( ^ω^)ブーンが剣と魔法の学園に入学したようです

678:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:19:06.56 ID:LCk6HOpE0
  
ブーンが妖怪ススまみれとなった、その翌日。
ついに魔法戦士科、最初の授業が行われる日がやってきた。

( ^ω^)「ここかお? 第3体育館って」

第1・第2体育館横にある古びた建物。その前にブーンは立っていた。
隣の体育館からは戦士科の学生たちが放つ、威勢の良い声が響いてくる。

( ^ω^)「とりあえず中に入ってみることにするお」

ブーンは第3体育館の扉に手をかけた。

( ・∀・)「あの〜、すみません。魔法戦士科の人っすか?」

( ^ω^)「お?」

後ろからの声に、ブーンは振り向く。
そこには、少々小柄に見える少年が立っていた。

( ^ω^)「そうだお。1年だお」

( ・∀・)「まじっすか? オイラ、モララーっていうっす。同じ1年っす」

( ^ω^)「おお! 初めて魔法戦士科の人に会ったお! よろしくだお」

( ・∀・)「はい、こちらこそよろしくっす!」



680:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:20:40.60 ID:LCk6HOpE0
  
( ^ω^)「大掲示板見たかお?」

( ・∀・)「見たっす。授業通知のプリント見逃すところだったっすよ」

( ^ω^)「隅に小さいプリントが1枚張られてるだけだったお。ひどいお」

ブーンとモララーは愚痴を言いながら、第3体育館の扉を開けて中に入った。
第1体育館では外見と中の広さのギャップに驚いたが、第3体育館は納得できる狭さだ。
中央に2枚のマットが敷いてあるのが見える。そこに2人の男が座っていた。

( ・∀・)「あそこに誰かいるっすね。先輩かな?」

( ^ω^)「とりあえず近づいて話しかけてみるお」

ブーンとモララーがマットに近づくと、2人の男たちの会話が聞こえてきた。

( ´_ゝ`)「魔法コンピューターの調子が良くないぞ」

(´<_` )「流石まだ不完全なだけあるな、兄者」

( ・∀・)「すみませ〜ん。魔法戦士科の人っすか〜?」

モララーが声をかけると、2人の男は振り向き、立ち上がった。

( ^ω^)(あれ? あの2人が、何かを覗き込んでいた気がしたんだけど)

2人の男の手には何も握られていない。
もちろん、マットの上にも何も置いていなかった。



685:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:22:01.02 ID:LCk6HOpE0
  
( ´_ゝ`)「ああ、魔戦科の兄者だ」

(´<_` )「同じく弟者だ。2人で流石兄弟と呼ばれている。見ない顔だな、君たち」

( ^ω^)「新入生だお。僕はブーンだお」

( ・∀・)「オイラはモララーっす。よろしくっす、先輩!」

( ´_ゝ`)「先輩か……まあ間違ってはいないがな」

(´<_` )「俺たちダブったんだよ。だからまだ1年だ」

( ^ω^)(おっ?)

ブーンは入学式の時の話を思い出した。

( ^ω^)(確かショボンが言っていたお。留年した人がいるって)

(;・∀・)「そ、そうなんすか? すみません、兄者先輩と弟者先輩」

( ´_ゝ`)「ま、テストでカンニングがバレたからなんだがな」

(´<_` )「流石だな俺ら」

(;^ω^);・∀・)「……」



688:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:23:36.93 ID:LCk6HOpE0
  
( ^ω^)「あの……ちょっと訊いてもいいかお?」

(´<_` )「何だ? 答えられる質問なら答えよう」

( ^ω^)「言いにくいんだけど、なんで魔法戦士科って落ちこぼれって言われてるんだお?」

( ´_ゝ`)「……なるほど、もっともな質問だ」

ブーンの質問に、兄者は深くうなずいた。

(´<_` )「魔法戦士はその名のとおり、魔法と武術を同時に使って戦うジョブだ。
       そのバリエーションは多彩なものがあり、あらゆる場面で役立つ。ただな……」

( ・∀・)「ただ?」

( ´_ゝ`)「どっちつかずになりがちなんだ。魔法は魔法使いより劣り、武術は戦士より劣る。
       そうなると、逆に活躍する場面は限られてくる。器用貧乏だな」

(´<_` )「もちろん、両方を鍛え上げた魔法戦士もいるが、圧倒的に数が少ない。
       そうなれるのは一握りだ」



691:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:25:01.88 ID:LCk6HOpE0
  
( ´_ゝ`)「このご時勢、全く魔法が使えない戦士も、全く武術ができない魔法使いもほとんどいない。
       実際、戦士科でもいくつか必修魔法があったりするからな」

(;^ω^)「なるほどだお……」

(´<_` )「そして最近の風潮では、魔法戦士になるならまずどちらかを鍛えてから、という考えが一般的だ
       そいつが更に拍車をかけてるんだな」

(;・∀・)「聞けば聞くほどダメダメっすね」

( ´_ゝ`)「さらに魔法戦士科はその昔、魔法戦死科と呼ばれていたんだ。
       戦って死ぬほうの戦死な」

(;^ω^)「ええっ!?」

( ´_ゝ`)「魔法戦死科には奴隷がたくさん連れてこられて、魔法科の実験台にされていたんだ。
       それによって死人もたくさん出たことから、そんな名前になったのさ」

(;・∀・)「まじっすか!?」

(´<_` )「その話、俺も聞いたことがないぞ。本当なのか兄者?」

( ´_ゝ`)「ジョークに決まってるだろう」

(;^ω^);・∀・)´<_`;)「……」



695:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:26:31.50 ID:LCk6HOpE0
  
(´<_` )「お、先生方が来たようだぞ」

敷かれたマットの前に、老人と青年の二人が姿を現した。
老人は学園説明会で見た荒巻。だが青年のほうは見覚えがない。

( ^ω^)(ちょっとゴルァ先生に似てるお)

/ ,' 3「みんなおるかの? 今年の新入生は2人か……少ないの」

ミ,,゚Д゚彡「老師、こちらのイスをどうぞ」

/ ,' 3「おお、スマンの。フサギコ君」

荒巻は、フサギコと呼んだ青年から折りたたみイスを受け取り、それに座った。

/ ,' 3「じゃあフサギコ君、あとは頼んだぞ」

そう言うと、荒巻は眠り始めてしまった。

ミ,,゚Д゚彡「さてと、君たちが新入生かい?」

( ^ω^)「はい、ブーンですお」

( ・∀・)「モララーっす」

ミ,,゚Д゚彡「よろしく。私が今年から講師を務めるフサギコだ」



699:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:28:07.32 ID:LCk6HOpE0
  
ミ,,゚Д゚彡「それじゃあ早速、授業を始めようか。『リリース』」

フサギコが魔法を唱えると、3振りの剣がフサギコの前に現れた。
フサギコは手早く、その3振りを掴む。

ミ,,゚Д゚彡「まず、新入生2人は1本ずつ剣を持ってくれ。流石兄弟は待機」

( ´_ゝ`)「把握した」

ブーンとモララーは剣を受け取った。
刃の潰れていない、普通の長剣である。

( ・∀・)「これでブーンと練習でもしてればいいんすか?」

ミ,,゚Д゚彡「いやいや、そんなことはしないよ」

フサギコは感触を確かめるかのごとく、残る1振りの剣で華麗に空を斬っている。
それが終わると、フサギコは改めてブーンたち2人を見た。

ミ,,゚Д゚彡「今から君たち二人で、私に斬りかかってもらおう。本気でね」



704:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:29:41.41 ID:LCk6HOpE0
  
体育館に、剣同士がぶつかる激しい音が響く。
何度も剣を振るうのがブーンとモララー。最小限の動きでそれを防いでいるのがフサギコである。

( ・∀・)「おりゃああああああっす!」

モララーが渾身の一刀を振り下ろした。
しかしフサギコは素早くそれを避けると、モララーに足払いをかける。

(;・∀・)「うわっ」

モララーはマットの上に顔から倒れこんだ。

( ^ω^)「うおおおおおおお!」

その隙をついてブーンは剣をなぎ払った。
しかしフサギコの姿は既になく、剣がはじかれる感触すらしない。

( ^ω^)「ど、どこにいったお!?」

ミ,,゚Д゚彡「ここだよ」

ブーンの耳元から、声がした。

(;^ω^)「なっ」

ミ,,゚Д゚彡「遅い」

フサギコがブーンの背中を押しとばすと、ブーンも顔からマットに倒れた。



708:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:31:05.62 ID:LCk6HOpE0
  
(;・∀・)「フサギコ先生強すぎっすよ! かなわないっす」

(;^ω^)「どこが基本マターリだお!」

ブーンは荒巻を睨むが、荒巻は完全に眠っているようだ。

ミ,,゚Д゚彡「2人とも剣術はまだまだだね。当分は流石兄弟に教えてもらうといいよ。『ストック』」

フサギコが再び魔法を唱える。今度はフサギコの持っている剣が消えてしまった。

ミ,,゚Д゚彡「じゃあ今度は――」

フサギコの言葉はそこで途切れた。
なぜなら、

( ´_ゝ`)「とったぜ、フサギコ」

(´<_` )「君が剣をしまうのを待っていたよ」

流石兄弟が、フサギコの首に剣を当てていたからだった。



715:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:32:34.34 ID:LCk6HOpE0
  
(;^ω^)「な、何をしているんだお!」

兄者はフサギコの後ろから、ナイフを首筋に当てている。
弟者は真正面から、長剣をまっすぐフサギコの喉元へ向けていた。

ミ,,゚Д゚彡「大丈夫だよ、ブーン。問題ない」

しかし当のフサギコは焦っていない。落ち着いているようにすら見える。

( ´_ゝ`)「絶好の機会だと思って狙わせてもらったよ。上手くいった」

(´<_` )「さあて、小便は済ませたか? 神様にお祈りは? ガタガタふるえて命ごいをする心の準備はOK?」

ブーンは見た。
フサギコは、笑っていた。

ミ,,゚Д゚彡「残念でした」

フサギコの姿が、揺らいで消える。

(;´_ゝ`)「しまった! 分身魔法だぺぎょッ!?」

兄者は空中で側転をして、マットに倒れた。



723:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:34:00.79 ID:LCk6HOpE0
  
全員が兄者が倒れた方向に注目したが、そこにフサギコの姿はなかった。

(;・∀・)「フサギコ先生はどこに消えたっすか!?」

(;^ω^)「弟者先輩の後ろ!? それとも上かお!?」

(´<_`;)「いや、これは……」

足音がだんだんと大きくなるのを、弟者は聞いた。

(´<_`;)「透明化魔法か! くそっ!」

弟者は前方を思いっきり薙ぎ払った。しかし、その剣がフサギコを捕らえることはない。

(´<_` )「あっ」

次の瞬間。
弟者の身体は、宙を飛んでいた。


ドグシャアア!

弟者がマットに落ちる音が、体育館に響き渡った。



730:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:35:36.75 ID:LCk6HOpE0
  
ミ,,゚Д゚彡「まあこういうわけで、流石兄弟にはいつでも私を狙っていいように言ってあるんだ。
      これも修行の一環。君たちもいつでも襲ってくるといい」

( ^ω^)「遠慮しますお」

( ・∀・)「遠慮するっす」

流石兄弟は、マットの上で完全にのびているようだ。

( ^ω^)「フサギコ先生、質問いいですかお?」

ミ,,゚Д゚彡「なんだい?」

( ^ω^)「いつから分身魔法を唱えてたんだお?」

ミ,,゚Д゚彡「…………秘密だ」

(;^ω^)(フサギコ先生……恐ろしい子……!)


こうしてブーンの魔法戦士科の初授業は、くそみそな結果に終わったのでした。


第6話 おわり



732:1 ◆cSlzYPtEdU :2006/06/23(金) 23:36:21.96 ID:LCk6HOpE0
  
今回登場した魔法
・ストック&リリース……(白)ストックで対象を消し、リリースで戻す。
               消すことができる対象の大きさは、術者の魔導力に比例。



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