('A`)ドクオが一歩踏み出したようです

30 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:31:58.93 ID:UOcx81Fu0
ドクオの住む町は北海道札幌の郊外にある。
北海道大学ならば、ドクオの近所にあったが、ヒキだったドクオは一度も近くを通ったことすらなかった。


寒い冬が過ぎ、春が訪れ、蝉の鳴き声と太陽が彩る季節になったころ、ドクオは新聞配達のアルバイトを始めていた。

('A`)「…おはようございます。内藤さん。」
( ^ω^)「あ、おはようだお、ドクオくんはちゃんと毎日遅刻せずに来るから関心だお、それじゃあ朝刊の配達を頼むお」

まだ人に対する恐怖はある。
しかし朝早くの新聞配達ならば、顔を合わせる人は少ない。今のドクオには最適のバイトであろう。

キーコー キーコー

古ぼけた自転車に乗り、朝の涼しい風を切るドクオ。
乗り捨ててボロボロになっていたのを拾ってきて、
そのまま乗っている自転車ではあるが朝の風を切る心地よさは、確実にドクオにプラスの影響を与えていた。

('A`)「…朝は…、気持ち良いな。」

半年前には出なかった台詞が、自然に発せられた。
ドクオは変わりつつあった。



32 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:32:33.51 ID:UOcx81Fu0
('A`)「おはようございます、今日もお願いします。」

( ^ω^)「あ、おはようだお、ドクオくんは本当によく頑張るお、偉いお」

ポッ('A`*)。O()(お…俺が偉い…か、悪くないもんだな…w)

( ^ω^)「ドクオくんは頑張ってるけど、なにか夢があるのかお?それとも普通にフリーターかお?」

('A`;)「…え?」

(;^ω^)「あ、いや、言いたくなかったら良いんだおwww」

('A`)「科学者に…。科学者になりたくて…」

( ^ω^)「科学者かお!それはすごいお!」

('A`;)「あ!いや、全然凄くなんえrdftgyふじこp;@」

( ^ω^)「何かを目標にすることが大事なんだお、何か前進することが大事なんだお、その過程がどれだけ無様でも、それは尊いものなんだお」

('A`*)「な…内藤さん…」

( ^ω^)「ぼくは君が引き篭もりから復帰したことを聞いたときも感心したお、腐らずに前進できるのは立派な強さだお。
…そういうことなら君にプレゼントがあるお。明後日を楽しみにしてるお。それじゃあ、今日の朝刊だお。」

('A`*)「あ…ありがとうございます、内藤さん。…それじゃあ行ってきます。」



34 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:33:00.40 ID:UOcx81Fu0
('A`)「プレゼントってなんだろう」

ドクオはひんやりとした風の中で、内藤さんのプレゼントについて考えを巡らしていた。

('A`)「…一応、理科は普通に出来るまでになってきたけど、他が全然だしなぁ。数学ですら苦手だし…」

確実に夢に向かって前進しているドクオであったが、依然夢への道のりは遠く、険しいものだった。

  2日後

('A`)「おはようございます、ドクオです。」

( ^ω^)「あ、来たお。プレゼントの用意できたお。ふふ、きっと喜ぶお。」

('A`)「え?なんだろう。」

( ^ω^)「コレだお!」

内藤の差し出した1枚の紙切れ。何かのチケットのように見えた。

('A`)「これは…?」



35 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:33:33.48 ID:UOcx81Fu0

( ^ω^)「北大の量子物理学教授、新巻先生の物理講演の券だお」

Σ('A`)「え!!!?こんな…、戴いていいんですか!!?」

( ^ω^)「新巻はぼくの高校の同級生だったお、お願いしたら、こんなものはいくらでもくれるお。
最近は聞きに来るのも自分の学生とかばかりで嘆いてたからきっと新巻も喜ぶお」

(;A;)「な…内藤さん…。グスッ」

(;^ω^)「ちょwwwwそんなに泣くなおwwww夢への足しにするおwwwww」

('A`)「は…はい、本当にありがとうございます。内藤さん。」

ドクオはチケットを握り締め、涙でぐしょぐしょの顔のまま、いつものように朝刊を配達した。



36 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:33:48.26 ID:UOcx81Fu0
数日後、ドクオは新巻教授の講演会会場に居た。

/ ,' 3「…であるからして、量子力学観点からして、”ある系をある量子的な「状態」にある”ということはそもそも…」

('A`;;)「わ…わかんNEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!111」

('A`|||)「何語だよ、これwwwww」



38 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:34:07.64 ID:UOcx81Fu0
1時間後、講演は終わった。

/ ,' 3 「御静聴ありがとうございました。」

パチ... パチパチ...

('A`;)「や・・・やっと終わったぞ…」

ドクオは眠ったり飽きたりすることなく、最後まで必死にノートを取り、全く分けの分からない講演を聞ききった。
ところどころで示されるグラフや実験方法まで、事細かに丁寧なイラストつきで書き取った。
幼い頃から、想像の世界を描いたり、エロ絵職人だったりもしたドクオの絵はかなり上手だった。

退出していく新巻。

('A`)「追うか…?追っていって、俺の夢を聞いてもらうってのも手かもしれないぞ…。なんてったって専門家だし・・・」

しかし身体が動かない、悪い癖が出たのだ。

('A`;;)「う…うぅう…。お…追えよ。悪いことするんじゃないんだ、ちょっと走っていけば…。」

ドッドッドッドッドッドッ…

('A`;;)「し・・・心臓が!うるさい…うるさいぞ…!、くそ…くそぅ!」

人前で少し目立つ、それがドクオにはとても出来ないことだった。



43 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:35:57.74 ID:UOcx81Fu0
(;^ω^)「そうかー、ちょっと難しかったうえに、話出来なかったかお、それは正直すまんかったwwww」

('A`)「あ、いえ、内藤さんは悪くないです、思いきれなかった俺が…」

( ^ω^)「まぁまぁ、焦ると良くないお、ドクオくんからしたら、講演に行けるだけでも随分の進歩なんだお、胸を張るといいお」

('A`)「あ…、そうか…」

ドクオは気付いていなかった。あれほど人がいる空間に、なにも恐れずに入っていけた自分がいたことを。
1時間も周りの目を気にすることもなく、必死になってノートを取ったことを。

('A`)「俺…、いつの間にか人が怖くなくなってたんだ…」

( ^ω^)ニッコリ

( ^ω^)「荒巻教授には、後で直接会わせてあげるから心配いらないお、場所もぼくの家でなら人目は気にせず思い切り話せるお」

エグエグ(つA;)「な…内藤さぁん…」

Σ(;^ω^)「アッー!また泣かせちゃったおwwwwドクオくんは泣きすぎだおwwww」



44 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:36:19.67 ID:UOcx81Fu0
数日後、内藤の家にドクオが現れた。

( ^ω^)「よく来たね、ドクオくん」

(゚A゚)「今日は拙にこのような機会を作っていただき、この恩は海より深く…」

Σ(;^ω^)「ちょwwww落ち着くおwwwwキャラ変わってるし、そこまでかしこまらなくていいおwwww」

Σ('A`)「はっ」

( ^ω^)「荒巻は結構気楽な奴だお、肩の力を抜いて酒でも呑みながらゆっくり話せばいいお」

('A`)「は…はい」

((('A`))) ぶるぶる

(;^ω^)「ちょwwwwクリムゾンの悪寒wwwww」

('A`)「く…くやしい… ぶるぶる」

(;^ω^)「いつまでやってるんだお、早く奥に入るお」

('A`)「あ、はいwwww」



45 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:36:40.56 ID:UOcx81Fu0
((('A`)))ドキドキ

( ^ω^)「肩の力抜くお、マジでwwww」

ピンポーン

( ^ω^)「あ、来たお」

/ ,' 3 「おう、内藤、俺に会わせたい奴がいるって?」

( ^ω^)「うちの新聞社でバイトしてる子なんだけど、なかなか良い子なんだお、この子だお」

('A`)「ア…、ド…ドクオです。科学者を目指してます。」

/ ,' 3 「ほほう!科学者とな!何か特にやりたいことがあるのかな?」

('A`)「た…タイムマシンを…作りたいです…!」



46 :1 ◆kcxtiIaUlc :2006/03/13(月) 21:37:09.83 ID:UOcx81Fu0
荒巻の目が途端に鋭くなる。

/ ,' 3 「タイムマシン…」

('A`)「ち…小さい頃からの夢で…その、ええっと…ひ…引き篭もってたんだけど…思い出して…それで…」

/ ,' 3 「うむうむ、落ち着いてくれたまえ、内藤の話だと、失礼だが高校中退と聞く。今は夢に向かって、どの程度努力しているのかね」

('A`)「えっと…高校の物理化学の参考書を独学で…それから、入試の勉強もしてるけど…、こっちはあんまり上手くは…」

/ ,' 3 「数学は?」

('A`)「…え?」

/ ,' 3 「…数学はどの程度?」

('A`;)「あ…、微分の基礎が…ちょっと出来るくらい…です。」

/ ,' 3 「…ふむ。」

荒巻は窓の外を眺め、煙草をふかして何かを考えているようだった。
それをドクオは正座して、乱れる心でただ見つめていた。
数学が出来ない…・・・理系としては致命的欠点である。そんなことはドクオも分かってる。
相手は教授、つまりは第一人者。どうせ叱咤され、甘いと罵られ、一蹴される…。ドクオはそう覚悟していた。



戻る次のページ