( ^ω^)ブーンが伝説のポケモンを探しに行くようです

19: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:44:12.77 ID:LxfuaLxE0
  
今よりも本当に本当に小さい頃、鳥を見た。
ただの鳥ではない。極彩色の化け鳥だ。
ただ一度見ただけなのに、その光景は今も鮮やかに焼き付いている。



20: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:44:52.23 ID:LxfuaLxE0
  
その日僕は近所の空き地で遊んでいた。
今は研究所が立っているその場所だが、当時はただの空き地だった。
そして空き地の真ん中には樹が一本だけぽつんと、しかし堂々とそびえ立っていた。
今の僕から見たとしても十分巨大に見えるだろうその樹は、
当時の僕にとっては巨人がその場にいるような威圧感があった。



21: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:45:32.67 ID:LxfuaLxE0
  
普段は近所の弟者と遊んでいたが、偶然その日は弟者が風邪を引いていたので一人で遊んでいた。
しかし一人遊びは僕にはあまり合わなくて、木陰に座り込む。
真夏の日差しはとてもきついが木漏れ日は柔らかく、なんとなくぼんやり辺りを眺めていた。
そしてふと、あるものに気がつく。正面に薄くなった墨汁の染みのような小さな影ができていた。

はじめは雲の影だと思った。
しかしだんだんとその影は広がっていって、もしかしたら鳥かな、と思う。
それは間違いではなかったが、その影はこちらに近づいてくるにつれ巨大になっていく。
どんな鳥だろう、と思い空を見上げた時になってその鳥が普通ではないことにに気づく。



22: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:46:15.98 ID:LxfuaLxE0
  
その鳥は理不尽なほどにめちゃくちゃでかくて、化け物に見えた。
羽は鮮やかな虹色でくちばしはまるで鷹のよう。
そしてこちらの存在に気がつかないかのように、盛大な音を立てて樹のてっぺんにとまる。
葉が何枚も何枚も舞い落ちてきたが、そのときの僕には関係がなかった。
僕はその鳥に、まるで魔法にでもかかったかのように見惚れていた。
単純な美しさだけではなく、風格のような何かまで備えた鳥はどこかの王様のようにも見えた。

小一時間その場にいたのだろうか。
僕はその間一度も視線を外すことができなくて、まるで呆けたかのようにその極彩を見つめていた。
極彩はその間一度も僕に興味を示すこともなく、翼を広げると先程と同じように盛大に飛び立った。
僕は虹色の羽が目の前に落ちても全く動かなかった。動こうとする意思が起きなかった。



23: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:46:56.49 ID:LxfuaLxE0
  
ようやく我に返ったときには日はかなり傾いて、それでもなお強い日差しが容赦なく顔を灼いていた。
しかし気分がやたら高揚していて、それは気にならなかった。
それよりも早く誰かに話したくて話したくてたまらなかった。
だから僕は目の前の羽根を拾うと、両腕を広げ、家に向かって全力で走り始めた。

しかし家に着く頃になると、呼吸と反比例して気分は落ち着き、別の思いが心に湧き出してきた。
それは、この出来事を独り占めにしたいという単純なモノ。
そしてもう一つ、とても淡い、願いに近い想い。



24: ◆HIDEBJzPlA :2006/09/03(日) 23:47:36.44 ID:LxfuaLxE0
  
その二つの結果、僕は今の今までその出来事を人に話していない。
虹色の羽は誰にも見られないようにずっと自分で持っていた。
誰にも見つからなかったはずだ。誰にもずっと、何も言われる事はなかったのだから。

僕はただその鳥にもう一度会いたいと思った。これはあの日から全く変わっていない。
ずっと変わらずに想い続けた小さな小さな夢。それがこの町から旅立つ一番の理由だ。





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