( ^ω^)ブーンが高校野球で1番を目指すようです

  
―――第三話「ブーンは二つのグラブをもっているようです」


8月、

全日本選手権、VIPシニアはベスト8に留まった。
VIPシニア4−8狼シニア
これがVIPシニア3年生の最後の公式戦であった。


大体の選手はこの時期から高校の野球部の練習が始まるまで
充電期間に入る。少しの間だけ、ありふれた当たり前の青春、
しかし、彼らにとってそれは眩しいほど輝いて見えるだろう。













―――VIPシニア専用グラウンド――――

('A`) 「おはようございます!!」

しかし、ドクオはそんな時でも毎日、グラウンドに通っていた。

監督「ドクオ、試合が終わってからも毎日グラウンドに来ているが
   お前は遊びには行かないのか?まぁ、俺としてはお前が来てくれたら
   凄く助かるが・・・」

('A`) 「いえ、俺は少しでも体がなまらないようにしたいですから・・・」

ドクオは大会が終わったあと、後輩達の練習を指導するかたわら
監督に許可をもらい練習に参加していた。

('A`) 「高校に行って、全然動けなかったら笑われてしまいますからね・・・」












監督「そうか、その高校の事なんだがな。・・・お前に幾つか誘いが来ているぞ。
   ラウンジ県の高句麗学園、オオカミ県のなっち大学付属、ニー速県のオヤスミ高校
   高句麗とオヤスミは推薦、なっち大は特待生として迎えてくれるそうだ。」

('A`) 「いや・・・俺は推薦の話は遠慮しておきます」

ドクオの家は母子家庭、家族は二人きりであった。VIP県から離れると
確実に寮生活ということになる。それだけは避けたい、と考えていた。
しかし、VIP県には魅力を感じるチームが無い。ドクオは進学先を決めあぐねていた。













監督「お母さんの事か・・・とにかく、いきなり行きたい学校が見つかっても
   困らないように、勉強だけは怠る事の無いようにな。」

('A`) 「はい、ありがとうございます」

このように、中学野球において指導者は選手の進路について相談に乗るという事も
仕事の一つである。VIPシニアの監督は3年生全員の進路希望を把握し、
一人一人と面談を行っている。
(余談だけど、主要選手の相談だけ乗って後はご自由に、勝手にどうぞっていう酷い人も
 中にはいるらしい。俺は見たこと無いけど。)





しかし、一人だけ進路を把握できていない選手がいた・・・

監督「おまえ・・・ブーンとは仲がよかったよな?」

('A`) 「・・・はい」

監督「どうだその後は?俺も一応連絡を取ろうとしているんだが
   なかなか電話に出てくれなくてな・・・。元気にしてるか?」

('A`) 「いや・・・実は俺も連絡はとってないです。」

ドクオはあの日以来、気まずくてブーンとは一度も会っていなかった。









夕方――

練習も終わりその帰り道、ドクオはブーンの家へと向かった。
気は重かった、でもいつまでもこうしているわけにはいかなかった。

('A`) 「いつまでも気まずいのは嫌だかんな・・・」

監督に怒られてしまった「仲間を大切に出来ないやつは何やっても駄目だ」
そういわれて目が覚めた、というより踏ん切りがついた。

そんな事を考えていたらあっという間にブーンの家、内藤酒店に着いた。
ブーンは店の中を掃除している。
一度だけ深呼吸をしてドクオは店の中へ入った―――








夜―――

ドクオは河川敷へ来ていた。

( A ) 「そんなわけねぇ・・・ブーンにそんな事できるわけねぇ!!」

ブーンの顔を思い浮かべながら、一心不乱に草むらを掻き分けた。

( A ) 「絶対・・・絶対まだあるはずだ!!」













========================================================================

再び夕方―――

店の中に足を踏み入れる。ドアの音と同時にブーンと目があった。

( ^ω^)「お・・・ドクオ!!久しぶりだお!!」

(;'A`) 「お、おう!!久しぶり。」

( ^ω^)「今練習の帰りかお?じゃあブーンの部屋でスマブラやるおwwwwwwwwwwwwwww
今は仕事も暇だから父に断ってくるお!!」

(;'A`) 「あ、あぁ・・・」

半ば、押し切られるような形で俺はブーンの部屋へと案内された。







( ^ω^)「うはwwwwwwwwwwwwwwブーンつよすwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
ドクオ弱ええええええええwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

一時間ほどゲームは続いた。聞きたい事は山ほどあった。
でも、なかなか聞けなかった。スマブラは五回やって五回負けた。

( ^ω^)「冷蔵庫から麦茶取って来るお!!ちょっと待っててくれお!!」

そういってブーンは部屋から出て行った。
窓の外には真っ赤な夕焼け。あと少しで終わってしまう夏休み。
子供達はこれでもか、というぐらいはしゃぎまわってる。

('A`) 「ブーンが戻ってきたらちゃんと話そう・・・」

前に進まなくちゃいけないんだ。何故かそんな言葉が頭をよぎった。









( ^ω^)「おいすー!おまたせだお!!」

そう言って、ブーンは作り置きの麦茶をグラスに注いだ。

・・・よし。

('A`) 「試合・・・結局準準決勝で負けたよ」

( ^ω^)「・・・」

('A`) 「でも、俺オオカミシニアのエースからホームラン打ったんだぜ?
     すげー嬉しかったよ」











('A`) 「ニダーはおととしの甲子園で準優勝まで行ったニュー速学園に
    推薦がきまったんだぜ?やっぱすげーよなアイツは。」


なんか言ってくれよブーン。


('A`) 「なんと俺もいくつか推薦の話しをもらったんだぜ?
    でもなんかしっくりこないんだよなー。やっぱり俺は地元の・・・」


( ^ω^)「止めるお。」

話しの腰を折られる。一瞬、時間がとまったような気がした。













( ^ω^)「もう、野球の話しはするなお。
    ブーンはもう野球はやらないし見ないし話しもしたくないお。」

セミの声にかき消されそうなほどのトーンでブーンは話続ける。

( ^ω^)「グラブももう無いお。もう必要ないお。
    河川敷にもっていって燃やしたお。」













信じられなかった。あんなに大事にしてたのに。そして怒りが湧いてきた

(#'A`) 「バカヤロウ!!!!!!!」

居心地が悪くなってしまった俺はブーンの家から飛び出してしまった。


今になって考えると、なんて子供じみてるんだと思う。
グラブをどうしようがブーンの勝手だ、ブーンの意思だ。
でも俺は純粋に、純粋な俺のエゴでブーンに野球を続けて欲しかった。
ブーンと野球を続けたかったんだ。
そして、自然と河川敷に向かっていたんだ。
========================================================================












再び夜、ここはブーンの部屋――――


( ^ω^)「グラブ・・・」

ブーンは嘘をついていた。グラブなど燃やしてはいなかったのだ。
正確には、燃やせなかったのだ。

( ^ω^)「河川敷にそのまま捨ててきたお・・・
    でも、その間に雨も降ったし、きっと子供達に悪戯もされてるお。
    どの道、一緒だお・・・。」

もう夜の12時を回っていた。大きいお友達の大好きなアニメが始まる時間だ。
しかしブーンは眠れずにいた。














そうこうしていると、家の電話が鳴った。

( `ω´)「電話?こんな時間に非常識だお!!文句言ってやるお!!」

ブーンはむしゃくしゃしているようです。

( `ω´)「おいすー・・・」

J( 'ー`)し「あ、ブーン君?ドクオの母です。こんな時間にごめんね」

電話口からはドクオの母の声。

( ^ω^)「こんな夜遅くにどうしたお?」













J( 'ー`)し「今そこにドクオはいるの?」

(; ^ω^)「へ、ドクオは随分前に帰ったお?何かあったのかお?」

J( 'ー`)し「そう・・・実は・・・ドクオがまだ帰ってきてないの。
     さっき監督さんに電話したら「ブーンの家に行った」って言ってたから・・・
     いったいどこに行ったのかしら・・・」


(; ^ω^)「そ、それは大変だお!!ブーンも家の近くを探してみるお!!!」

電話を切った後、ブーンは急いで家の近くを探して回った。









それから1時間ほど、必死で探し回ったがドクオは見つからなかった。
一度、ドクオの家に電話を入れた後。ブーンは部屋で知らせを待つ事にした。

(; ^ω^)「何処に行ったんだお・・・。」

時間は刻一刻と過ぎていく。もう夜の2時。おっきいお友達が本領発揮の時間だ。
流石に眠たい。ドクオの携帯に電話もしてみた。でも一向に出る気配は無かった。









ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ、ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ
携帯に着信が入る。ドクオからだ。すぐに電話を取って開口一番

(; ^ω^)「なにしてるお!!ドクオのカーチャンも心配してるお!!」

('A`) 「ああ・・・すぐに帰る。でも今ブーンの家の前にいるから
    ちょっとだけ出てきてくれないか?」

(; ^ω^)「お・・・?わかったお?」

電話を切ってすぐ、ブーンは部屋を飛び出した。





('A`) 「スマン・・・心配かけちまったな」

ドクオはすぐに謝ってきた。だが、なぜか誇らしげに微笑んでいる。
すぐにその手に握られたものに目が行く、そしてすぐに理由がわかった。

('A`) 「グラブ、あったぞ」







しかし、約二ヶ月間も野ざらしにされていたグラブだ。状態がいいわけが無い。
茶色は変色して皮ははげ、ウェッブはもう取れてしまってどこかに行ってしまっていた。
3年かけて必死で深くしたポケットも、いまや見る影も無い。しかしそれはブーンの
グラブだった。ブーンが毎日手入れを欠かさなかったミズノ製のグラブだった。

ドクオは続けた
('A`) 「さっきはあんな事言ってごめんな・・・。ブーンはもう野球嫌なんだよな。
    ちょっと子供っぽかったと思う。」












('A`) 「俺はブーンと野球を続けたかったけど、仕方ないよ。ブーンの人生だ
    でも、俺やチームの皆と必死で頑張った3年間、それだけは否定しないでくれよ」

ドクオはぼろぼろのグラブをブーンに手渡す

('A`) 「ほら、お前のグラブだ。二度と捨てないでくれよ」






( ;ω;)「おっ・・・」

ブーンの頭を3年間の思い出が駆け巡る。チームメイト達の顔が溢れる。


( ;ω;)「ドクオ・・・ありがとうだお・・・」


セミの抜け殻も少なくなってくる頃、
本当の意味でブーンの夏がやっとおわりました――


















その後、ブーンは大切な、ぼろぼろのグラブを部屋で一番目立つ場所に飾った。
このグラブではもう野球は出来ないけれど、それはブーンの宝物だった。












季節はめぐり、もう九月。昨日で夏休みも終わり、今日は始業式。
校長の長話、配布物、受験生として気合を入れろ。みたいな話が終わり。
すぐに下校時刻となった。

きーんこーんかーんこーん

( ^ω^)「ドクオは今日もシニアに行くのかお?」

('A`) 「ああ、一日休んだら取り戻すのに三日かかるからな。」

( ^ω^)「それは大変だお!!がんばってくれお!!ばいぶー!!」















( ^ω^)(受験勉強もちゃんとやってるし・・・やることがないお。)

夏休みだけの家業の手伝いも昨日で終わり、やる事が全くなくなってしまった。
こんな時、前なら・・・

( ^ω^)(やっぱり野球、やりたいお・・・)

今まで、半ば反抗的に野球を遠ざけてきたが、あの夜以来やっぱり自分は野球が好きだったんだ
と感じていた。監督にも一度非礼を謝りに行った。
そんな簡単に嫌いになるようなら、3年間も続きはしない。






しかし、グラブがない。普通だったら経済力0の中学生、親にねだって買ってもらうのだろう。
しかし、ブーンの場合、少し違った。

(; ^ω^)(自分で捨てといて、その上に新しいやつを買ってくれなんて都合が良すぎるお)

そんな事を考えながら帰路に着く。今日は家業の定休日。
父は出かけているだろう。早く帰って、飯でも作ろうと思った。








家に着いて、ブーンは一目散に冷蔵庫へ向かう。
そしてすぐに麦茶をグラスに注ぎ、飲み干した。

(; ^ω^)「あちいwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

九月とはいえ、まだまだ熱い。麦茶を飲んで一息ついた時、
食卓の上の手紙と、ラッピングされた箱に目が行った。






    

     ブーンへ
 夏休みの間、店を手伝ってくれてありがとう
すごく助かった。バイト代はなかなか払えないけど
このぐらいのものは買ってやれる。
高校に行っても野球、頑張れ。応援してるぞ。
  
            父



ブーンは急いで箱を開ける、するとその中にはブーンがずっとあこがれていた―――

(; ^ω^)「うは・・・ミズノプロ・・・だお」










野球少年なら一度はあこがれるであろう、ミズノ社のオーダーメイドグラブ
それがミズノプロ。当然、値段もそこそこはするものだ。

( ^ω^)「うはwwwwwwwwwwwwwww父GJwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
夢がひろがりんぐwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

ブーンはすぐに着替えてグラウンドに向かった。
その姿は、初めて野球道具をかってもらった子供のようだった。



ブーンはやっぱり野球が好きだったようです。




でもこのグラブ、ブーンの欲しかった高橋ヨシノブモデルではなく
工藤公康モデルだというのはまた別の話・・・



―――第三話「ブーンは二つのグラブをもっているようです」完



戻る第四話