( ^ω^)がどこまでも駆けるようです

6: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:47:38.50 ID:NZJkv/5U0


     登場人物一覧


・アルキュ正統王国
 首都は【獅子の都】ヴィップ。王位正統継承者ツン=デレがリーマンから離れる形で建国。
 国旗は黒地に黄金色の獅子。


ξ゚听)ξ 名=ツン(ツン=デレ) 異名=金獅子王 民=リーマン
      武器=禁鞭 階級=アルキュ王
      現在地=ギムレット 状況=???。
      特徴=金髪の少女。感情がすぐに眉に表れる。
         旗印は国旗と同じく黒地に黄金獅子。

ミセ*゚ー゚)リ 名=ミセリ 異名=無し 民=リーマン
      武器=無し 階級=尚書門下(行政次官)・千歩将 ツンの付き人
      現在地=ギムレット 状況=???
      特徴=医学・栄養学などに精通。髪飾りを集めるのが趣味らしい。

( ゚∀゚) 名=ジョルジュ 異名=急先鋒 民=リーマン
     武器=大鎌 階級=司書令(司法長官)・万騎将・薔薇の騎士団団長
     現在地=ギムレット 状況=???
     特徴=熊を思わせる大男。愛用の抱き枕が無いと眠れない。
        旗印は白地に桃色の乳首



11: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:49:57.20 ID:NZJkv/5U0
(´・ω・`)名=ショボン 異名=天智星 民=リーマン
      武器=鉄弓(轟天) 階級=中書令(立法長官)・千騎将・黄天弓兵団団長
      現在地=ギムレット 状況=???
      特徴=白眉の青年。ジョルジュとは義兄弟。戦略の天才にして馬鹿。
         旗印は白地に太陽を背にした弓兵

从 ゚∀从 名=ハイン(ハインリッヒ) 異名=天駆ける給士(闇に輝く射手・心無き暗殺人形) 民=???
     武器=仕込み箒・飛刀 階級=中書門下(立法次官)・千歩将
     現在地=ギムレット 状況=???
     特徴=黒髪が美しい黒衣の給士。料理以外の仕事は完璧
        趣味は茶器収集と茶を淹れる事。

ノパ听) 名=ヒート 異名=燃え叫ぶ猫耳給士(自称)・赤髪鬼 民=リーマン
     武器=鉄弓・格闘 階級=司書門下(司法次官)・千歩将
     現在地=ギムレット 状況=???
     特徴=癖が強い赤髪を持つ赤い給士。料理だけなら完璧。
        趣味は御姉様のストーキング。
        旗印は白地に燃え上がる炎

(*゚ー゚) 名=しぃ 異名=紅飛燕(三華仙【花】) 民=リーマン
     武器=細身の剣と外套 階級=司書門下(司法次官)・千騎将
     現在地=ギムレット 状況=???
     特徴=灰色の髪と神秘的な瞳を持つ、無口な少女。騎兵運用の才に長ける。
        旗印は青地に赤い燕

(‘_L’)  名=フィレンクト 異名=白鷲(七英雄) 民=リーマン
      武器=長剣・鉄棍 階級=尚書令(行政長官)・千騎将・青雲騎士団団長
      現在地=ギムレット 状況=???
      特徴=隻腕の老将。白髪を丁寧に後頭部に流している。ジョルジュとヒートの師にあたる存在。
         旗印は青地に白い鷲



14: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:52:08.36 ID:NZJkv/5U0
白衣白面
 【天智星】ショボンが過去の伝説を再現させた、最強の強襲部隊。
 その強さの秘密は、全ての隊員が命を捨てる事を惜しまぬ事にあり、
 【突撃】と呼ばれる捨て身の特攻を得意とする。
 総勢300の白衣白面を率いるのは【王家の猟犬】を名乗るブーン(旧ナイトウ)であり、
 その柔らかな性格が白面の戦士をまとめあげていると言っても過言ではない。
 その意味では【白衣白面】とはヴィップから完全に独立した私兵集団である。

( ^ω^) 名=ブーン(旧名ナイトウ) 異名=王家の猟犬 民=??? 
       武器=拐(刃の映えたトンファー) 階級=白衣白面隊長
       現在地=白面の村 状況=???
       特徴=銀髪の青年。過去の記憶を持たず、ただ生きる為だけに戦争に参加していた。
          死んだと思われていたが生存。陰でツンを支える。
          天性の瞬歩使いであり、瞬間的爆発力ではハインをすら上回る。
          かつて名乗っていた『ナイトウ』の名は、首から下げた銀色の鈴に掘り込まれていた文字から
          彼が創作した物である。

(,,^Д^) 名=プギャー(旧名タカラ) 異名=鉄牛 民=モテナイ
     武器=拐 階級=白衣白面副長
     現在地=白面の村 状況=???
     特徴=常に自嘲するかのような笑みを浮かべた筋骨隆々たる大男。
        貴族の陰謀により愛する妻子を失った過去があり、
        家族を守れなかったと言う罪の意識が彼を戦場へ駆り立てる。



17: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:56:25.15 ID:NZJkv/5U0
ニイト王国
 戦に破れ荒廃したニイトの地を復興させた【無限陣】クーが民の声に応える形で独立。
 卓越した戦術と共に経済・流通を武器にする。自国防衛が基本思想であり、覇権には興味を持たない。
 国旗は青地に白い狼。

川 ゚ -゚) 名=クー(本名ニイト=クール) 異名=無限陣(三華仙【雪】) 白狼王 民=ニイト
     武器=??? 階級=ニイト王
     現在地=ニイト 状況=???
     特徴=苦しむ同胞を救う為戦う…と思われているが、その実は失った思い出を守る為に戦っている。 
        闇市を支配する黒髪の女王。かつて事故で両足を失い、義足と車椅子で過ごしている。
        愛用品は鶴縫・羽毛扇・首から下げた銀の鈴。
        旗印は国旗と同じく青地に白い狼。

爪゚ー゚) 名=レーゼ 異名=神算子 民=ニイト
     武器=??? 階級=???(財務担当)
     現在地=ニイト 状況=???
     特徴=リーゼの姉。男装の文人。ミルクティー色の髪と瞳を持つ。
        融通の聞かない性格の為か、肌や髪が若干疲れ気味。

爪゚∀゚) 名=リーゼ 異名=金槍子 民=ニイト
     武器=ランス 階級=???(騎士団長)
     現在地=ニイト 状況=??? 
     特徴=レーゼの妹。男装の武人。ミルクティー色の髪と瞳を持つ。
        姉と違ってその日その時を楽しむタイプ。



20: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:57:57.49 ID:NZJkv/5U0
( ´_ゝ`) 名=兄者 異名=金剛阿 民=メンヘル(元海の民)
       武器=手斧・兄者玉 階級=???(元メンヘル十二神将・第五位)
       現在地=ニイト 状況=???
       特徴=変態。武器である兄者玉は108式まであるが、大半は夢と浪漫が詰まっている。
          バーボン城での戦いでハインに敗れ、メンヘルを去った。
          現在はニイト王クーに仕えている。

(´<_` ) 名=弟者 異名=金剛吽 民=メンヘル(元海の民)
       武器=手斧・弟者砲 階級=???(元メンヘル十二神将・第九位)
       現在地=ニイト 状況=??? 
       特徴=外見こそ兄者とそっくりだが、常識人。腕は一歩劣るか?
          左腕はからくり仕込みの義腕になっている。
          クーの境遇に自身を重ねる事で共鳴、彼女に仕える道を選んだ。


??? 名=モララー 異名=勝利の剣(七英雄) 民=ニイト
    武器=??? 階級=元・ニイト最高指導者
    状況=王の死後、評議会に背き謀反の旗をあげる。
       その力凄まじく一時は王都まで迫ったが、愛する家族を捕らえられ投降。
       首を刎ねられた。
       彼の異名ともなった【勝利の剣】はラウンジの更に北。
       神話の国より彼が持ち帰ったとされる聖剣と言われている。



22: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 21:58:52.51 ID:NZJkv/5U0
モテナイ王国
 【狂戦士】ダイオードが永年の雌伏の末、リーマンから独立する形で建国。
 その中心はかつてヒロユキに滅ぼされかけたモテナイ族である。
 【戦士の街】ネグローニを首都とするこの国は、小さいながらも強力な軍事国家だ。
 国旗は赤地に黒犬。

/ ゚、。 / 名=ダイオード 異名=狂戦士 串刺し公 黒犬王 民=???
      武器=二本の短槍 階級=モテナイ王
      現在地=ネグローニ 状況=ヒッキーを破り独立。
      特徴=仮面で顔を隠し、厚いフードを被った戦士。
         愚者との噂が絶えなかったが、現在は全領民の信頼を受ける賢王。
         旗印は赤地に黒犬。

(=゚ω゚)ノ 名=イヨゥ 異名=繚乱 民=モテナイ
     武器=斧槍 階級=黒色槍騎兵団長
     現在地=ネグローニ 状況=???
     特徴=頬に傷を持つ小柄な戦士。長すぎる外套を常に引きずっている。
        政治家としての一面もあり、長きに亘ってネグローニを支えてきた。
        旗印は黒地に舞い散る桜の花びら

川l.゚ ー゚ノ! 名=ナナ 異名=??? 民=モテナイ
      特徴=イヨゥの妹。春風を思わせる笑顔を持つ。
         少女らしくさっぱりと切り揃えられた黒髪は兄譲り。
         争いを嫌う優しい女の子。



26: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:00:50.84 ID:NZJkv/5U0
(.≠ω=) 名=ロシェ 異名=一枝花 民=モテナイ
       武器=??? 階級=軍師・赤枝の騎士団長
       現在地=ネグローニ 状況=???
       特徴=ボサボサの長髪を気にもしない女軍師。常に気だるそうにしている。
          流浪の戦術家として知られ、ダイオードによって召喚される。
          旗印は黒地に赤い柊の枝

( ´ー`) 名=シラネーヨ 異名=??? 民=???
     武器=??? 階級=領主補佐
     現在地=ネグローニ 状況=???
     特徴=弛んだ二重顎の文官。自称知識人。

??? 第三の男。
    ダイオードに仕える影の存在。
    全てが謎とされているが……
    
('A`) 名=ドクオ 異名=??? 民=モテナイ
    武器=短槍 飛礫 階級=???
    現在地=??? 状況=???
    特徴=寡黙な戦士。友人ナイトウを裏切り袂を分かつ。
       現在ネグローニに潜伏中?



28: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:03:00.99 ID:NZJkv/5U0
メンヘル族
 島の南西部・モスコー地区を居住区とする信仰深い民族。
 南の大国【神聖ピンク帝国】の支持を受けている。
 唯一神マタヨシを崇め、直接的争いを嫌い、智を深める事を好む。

(´∀`) 名=モナー 異名=預言者(七英雄) 民=メンヘル
     武器=??? 階級=指導者
     現在地=モスコー 状況=???
     特徴=唯一神マタヨシの声を聞くとされる人物で、アルキュにおけるマタヨシ教団の頂点に立つ男。
        長きに亘る戦乱を終わらせる為にヒロユキと手を組んだが、
        彼の死後再び混乱に陥った島を見て王家を見限った。
        現在では『王家よりも更に人心を捉える存在=宗教』の下による島の統一を謀っており、
        永遠の平和の為には再統一後アルキュ島を神聖ピンクの一部として併合する道も已む無しと考えている。

ミ,,゚Д゚彡 名=フッサール 異名=天使の塵・砂漠の涙(七英雄) 民=メンヘル
      武器=天星十字槍 階級=司祭。神聖騎士団団長(十二神将・第一位)
      現在地=モスコー 状況=???
      特徴=長髪長髭の老将。
         神聖ピンクの教皇より直々に司祭の位を与えられるほど信心深い男。
         彼もまた島の再興には『宗教』の力が不可欠と考えるが、
         『神の教えの下で個々が心を鍛え、争いを無くそう』という小乗的な物でモナーとは一線を隔する。
         卓越した戦略家でもあり、彼の下には数多くの弟子が存在している。
         旗印は黒地に南十字星



29: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:06:17.85 ID:NZJkv/5U0
(*゚∀゚) 名=ツー 異名=不敗の魔術師 民=メンヘル
     武器=三本の山刀(かみつき丸・つらぬき丸・なぐり丸) 階級=メンヘル十二神将・第二位
     現在地=ギムレット 状況=ギムレットで起こったクーデターに参戦
     特徴=踊り子のような衣服に身を包んだ女戦士。
        真正面から心中を読み取る心理戦を得意とし、分析力に優れる。
        戦士としても一流であるのだが、残念な事に思考は腐りきっている。
        左耳の上で縛り上げたサイドポニーと褐色に焼けた肌がトレードマーク。
        旗印は桃地に白百合

lw´‐ _‐ノv  名=シュー 異名=光明の巫女 民=メンヘル
        武器=??? 階級=メンヘル十二神将・第三位
        現在地=ギムレット 状況=ギムレットで起こったクーデターに参戦
        特徴=東方の神子装束に身を包んだ巫女。膝丈まで伸ばした黒髪を赤いリボンで縛っている。
           フッサールの弟子であり、ツーの義妹。
           『腹が膨れてさえいれば争いなんか起こらない』が持論であり、食料関係全般を任されている。



35: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:08:19.19 ID:NZJkv/5U0
??? 名=ミルナ 異名=羅王 民=メンヘル
    武器=??? 階級=メンヘル十二神将・第四位
    現在地=??? 状況=???
    特徴=???

( ゚∋゚) 名=クックル 異名=神の巨人 民=???
     武器=??? 階級=メンヘル十二神将・第五位(モナーの護衛)
     現在地=モスコー 状況=???
     特徴=白い羽毛を貼りつけた外套をまとう巨体の戦士。
        寡黙で政治には一切の興味を示さない

( ・へ・)名=ジタン 異名=打虎将 民=メンヘル
      武器=鎚鉾(メイス) 階級=メンヘル十二神将・第六位
      現在地=ギムレット 状況=ギムレットで起こったクーデターに参戦
      特徴=虎を素手で殴り殺した猛将。
         外套は身に着けず、当時打ち殺した虎の毛皮を腰に巻きつけている。
         短気で喧嘩っ早いが、平地での短期集中決戦では抜群の強さを発揮する。
         フッサールを政敵として憎んでいる。



37: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:10:10.70 ID:NZJkv/5U0
海の民
 島の南部シーブリーズ地区を占拠し、島で唯一塩の製造権を持つ者達。
 元々は東洋から亡命してきた民の末裔と言われている。
 ハインの飛刀・小太刀、ニイトの桜など多くの文化が彼らによって伝えられたとされる。
 蛮勇を誇り、『本業』は貿易の積荷を襲う海賊である。
 
l从・∀・ノ!リ人 名=妹者 異名=小旋風 民=海の民
       武器=??? 階級=帆船【グラッパ号】艦長
       現在地=??? 状況=???
       特徴=頭に麦藁帽子。背に黄金の髑髏を刺繍した外套を纏った幼女。
          得意の我侭で周囲を騒がせる。
  _、_
( ,_ノ` ) 名=渋沢 異名=破軍 民=海の民 
      武器=??? 階級=帆船【グラッパ号】副艦長
      現在地=??? 状況=???
      特徴=紙巻(煙草)をこよなく愛する渋い中年男



40: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:13:01.36 ID:NZJkv/5U0
リーマン族
 島の東部に居を構える、最大人口を誇る民族。
 旧支配者層も多く、ヒロユキの革命も当時は彼らの打破が最終目標とされていた。
 が、決戦を前に電撃的和解。ヒロユキの即位を支援し、今もなお最も栄える民である。
 北の大国ラウンジ王国の支援を受けている。

<丶`∀´> 名=ニダー 異名=翼持つ蛇 民=リーマン
      武器=??? 階級=評議長
      現在地=デメララ 状況=???
      特徴=黒髪を後頭部で束ねた痩せた男。評議会を牛耳るとされていた。
         現在、島の混乱に終止符をうつ為、全権をツンに返す事を考えている。

爪'ー`)y‐ 名=フォックス 異名=狐・人形使い(七英雄) 民=???
      武器=??? 階級=評議会情報部
      現在地=??? 状況=???
      特徴=紫色の派手派手しい外套に身を包んだ長髪の隠密。
         老いを感じさせぬ肉体を持ち、阿片の常習者
         『人としての労苦より家畜の平和を』がモットーであり、ラウンジと密に繋がっている。

(`・ω・´) 名=シャキン 異名=常勝将(七英雄) 民=リーマン
       武器=??? 階級=バーボン領主 元帥
       現在地=南部塩田 状況=海の民と交戦中
       特徴=ショボンの父。

/;3  名=スカルチノフ 異名=全知全能(七英雄) 民=リーマン
    武器=??? 階級=元・ニイト自治区監査
    現在地=デメララ 状況=???
    特徴=髭の翁。花の描かれた派手な外套を着込む



41: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:14:16.67 ID:NZJkv/5U0
( ФωФ) 名=ロマネスク 異名=国士無双 千刃 民=リーマン
       武器=??? 階級=禁軍武芸師範
       現在地=デメララ 状況=???
       特徴=金銀妖眼と呼ばれる眼をした剣士。

从'ー'从  名=ワタナベ 異名=一丈青 民=リーマン
      武器=狼牙棍 階級=評議長近衛部隊隊長
      現在地=デメララ 状況=???
      特徴=ピンクのゴスロリ忍装束に身を包む。ちょっと毒舌

( <●><●>)  名=ワカッテマス 異名=天目将 民=リーマン
        武器=??? 階級=王都警備部隊隊長
        現在地=デメララ 状況=???
        特徴=全てを見通す眼を持った戦士。

(-_-)  名=ヒッキー 異名=鉄壁 民=リーマン
     武器=鉄鎚 階級=千騎将。鉄柱騎士団団長
     現在地=デメララ 状況=ネグローニに侵攻開始
     特徴=重厚な鎧に身を包んだ将。ジョルジュとは犬猿の仲。

??? 名=ヒロユキ 異名=統一王 民=リーマン
    武器=鉄鞭 階級=先王

J( 'ー`)し 名称:カーチャン 出身民族:リーマン
       特徴:ヒッキーの母。
          愛する息子の死によって心を失う。



45: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:16:16.86 ID:NZJkv/5U0
〜そろそろここに書くネタも切れてきたなぁ編〜

             Aヴィップ(旧ギムレット高地)
@キール山脈     
                         Bニイト王国(旧ニイト自治区)

=====大地の割れ目==========     
                               Cモテナイ王国(旧ネグローニ地区)
         Eバーボン地区

              Fローハイド草原      Dデメララ地区

Gモスコー地区
   
                 Hシーブリーズ地区

※島の高度は、@→A→B→C…と番号が大きくなるにつれて低くなる。
また、南から西南に抜ける風の影響でGHは北部とは比較にならないほど気温が高くなっている。
大地の割れ目を流れるのはマティーニ河。
そこから枝分かれしてEとFの境目を流れるのがバーボン河。
バーボン河は更にGとHの境を抜けて海に出る。

@…どこにも支配されていない。
A…【金獅子王】ツン=デレによる正統王朝本拠地。
B…【無限陣】クーを王とする新政府。経済力を武器とする。
C…【黒犬王】ダイオードがリーマンから独立する形で建国。
DE…リーマン支配下。現在バーボンの領主代理を務めているのは【鉄壁】ヒッキー。
F…中立帯だが、リーマンの力が強い。
G…メンヘル支配下
H…中立帯だが、この地区を占拠する【海の民】とメンヘルが同盟関係にあり、メンヘルの力が強い。



48: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:19:03.78 ID:NZJkv/5U0


     第18章 白鷲舞う


元・統一王【七英雄】が一人。
現・ヴィップ尚書令(行政長官)兼【青雲騎士団】団長、兼アマレット砦主【白鷲】フィレンクトは
誰もが認める気難しい男だ。

朝は日の出と共に起床し、水を頭から浴びてから一刻(約二時間)の鍛錬。
5斤(15kg)の鉄棍を隻腕で軽々と操り、終えると湯を浴びて身支度を整える。
この時。平時では官服・戦時では戦外套を身に纏うのだが、それには染みの一つ・皺の一つもついてはいない。
当然のように白髪もピッタリと背後に撫で付けられている。

朝食は蜜を匙1杯流し込んだ茶と煮付けた雛鳥の胸肉を挟んだ【包】。
包、とは食物を挟んで食べる蒸しパンのような物で、食パンと中華まんの中間を想像すれば良い。
朝食が終われば実務。
二刻の後に昼食……と、このような生活を30年以上も続けてきた。
この老将が子を成さなかったのも、あまりの几帳面さに妻が嫌気を差した・子を作る時間が無かった、
等言われており、それがつい最近まで正説として扱われていたのは諸兄らもご存知だろう。

が、昨年アルキュの国立図書館から発見された【正史フィレンクト伝】の中によれば、
彼が気難しい性格になったのは後年の事であり、若かりし頃は数多くの恋人を同時に持っていた、と記述にある。
当時、貴族が複数の愛人を囲うのはそう珍しいものでもなかったが、平民ともなると話は別だ。
そこには数多くの、昼夜に亘る武勇伝が存在している。
後に彼が団長を務めた【薔薇の騎士団】とは彼のそのような淫行の伝説を皮肉っての物であり、
にもかかわらず彼が子を持たなかったのは、生来彼が子を作れぬ体質だったからのようだ。

故人とは言え、彼の名誉の為にもこの抜け落ちていた章は発見されぬほうが良かっただろう。
もしかしたら、彼を尊敬する歴史家の一人が故意に隠していたのかもしれない。



50: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:22:23.69 ID:NZJkv/5U0
ξ;゚听)ξ『……』

そのような彼だから、上半身裸の様相で城門前に姿を見せた時
少数を除く誰もが眼を見開いて驚いた。

老人とは言え、その肉体は鍛え上げられ、しなやかな柳を思わせる力強さを誇っている。
失われた左腕の傷口こそ痛々しいが、本人にはそれを気にする様子は微塵も無く残された右手に黒々と鈍く輝く鉄棍を下げていた。
そして、背に掘り込まれた飛翔する白鷲。
銀色の具足で両足を守っている。

(´・ω・`)『【引き千切る猛禽の爪】復活…という訳ですか、フィレンクト老』

興奮冷めやらぬ、と言った表情のショボンを老将は一瞥した。

(‘_L’) 『陛下に絶対の信頼を頂いたこの戦。負けるわけにもいきませんからな。
      気合も入ろうと言うものです』

そこに一人の女戦士が駆け寄ってくる。
身に纏うは赤い給士服。そして、猫を模った具足。
今ではすっかり【燃え叫ぶ猫耳給士】と呼ばれる事を諦めてしまったヒートである。

ノパ听)『先生!! ジョルジュ隊から伝令!!
     メンヘルは隊を2つに分け、総大将ジタンは自らキールに向かったそうです!!』

それを聞いてフィレンクトは満足そうに頷いた。

(#‘_L) 『我に続け!! 勝利は我にあり!!』

号令をかける老将に、全ての将兵が喚声で持って答えた。
兵は少ないが、皆共に戦意は高い。



52: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:25:33.48 ID:NZJkv/5U0
         ※          ※          ※

( ・へ・)『くそっ。騎兵を分けて正解だったな』

一方その頃。
キール山脈から東進、アマレットを目指していたジタンはその足元の悪さに苦戦していた。
山道は一応砂利を敷き詰めて塗装はしてあるが、お世辞にも丁寧な仕事をしているとは言いがたい。
おそらく本来は山の獣を狩る猟師達が使うものなのだろう。
慣れている者が然るべき装備を整えたうえで進む道だった。

                             (兵;゚∀゚)『うあっ!?』

また背後で兵の悲鳴が聞こえる。
足を滑らせて転倒でもしたのだろう。
所々に乾燥した岩山が点在しているとは言え、メンヘルは元々砂漠の民。平地に生を送る者達だ。
当然このような荒地には慣れていない。
そのような彼らにとってキールの山道は正に未知との遭遇であり、足を挫く者が続出した。
それならばまだ良い。
時には片側が斜面になっている道を行かねばならぬ時もあり、
一度は騎馬に跨った百人将が複数の兵を巻き込んで転落、死亡したのである。
以来、ジタンは自身を除いて全ての騎兵に下馬しての行軍を命じなければならなかった。

lw´‐ _‐ノv 『この先に小さな平地があるみたいだね』

四人の兵に担がれた籠に乗る【光明の巫女】シューが言う。
その手には、途中擦れ違った猟師から買い上げた地図が握られていた。



55: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:28:03.71 ID:NZJkv/5U0
( ・へ・)『このままでは兵の集中力ももつまい。そこで一旦休憩するか』

自身も若干の疲れを感じていたジタンは、後続の兵全てに伝わるよう鐘を鳴らさせる。
それを聞けば疲れきった兵たちも残る僅かな気力を振り絞って歩を進める事が出来るだろう。

( ・へ・)『……よし、行くぞ』

誰に言うでもなく口に出した。
己に喝を入れなおし、途切れかけていた集中力を繋ぎとめた猛将は
軽く愛馬に行進開始の合図を送る。

lw´‐ _‐ノv 『平地を抜けるとすぐに東へ向かう間道がある。
        そこを抜ければこの山登りもお終い。アマレットは目の前だね』

訊ねた訳ではないのだが、巫女はそう教えてきた。

( ・へ・)『そうか。ならばここで気力を充実させ、一気呵成に攻め込もうとしようか』

そう答えてやる。
高度的に考えて、シューの言う平地にたどり着けばアマレット城を見下げる事が出来るやも知れない。
そして、攻撃の際も下りの勢いに乗って一息に押しかかる事が出来るだろう。

そんな事を考えていると、ようやく件の平地が見えてきた。

( ・へ・)『ぬ?』

そこでジタンは思わぬものを目にする。



58: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:30:12.06 ID:NZJkv/5U0
(A゚∀゚)『え?』

(B゚A゚)『あ、あわわわわわわわ』

そこでジタンらが遭遇した者。
それは、北の兵士が好む甲冑。
獣の皮に薄い鉄を貼りつけたそれを着込んだ、20名ほどの兵の姿だった。

(C;゚∀゚)『な、なんでメンヘル軍がこんな所にっ!?』

(D゚A゚)『し、知るかっ!! 折角ここまで来て殺されてたまるかっ!! 早く逃げるぞっ!!』

石を組んで簡単な竈を作ろうとしていた彼らは、取る物も取らず北の山道へ逃げ込もうとする。

(#・へ・)『ぬぅ!!』

それを見たジタンは全てを理解した。
仲間がいる筈の東では無く、北へ逃げていく兵士達。
ジタンらの襲撃を伝えれば恩賞にも与れよう。
にもかかわらず、それをしないのは出来ない理由があるから。
つまりは脱走兵である。

(#・へ・)『逃がすな!! 皆殺しにしろ!!』

もしも彼らのうち一人でも生き延びてフィレンクトにキールからの襲撃を伝えたら?
それだけで計画はフイになってしまう。
更に言えば、彼らは脱走兵であり。尚且つ敵前において逃亡までしようとしていて。
虎殺しの猛将から見れば、許しがたい大罪人であった。
周囲に従う兵に命を下すと、彼自身も巨大な鎚鉾を振りかざし、逃げる者達に襲い掛かる。



59: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:33:07.45 ID:NZJkv/5U0
(#・へ・)『ぬんっ!!』

手にした鎚鉾を無造作に振り切る。
鎚鉾とは、長柄の先に棘付きの鉄球を生やした武器だ。
剣や槍、斧の類と違って刃を持たず殺傷の際に流血させる事が無い為、神官戦士が好んで使用するが、
その実はどうだったのだろうか?

答えは否、だ。
先端に重心を集中させ、更に凶悪な棘を持つ鎚鉾は『神の慈悲』などと全く無縁の武器である。
今も見よ。
ジタンの振るう一撃を避けきれずに脇腹に受けた兵士は、
まるで体内に仕掛けられた火薬が破裂したかのように、その部位から腸と砕けたあばら骨を撒き散らした。
よたよたと二・三歩。逃げようとする彼は、自身に起きた惨状など理解していない。
前のめりに倒れこみ、絶命した。

(A;゚∀゚)『ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』

顔面に襷でもかけるかのように腸を巻きつかせた兵士が尻をついている。
ゴルフスイングの要領で鎚鉾を顔面に叩きつけると、あたかも最初から『固形物ではなかったかのように』四散した。

(D゚A゚)『は、早く山道へっ!!』

が、運悪くジタンに近い距離に居たのは二人のみで。
残る者達は兜も放り捨てて逃走に入っている。

(#・へ・)『逃がすな!! 血祭りにあげてやれ!!』

早くも血肉を滴らせる愛用の獲物を振り上げ、猛将は叫んだ。



62: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:36:33.09 ID:NZJkv/5U0
追うジタンは騎馬。逃げる兵士達は徒歩である。
が、逃走者達は山道に慣れているのか、両者の距離はなかなか縮まらない。
離れかけては追いつき、追いつきかけては離れる。その繰り返しである。

lw´‐ _‐ノv 『ジタン、待って。ストップストップ』

そこへ駆けつけたのは紅白の巫女服に身を包んだシューだ。
馬を駆れない彼女は、一人の騎士の背にしがみつく様にしてようやくジタンに追いつく。
先端をリボンで縛った黒髪が風に揺れていた。

(#・へ・)『止めるな、シュー!! 鴉に頭上を越されるような真似をされて大人しくしていられるか!?』

それは今も信じられている迷信に過ぎない。
が、信心深かった当代の話である。
更に言わせれば、フィレンクトに急襲の事実が伝わる危険性もあり、
序戦において一太刀も交えず敵兵を逃がしたとあっては縁起が悪くて仕方が無い。
しかし、それでもシューはジタンの袖を捕らえて離そうとはしなかった。

lw´‐ _‐ノv 『落ち着いて周りを見て。ここは絶澗。一刻も早く離れるべき』

( ・へ・)『な…絶澗!?』

その言葉にジタンは我を取り返した。
いつの間にか、彼らの軍は左右を切り立った崖に挟まれた山道に誘い込まれている。



66: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:40:22.77 ID:NZJkv/5U0
孫子兵法に曰く。
軍を置くに危険とされる場所、六害あり。

断崖に挟まれた、谷間の場所・絶澗。
井戸の中のように四方がそびえている場所・天井。
牢獄のように三方を囲まれた場所・天牢。
羅(網)にかけられたように草木が密集している場所・天羅。
ぬかるんだ沼地・天陥。
両側から地形が迫っていて先細っている場所・天隙。

戦においてはこれらの危険地帯に近寄ってはならないのは勿論。
敵を誘い込む、追い込む事が重要な戦術となる。
それは兵学を学んでいなくとも、熟練の将ならば経験で知りうる基本戦術。
そして、今彼らは知らず知らずのうちに危険地帯に足を踏み入れている。

(;・へ・)『い、いかん!! 撤退の鐘を鳴らせ!!』

慌てて側の兵に命を下すジタン。
が、その命令を兵が実行に移そうとした直後。

左右の崖の上から攻撃の合図を示す銅鑼が鳴り響き、頭上に雨のような矢が降り注がれた。



67: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:43:04.32 ID:NZJkv/5U0
崖の高さは大人の背丈にして五人分程。
当然直接攻撃による反撃は届かない。
また、切り立ったそれは鶴嘴や鉤等の装備があればまだしも、常人が楽に登れるような角度でもなかった。

(兵1゚ー゚)『う、うわっ!?』

(兵2゚ー゚)『ひいっ!?』

思わぬ急襲を受けた兵達の様は、まさに混乱の極みと言うべきであった。
何が起きたのかも分からぬうちに額を打ち抜かれ絶命する者がいる。
足場を取られ転倒する者がいる。
それらに足を引っ掛け転がる者がいる。
為す術もなく右往左往するメンヘル兵達は、崖の上の襲撃者からすれば良い的でしかなかった。

lw´‐ _‐ノv 『円陣を組んで。早く』

その中で一際早く態勢を整えたのは【光明の巫女】シューの周囲にいた兵達だ。

lw´‐ _‐ノv 『頭上に盾を構えて矢を防ぐ。密集陣形を組み、砂亀の甲羅が如く身を守りなさい』

奇襲の可能性を念頭に置いていたからこそ下せた指示だった。
縋る様な心境でシューの指示に従った兵達は、すぐにそれが的確なものであった事を理解する。
そして、それを見た他の兵達も右へ倣えとばかりに密集陣形を取り出した。

lw´‐ _‐ノv 『これで…被害の拡大は押さえられる筈』

(;・へ・)『す、すまぬシュー。しかし…一体何故……』



68: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:44:44.49 ID:NZJkv/5U0
素手で虎を殴り殺した猛将として名の知れ渡っているジタンであるが、決して愚鈍な男ではない。
気位が高く血気盛んすぎる部分があるが、本質は謀にも精通した将である。
そもそも、【智謀の民】メンヘル出身の彼が戦略戦術の類を学ばぬ筈も無く。
彼がそれらを認めようとしないのも、あまりにも武に重きを置いているからにすぎない。

後年。
この猛将はそれまでの反動とばかりに智謀に長けた将へと生まれ変わった。
しかし、それは時すでに遅く。
彼の心に強い慙愧の念を残す結果になるのだ。

あるメンヘル民族主義者は著書の中で言った。
━━━━━分析力に長けた【不敗の魔術師】ツー。
独特の感性を持つ【金剛阿】兄者。
野生的な直観力の持ち主【羅王】ミルナ。
彼らとは種を異にする天才【雷獣】。
そして、【打虎将】ジタン。
【天使の塵】フッサールの下、五人もの知勇兼備の将を備えたメンヘルは
その経済力もあって間違いなく当時最も力を持つ民族だった。
惜しむらくは皆が皆『個』が強すぎて力を一つに出来なかった事であろう━━━━━。

この彼の意見はメンヘルと言う一つの民族に固執するあまり、他領土に輝く数あまたの星々を見逃しているように思える。
しかし、それでもある一面を正確に捉えた言葉であることに代わりはない。

lw´‐ _‐ノv 。oO(一体何故? 考えなくても分かりそうな事)

兎に角。
【光明の巫女】ことシューは言いかけて口をすぼめた。
彼女とてジタンの頭が単なるお飾りではない事くらい承知している。
ただ、武に頼りすぎる反抗心が視界を狭めているだけなのだ。



70: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:48:05.18 ID:NZJkv/5U0
lw´‐ _‐ノv 『落ち着いて。我が軍はフィレンクトの策に嵌った。
        今は状況の好転を計るべき』

(;・へ・)『フィレンクトの!? だがしかし…いや、それならば…』

人は己の失敗を認めたがらない生き物だ。
特に、彼のように気位の高い人物ほどその傾向が強く出る。
葛藤しつつも自身を沈め状況の分析を計れる強さを彼は持っていた。

今、この時彼らは左右から矢の雨を浴びてはいるが、直接的な交戦は行なっていない。
一方的にやられているしか無い状況だが、勝ち目が無いからこそ選ぶ道はシンプルである。
つまり、身を固め危険地帯からの脱出を図る事。
それこそが唯一にして最適の判断である筈だった。

しかし。
その目論みも脆くも瓦解する事となる。
何故なら、彼らの進行方向より高らかに銅鑼が鳴り響き。

(#・へ・)『ぬ!? ぬぬぬぬぬ……あ奴はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

lw´‐ _‐ノv 『げ。落ちt』

落ち着いて、と言う間も無くジタンは愛馬の腹を蹴り駆け出した。

( ゚八゚)『ひゃっほーーーーーーーっ!!!』

何故彼は突如自制心を失ったのか?

それは、突如躍り出てきた集団の先頭に見覚えのある鯰髭の巨体を確認したからである。



73: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:52:33.23 ID:NZJkv/5U0
( ゚八゚)『オラァッ!!』

槍をしごきつつ叫び声と共に突っ込んできた男は、擦れ違い様に複数の兵を突き殺した。
野生の熊を思わせる肉体から放たれる一撃は兵卒に支給される甲冑では防ぎきれない。
ただの一振りで人間の体に大穴を開け、槍が引き抜けぬと見るや強引に振り回して放り捨てる。
その男。テネシー公ダニエルの登場で一度は落ち着きかけたメンヘルの兵達は再び狂乱に陥った。

(#・へ・)『ぬがぁぁぁぁぁぁっ!! 薄汚い裏切りものがぁっ!!』

そこへ迫ったのは【打虎将】ジタンである。
慌てふためく兵を跳ね飛ばし、頭上を飛び越え騎士の頭上に鎚鉾を振り下ろす。

(#・へ・)『主を裏切り、今度は我らに牙をむくか!! その先に何がある!!
       自身の滅びだけがあると気付かんのか!?』

猛将はダニエルがフィレンクトに篭絡され再び寝返ったと思ったのだろう。
しかし、ダニエルはニヤリと笑うと

( ゚八゚)『裏切り? 馬鹿言うんじゃねぇよ。俺様の主はどこまで行っても金獅子王ツン=デレだ。
     騎士が一度認めた主を裏切るような真似する筈がねぇだろうが』

言ってその鯰髭を毟り取った。

( ゚∀゚)『冥土の土産に覚えておきな!! 俺様は金獅子王が臣、司書令万騎将【急先鋒】ジョルジュ!!
     大鎌でなくて済まねぇが……その命俺様が貰い受けてやるぜ!!』

瞬間、ジタンの脳内で何かが切れる音がする。

(#・へ・)『貴様ぁっ!! 最初から謀っていたのかぁっ!!』



74: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:54:54.71 ID:NZJkv/5U0
十合、二十合と両雄は己が獲物を叩きつけあう。
共に猛将と謳われる二人である。
その一撃は受けるだけで全身を軋ませ、金属音が谷間に響きわたった。

(#・へ・)『うがぁっ!!』

( ゚∀゚)『よいしょーっ!!』

本来、二人の実力は互角。
そして、ジタンが冷静さを欠いているならばジョルジュは愛用の大鎌をヴィップに残してきている。
故に決着は長引くかと思われた。

lw´‐ _‐ノv 『今のうち。鬼の居ぬ間につまみ食い』

そこで動いたのはシューである。
恐るべき手試れであるジョルジュをジタンに。
前方からの襲撃には長槍を持つ兵を当たらせ後方への撤退を計った。

が、非情にも崖上の存在はそれを良しとしない。

???『特攻せよ!! 一人として生かして帰すな!!』

命令の声と共に、彼らは左右の斜面を滑り降りる。
三方からの一斉攻撃に討って出たのだ。



77: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 22:57:21.80 ID:NZJkv/5U0
( ゚∀゚)『へへっ。来たな』

野生の獣でも躊躇しそうな急斜面を臆する素振りすら見せずに駆け下りてくる騎馬の群れ。
それを確認するとジョルジュは大きく鎚鉾を弾き、隙を突いて馬首を返した。

(#・へ・)『貴様!! 逃げるか卑怯者め!!』

しかし、ジタンの挑発はその心に響かない。
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、その背後を指差した。

( ゚∀゚)『バ〜カ。テメエの相手してるよりもっと楽しい事が始まるんだよ。
     【引き千切る猛禽の爪】フィレンクトが久々に本気を出すんだ。
     よく見ておかないと損するぜ』

【引き千切る猛禽の爪】フィレンクト。
憎むべき政敵【天使の塵】フッサールと同じ統一王七英雄に数えられる男。
その言葉に猛将は思わず振り返る。
そこで目にした物は━━━━━。

(#‘_L) 『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!』

轟雷が如く雄叫びをあげ、両の足だけで巧みに馬を操り斜面を駆け下りてくる騎士の姿だった。
一糸纏わぬ上半身は充実した剣気に包まれ、触れた大気が湯気となって蒸発していく。

(兵;゚∀゚)『ひぃっ!!』

哀れ、その到着点でまごついていた兵士は。

軽く振るわれただけの鉄棍に、首を跳ね飛ばされていた。



78: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:00:07.10 ID:NZJkv/5U0
(;・へ・)『ぬ!!』

その光景にジタンが目を疑ったとしても無理はあるまい。
フィレンクトが手にしているのは、ただの円柱形の鉄棍だ。

(#‘_L) 『敵将ジタン!!!!!! その首貰い受けますっ!!!!!!!!!!!!』

艶やかな鹿毛の愛馬を鐙だけで巧みに操り、一直線に駆けて来る。
手にした凶器が振るわれるたび、逃げ惑うメンヘル兵の首が。腕が。上半身が宙に舞った。

( ・へ・)『面白い!! 受けて立つぞ!!』

猛将は思わず身震いした。
恐怖ではない。武者震いと言う物だ。
いまだかつてない強敵を前に、全身が喜びに震えている。

想像してみて欲しい。
何の変哲もない、そこらに転がっているような鉄の棒で人体を切断し跳ね飛ばす。
それにはどれ程の膂力が必要であろうか?
どれ程の速さが求められるのか?
常人では辿り着けぬ高みにまで自身を鍛え上げた男がそこにいた。

対するジタンもまたメンヘル一の猛将と讃えられた男である。
単純な力比べでは【神の巨人】クックルに引けを取る物の、一刻と時を限っての戦であれば他者の追随を許さない。
そして、戦場において常に先頭を駆け生き残ってきたとの自負もあった。
愛馬の腹を軽く蹴って合図を送ると、虎殺しの男は鎚鉾の柄をしごきつつフィレンクトに迫る。



81: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:09:23.28 ID:NZJkv/5U0
(;・へ・)『なっ!?』

しかし、その自信も僅か一合獲物を交えただけで崩れ去った。
渾身の力をこめて振り下ろした鎚鉾。それをフィレンクトは軽々と弾き返して見せたのだ。

(#・へ・)『ぬおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!!!』

鎚鉾を両手で構えなおし、更なる力を持って叩きつける。
が、結果は変わらない。老将は三白眼でジタンを見据え、表情をピクリとも変えずにそれを叩き返した。

(;・へ・)。oO(馬鹿な!! 馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!?)

何度も何度も殴りつける。その全てを隻腕の鉄棍で弾き返された。
草葉の緑が濃くなる季節とは言え、山地の風は身に冷たい。
南部に生まれ育った者からすれば、尚の更である。
それでも全身から汗を噴出させるようにして振るう一撃は、どれも老将の身に届かない。

(‘_L’) 。oO(ふむ)

涼しい顔をしてはいるがフィレンクトはジタンの実力に心中舌を巻いていた。
あまりに荒々しくはあるが、その力は愛弟子ジョルジュに引けを取るまい。
いや、事実としてフィレンクトとジタンの間にも目に見えるほど大きな差があるわけではないのだ。
二人の間にある物は、経験や冷静さを崩さないポーカーフェイスなど些細な程度の物。
老将はそれを最大限に利用してあたかも天と地ほどの実力差があるように見せ付けているのだ。

(‘_L’) 。oO(しかし、まだ若い)

その荒っぽさは自身の若き日や、出会ったばかりの頃のジョルジュを思い出させた。
心を磨き上げ鍛錬を積めばメンヘルの一端を担う将になるだろう。
そして。だからこそこの場で殺しておかなくてはならない。



82: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:11:51.67 ID:NZJkv/5U0
(#・へ・)『くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!』

砕けんとばかりに固く握り締めた鎚鉾の一撃は、またしても軽くいなされてしまった。
馬上に悠然とある老将の姿は、今左右にそびえる赤茶けた崖よりも高く見える。
追い詰められた時、人は集中を欠き全く関係の無い事を心に浮かべてしまう物だ。

この時ジタンの脳裏に浮かんでいたのは一軍を敗地に追いやってしまった責任。
そして、政敵であるフッサールの顔であった。

(;・へ・)。oO(そんな…【七英雄】とは…これ程までに化け物じみた存在であったのか!?)

鉄棍をもって人体を切断する。確かにそれは驚くべき技能だが、それだけでここまで差が開くとは思えなかった。
擦れ違いざまに叩き込んだ渾身の一撃をひょいと受け流され、それでも闘志だけは衰えぬ。
馬首を返すと愛馬の腹を蹴り、十数度目になろうかという攻撃を仕掛けに行く。

lw´‐ _‐ノv 『駄目。今は引くべき時』

フィレンクトとは戦うな。
【不敗の魔術師】ツーの言葉を信じ、シューは必死に制止の声を送っていた。
が、元が囁くように小さな彼女の声は猛将に届かない。
その声を背で跳ね返し、鎚鉾を振り上げる。

フィレンクトが動いたのは、正にその時だった。
それまで防御にのみ徹していた鉄棍を、初めて攻撃の為に振るったのだ。

(;・へ・)『ぬぁっ!?』

自身の攻撃より早く振るわれた横薙ぎの一撃を、危ういところで受け止める。
しかし、老将の腕は止まらず、自慢の鎚鉾をへし曲げながらジタンは馬の背から放り出された。



84: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:16:38.98 ID:NZJkv/5U0
後に【キール山道の戦い】と呼ばれるこの戦いによって【打虎将】ジタンは著しくその評価を落としたとされる。
が、それは数多くの不運が積み重なった物と見るのが正当な評価ではないだろうか?

まず、彼らがキール山脈に足を踏み込む以前【不敗の魔術師】ことツーが指摘したよう、
この戦いはメンヘルにとって必ずしも勝たねばならぬ戦ではなかった。
にも関わらず、攻めの武将である彼が総将を任された事。

臨機応変が求められるこの度の戦において、前進しか知らぬ当時の彼はあまりに不適であった。
多くの歴史家が指摘するよう、この場合は地に詳しく柔軟な考えを持つツーこそが最適な人事であった筈である。
ジタンがこの戦の総将に選ばれたのも、彼が反フッサール派。引いてはモナー陣営に属していたからに他ならない。

続いて、敵将が政敵フッサールと同じく統一王七英雄に数え上げられる人物【白鷲】フィレンクトであった事。
これによって彼は引く事が出来なくなってしまった。
もしこの場で身を引けば、フッサールと同格の将に負けたという事。
つまりは、フッサールにも勝てぬと自ら認めるようなものだからである。

最後に、敵将フィレンクト。
ジタンは誤解しているが、同じ【七英雄】とは言えフィレンクトとフッサールはその能力を著しく異にしている。
軍を率いる戦に長けた【天使の塵】フッサールや【預言者】モナー、【常勝将】シャキン・【全知全能】スカルチノフと違い、
フィレンクトや【人形遣い】フォックスは個人の武によってその高みを得た存在である。
隻腕の老将が智に長けた戦をするようになったのは年を経てからの事であり、
統一王ありし時代に知勇兼備を持って戦場を駆けた七英雄は【勝利の剣】【夢幻剣塵】の異名を持つ男、モララー一人であったのだ。

天聖十字槍という至宝を持ちながらも知略の将であるフッサール。
片腕を失いながらも武力の将であるフィレンクト。
そもそも、比較すべき土俵が違っていた事こそ、最大の不幸。

そして今、落馬の際に一時的な脳震盪を起こしたのか?
グッタリと横たわって動けない彼に止めを差そうとフィレンクトが鉄棍を振り上げる━━━━━。



86: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:19:23.71 ID:NZJkv/5U0
しかし。
その鉄棍が振り下ろされる事は無かった。
何故なら、総将の危機を救わんとメンヘル軍が彼目掛けて一斉に矢を放ってきたからである。
よってフィレンクトは振り上げた鉄棍をそれを払い落とすのに使わねばならなかった。

(#‘_L) 『ちっ』

思わず吐いた舌打ちは、若かりし頃に。【引き千切る猛禽の爪】と呼ばれていた頃の彼に精神が戻っていたためか。
日頃の老将からは想像も出来ぬ行動だった。
が、それもやむ無しか。
将来の禍根を絶つ千載一遇の好機を逃したのである。

メン゚∀゚)ヘル『将軍を助けろ!! ありったけの矢を放て!!』

周囲ではメンヘル軍が勢いを取り戻しつつあった。
長槍を持つ者を前にして騎兵を牽制し、その背後では短弓を装備した兵が矢を連射する。
歩兵を中心にした部隊による騎兵対策としては完璧と言えよう。
【光明の巫女】シューによる指揮の元、ヴィップ軍は確実に勢いを削がれていた。
高みの見物を決め込んでいた【急先鋒】も今では戦場の中にある。

何故混乱の極みにあったメンヘル軍が突如反攻に移りだしたのか?
シューによる的確な指示も要因の一つだろう。
が、最も大きなそれは崖上から降り注いでいた矢の雨が止んだ事にある。

注意深く観察すれば、崖から転落して拉げた(ひしゃげた)ヴィップ兵の死体が目に付いた。
すぐ側に転がっているのは、中心で見事に切断された鉄製の大剣。
このような曲芸が出来る存在を、フィレンクトは一人知っている。
老将はその三白眼で崖上を睨みつけた。
輝きだけで人を殺せるほど強い視線の先には、両の手に獲物を下げた細身の影が一つ。
吹く風に腰布と左耳の上で縛り上げた長髪を揺らしている。



87: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:26:00.23 ID:NZJkv/5U0
???『あひゃーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!』

雄叫びとともに、影が大地を蹴った。
崖を駆け下りる、滑り降りるなどと言う悠長な選択肢など無い。
風を纏い、最短最速をもって老将に迫る。

(#‘_L) 『小賢しいっ!!!!!!』

???『あひゃっ!?』

落下の勢いを加算して影が叩きつけた一撃。
それをフィレンクトは手にした鉄棍を振るい、跳ね返した。
しかし、影の実力もさる者。
猫のように空中で身を捻ると、赤茶けた土埃をあげながら滑るようにして着地してみせる。

???『いやいやいやいや、やるねぇフィレンクト。このあたし様の不意打ちを避わすたぁ驚きだよっ!!』

(#‘_L) 『不意打ち……と言うからにはもっと密やかに行なうべきでしたね
      そもそも、あのような蛮行が出来る剣を貴女の【かみつき丸】以外に私は知りません』

皮肉を込めた忠告を影は笑って受け流した。
彼女の存在がある事をフィレンクトに知らしめた凶器━━━━━
鮫の歯を思わせる刃を持った武器破壊用の短剣を尻の辺りに下げた鞘に仕舞いこむ。
代わって腰の脇に下げた鞘から円錐形の凶器を引き抜いた。
その切っ先を老将に向け、高らかに叫ぶ。




さぁ、殺しあおうかフィレンクトッ!! 今日という今日はぶち殺してやるさっ!!



89: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:29:28.87 ID:NZJkv/5U0
(‘_L’) 『良いでしょう。長い因縁に決着をつけるとしましょうか』

言って【白鷲】は、すぅと息を吸い込んだ。
吐き出さず丹田に力を込め、鉄棍を握る手を絞りこむ。
上半身を包む薄絹と下半身を覆う腰布。
その奥にある褐色に焼けた身体は滑らかな曲線を描き、場所が場所なら全ての男が鼻の下を伸ばしたであろう。
が、フィレンクトは気を許さない。
何故なら、彼女の恐ろしさを誰よりも知っているからだ。

この女戦士と【打虎将】ジタン。
純粋な戦闘能力だけを鑑みれば、前者は後者に僅か及ばないだろう。
にも拘らず、彼女は幾度にも亘る北征で老将と剣を交える事二十戦以上。全て生き延びてきた。
相性の問題である。
漂々と風に揺れる柳のような性格の彼女は、その剣術・体捌きもまた一定の型に囚われない。
水に広がる波紋が如く、一度として同じ形を作ろうとせず。かと思えば全く同じ剣戟を気まぐれで放ってみせる。

そして、彼女が愛用する三本の短剣。
武器破壊に長けた【かみつき丸】。
刃を持たぬ代わりに刺突と受け流しに適した【つらぬき丸】。
重心を剣先に集め、非力な女子供でも人体を破壊できるよう計算された【なぐり丸】。
その全てはニイト公モララーの【勝利の剣】と同じく、ラウンジの遥か北にある神話の国よりもたらされた物とされ、
メンヘル族の至宝とも言えるフッサールの【天聖十字槍】や、現在行方が知れぬ【七星宝剣】と並ぶ神具である。

細身の体で【七英雄】フィレンクトと互角に渡り合う異邦の女戦士。
手にした刃の輝きの神々しさも合わさって、人はそこに人知を超えた何かを感じ取ったのであろう。
故に、その異名を【魔術師】。

(*゚∀゚)『上等さねっ!! その白髪頭、潰れたチェリーパイに変えてやるよっ!!』

メンヘル十二神将・第二位【不敗の魔術師】ツー。



91: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:32:59.28 ID:NZJkv/5U0
(;゚∀゚)『て、てめぇ!! 腐れ脳味噌変態女!!』

以前にツーが忍んでヴィップを訪れた際の記憶が甦ったのか、槍を振るうジョルジュが忌々しげな叫びをあげた。

(*゚∀゚)ノシ『にょろ〜ん♪』

( ゚∀゚)ノシ『にょろ〜ん♪』

…。

(#゚∀゚)『じゃねEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEッ、馬鹿女ッ!!!!!!!!!
     何でテメェがここにいやがるっ!!』

(*゚∀゚)『うぇrvgbhんm、lhyfjぷーwwwwwwwwwwwww』

(#゚∀゚)『何言ってんのかわかんねーよ!!!!!』

(*゚∀゚)『眉毛お化けには教えませんwwwwwwwwwwwwぷぷぷぷぷぷーwwwwwwwwwwwwww』

(#゚∀゚)『よし、殺す!!!!!!』

長槍を風車が如く頭上で回転させ、一騎討ちを挑む。
が、愛馬を駆けさせようとした所で、横からずいと差し出された鉄棍に通行止めを喰らってしまった。

(#゚∀゚)『先生!!』

(‘_L’) 『落ち着きなさい、ジョルジュ』



92: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:36:50.74 ID:NZJkv/5U0
(‘_L’) 『彼女の相手は私です』

(;゚∀゚)『……ハイ』

そう宣言し、馬をゆるりと進める師を前にジョルジュはピクリとも動けなくなってしまった。
今の師は枝上で羽を休める【白鷲】ではない。
そうするのが当然と言わんばかりに獲物の血で全身を染め上げる【引き千切る猛禽の爪】だ。
その進路を妨害する者は、例え弟子であろうと容赦はしまい。
ただ、ただ大空の王を彫りこんだ師の背中をジョルジュは見送る。

(‘_L’) 『貴女の事だ。隊を分けると同時にアマレットに間者を送り込んだのでしょう。
      そして、砦内に私の姿が無い事を知るやキールに進路を変更した。
      違いますか?』

(*゚∀゚)『ご名答だよ、フィレンクト』

答える彼女は両手をダラリと下げた格好で老将を迎え討たんと身構えていた。
軍を分断しての各個撃破。
フィレンクトの狙いが分かれば、自然襲撃場所も絞られる。
そうなればギムレットやキールはツーにとって、かつて知ったる他人の家だ。
最短距離を取って駆けつけ、自軍が襲撃されていると見るや崖上のヴィップ軍を征圧にかかったのだろう。

地に伏せていた【打虎将】ジタンの体はメンヘルの兵によって救出されていった。
失った獲物は大きい。
が、フィレンクトはそれに構っている余裕など持っていない。
何せ、目の前にいるのは恐るべき魔術の使い手なのだ。



93: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:38:48.41 ID:NZJkv/5U0
(‘_L’) 『ジョルジュ、軍を引きますよ』

(*゚∀゚)『シュー。あたし様が来たからには安心おし。撤退の準備を』

互いから目を離さず、背後の者に声をかけたのは全くの同時だった。
フィレンクトにとっては、この戦はこれ以上続ける価値が無い。
メンヘルには十分に打撃を与え、ここから先は消耗戦になるだけだからである。
ツーにとっても、この戦に継続の意味を感じ取れない。
元々参戦する価値の少ない戦いだ。高台を制し、撤収のタイミングは今の他無かった。

(*゚∀゚)『おや? 気が合うじゃないかフィレンクト』

(‘_L’) 『そうですね。不愉快極まりないですが』

そうなると、邪魔なのは目の前の存在だけと言う事になる。
両者の距離は既に間合いの半歩先。
揃って獲物をだらしなく下げた姿勢を取っているのは、互いの剣気が触れ合った瞬間に備えているからだ。
地上のツーと馬上のフィレンクト。
二人の間合いはとうとう触れ合う寸前まで近づき、火花を散らしている。
その距離を保ったままで魔女と白鷲は円を描くように足を進ませていた。

(;゚∀゚)『……』

lw;´‐ _‐ノv 『……』

退却の指揮を任された者が、最前列で見守る中。

(*゚∀゚)『アッヒャアヒャにしてやんよっ!!』

最初に動いたのは砂漠の魔女。



95: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:42:04.54 ID:NZJkv/5U0
突如踵を返した【魔術師】は勢い良く崖を駆け上がった。
当然、頂上どころか中域まで辿り着くことも出来ぬ。
が、それで良い。

(*゚∀゚)『アッヒャーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!』

彼女が手にした二本の短剣は揃って研ぎ澄まされた名剣であるが、
馬上のフィレンクトに対しては圧倒的に長さが足りない。
それ故の行動だ。
駆け上がる事で高さを得ると、崖を蹴り老将に襲い掛かる。

(#‘_L) 『ぬん!!!!!!!』

初撃は左手に持つ【つらぬき丸】による刺突だ。
当然のように迎撃されるが、計算のうち。
素早く攻撃を止め、突き出された鉄棍を絡めるようにして受け流す。
真の狙いはその際に生じた脇腹の隙━━━━━

(;*゚∀゚)『にょろっ!?』

しかし、その隙もまたフィレンクトによるフェイントだった。
受け流されたかのように見せた鉄棍をくるりと回転させ、横薙ぎに魔女の腹を砕きに行く。
今度は左右どちらの防御も間に合わぬ。
そう見るや彼女は丸まりこむようにして、両足の裏で一撃を受け止めた。
薄いサンダルの裏地が衝撃を伝えるより早くそれを蹴り、中空に逃れる事で回避する。
そのまま宙で身を捻ると、音も無く大地に降り立った。



97: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:46:07.29 ID:NZJkv/5U0
(;*゚∀゚)『痛ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!』

大袈裟にピョンピョンと跳ねてみせる女戦士の姿を見てフィレンクトは愛馬の腹に蹴りを入れた。
一気呵成に終わらせる。

(*゚∀゚)『あひゃ』

(‘_L’) 『!?』

瞬間、両足を痛めたかと思われたツーが大地を蹴った。
両の短剣をふわりと宙に放り投げると、腰のくびれを飾っていたギヤマンの玉飾りを引き千切る。

(*゚∀゚)『焔星(ほむらぼし)っ!!』

(‘_L’) 『くっ!?』

その両手から正確に顔目掛けて放たれたギヤマン玉をフィレンクトはすんでの所で回避した。
大地に衝突し砕け散った玉に封じていた液体が、一瞬だけ弾ける様に青い炎をあげ鎮火する。

(*゚∀゚)『ありゃ、外れた?』

(;‘_L) 『「外れた」のではなく「避わした」のですよ。危ないところでした。
      貴女にはこれがあったのを忘れていました』

鹿毛を持つ愛馬を制止させ、答えながら棍を握りなおした。
足の痛みなど元々全く無かったのだろう。軽やかに着地した女戦士は再び手にした二本の短剣を玩び笑っている。
焔星。彼女の身を飾るギヤマン玉の正式名称だ。
中には燐と発火性液体の混合水を閉じ込めており、強い衝撃と酸素を与える事でほんの一瞬だけ火を放つ。
自体に殺傷力は無く精々目くらまし程度が関の山だが、彼女にとってはそれで十分。
視力が回復する頃に相敵していた者の首は地に落ちている、と言う寸法である。



98: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:48:41.78 ID:NZJkv/5U0
(;゚∀゚)『……はぁ』

ほんの数秒間で幾度も殺されかねない程、緊迫した空間で軽口を叩く2人。
彼らが間を空けたところで、思い出したかのようにジョルジュは息を吐き出した。

(;゚∀゚)。oO(あの時先生が止めてくれなかったら…俺があの超弩級変態女と戦ってたのかよ)

そう思うと、背中に氷を這わされたような気持ちになる。
ツーの剣は軽い。
宙を舞い落下速度を剣戟に上乗せする技術や、短剣自体の重量を利用する事からも捌ききれぬ程ではないだろう。
また、変則的とは言え動きも捉えきれぬ程速いわけではない。
にも拘らず、この巨体の騎士は身を震わせていた。
何故か?

【打虎将】ジタンや【赤髪鬼】ヒートほどではないが、ジョルジュもまた直進タイプの猛将である。
彼の師と相対している女魔術師の戦い方は戦士というよりも軽業師を思い出させる物。
【天翔ける給士】ハインをより近接戦闘に特化させたスタイルと言えば理解が早いか。
そして、彼らのような猛将型の戦闘スタイルを持つ者は例外無くトリッキーなスタイルを苦手としているのだ。
例えるならば、水に拳を撃ちこむ様なもの。
岩をも砕けよと鍛えた肉体も、形無き水にはまるで意味を持たない。

(#‘_L) 『はぁっ!!!!!!!!!』

掬い上げる様な一撃がツーを跳ね飛ばした。
が、崖に叩きつけられる寸前で彼女は身を捻り、両の足で切り立った天然の壁に着地する。
そして、その衝撃を反動に変え、老将の頭上に飛びかかって━━━━━

(;゚∀゚)『……』

いつ終わるとも分からぬ戦いを、ジョルジュは為す術もなくただ見つめていた。



99: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:52:55.74 ID:NZJkv/5U0
         ※          ※          ※

(*゚ー゚)『おかえり』

結局、隻腕の老将がアマレット砦に帰還したのは翌々日、太陽が完全に顔を出しきってからだった。
戦場となったキール山脈の間道から負傷した兵を荷馬に積んで帰砦。
かの魔女とは三刻以上もの間剣を交えていた為、今頃になって全身の筋肉が痛みを訴え始めていた。

(‘_L’) 『陛下は…行かれましたか?』

愛馬の背を降りながらの問い掛けに、無口な女騎士はただこくんと頷いて答える。
万事予定通りだ。
キール山道の戦いの後に離別したジョルジュも今頃は合流している頃だろう。

(兵゚Д゚)『お帰りなさいませ、将軍閣下』

と、そこへ駆け寄ってきたのはしぃと同じく留守を任された兵の一人だ。
飛びつくように上官の愛馬の下へ辿り着くと、すぐさま鞍を外しにかかる。
日頃手入れを欠かした事の無い彼の愛馬も、今では砂埃が乾いた汗で張り付き、まるで野生馬のような有様だった。
たてがみもほつれ、ぶるると鳴らす鼻息も荒い。

(‘_L’) 。oO(まぁ、私も似たような風体なのでしょうが)

その老いを感じさせぬ肉体には、返り血と汗と砂の混合物がカサカサになって至る所に張り付いている。
出陣前と比べて長さが半分ほどになった鉄棍を兵士から受け取りながらフィレンクトはしぃをチラと見た。
火急の時とも思えぬいつも通りの表情と、湯浴み支度を抱え込んだ両手に。

(‘_L’) 。oO(ほんの少し休ませて戴くとしましょうか)

老将はふ、とそんな事を考えた。



102: ◆COOK./Fzzo :2008/10/22(水) 23:55:55.10 ID:NZJkv/5U0
結果から言えば、フィレンクトとツーの一騎討ちはまたしても痛み分けに終わった。

(*゚∀゚)『ぐっちゃぐっちゃにぶっ殺ーーーーーーーーすっ!!』

などと物騒な事を口にしながらも、彼女の目的は元より老将の首ではなかったのである。
フィレンクトを討ち果たせたとしても、疲弊した身体ではその背後に控える【急先鋒】ジョルジュまでは相手に出来まい。
そして、もし自分が敗れれば義妹【光明の巫女】シューや同胞の者まで危険に晒す事になる。
彼女が本当に求めたのは、自軍が安全地帯まで完全に撤退できるまでの時間。
故に全ての目を釘付けにするような派手な剣舞を披露してみせた。
しかし、それは大空の王を相手にした命懸けの綱渡りでもある。

戦いの終わりは、ツーの【かみつき丸】がフィレンクトの鉄棍を叩き折る形で終息した。
獲物の長さが変わろうとも、老将なれば十分に戦い抜いてみせただろう。
しかし、彼女はその隙をついて逃走した。

(‘_L’) 『……』

自室に続く廊下を歩きながら折れた鉄棍をよく観察すれば、刀傷が一箇所に集中しているのが見て取れる。
つまり彼女はその場任せの剣戟を繰り返すように見せながらも、注意深く攻撃を集めていたのだ。

(‘_L’) 。oO(またしても魔女めの魔術にしてやられましたか)

戦を終えればフィレンクトには砦主としての任が待っている。
このような状況では半刻ごとに新たな情報が飛び込んでくるであろうし、メンヘルの今後の動きも観察せねばならない。
が、今は身体を休める事を優先すべきだろう。疲弊した身体では頭脳の回転も悪くなるものだ。

(‘_L’) 『しかし…酒でも飲まねば寝られそうに無いですね』

戦には勝利したが、フィレンクト個人にしてみれば悔しさの残る戦いでもあり。
この借りは必ず。老将は一人思うのだった。



107: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:08:19.64 ID:rI9uj31K0
         ※          ※          ※

官*゚ー゚)『……お茶ですっ!!!』

翌朝。
いつものように鍛錬と水浴びを済ませ、パリッと身支度を整えた老将が実務室の座に腰を下ろすと
これまたいつものように官女が茶を運んできた。
が、その様子が尋常ではない。
重厚な机に叩きつけるようにして置かれた碗から茶が飛び散り、四隅を揃えた書類に染みを作る。
挨拶も無しに踵を返し、壊れるかと思うような勢いで扉を閉めて退出する姿にフィレンクトは目を丸くした。

(;‘_L) 『…これは…何があったと言うのでしょう?』

(*゚ー゚)『……』

思わず声にする。
彼がアマレット砦に赴任してきて以来、身の回りの世話をしてくれた官女だった。
どこぞの貴族が妾に産ませた子と聞いていたが、そのせいか貴族特有の鼻持ちなら無さがない。
気立てが良く、声に態度に自身を尊敬していると言ってくれる彼女をフィレンクトは可愛がっていたものだ。
手拭いで零れた茶を拭い、碗に口をつける。
啜る茶は憎しみが込められているように苦く、逆にそれが酒が残る頭にありがたかった。

(‘_L’) 『私も若くない、と言う事でしょうね』

キール山脈の戦いでは若かりし頃。【引き千切る猛禽の爪】と呼ばれていた頃の自分に戻った気持ちで戦った。
しかし、心は若くあったとしても肉体はそうは行かなかったらしい。
少なくとも白髪頭が黒々としていた頃は、あの程度の…酒場一軒店仕舞させる程度の酒では酔わなかったし、
どんなに暴れても今のように筋肉痛に悩まされる事は無かったのだから。

(*゚ー゚)『…変態』



109: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:14:03.67 ID:rI9uj31K0
と、老将が身の衰えを嘆いていると灰色の髪をした女騎士がぼそりと呟いた。
一瞬何を言い出したのかと耳を疑ったが、

(;‘_L) 『は、はぁ。そう言う事ですか』

その言葉でフィレンクトは少女の怒りの理由を知る。

(;‘_L) 『確かに…やりすぎたかもしれませんね』

年甲斐も無く気が昂ぶっていた。それは認めざるを得ないところだ。
尚且つ、高齢による衰えを悲嘆しつつも精神的には達観の域に達していない。
その矛盾は恥じねばならぬ所であろう。

(;‘_L) 『う〜む。私がこのような様では若い者に示しがつきませぬな』

(*゚ー゚)『うん』

(;‘_L) 『どうやら私は今まで以上に自重すべき課題があるようです』

(*゚ー゚)『うん』

表情こそ変わらぬが、この女騎士は喜んでいた。
かの官女はしぃにとっても友人であり、その彼女がフィレンクトを嫌うのは楽しい事ではない。
フィレンクトが自身の失態を反省してくれれば元々彼を尊敬していた官女の事だ。
すぐに関係は修復される事であろう。

(‘_L’) 『今後は戦場に出る際は甲冑を身に着ける事を誓いましょう』


(*゚−゚)



114: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:19:59.36 ID:rI9uj31K0
(;‘_L) 『……何か気に触りましたか?』

(*゚−゚)

(;‘_L) 『……あの子も年頃の娘です。
      このような老体を日の下で見れば「変態」と罵りたく気持ちも分かるのですが…
      違いましたでしょうか?』

(*゚−゚)

その深遠のような瞳で見れば、フィレンクトが本心から言っているのは分かる。
となれば昨夜の『大冒険』は彼の記憶に全く残っていないのだろう。
互いに思い描くシーンは違うとは言え、『気が昂ぶっていた』のもまた事実。
そして、男とは『血煙漂う戦場』だけでなく『香水薫る戦場』でもいきり立つ物なのだ。
例え天高く掲げる物が剣ではなく、別の物になろうとも。

(;‘_L) 『……しぃ?』

いつも以上に無口になったしぃは、首にかけていた手拭いで湿った髪をガシガシと乱暴に拭き取りながら
部屋を後にする。

(;‘_L) 『い、今なんと言ったのですか? それはどのような意味なのでしょうか?』

扉を閉める際、彼女が残した

(*゚−゚)『ちちしりふともも。ちちしりふともも』

と言う言葉の意味は、最後まで老将に理解できなかった。



118: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:24:45.31 ID:rI9uj31K0
(;‘_L) 『……厄日でしょうか』

幾ら考えても答えは出そうに無かったので、フィレンクトは二度三度首を横に振ってから報告書に目を通しはじめた。
こうなると夜の酒場で女の尻を追い掛け回していた目とは、全く別のそれになる。
キールの山道で崖の上に立つ魔女を睨みつけた時と同じ輝きであった。

茶で湿った報告書は、現代から見れば戦時と言う事もあって粗悪なものである。
特に保存を目的としない物であれば裏面の使い回しは日常茶飯事であるし、その癖劣化も早く破れやすい。
南のメンヘルではギムレットより遥かに質の良い紙を使っているのだが、
それは気候のせいで劣化の進行が早い・メンヘル族が知的財産を貴重に扱うと言う理由のほかに

         (*゚∀゚)『姿絵本は文化だっ!! メンヘルの宝だよっ!!』

などと主張する一部の人間によって製紙技術が異常に高い事に由来しているのだ。

とにかく、破けぬよう注意しながらフィレンクトは一枚一枚報告書を捲っていく。
時折茶が欲しくなって官女を呼ぶのだが、全く現れる様子が無いので
仕方なく彼は筋肉痛の体を引きずって自ら茶を入れねばならなかった。

一口に報告書と言ってもその内容は雑多な物である。
オリーブ村援助の為の糧秣移動。
軍馬鍛錬報告。
治水工事を行なう工夫の募集。
ある物はすぐさま廃棄し、ある物は印を押して保管用の箱に放り込む。
そんな中、一際しっかりした報告書が彼の動きをピタリと止めた。

(‘_L’) 『……【狂戦士】ダイオードがモテナイ王を名乗り独立を宣言…ですか』



121: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:29:57.45 ID:rI9uj31K0
報告書の日付を見ると、どうやら彼がキールより帰還した直後に届いた物らしかった。

(‘_L’) 『成る程…ダイオードはモテナイの出身だったのですか。
      ならばあの野心の大きさも納得という物ですね』

尖った顎に指をあて物思いに耽る。
この独立をリーマンやメンヘルはどう見るだろうか?
リーマンは当然非難するだろうし、メンヘルは支援するはずだ。
彼の独立を知り『寝入りに雨』とばかりにあたふたする者達の姿が目に浮かぶ。

(‘_L’) 『……』

しかし、この老将はこの独立を突然の事と捕らえていなかった。
むしろ遅すぎたとの思いもある。何故か?

元々流刑地のギムレット。中立地帯のローハイド。【海の民】に支配されているシーブリーズは除くとして。
キールは本来【人形遣い】フォックスと隠密衆の根城である。
バーボンは【常勝将】シャキンの封土であり、モスコーは【預言者】モナーによって治められている。
今では【無限陣】クーが王を名乗るニイトですら、以前は彼女の父【勝利の剣】モララーが。
彼の死後は【全知全能】スカルチノフが治世を行なっていた。

つまり、【七英雄】以外で領土を与えられていたのはダイオードただ一人なのだ。
その為には莫大な【贈り物】を必要としただろう。
野心を持たず、ただ悪臣に囲まれて自堕落な日々を送るだけであれば、必要であっただろうか?

それだけではない。
戦略に長けた【繚乱】イヨゥだけでなく、流浪の女軍師【一枝花】ロシェを召還し、更には闇で暗躍する影の存在を感じる時もある。
過去の密偵の報告によれば、ネグローニ城に潜入した山賊がイヨゥの妹を拉致しようとした事件があったらしい。
その時少女の背後に潜んでいた男が一人で十を超える賊どもを切り捨てたと言うのだ。
それも自身は全くの無傷で。



122: ◆COOK./Fzzo :2008/10/23(木) 00:32:47.44 ID:rI9uj31K0
その時。
一人の兵士が実務室に飛び込んできた。

(兵゚Д゚)『申し上げます!!』

彼の報告は、ヴィップ奪還に動いた【金獅子王】ツン=デレの事である。
道中エドワード率いる反乱軍と接触した王軍は、【天智星】ショボンの策もあってこれを撃破。

そして。

(兵;゚Д゚)『………将………戦……なさい…た』

(‘_L’) 『……良く聞き取れませんでした。もう一度お願いできますか?』

いや。
その声は確かに聞こえていた。
空気の振動は鼓膜を通して確かに脳に伝達された。
ただ。
ただ、信じたくない気持ちが伝達された情報が言語になるのを遮断したのだ。
兵は唾を飲み込んで喉を湿らすと、再びその言葉を声にする。

それは。


━━━━━【急先鋒】ジョルジュ戦死。


フィレンクトはその言葉を何度も何度も頭の中で繰り返す。
拳は固く握られ、皺のよった顔は心なしか青褪めていた。



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