( ^ω^)ブーンが高校野球で1番を目指すようです

  
実況「九回裏ツーアウトまできました、後少しでVIP県の代表校が決定します!!」



固唾をのんでマウンドを見守る選手達、歓声とも悲鳴とも取れるスタンドの応援



実況「ピッチャー第一球、アウトコースストレート!!判定はボール!!バッテリー慎重に行きます。」



ピッチャーを睨み付ける打者、ピッチャーの隙をうかがうランナー、そのどちらとも対峙するピッチャー



実況「ピッチャー第二きゅ・・打ったー!!大きい!!大きい!!打球の行方は―――――




( ^ω^)ブーンが高校野球で1番を目指すようです











――第一話「ブーンはまだ夏を終わらせたくないようです」


遡る事数年、
季節は5月、桜の花も散って新しい緑が眩しく照らされる季節――――


ジリリリリリリ!!ジリリリリリリ!!

( -ω-)「zzz・・・」

彼の名前はブーン。硬式野球チーム、VIPシニアに所属する中学三年生。

( ^ω^)「お・・・もう朝かお・・・」

VIPシニアは地区一番の強豪チーム、部員は100人を越える。
しかし、最後の選手権予選、ベンチ入りできる人数はたったの18人。
VIPシニアでは殆どの選手はスタンドから応援する事になる。












( ^ω^)「今日の紅白戦、結果を出せなかったらブーンは多分ベンチ入りできないお・・・。」

ブーンは補欠、それもベンチ入りすら出来ない選手だった。
最後の大会、はっきり言ってベンチ入りできる望みは薄い。それはブーン自信も自覚していた。
    
( ^ω^)「でも、ブーンだって三年間苦しくても諦めずに今日まで頑張ったお。」

3年間の事が頭をよぎった。
毎晩公園に行って素振りをした事、地獄のような合宿の事、気分が悪くなるまでノックを受け続けた日の事。

( ^ω^)「このまま終わりだなんていやだお・・・絶対にベンチ入りしてみせるお!!」

いつもどおりに顔を洗い、いつもより少し少なめの朝食を食べた後
様々な想いと汗と泥にまみれた白い練習用ユニフォームに袖を通し、ブーンはグラウンドへと向かった
















――VIPシニア専用グラウンド――

( ^ω^)「おはようございます!!お」

グラウンドに到着してすぐ、いつもどおりに監督、コーチ、保護者の人達に挨拶をした後
グラウンド内に集まっている選手達の輪のほうへむかう。

( ^ω^)「ドクオ!!おはようだお」

('A`)「・・・」

ドクオとはチームで一番仲がよかった。小学生の頃から一緒に野球をやっている。いわば親友だ。
しかし、今日だけはそっけなかった。














ほかの誰に挨拶しても返事は無い。入念にストレッチをする者、素振りをしてスイングをチェックする者
一人一人自分の調整に没頭していた。皆、今日がどういう日なのかを理解していた。


VIPシニアは基本的に全員最上級生で試合に臨む。そのため、今日の紅白戦も32人いる3年生だけで行われる。
今日の試合と日頃の練習の様子から18人の選手を決定するのが毎年の流れである。

(; ^ω^)(アップが始まるまでブーンも素振りでもするお・・・)

皆真剣になるのもわかるが、ブーンは少しだけ寂しくなった。
今日で最後になるかもしれないのに・・・
そんな気持ちを振り払うように、ブーンはバットを振った。今日はそんな甘えた事は言えない日なのだ。












監督やコーチがグラウンドに来てグラウンドに挨拶を行った後、すぐにアップが始まった
ゆっくりと体を動かせる状態へと持っていく。その後キャッチボール、トスバッティングが行われた後

監督「では、今から紅白戦を開始する!!前もって決めたメンバーで分かれてベンチにはいれ!!」

ついに紅白戦がはじまった。はじまってしまった。
ブーンは白組の6番ライト、スタメンだった











試合は一進一退の攻防で1回を終える。しかしチームの得点なんて誰も気にしてはいない。
自分のプレーを監督にアピールする事に躍起になっていた。もちろん、ブーンもその一人であった

2回の表白組の攻撃、先頭打者でブーンの打席が回ってきた。

( `ω´)「1回裏はブーンの守備機会がなくてアピールはできなかったお。
    だからこの打席で監督に良い印象を与えたいお」

ブーンは打席の内側寄りにスタンスを取って小指をグリップエンドに掛けて構える。あからさまな長打狙いだ。

<丶`∀´>「こいつ・・・俺を誰だと思ってるニダ?」

赤組のピッチャーはニダー、すでに甲子園常連校からの誘いもあるVIPシニアのエースだ。














<丶`∀´>(とりあえず、インハイのストレートでのけぞらせるニダ!)


―― 一球目、インハイにストレート、判定はボール。ブーンは咄嗟にのけぞってしまった。


( `ω´)(早い・・・。さすがウチのエースだお。でもここでステップ位置を下げたら相手の
      思うつぼだお!!ひるまないお!!)

ブーンは一度ニダーを睨み付け、ステップを踏みなおす。こんな所でひるんでなどいられないのだ。











―― 二球目、もう一度インハイにストレート。ブーンは果敢に打ちに行くも空振り。ストライク。

バットにこそ当たらなかったものの、果敢に打ちに行く姿勢を相手に植え付ける事が出来た。

赤組キャッチャー(インハイの後に外角で勝負しようと思ったが・・・こっちの考えてる事が
         ばれてる・・・ならばニダー、これだ!)










―― サイン交換の後三球目、カーブ、タイミングを外されてブーンは姿勢を崩したままスイングする


( `ω´)(しまったお!!ストレートの速さにばかり気がいってしまったお!!)

絶妙のカーブをひっかけて打球は三塁へ。


1打席目、ブーンサードゴロ







( `ω´)「くそっ!!完全に相手の術中にはまってしまったお!!
     試合は7回まで・・・その前に交代させられるだろうからチャンスはあと一打席だお・・・」


中学野球の試合は基本的に7回までしかない。それに今回は全選手の能力を見る紅白戦。
4回には交代になるだろう。

相手ピッチャー、ニダーの調子が上がってきた。エースの貫禄を見せつけこの回、三者凡退の好投を見せる

















( ω )「やばいお・・・この調子じゃ打てないお・・・
    でも次で攻略しないとアピールできないお・・・」

ブーンは守備の最中、ニダーを攻略する手段を考えていた。目に見えて焦っていた。
そう、誰からも目に見えて焦っていた。

('A`)「ライト・・・穴だな」


















試合は進んで3回表

<丶`∀´>「おらぁ!!!!!!!!」

白組は9番からの好打順、所々でランナーを出すも要所できっちり押さえ白組の4番を三振にしとめる。
精神的にものって来ている。そう簡単には攻略できないだろう。
そして試合は3回裏、赤組の攻撃へと移る。バッターは4番、ドクオからの攻撃スタート

ドクオはVIPシニアで一番打てる打者。ノーアウトランナー無しなら敬遠も一つの選択肢に入ってくるだろう。
しかし、白組バッテリーもこの試合でアピールしたい。VIPシニアの4番ドクオを封じ込めたとなれば
監督も黙ってはいないはずだと考えた。真っ向勝負である














( ω )「次の回、確実にブーンに打席が回ってくるお・・・やばい・・・やばいお・・・
    考えなきゃ・・・考えなきゃ・・・」

こんなに焦っていてはいい考えなど思いつくはずもない。ブーンの焦りは増していった。
目の前の試合とは完全に別の場所にいるブーンを尻目に、投手の足がプレートに掛かり、野球が動き出す。

ピッチャーのボールが指先から離れる。
直後狙った獲物は逃さんとばかりにドクオは初球攻撃、1塁線。




思い切り引っ張った



白組ピッチャー「ライトー!!・・・ブーン!!」

















( ゚ ω゚)「おっ・・・おっ・・・」

打球は鋭くフェアラインを狙う
バッターランナードクオは確信したように二塁を狙う体制、大きく膨らんだライン取りで一塁から二塁へ向かう

( `ω´)「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」

ブーンは気を取り戻したように叫びながら走る。
しかし、完全にスタートが遅い。走るブーンの1メートル横を通り過ぎて打球はフェンスへと一直線に
跳ねていった。
打者がドクオだとも気がつかないほど考え込んでいたブーンは守備位置を前の方に取っていた。
普通の打者ならそれでもいい。しかし相手が悪かった。













( `ω´)(三塁で止める!!最悪ホームで殺すお!!)

ブーンがボールにたどりついた時、ドクオは既に三塁キャンパス手前の所まで来ていた。

( `ω´)「バックホームだお!!おおおおおおおおおおおおおおお!!」

ブーンはこれ以上無いほどの渾身のボールを投げる。
しかしフェアライン周辺、ラインと外野芝の段差に足を取られ手元が少し狂った。
ブーンは矢のような送球をみせる、しかし全てが最悪に働く。

送球は三塁側ベンチめがけて飛んでいった


大暴投だった












('A`)(ブーン・・・すまない・・・)

ドクオはホームベースを踏みベンチに戻る。ランニングホームラン。
最高のパフォーマンスだった。

( ゚ ω゚)「おっ・・・おっ・・・」

ライトの深い場所で呆然と立ち尽くすブーン。酷く痛々しく見えた。
その場にいた誰もがブーンを哀れんだ。ただ一人を除いて。
ベンチから重い腰を持ち上げて男が叫んだ。










監督「ライトブーン、交代!!次の者、ライトに入れ!!」

すぐに理解できた。自分が今日一本もヒットを打っていない事。
自分の不注意で本来なら止められるはずの打球を後ろにそらした事。
とんでもない送球をしてしまったこと。
このプレーの後に交代させられるという事は事実上、死刑宣告だという事。



( ゚ ω゚)「おっ・・・おっ・・・」



( ; ω;)「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


半袖のアンダーシャツがまだ肌寒く感じる事もある季節、
あまりにも早く、少年の夏が、終わりました―――


――第一話「ブーンはまだ夏を終わらせたくないようです」完―――



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