と合流した内藤は、最後の量産型の姿が見えないことに気付いた。

( ^ω^)「あと一人はどこにいったお?」
爪゚∀゚)「…あれか?」

病院入り口で蹲っている影をリーゼが指差す。それは紛れもなく最後の量産型だった。
病院入り口まで進行を許したのは不覚として、いったい蹲って何をしているのか。
その答えは、病院の階段に座っていた。

( ^ω^)「って…ショボン先生!」
(´・ω・`)「おう内藤?…なんのコスプレだそれ」
( ^ω^)「コスプレっていうか強化服…やっぱコスプレでいいお」

寝巻きで病院のベッドに横になっていたはずのショボンだが、いつもどおりのスーツ姿だ。
もう体調は良いのか、普段どおり会話をしている。その横で量産型がのたうち回るのが煩いが。
視線を向けると、量産型の顔色は青い上に、脂汗と鼻水と涎でえらいことになっていた。

量産型「ギブッ!ギフッ!イバラギッ!ふっ…あ゛うっ!……」
( ^ω^)「…何してんだお?」

量産型は随分痛がっているが、とくに何かされているようには見えない。
が、よく見るとショボンと量産型の手が繋がっている。
内藤はその手、いや指の繋がり方を見て、ようやく何が起こっているのかを悟った。

( ^ω^)「!! そ、それは…指ひしぎ十字固め!?」
(´・ω・`)「だってこいつ固いんだもん」
爪゚∀゚)「というかショボン殿」
(´・ω・`)「ん?」
爪゚∀゚)「泡吹いてますが…」

指というのは神経の集中している部分で、合気道なんかの達人は指1本掴んだだけで相手の動きを制すると言われる。
しかも鍛えるにも限界があり、金的などと並んで人体のえげつない急所に上げられる部位だという。
その急所。量産型の指が無理な方向に曲げられ、鬱血し変色し、指の筋は限界まで張りつめ見ているだけで痛々しい。

(´・ω・`)「おぉ、ほんとだ。 とりあえず指折っとこう」
量産型「ギャアアア!!」
( ^ω^)「……これはひどいお」

量産型の失禁水を避けながら、内藤は指がバキバキになった最後の量産型に、ほんの少しだけ同情した。



473: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:47:06
(´・ω・`)「しかしちょっと寝てる間に…おい、市長」

ショボンは座っていた階段から腰をあげ、数歩前に進んだ。
病院入り口に殺到していた人形の群れはいつのまにか残骸の山にかわり、入り口を守っていた者は床に腰を下ろし息をついている。
ショボンに呼ばれ大きく息をついた市長が、露骨に疲労を顔に貼り付けながらも階段を下りショボンの横に並ぶ。

(´・ω・`)「何事だよこれは。察しはつかんでもないが…」
市長「察しがつく?ベッドで寝てたお前が?まったく察しのつかん俺に教えてもらいたいもんだな」

市長は溜息と混ぜ合わせたような口調で吐き出しながら、足元に転がっていた週刊誌ほどの大きさの人形の頭部を蹴った。
丸っこい頭部は力なく転がり、地面に突き立っていた大剣に当たって止まる。
その頭部を特撮でみるような手甲が拾い上げ、その手甲の主は大剣を突きたてそれに持たれかかっている双子の片割れに顔を向けた。

爪゚∀゚)「私に聞くな。なにもわからん…体がそろそろ動かんということ以外はな」
爪゚ー゚)「上に同じ」
( ^ω^)「むー…じゃあ僕が説明するお。突然バカみたいな数の人形がたくさん病院に押し寄せたんだお。それで僕とドクオは」
(´・ω・`)「んなこたぁ見りゃわかるわ」
(;^ω^)「あ…そうですかお」

問題は、とショボンは親指で僅かに下がったメガネの位置を正す。

(´・ω・`)「最初にお前を連れ去って、そんでもって各地で騒ぎを起こして人々が1箇所…病院に集まった頃に総攻撃をかける」
( ^ω^)「ふむふむ?」
(´・ω・`)「そんな面倒なマネをどうしてするのか、ってことだ」

気になるのは、一連の出来事を全体的に見た結果、ラウンジの目的があまりにも不明瞭なことだ。
街を外界から遮断しても、その上でホルダーの大量誘拐をするわけでもなく、かといって他の受け入れ都市のように制圧するつもりならば遠回しすぎる。
いったい何がしたいのか。

( ^ω^)「んなこと知るわきゃねーですお。何いってるお?」
(´・ω・`)「……あれ?今なんかすごいムカついたんですけど」

まるで目的など最初からないような。
だというのに漠然とした計画性を感じることに、ぬぐいきれない奇妙な不安がある。
そんなことを考えながら、ショボンは内藤の足を踏んづけた。



474: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:47:22
苦戦、していた。
圧倒的にサイズは小さく、それなのにスピードは相手のほうが上。
一撃で大ダメージを受けたりはしないが当たり所によってはどうなるかわからず、こちらの攻撃は当たりさえすれば一撃だが当たる気配の欠片もない。

敵を見失った視界の隅を拡大してみると、病院の入り口で休息をとる仲間たちが見えた。
足を踏んづけられても痛がるそぶりも見せない友人に、それでもにじり踏み続ける恩師。
双子は突きたてた剣に身を預け、ギコとしぃは階段に腰を下ろし、市長は煙草に火をつけようとしている。

('A`)「あっ…んの野郎ども…!」
川 ゚ -゚)「神砂…」
(*゚∀゚)「ドクオ君、防御防御!」
('A`)「っ!!」
川 ゚ -゚)「嵐!」

もとは飛行用の翼だった側面装甲をフレキシブルアームによって前方に展開。
それは強固な盾となり、ドック・オーにむけて放たれた二対の竜巻を防ぐ。
盾で塞がれた前方視界には既に敵はなく、側面に回ったはずの敵…クーの攻撃を予測し、急速後退。
機体側面、装甲の薄い部位を狙った鉄の拳が空を切り、機人と機獣はわずかの距離をとって静止する。

川 ゚ -゚)「…存外、大したことはないな。何の武装もないとは」
('A`)「ここは平和な街なんだよ!そうそうコイツに積めるような火器があってたまるか!」

クーの呟きに即座に外部スピーカーをオンにして、ヤケクソっぽい声で反論するドクオ。
遠く病院入り口で、何人かが振り返ったように見えた。

(*゚∀゚)「…ちょっとドクオ君、ほんとに何もないの?大砲とかミサイルとか。前はあったじゃん」
('A`)「…いや…それが……載せるスペースなくてさ。飛び道具はなんも無いんだよね…てかミサイルはなかったでしょ」
(*゚∀゚)「マジデ?マジデマジデ?」
('A`)「マジデ。マジデマジデ。ってか誰か手伝いにこいっつーか相手代わってくれっての!」

とんでもなくバツが悪い。実を言うと、搭載できる火器はあった。
ただ、それら全てを諦めて積み込んだモノがあるのだ。
人間と戦うにしても、ドック・オーはもはや人間にどうにかできる物ではない。

”だから火器なんていらないぜフゥハハァー!”

改装作業中にそう言ったのは、ほかならないドクオ自身だった。
だが今目の前にいる相手に、ドック・オーの初戦からそれを否定された事になる。
まさかドック・オーの装甲をへこませるパンチを撃ち、竜巻を発生させ対象を捻り切り、あまつさえスタミナ切れも起こさずに戦う人間がいるとは。

('A`) (つーかあれ人間じゃなくね?竜巻撃つときなんか腕が軽く変形してるし、むしろあの腕あきらかに金属だし。反則くせー)



475: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:50:26
川 ゚ -゚)「ふっ…どうやら対人戦は想定していなかったらしいな」
('A`)「…ばれてやがる」
(*゚∀゚)「そりゃねぇ」
川 ゚ -゚)「少々予定とは違うが倒してしまうか…」

クーの顔に僅かに笑みが浮かぶ。
それは本来ドック・オーの相手をすべき者への嘲笑のようにも見えた。
笑みが消えると同時に、クーは上着を脱ぎ捨てる。

間接の継ぎ目を極力保護した右腕は、殆ど人間の腕とかわらぬ見た目で。
それとは対照的な造りの粗いスペアの左腕が妙に目立つ。
着ているのはただのタンクトップ型のラバースーツのようだったが、なぜか背中は露出している。

川 ゚ -゚)「我が風のファイナルモード…!」

それもそのはず。
露出した背中にあるのは乙女の柔肌などではなく、二基の排熱ファンなのだから。
風を圧縮する人工肺と直結し、肩甲骨を兼ねた連結器と複合したファンが凄まじい音をたてて回転する。

('A`)「何か大技の予感がしやがる…が」

ドクオはドック・オーの盾の操作スイッチに手をかけながら、クーの身体の変化を見ていた。
クーの周囲に散乱したアスファルトの破片が風に飛ばされていく。
ただ立っているだけのクーの右手は手刀の形で、その切っ先の向いた地面には亀裂が。

(*゚∀゚)「…ドクオ君……!」
('A`)「なぁに、大丈夫さ。何か仕掛けてくるみてーだが、この盾はそう簡単にゃ…」

こと戦において死生を分けるのは、一重に勘だ。
勘とはつまり研ぎ澄まされた感覚。
常人とは比べ物にならない超常の域にまで達したつーの勘が、大きすぎる危険を感じていた。

(*゚∀゚)「避けてっ!!」
('A`)「へ!?」



476: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:50:42
悲鳴に近いつーの叫びに、どうにか反応が間に合った。
クーの右腕が跳ね上がると同時にサイドステップ。
本当に紙一重。
ドック・オーがほんの半瞬前までいた場所を通り、20メートル程はあるだろう深い亀裂が走っていった。

('A`)「…な……」
川 ゚ -゚)「避けたか…勘がいいな」
('A`)「なんだありゃぁ!?」
(*゚∀゚)「収束された風の刃…工業用の水圧カッターみたいな…!」
川 ゚ -゚)「よくわかったな。それなら、かわせないと云う事もわかるな?」
(*゚∀゚)「聞こえて…!?ってアッー!ドクオ君スピーカーはいったまんまじゃない!」
('A`)「今それどころじゃないんじゃねぇの!?」

確かにスピーカーのオン、オフどころではない。
クーは右手を担ぎ構え、風の刃を横に凪ごうとしている。
先程の一撃からみて少なくとも射程は20メートル、薙ぎ払われては飛んで避けるしかないが。

川 ゚ -゚)「空に逃げては身動きできんぞ?」

そう。空中では避けれない。
リリィほどの機動性があれば話は別だが、ドック・オーではコンセプトが違う。
つまり。

('A`)「…やられるっ…!?」

風を噴き出すファンの音が激しさを増し、その音すら両断するかのように。
クーの右腕が振るわれた。



477: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:50:56
…ように、見えた。
しかして、それは確かに振るわれた。
ドック・オーの装甲をへこませる程の膂力をもってして。

風を取り込み、収束し、吐き出しながら。
瞬きの間に動作を完了する刹那。ドック・オーに向けた腕に、スーツ姿の腕がのびる。
肘関節の可動を利用するように添えられた手。手前と下方に向けて感じる他者の力。

川 ゚ -゚)「…!!」

クーの感覚と、それに直結した全システムはそれの接近に気付いていた。
おそらくは間に合わないだろうと、仮に間に合っても止められまいと思っていた。
だが。

(´・ω・`)「ちょいとアレだったが…間に合ったな」
川 ゚ -゚)「…予想外だ」

必殺のはずの風の刃は、到底間に合わないはずの距離をつめてきたショボンによって地面にむけて“逸らされた”。
人間の腕力では止められない勢いに全体重をのせ、寸でのところで風刃の切っ先はドック・オーに至らなかった。
地面に刻まれた斬溝を一瞥し、クーはため息と共に風の刃を解除する。

川 ゚ -゚)「あの距離からは間に合わないと思ったが…」
(´・ω・`)「人間機転が大事なんだぞ。脳はやわらかくないとな」

その様を、ドクオはやけにゆっくりと見ていた。
クーの風刃の1撃目をみて駆け出した内藤とショボン。振るわれるクーの腕。
そして、内藤によって凄まじい速度で投擲されたショボンを。

('A`)「なげやがった…」
(*゚∀゚)「あっ…ぶなぁ〜。色々見えたよ。見えちゃいけないものがさ」
('A`)「そーね…いやぁ、腹のあたりがキュって…?」

あれが走馬灯か、と呟くつーの声を背に、ドクオも緊張を吐き出そうとして。
それを、飲み込んだ。
ちいさな人形の群れは駆逐され、量産されたV.I.Pの模造品は倒れ、敵は目の前のクー一人のはずだったのに。

いつのまにかドック・オーのディスプレイに、新しい熱源反応が出現していた。
1つはショボンを投擲した地点、ちょうど病院入り口とドック・オーとの中間点にいる内藤のすぐ側に突然現れて。
そしてもう1つ。
とびきり大きな熱源反応が、聞きなれた音を立ててドック・オーに向かっていた。



478: 名無しさん :2007/09/02(日) 05:51:20
3人ともが即座に状況を理解した。
ドック・オーはクーを無視し、未だ姿の見えない定められた自らの敵に向き直り。
ショボンはクーと視線を交わし、互いに笑みを浮かべ。

内藤は、傍らに陽炎のように現れた男に向かって、盛大にため息を吐いた。

( ^ω^)「あの、知ってるかお?実は僕、争いごとを嫌う平和論者なんだお」
(=゚ω゚)ノ 「んーじゃぁ知ってるか?俺ぁその正反対の立場で飯ぃ食ってるってぇよ?」

身体能力を底上げする強化服の上に嵩張るコートを羽織り、揺らぐモニュの体がはっきりと形を成す。
考えてみればこの街は今、モニュの相棒であるヒッキーの結界の内なのだ。
ヒッキーの能力“マイルーム”をもってすれば、能力圏内でのテレポートすらやってのけられるだろう。

(=゚ω゚)ノ 「やるしかないぜぇ、内藤。あのスーツでタレ目の兄ちゃんも、黒いリリィもどきも手一杯になるんでな。お前が俺の相手しねーとどっちかに加勢されちゃうぜ?」
( ^ω^)「ほかの人に相手してもらえば良いじゃないかお」
(=゚ω゚)ノ 「っつーてもよぉ。見てみ?ほかにゃいねぇよ」

モニュが病院入り口を顎で指す。
満身創痍の双騎士は戦意はあろうがさすがに辛く、モニュとは相性もけして良くはない。
市長ならどうにかなるだろうが、当の市長は階段に座り煙草を加えながらしきりに首を振っている。
完膚なきまでにやる気がないと見ただけでわかる。

(=゚ω゚)ノ 「…あのおっさんなら俺に勝てるだろうになぁ」
( ^ω^)「むむぅ…えぇい分かったお、相手してやるお!ていうかモニュ!」
(=゚ω゚)ノ 「あいよ」
( ^ω^)「あんたじゃ僕に勝てないお!」

言うや否や、両の拳を打ち据える。
手甲が火花を散らし、まるでそれに呼応するように首筋のアタッチメントから薄い血霧が噴き出した。
内藤の纏う紅夜叉の表面に赤いラインが走る。

( ^ω^)「僕の今の装備にあんたの煙草じゃ相性が悪いお、正直これ使うと痛いけど…」

僅かの血霧を噴き出したアタッチメントの口が閉じ、内藤は構えを取る。
ペニサスによって、過去に失われた制御装置であるヘルメットが補完された今、紅夜叉は十全の操作と追従性を持っている。
その装甲に炎は効かず、爆風など微風同然にして、傷をつけることは叶わない。

( ^ω^)「やるっていうならフルボッコだお!」
(=゚ω゚)ノ 「へっ…」

言われずとも、以前の紅夜叉にすら圧倒されたモニュだ。
前回のように暴走じみたことをされずとも、完全に制御された上に頭部も露出していないのでは煙草の爆発では些か決定打に欠けることなど承知している。
承知していて尚、こうして立っている。

(=゚ω゚)ノ 「14歳でベトナムで傭兵の真似事をはじめ、アイルランド、湾岸、イラク、パレスチナと転戦してきた俺だ。そのくらいの追い風には慣れっこよ!」



486: 名無しさん :2007/09/18(火) 00:37:23
張り詰めた沈黙があった。
今まさに激突せんとする力が生み出した沈黙だと思いたい。否、違うわけではないのだが。
拳を固め、煙草を指に。
沈黙を破ったのは内藤だった。

( ^ω^)「…追い風?」
(=゚ω゚)ノ 「…もとい!向かい風!!っつーか…あー、つまり逆境なんざっ!」

何とも情けない会戦の合図。
心なしか気勢をそがれたような感じで、内藤は投擲された煙草を迎撃せんと腰を沈める。
飛来するその数、6本。
最初から中々の手数を出してきた。恥ずかしかったのだろうか。

(=゚ω゚)ノ 「吹っ飛ばしてみせるってなぁ!」
( ^ω^)「…追い風ねぇ…追い風」
(=゚ω゚)ノ 「えぇいうっせぃ!!」

モニュの放った煙草を全て爆発範囲外まで逸らし、あるいは撃ち落し、内藤は駆ける。
大地を踏み抜く感触はあまりに力強く、ともすればバランスを崩しそうな勢いだ。
感覚と、覚えはなくとも染み付き受け継がれた経験が内藤の体を精密に制御していた。

(=゚ω゚)ノ 「ふっ…!」

繰り出された拳を、あえて前に向かって避けるモニュ。
即座に反応した内藤の足が跳ね上がる。モニュは受けた片腕が折れたかと錯覚した。
その手に持っていた煙草を取り落としながら、モニュは前傾姿勢で内藤の後ろ側に逃げぬける。

取り落とした煙草が爆発した。内藤の懐、超至近距離でだ。
それほど威力の出る吸い具合ではなかったが、並の人間なら即死。強化服を着ていても機能の4割は奪える程度の威力はあったはず。
が、そんな試算は言わずもがな、意味を成さない。

爆風で吹き飛ばされながらも、内藤は片手を地面につき体勢を補正。
何事もなかったかのように着地した。

( ^ω^)「あっち…くないお。やっぱりモニュ、単純に火は僕に効かない。どうするんだお?この追い風を」
(=゚ω゚)ノ 「だぁから追い風じゃねぇって言ってんだろ!ちゃんと聞いとけバカ!」
( ^ω^)「いーや追い風って言ったお!バカはそっちだお!ばか!ばかばかまんこ!」
(=゚ω゚)ノ 「なにおぅ!調子くれやがってこのコスプレヒーローが!」



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