('A`)ドクオが一歩踏み出したようです

17 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:27:40.36 ID:UOcx81Fu0
その日から、ドクオへの周りの態度が変わった。

何かあるたびに、「ドクオくんはどー思いますかぁー?」と、クラスにおいてドクオが「悪」と認識するグループから絡まれるようになったのだ。
基本的にそれは授業中の為、ドクオはなにかされるということは無かったが、ドクオにとっては気が気でない事であった。

しかし、それはエスカレートした。
力をあり余した、いわゆる「不良」たちは「気が弱い」「発言が奇抜」「ガタイもよくない」と格好の標的であるドクオに気付いたのだ。

廊下で殴られる、蹴られる。
トイレに呼び出され、カツアゲ。万引きやタバコの購入を強要され、ドクオは生きた心地のしない毎日だった。
それでも、ドクオは学校に行き続けた。どれだけ嬲られても学校に行くことを辞めなかった。
ドクオは勉強のために学校に行かなくてはならなかったのだ。見失いかけそうになりながら、必死に夢への希望をつなぎとめていた。



19 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:28:27.40 ID:UOcx81Fu0
高校2年の時、ついに不思議に思った不良の一人がドクオに問いかけた。

「よぉ、ドクオ、テメェよく毎日学校来るよな。毎日毎日ぶん殴られてよ?なんで不登校になったりしねーんだよ?」

ドクオは胸を募り募った悔しさから、つい自分の弱みを露呈してしまった。
(i'A`;)「ぼ…僕には…夢があるんだ…。科学者になるんだ。だから…、お前らみたいな奴らに…邪魔されたくらいで…」


その日、ドクオは今までで一番殴られた。
よろよろになりながら鞄を取りに教室に戻ったドクオは戦慄した。

鞄が切り刻まれている。
鞄の中には、父親に頼み込んで買ってもらった科学の入門書や、夢に欠かせない勉強道具が入っている。

('A`)「ア…あああ…ああああ・・・、アああああぁあぁぁああァあああアアアアァーーーーーー!!!」



20 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:28:42.52 ID:UOcx81Fu0
ドクオは全てを失ったかのようにその場にへたれこんだ。

高価な書物も、夢も、全てが切り刻まれ、自分の大事なものを滅茶苦茶にされたことに、ドクオは自分を見失った。







次の日、ドクオは家に閉じこもっていた。初めてのことだった。
学校に行くと言うことは、今やドクオの宝物を陵辱されることを意味するとドクオは思ったのだ。
何かを勉強するために行っても、勉強道具を全てダメにされては元も子もない。
外に行くのも怖い。

ドクオの引き篭もりのスタート地点だった。



21 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:28:57.75 ID:UOcx81Fu0
----2006.2.27

ドクオはまだ生きていた。紐はもう床に散乱している。
ネットもしていない。ドクオはただ、生きていた。

('A`)「…科学者」

ドクオは夢を取り戻しかけていた。
元々、自分の夢を追い求める姿勢には強固だったドクオは、あの日の夢を思い出した途端、死ぬことをあまり考えないようになっていた。

ドクオはネットを立ち上げ、なけなしの金から高校物理と、高校化学の本を購入した。



22 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:29:13.22 ID:UOcx81Fu0
('A`)「とうちゃんは…、死ぬまで俺のことを心配してくれて、金の工面をしてくれた。俺は…このまま死んでいいのか?」

小学校の頃、夢を語ったことがあった。ドクオが大好きだった女の子、ツン。
ツンは普段大人しいドクオが目を輝かせて夢を語り始めると、なにも言わずに最後まで聞いてくれていた。
そして最後に必ず、こう言うのだ。

ξ゚听)ξ「夢があるって素敵よね、…でも、語る夢に恥ずかしくない男になりなさいよ!」

('A`)「語る夢に…恥ずかしくない…か」



23 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:29:58.57 ID:UOcx81Fu0
数日後、ドクオは届いた本を開いた。

運動方程式、波の基本式、コンデンサー、原子基礎物理…
電気分解、酸と塩基、化学平衡…

('A`;)「な…なんなんだ…、この難解な暗号は…」

10年以上学問に触れていなかったドクオにとっては、大好きだった理科も到底解読不可能な暗号と化していたのだ。

('A`;;)「え…エーと?物体には…常に重力が働いてて…?斜めのときには平行成分と垂直…は?こ…コス?」

ドクオの挑戦が始まった。



24 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:30:13.88 ID:UOcx81Fu0

ドクオは難解な暗号書を尻目にパソコンのキーを叩いていた。
金を稼ぐためである。
いくら勉強したところで、金なくして明日を生き抜くことはできない。

('A`)「俺に…バイトやなんかは無理だ…。アフィリエイトと広告を増やすか…。」

ドクオはホームページ・ブログの類を大量に立ち上げ金に繋がるバナーを多めに貼った。
かき集めたエロ画像・エロ動画・面白ファイルの更新を主として、アクセス数は稼げるが手間がかからないようにした。
お小遣いメールマガジンにも登録し、小銭稼ぎの準備は整った。

('A`)「次は…」
('A` )「対人…恐怖症の克服か…」

ドクオは馬鹿ではなかった。このような申し訳程度の金では将来どころか、現状の生活費すらまかないきれるかどうか…。

なるべく人と接する機会…、いや、人の中にいる訓練をしなくては・・・。
その日からドクオは積極的に外に出ることを決めた。



26 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:30:28.05 ID:UOcx81Fu0
深夜3時…、ドクオは外に出た。
夜風はまだ冷たい。
('A`)「ふぅ…、外に散歩なんて、何年ぶりだろう…」
もう殆ど人は見当たらない。時折酔っ払いの集団が現れるが、ドクオは物陰に隠れてやり過ごしていた。
('A`)「なんでなんだろうな…、本当になんで…こんなに人に見られることが怖くなったんだろう…」

ドクオは幼いから内向的ではあったが、人というだけで恐怖すら覚える自分に戸惑いを感じていた。

昼過ぎに起き、ブログの更新、物理と化学の勉強、そして夜は散歩。
ドクオはそんな暮らしを延々と続けていた。



27 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:30:50.29 ID:UOcx81Fu0

('A`)。0(あれ?俺理科を勉強して、どうする気だ?)

その生活を続けて約2週間。やっとドクオはそれに気付いた。
('A`)「科学者になるにしても、俺は一体どうやって科学者に・・・??」

('A`)「大学…しかないのかな」

ドクオはおもむろに「2ch大学受験板」を開いた。

英語の勉強の仕方…
***○○大受験生のスレ***…
代ゼミ…駿台…河合…

色々な単語が並んでいるが、あまり見慣れない単語が多い。
とりあえずは、定石どおり「スレを立てるまでもない質問スレ」で質問をしてみる。

(へ'A`)へ カチカチ........




28 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:31:15.62 ID:UOcx81Fu0

350 ('A`) sage 2006/03/14(火) 23:08:50 ID:4SNe9z1d0
科学者になりたい29歳ヒキです。
勉強はかなり離れていましたけど、いま少し始めました。
どうすれば科学者になれますか?


351 大学への名無しさん sage 2006/03/14(火) 23:09:36 ID:Hi7nZg5E0
>>350
大変そうだな。行くならやっぱり理学部か工学部じゃないかな。
研究者になりたいなら、旧帝クラスに行かないと色々不便な希ガス


('A`;)「きゅ…きゅうてい…?」
テンプレによると、旧帝大学とは『北大・東北大・東大・名大・阪大・京大・九大』という名前からしてすごそうな大学群だった

('A`;)「て…ていうか、東大や京大レベルって…」
いくらドクオでも東大や京大くらいは漠然と「才能を持ち、更に努力をした天才がいくような大学」というイメージを持っていた。

('A`|||)「お…俺、ひょっとして…dでもないことしようとしてる…?」

ドクオは絶望すら感じながら床についた。



29 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:31:36.19 ID:UOcx81Fu0
ドクオはとりあえず、予備校のサイトを開いて必要な科目をチェックすることにした。

('A`)「えーと…、なんだ。試験2つもあるのか…、大変そうだな」
Σ('A`;;)「せんたーしけん?で…、え!?ご!!!5教科7科目!!!!111111」

('A`lll)「ちょwwwwwまじかよwwwwww国語や社会までいるのかwwwww」

ドクオは夢への道に立ちはだかる大きな壁を感じた。
科学者になるには、理科だけやってればいいだろうと思っていたドクオには衝撃だった。

('A`)「と…とりあえず…、まずは今やってることに専念しよう…」

ドクオを肩を落としながら、また夜の街へ出かけた。

('A`;)。0(今の俺に…そこまでの教科をこなす力も、勉強のための予算も、ない… 一体どうすれば…。)

最近夜の散歩に慣れたはずのドクオの足取りは重いままだった。



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