('A`)ドクオが一歩踏み出したようです 第二部

52 :ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/29(土) 00:08:42.28 ID:SCzXbQ8B0
  
/ ,' 3 「ああ、まったくこんな時間になっていたとは、敵わんな。急いで食べなくては。」

時計を見るともう午後の授業が間近である。荒巻は急いでカレーを胃に収めていた。

(=゚ω゚)ノ「教授、今日の午後はどんな講義が入ってるんですか?」

/ ,' 3 「いや何、普通の量子力学と、それから工学部の一年生向きに『物理学の発展の歴史』についての講義があるな」

(゚Д゚)「あれ?そんなの俺らん時には無かったぞゴルァ」

ギコだけでなく、モナーもしぃもそんな授業は初耳であった。

/ ,' 3 「ちょっと物理に興味を持ってもらうのと、どういう発展をしてきた学問なのかを知ってもらうという意味で
まぁ、ガイダンス的なものとして取り入れてみたんだ。今年初めてやるんだがな。
君たちも初めて聞くような内容が多いかもしれんし、まぁ良かったら聴きにくるといい。
後ろのほうで学生の邪魔にならなければ別に咎めんよ。」



53 :ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/29(土) 00:13:59.39 ID:SCzXbQ8B0
  
('A`)「俺も行っていいですか?」

/ ,' 3 「もちろんだとも。暇さえあればみんなでおいで。」

(゚Д゚)「おーし、それじゃあ研究室みんなで行くぞー、文句あるやついねぇかゴルァ!」

(=゚ω゚)ノ「いいんじゃないですか、なかなか面白そうですし。」

(*゚ー゚)「さんせーい!」



( ^ω^)「荒巻、慕われてるお」

/ ,' 3 「ふふ、どうだかなw」

最近の教授で、ここまで学生、院生などに好かれている教授はそうそういない。
そのせいか、荒巻の講座はたまに他学年や院生までが立ち見で現れるという珍しい光景になっていた。



161:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 00:27:00.83 ID:/oHe+uJ/0
午後の講義が始まっていた。
授業予定表によると、講義のテーマは「物理学者のロマン」。
今まで物理学の発展を支えてきた天才について。

ケプラー、ニュートン、ガリレイ、ホイヘンス、ティコブラエ、グレイ、アインシュタイン、そして…ファラデー

/ ,' 3 「実はな、ニュートンが万有引力を発見したのはリンゴが落ちたのを見たからってわけじゃないんだ。あれは嘘なんだよ。知ってたか?
ニュートンはこう考えたんだ。『リンゴは落ちる、でも月はなんで落ちてこないんだ、その境目はどこにあるんだ』ってな。
リンゴの話は…まぁ、弟子たちの脚色みたいなもんらしい。
アリストテレスやなんかは地上界天上界とか言って分けてたが、ニュートンは自分の作った運動方程式ma=Fに絶対の自信を持っていたからな。
天上界だろうがなんだろうが、絶対自分の運動方程式の則った運動をするはずだと。
彼はこれで一週間悩んだ。そしてある結論を出したんだ。
月は落下している。ってな。」



163:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 00:39:45.12 ID:/oHe+uJ/0
/ ,' 3 「ニュートンもかなりこっぴどくイジめられた経験があったみたいでなぁ、変に頑固というか、自分中心によった考えの持ち主だったらしい。
だからこそ、『月はなぜ落ちてこないのか』という問い自体が間違っていると切り捨てる発想が生まれたのかもしれないが。」

ドクオは表情こそ変えずに講義を聴いていたものの、少し内心ドキリとした。
自分は決して自己中ではないはずで、それはそれで良いことだろう。
しかし真の天才とも言えるニュートンはイジメすら自らの力として物理学を大きく発展させたのだ。
自分はイジメという経験から、何かを得られたのか…?何か自らの力に変換できたのだろうか…。

/ ,' 3 「まず、月の軌道をこう考えるだろう。真ん中のは地球だ。」

そう言って、小さな円とそれを取り囲む大きな円を黒板に書くと、その大円の接線方向に矢印を引いた。

/ ,' 3 「ガリレオガリレイの慣性の法則に従えば、物体は力を受けなければ運動形態を変えないはずだ。
つまり特に力を受けていないはずの月は等速度運動を接線方向にするだけのはず。
…そう、公転なんてしないで、はるか宇宙空間に飛んでっちまうハズなんだ。」



166:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 00:58:00.38 ID:/oHe+uJ/0
/ ,' 3 「つまりこういうことだ。」

月の移動速度を示す矢印の先に、荒巻が赤くもうひとつの矢印を書き加える。
講義室からは、少しばかり感嘆の溜息が漏れる。

/ ,' 3 「ほら、落ちてるんだよ。月は。リンゴもお月様も変わらない。そうニュートンは言ったんだ。
そしてニュートンはこの円の中心に向かう加速度を用いて、等加速度運動の公式を作り、そして向心加速度を定義したわけだ。
あとはもう、分かるな?円運動の元はこれなわけだよ。」

講義室内の学生たちはすっかり物理の魅力にとりつかれてしまったかのように聞き入っている。
眠っている学生がいないとはなんと珍しいことだろう。

そんな光景に院生たちも驚きを隠せないようだ。

ヒソヒソ(´∀`)「…なんか、荒巻教授ってやっぱりスゴかったんですねぇ〜…」
ヒソヒソ(゚Д゚)「…俺らの時にも、この講義やってほしかったぞゴルァ…」
ヒソヒソ(*゚ー゚)「これなら…確かに物理が好きになれるかもしれないものねぇ…」

少し離れたところでドクオがぽつりとつぶやいた。

('A`)「本当の…天性の才能の持ち主か…」

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荒巻の板書
※画像保存できずorz すいません・・・。



176:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 01:19:49.62 ID:/oHe+uJ/0
その日、ドクオは一人で考えていた。
自分を拾ってくれて、夢を託してくれている荒巻。

そして、荒巻の夢であるファラデー…。

俺が越えなくてはならない天才達のハードル…それはあまりに高すぎるのではないか?
ニュートンやファラデー達のように、自分が物理学会をひっくり返すような発見、タイムマシンの開発を出来るのか…

('A`)「俺みたいな凡愚な人間に…、そこまでのことが出来るのかな…?」

誰に言うとも無く、一人つぶやく。
今日の講義は確かに勉強になった。そして面白かった。
しかし、ドクオの心を追い詰める結果になってしまった。

その事には自分自身考えを向けず、黙々と考え込むドクオだった。



177:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 01:25:55.10 ID:/oHe+uJ/0

    ピンポーン

刹那、呼び鈴が鳴る。
覗き穴から確認するとショボーンが立っている。

('A`)「どうしたんですか?こんな時間に。」

(´・ω・`)「いやな、お前、正直言って今凹んでたろ?」

('A`)「…え?」

思ってもいない図星の指摘にドクオは目を白黒させる。

(´・ω・`)「ちょっとあがらせてもらうよ」

ぐいと割り込んであがり込むショボーンを後ろから引き止めるものの、ショボーンを奥に座り込んで出て行く気配はなかった。
仕方なく横に座るドクオにショボーンは優しく言う。

(´・ω・`)「お前はお前なんだ、ファラデーじゃない。荒巻の夢なんか忘れちまえ。
お前が最終的にファラデーみたくなれなくても、誰もお前を責めたりはしないからよ。」



180:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 01:35:28.42 ID:/oHe+uJ/0
('A`)「ショ…ショボーンさん…?」

自分の心をすっかり見透かされたような言葉に驚くものの、その一言はドクオの胸のつかえをスッと除いた。
自分は自分、自分の出来ることを精一杯やればいい。そんな風に思わせてくれた一言だった。

('A`)「ショボーンさん、なんで俺が今、それで悩んでるって…?」

(´・ω・`)「ばっかお前、講義の後のお前の表情見れば一発でそんなことくらい分かるよ。誰だってな。
お前も望んでいたとはいえ、こんな状況に巻き込んじゃったのは俺たちだし、少し気を使っただけ。」

('A`)「ショボーンさん、俺の方こそ置いてもらってることにお礼言わなきゃいけないのに…ありがとうございます…」

(´・ω・`)「ん、まぁそう改まるなって、それにそういうのは態度であらわさなきゃ。態度で。」

('A`)「…は?」

ショボーンが何を言いたいのかよく分からずにキョトンとしているドクオにショボーンは覆いかぶさって言った。

(´・ω・`)「はふはふ、ツンちゃんと穴兄弟ならぬ棒姉弟になりたいよ、れっつ☆くそみそ」

('A`;)「ヒ…ヒェエエエーーー!!」



183:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 01:47:10.90 ID:/oHe+uJ/0

  ピンポーン

       ピンポーン


(´・ω・`)「はふはふ、はふはふ、うほほ、でっかいソーセージしてやがる、うまそうだぜ」

('A`)「いやっ、やめて、脱がさないで!ていうかチャイム鳴ってるし、止めましょう!ね?止めましょう!?」

鳴り響くチャイムもお構いなしにドクオは執拗な責めを受けていた。

('A`)「ああぁ!やめてやめて!そこ弱いの!もうやm」


   ガチャ


ξ゚听)ξ「何よ、開いてるじゃない、ドクオくんー?いるの?鍵開けっ放しでなにs…」


ξ゚Д゚)ξ     (゚A゚ (´゚ω゚`;)



184:ドS ◆DOS.18R.Tg :2006/04/30(日) 01:47:53.12 ID:/oHe+uJ/0


    第二部  完



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