( ^ω^)がどこまでも駆けるようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:29:31.64 ID:stEQpnSV0
登場人物一覧 ・ヴィップ軍
( ^ω^) 名=ブーン 異名=??? 民=???
武器=拐(刃の映えたトンファー) 階級=白衣白面隊長
現在地=白面の村 状況=訓練中
特徴=銀髪の神の青年。死んだと思われていたが生存。陰でツンを支える。
ξ゚听)ξ 名=ツン(ツン=デレ) 異名=金獅子王 民=リーマン
武器=禁鞭 階級=アルキュ王
現在地=ギムレット 状況=???。
特徴=金髪の少女。
ミセ*゚ー゚)リ 名=ミセリ 異名=無し 民=リーマン
武器=無し 階級=尚書門下(行政次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=医学・栄養学などに精通。髪飾りを集めるのが趣味らしい。
( ゚∀゚) 名=ジョルジュ 異名=急先鋒 民=リーマン
武器=大鎌 階級=司書令(司法長官)・万騎将・薔薇の騎士団団長
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=熊を思わせる大男。愛用の抱き枕が無いと眠れない。
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:30:24.25 ID:stEQpnSV0
- (´・ω・`)名=ショボン 異名=天智星 民=リーマン
武器=鉄弓(轟天) 階級=中書令(立法長官)・千騎将・黄天弓兵団団長
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=白眉の青年。ジョルジュとは義兄弟。馬鹿。
从 ゚∀从 名=ハイン(ハインリッヒ) 異名=天駆ける給士(闇に輝く射手・心無き暗殺人形) 民=???
武器=仕込み箒・飛刀 階級=中書門下(立法次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=黒髪が美しい黒衣の給士。料理以外の仕事は完璧
ノパ听) 名=ヒート 異名=燃え叫ぶ猫耳給士(自称) 民=リーマン
武器=鉄弓・格闘 階級=司書門下(司法次官)・千歩将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=癖が強い赤髪を持つ赤い給士。料理だけなら完璧。
(*゚ー゚) 名=しぃ 異名=紅飛燕(三華仙) 民=リーマン
武器=細身の剣と外套 階級=司書門下(司法次官)・千騎将
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=灰色の髪と神秘的な瞳を持つ、無口な少女。
(‘_L’) 名=フィレンクト 異名=白鷲(七英雄) 民=リーマン
武器=長剣 階級=尚書令(行政長官)・千騎将・青雲騎士団団長
現在地=ギムレット 状況=???
特徴=隻腕の老将。白髪を丁寧に後頭部に流している。ジョルジュとヒートの師にあたる存在。
(,,^Д^) 名=プギャー 異名=??? 民=???
武器=??? 階級=???
現在地=白面の村 状況=???
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:31:55.81 ID:stEQpnSV0
- ・リーマン族
<丶`∀´> 名=ニダー 異名=翼持つ蛇 民=リーマン
武器=??? 階級=評議長
現在地=デメララ 状況=???
特徴=黒髪を後頭部で束ねた痩せた男。評議会を牛耳る。
爪'ー`)y‐ 名=フォックス 異名=狐・人形使い(七英雄) 民=???
武器=??? 階級=評議会情報部
現在地=??? 状況=???
特徴=派手派手しい外套に身を包んだ隠密。阿片の常習者。
(-_-) 名=ヒッキー 異名=鉄壁 民=リーマン
武器=鉄鎚 階級=千騎将。鉄柱騎士団団長
現在地=デメララ 状況=???
特徴=重厚な鎧に身を包んだ将。ジョルジュとは犬猿の仲。
??? 名=シャキン 異名=常勝将(七英雄) 民=リーマン
武器=??? 階級=バーボン領主 元帥
??? 名=スカルチノフ 異名=全知全能(七英雄) 民=リーマン
武器=??? 階級=ニイト自治区監査
??? 名=ヒロユキ 異名=統一王 民=リーマン
武器=鉄鞭 階級=先王
- 7 名前: >>6 色々と無かった事にしてください 投稿日: 2008/05/22(木) 04:35:02.31 ID:stEQpnSV0
- ・リーマン族(ネグローニ城)
/ ゚、。 / 名=ダイオード 異名=狂戦士 民=???
武器=??? 階級=ネグローニ領主
現在地=ネグローニ 状況=心を入れ替えたかのように国政に精を出す。
特徴=仮面とフードに身を包んだ男。
(=゚ω゚)ノ 名=イヨゥ 異名=繚乱 民=???
武器=斧槍 階級=黒色槍騎兵団長
現在地=ネグローニ 状況=???
特徴=頬に傷を持つ小柄な戦士。少年と間違えられても不思議は無い。
( ´ー`) 名=シラネーヨ 異名=??? 民=???
武器=??? 階級=領主補佐
現在地=ネグローニ 状況=???
特徴=弛んだ二重顎の文官。自称知識人。
??? 名=??? 異名=??? 民=???
特徴=イヨゥの妹
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:36:42.12 ID:stEQpnSV0
- ・メンヘル族
(´∀`) 名=モナー 異名=預言者(七英雄) 民=メンヘル
武器=??? 階級=指導者
現在地=モスコー 状況=???
特徴=唯一神マタヨシの声を聞くとされる人物で、アルキュにおけるマタヨシ教団の頂点に立つ男。
ミ,,゚Д゚彡 名=フッサール 異名=天使の塵・砂漠の涙(七英雄) 民=メンヘル
武器=天星十字槍 階級=司祭。神聖騎士団団長(十二神将)
現在地=モスコー 状況=???
特徴=長髪長髭の老将。
( ´_ゝ`) 名=兄者 異名=金剛阿 民=メンヘル
武器=手斧・兄者玉 階級=???(十二神将)
現在地=??? 状況=???
特徴=変態。武器である兄者玉は108式まであるが、大半は夢と浪漫が詰まっている。
(´<_` ) 名=弟者 異名=金剛吽 民=メンヘル
武器=手斧・弟者砲 階級=???(十二神将)
現在地=??? 状況=???
特徴=外見こそ兄者とそっくりだが、常識人。腕は一歩劣るか?
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:37:28.38 ID:stEQpnSV0
- ??? 名=??? 異名=不敗の魔術師 民=メンヘル
武器=??? 階級=???(十二神将)
??? 名=??? 異名=光明の巫女 民=メンヘル
武器=??? 階級=巫女(十二神将)
??? 名=??? 異名=羅王 民=メンヘル
武器=??? 階級=???(十二神将)
??? 名=??? 異名=神の巨人 民=メンヘル
武器=??? 階級=???(十二神将)
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:37:43.66 ID:stEQpnSV0
- ・その他
('A`) 名=ドクオ 異名=無し 民=モテナイ
武器=短槍 階級=元・兵奴
現在地=??? 状況=ナイトウを裏切り行方不明。どうやらネグローニにいるようだ。
特徴=陰気寡黙な男。口は非常に悪い。
??? 名=モララー 異名=勝利の剣(七英雄) 民=ニイト
武器=??? 階級=元・ニイト最高指導者
??? 名=クー 異名=無限陣(三華仙) 民=???
武器=??? 階級=ニイト自治区監査代理
現在地=ニイト 状況=???
特徴=苦しむ同胞を救う為、人道を外れる。闇市の支配者とされる人物。
??? 名=??? 異名=九紋竜(三華仙) 民=???
武器=漆黒の長剣 階級=浪士
現在地=??? 状況=???
特徴=左半身に九匹の龍を彫りこんだ【最強剣士】
??? 名=??? 異名=??? 民=???
特徴=ナイトウの夢に現れる黒髪の少女
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:41:11.60 ID:stEQpnSV0
- 〜超手抜き地形説明・お前はこの3ヶ月何をやっていたんだ?編〜
Aギムレット高地
@キール山脈
Bニイト自治区
=====大地の割れ目==========
Cネグローニ地区
Eバーボン地区
Fローハイド草原 Dデメララ地区
Gモスコー地区
Hシーブリーズ地区
※島の高度は、@→A→B→C…と番号が大きくなるにつれて低くなる。
人々の暮らしは温暖なD〜Fに集中している。
また、南から西南に抜ける風の影響でGHは北部とは比較にならないほど気温が高くなっている。
大地の割れ目を流れるのはマティーニ河。
そこから枝分かれしてEとFの境目を流れるのがバーボン河。
バーボン河は更にGとHの境を抜けて海に出る。
@…どこにも支配されていない。
ACDE…リーマン支配下。ただしAは厳しい気候の為か半ば放置されている。
B…ニイトの自治が認められているが、実質的にはリーマンの支配下。
F…中立帯だが、リーマンの力が強い。
G…メンヘル支配下
H…中立帯だが、この地区を占拠する【海の民】とメンヘルが同盟関係にあり、メンヘルの力が強い。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:42:47.64 ID:stEQpnSV0
第15章 天下百景
一筋の明かりすら差し込まぬ部屋の中。
その青年は立っていた。
そうするのが当たり前だと言うように、
瞳は軽く閉じられ両の手には『拐』と呼ばれる特殊な武器を持っている。
『拐』とは現代で言うところの大型のトンファーである。
その先端には鉤爪を思わせる鋭い刃がつけられ、闇の中鈍く輝いていた。
???『さて。そろそろ行くぜ』
暗闇に声が響く。
が、その声の持ち主が一つ所に留まる事はない。
気配を断ち。音も無く移動しながら青年の隙を窺っていた。
( −ω−)『……』
意識を集中する。
見るべきは一点に非ず。
全ての空間内に意識を蜘蛛の巣が如く張り巡らせる。
しかし、それはただ意識を散漫にしている訳ではない。
広がった意識は触れる者全てを捕らえる恐ろしき罠。
剣気の結界とも言える代物だった。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:46:13.76 ID:stEQpnSV0
- 暗闇の中。
見えずとも見える。
聴こえずとも聴こえる。
息遣いさえも完全に殺して。滲むように背後から接近する姿が手に取るように分かる。
やがて。
???『……』
( −ω−)『……』
動いた。
一瞬で距離を縮めると、手にした小太刀を青年の頭に振り下ろす。
それを左手にした拐で受け止めると、右手の拐をグルリと回転させ
振り向きざま影の側頭部に叩き込む。
???『ちっ』
舌打ちと共に後退した影を追跡。
足払いこそ軽い跳躍で避わされたが、同時に放つ大上段から叩きつけるような拐の一撃までは避けきれぬ。
ギンッ!!
手が痺れる様に確かな衝撃と金属音。
とらえる事こそ出来なかったが、その一撃は襲撃者を床に倒れ込ませるには十分な物であった。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:48:03.57 ID:stEQpnSV0
- ???『だぁぁぁぁっ!! ナイトウ!! ストップ!! ストップッ!!』
叫ぶのも無視して拐の刃をその首に突き立てる。
???『……』
( ^ω^)『……』
いや。
その刃は突きたてられる寸前。
皮一枚の距離でピタリと止められていた。
恐るべき芸当。
だが、剣気を網の如く練りあげるまでに熟練した彼にとっては当然の範疇。
それを証明するかのように、この闇の中で青年の眼は生唾を飲み込んだ襲撃者の喉が小さく動くのを捉えていた。
???『それまで』
別の男の声の直後、その部屋の全ての窓が開放される。
飛び込んできたのは高地独特の冷たい空気と春の日差し。
風は部屋に満ちていた闘争の空気を一瞬で洗い流し、光は白塗りの壁と板張りの床を皆の眼に曝け出す。
その光に暗闇に慣れていた眼を刺激されて。
( ^ω^)『おっ?』
青年は軽く顔を顰めた。
(´・ω・`)『うん、まさかハイン相手にここまでやるとは思わなかったよ。強くなったね』
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:50:13.86 ID:stEQpnSV0
- (,,^Д^)『プギャーwwwやるじゃねーかwww』
(兵゚∀゚)『さすが隊長!! ただの馬鹿じゃなかったんですね!!』
( *^ω^)『おっおっおっ。照れるお』
それまで壁際で勝負を見守っていた青年の部下が一斉にはやし立てる。
ブーンは口元を綻ばせながら手にした拐を腰に戻した。
だが、面白くないのは本来彼を上回る実力を持ちながら軽く捻りあげられてしまった襲撃者の方だ。
从#゚∀从『ナイトウ、テメェ!! ストップって言ったじゃねぇかよ!!』
床にへたり込んだ黒い給士服の襲撃者、ハインが声をあげる。
その額にはびっしりと脂汗が浮かんでいた。
( ^ω^)『おっおっおっ。今の僕はナイトウじゃありませんお。ブーンですお』
从#゚∀从『屁理屈だっ!!』
こめかみに青筋をヒクつかせながらの抗議も、大股開きで尻餅をついている姿では効果がない。
それどころか
(´・ω・`)『ハイン。見えてるよ』
(;^ω^)『ハインさん、抗議の前に隠してくださいお』
(,,^Д^)『プギャーwww毛w糸wのwパwンwツwwwねーよwwwサーセンwww』
それで、自身のあられもない姿にようやく気がつくと言う有様だ。
慌てて裾を押さえ込んだ彼女は赤面したまま黙り込んでしまった。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:53:40.29 ID:stEQpnSV0
- (´・ω・`)『さてと』
しばらくしてから。
板張りの床に直に座り込んでいたショボンが腰を上げる。
それを合図とするように、見物の兵士達もゾロゾロと道場を後にしていった。
(´・ω・`)『ナイト…ブーン君の技量も確かめられた。あとは【鍵】の確認だけなんだけど…』
話しかけられたハインはエプロンドレスの裾を押さえながら動かない。
八重歯が刺さるほど固く唇を噛みしめ、瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
もし、これが【赤髪鬼】ヒートであれば高笑いをしながら男どもを殴り飛ばしただろう。
しかし、ハインにはそれが出来ない。
主の命とあれば男湯にも入り込むし、男勝りの性格は時として粗暴にも思われる。
が、実際の彼女は茶器を愛し、花を愛でる。
女性将官の多いヴィップの中でも人一倍女らしい一面を持っていた。
(;^ω^)『と、とにかく』
ニヤケ笑いを浮かべるプギャーと、己が従者の顔を覗き込もうとするショボンの背を押して
石造りの訓練舎を追い出す。
(;^ω^)『あとは僕とハインさんだけで大丈夫ですお!!
御二人はどこかで暇でも潰しててくださいお!!』
そう宣言すると、青年は勢い良く引き戸を閉め内部からしっかりと鍵をかけた。
(;^ω^)『…危なかったお』
思わずそう一人語ちる。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:55:51.34 ID:stEQpnSV0
- 後世になって。
この青年の持つ能力の代表として、『天性の瞬歩使い』という点が必ずクローズアップされている。
しかし著者はそれよりむしろ、『獣並みの危機感知能力』について票を挙げたい。
この時もまた、彼の本能がこれ以上給士を刺激するのは危険だと告げていた。
(;^ω^)『全く…。もしハインさんがキレだしたら誰が止めると思ってるんだお』
ブツブツ言いながら板張りの道場の隅に移動した。
そこには室内を暖める為のストーブが置かれ、上では鉄鍋の中グラグラと湯が沸き立っている。
そして、その横には当然のように給士が持ち込んだ茶道具が並んでいた。
( ^ω^)『さて、と』
軽い気合を入れながら腰を下ろし、ポットに茶葉を一つまみほど入れる。
本来であれば気合など入れるほどの行動ではないのだが、何せ飲み相手は『あの』ハインだ。
茶を愛する彼女におかしな物を出したりなどしたら、どんなに機嫌が良い時でも瞬時に怒らせる結果になるのだし、
ただでさえ静かに激昂している今の彼女に変な茶を飲ませたりしたら火に臭水を注ぐような物だ。
慎重かつ真剣にやらねばなるまい。
鉄鍋から柄杓で沸騰した湯をすくいとり、高い位置から一息にポットに注ぎ込む。
一見乱暴な風に見えるが、これは正しい。
まず、高い位置から湯を注ぐのはそれによって温度を下げる為である。
沸騰した状態の湯を注いだりなどしたら一瞬で茶葉の風味など消し飛んでしまう。
また、勢い良く湯を注ぐ事でポットの中に対流を起こし茶葉を開かせる目的もあった。
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 04:58:33.23 ID:stEQpnSV0
- ( ^ω^)『ハインさん、お茶が入りましたお』
碗を2つ載せた盆を持って、ペタリと座り込んでしまっているハインの前に腰を下ろす。
茶葉は賊の根城から奪い取った安物。
水は茶には不向きな硬水である。
それでも元々『茶=色のついたお湯』としか思っていなかったブーンなのだから、
湯を長時間沸騰させて水のミネラル分を飛ばす辺り成長したと言えるだろう。
从 ∀从『…言っとくけどな』
(;^ω^)『お?』
給士がようやく口を開く。
从#゚∀从『ハインちゃんは負けたわけじゃねーぞ!! 本気出せば絶対負けないんだからな!!』
(;^ω^)『わ、わかってますお』
その勢いに青年は思わずたじろいだ。
だが、その言葉は口から出任せと言うわけではない。
なにせハインは得意とする飛刀も瞬歩も禁じられた状態で、
『襲撃を待ち構えている』ブーンに襲いかからねばならなかったのだ。
本来であれば地に倒れ込んでいるのは青年の方であっただろう。
♪〜从 ゚∀从『よし。分かってれば良いんだ。分かってれば』
それでも青年の言葉で給士は機嫌を取り戻す。
从 ゚∀从『それじゃ、始めるぜ』
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:01:04.28 ID:stEQpnSV0
- ※ ※ ※
(,,^Д^)『ったくよぉ。もーちょっとで面白くなりそうだったんだがなぁ』
(;´・ω・)『は?』
春の陽射しの下、大の男二人が並んで村をブラブラと歩く。
ブーンとハインの練武を見学していた村人達も、
ある者は訓練に勤しみ、ある者は畑の雑草を引き抜いている。
単純だが何物にも変えがたい日常の風景がそこには広がっていた。
(´・ω・`)。oO(そう言えば、陛下達がバーボンにやって来たのもこれ位の時期だっけ)
そんな回想がショボンの脳裏をよぎる。
今の時期なら庭の梅の木が花を咲かせ、ちょうど見頃であろう。
自ら選んだ戦いの日々。
それには微塵の後悔もないが、その景色が見られない事だけは少しだけ残念であった。
ところが。
(,,^Д^)『は?、じゃねーよwwwwあとちょっとで姐さんがぶち切れてただろ?
そーなったら面白かったと思わねーか?』
(;´・ω・)『いや、思わないよ。何考えてるのさ?』
ちょっと真面目な事を考えてみれば、この始末である。
どうにもこの男はクセが強すぎる。
ニヤケ笑いを浮かべるプギャーの顔を見ながら、ショボンはそう思った。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:04:29.05 ID:stEQpnSV0
- だが、ショボンは知っている。
道化の仮面の板に隠れた、この男の心の闇を。
いや、彼だけではない。
平和な日常を過ごし、笑いあっていてもこの村の住人。
つまりは白面の兵士達はどこか悲しげな表情をしている。
その目の奥は平和を満喫などしていない。
ただ闘争を。
殺しても殺しても飽き足りぬ己の罪を償える場所を。
死では生温い程の罪を犯した己を罰する場所を求めているように思える。
(´・ω・`)『……』
(,,^Д^)『おう? どーしたよ、先生?』
(´・ω・`)『いや…何でもないよ。
ただ、あの年になって毛糸のパンツはどうなんだろうって考えてただけさ』
そんな軽口を叩きながらショボンは思い出す。
あの話を彼の給士から聞かされたのはいつの話だっただろう。
【鉄牛】の異名を持つ男。
プギャーの血塗られた過去の話を……。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:07:48.77 ID:stEQpnSV0
- ※ ※ ※
(,,^Д^)『おう、それじゃ行って来るぜ』
(゚、゚トソン『いってらっしゃいませ』
*(‘‘)* 『お土産忘れるんじゃないですわよ!!』
アルキュ暦470年代後半。
所は【統一王】ヒロユキが急逝して間もない王都デメララ。
貴族達が競い合うように己の財力を示す塔を建てる片隅に、ささやかな営みを育む家族の姿があった。
主の名はタカラ。
滅ぼされし民族、モテナイの出身である。
迫害される身である彼が、片隅とは言え王都の中心地に居を構えられたのには訳があった。
統一王の革命が成就された後。
彼は剣を捨て、器用な指先を生かして髪結い師に転向したのだ。
髪結い師とは、その名の通り貴族の髪を結って生計を立てる者。
貴族達にとって華やかな衣装に見劣りしない髪型は必要不可欠な存在であり、
この男は生来の才能と類稀な努力によって貴族達の要望に応え続けていた。
(,,^Д^)『おう、約束だ。良い子にして待ってるんだぞ、ヘリカル』
タカラは自身を見上げる愛娘の髪をワシワシと撫で回す。
*(‘‘)* 『止めるんです!! 痛いですわよ!!』
言いながらも嬉しそうに顔中で笑う一人娘。
特に特徴も無く控えめではあるが、彼の愛を受け止めてくれる妻。
決して裕福とはいえない暮らしだが、彼は幸せだった。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:10:36.02 ID:stEQpnSV0
- (゚、゚トソン『近頃は色々と物騒になっていると聞いております。お気をつけ下さい』
妻が心配そうに言う。
統一王の死後。
北部では七英雄の一人【勝利の剣】モララーが、王の後継たる評議会に叛乱の旗をあげた。
その勢いは凄まじく、王都でも【親評議会派】と【反評議会派】に分かれて貴族達が争っている。
そして、夜な夜な評議会に反する貴族達を暗殺してまわる謎の影の存在。
民草達は、いつモララー討伐の徴兵令が下されるのか。
また、姿無き暗殺者【闇に輝く射手】の恐怖に怯えながら日々を過ごしていた。
(,,^Д^)『大丈夫だ、トソン。心配するな』
不安げな妻に微笑みかける。
最下層民族の出身であるタカラは、本来であれば真っ先に兵奴として駆り出されるのが常である。
だが、そのような時の為に彼は人脈と裏金を駆使して
本来であれば貴族でしか入手できない【徴兵拒否符】を手に入れていたし、
【射手】が彼などを狙ってくる筈もない事を知っていた。
(,,^Д^)。oO(いや、それよりも)
問題なのは、今日髪結いを命じられている貴族。ボルジョワの事である。
若干二十歳にも満たずして家系を継いだボルジョワは、何故か事ある毎に妻に手を出そうとしてきた。
一度などは、金で妻を引き取ろうとした彼を殴りつけた事もある。
その時は一人の貴族が仲裁に入った為に事無きを得たが、以来妻はたまの外出さえ控えるようになってしまった。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:13:01.60 ID:stEQpnSV0
- (,,^Д^)。oO(まぁ、余計な事言って心配させる必要もねーか)
そんな事を考えるタカラの服の裾を引く者があった。
ふと我に還ると、足元で娘が彼の顔を見上げている。
*(‘‘)* 『どうかしたんですの?』
見れば妻も心配そうに彼を見つめていた。
(,,^Д^)『何でもねぇよ』
言って二人に笑いかける。
(,,^Д^)『今日は一軒で終わりだからよ。帰りに市にでも寄ろうかと考えてただけよ』
それで妻と子はほっと笑顔を取り戻した。
(,,^Д^)『それじゃあよ。遅れると面倒だからな。行って来るぜ』
言い残して彼は小さいがよく手入れされた門を潜る。
その日。彼は色々と注文をつけてくるボルジョアに従い、完璧な仕事を終えて家に帰った。
帰り道、市で購入した陶器のアヒルを娘はたいそう気に入り、寝る時も手放そうとしなかった。
しかし。
数日後、彼は突然家に押しかけてきた王都警備兵によって拘束される事となる。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:16:10.43 ID:stEQpnSV0
- (゚、゚トソン『あなたーーーーーっ!!』
*(‘‘)* 『とーさまーーーーーーっ!!』
背後から槍の柄で首を押さえつけられ2人が叫ぶ。
その視線の先にあるのは複数の男に組み伏せられたタカラの姿だ。
(,メ^Д^)『ボルジョア!! 貴様、何のつもりだ!!』
( ・3・)『五月蝿い!! 黙れ黙れ!!』
警備兵に左右を挟まれた貴族がヒステリックな声をあげる。
( ・3・)『お前の…お前の腕が悪いから僕は大恥をかいたんだぞ!!』
見れば彼の頭髪は真夏の入道雲のようになっていた。
現代風に言うところの。所謂一つのアフロヘアーである。
(,メ^Д^)『言いがかりは止せ!! 俺は貴様の注文どおりに仕上げただけだろう!!』
そうなのだ。
恨むべきは自身の趣味の悪さの筈なのである。
しかし、この若い貴族はそれを認める寛容さなど持ち合わせてはいない。
( ・3・)『黙れ黙れ黙れ!! 貴族に恥をかかせた罪は重い!!
髪結い師タカラ!! 貴様の王都居住権を剥奪し、兵奴としてニイト討伐軍に送り込んでやる!!
これは評議会の決定だからな!! 異論は許さんぞ!!』
(,メ^Д^)『!!!!!』
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:18:31.20 ID:stEQpnSV0
- (,メ^Д^)『そ…そんな馬鹿な!! 俺は徴兵拒否符を持っている!!たとえ評議会でも俺を戦場に送り込む事は出来ない筈だ!!』
( ・3・)『……』
その言葉に貴族はニヤと笑う。
スッと手を上げると、背後に控えていた警備兵が玄関に飾り付けられていた徴兵拒否符を彼に手渡した。
( ・3・)『そんな物は』
それを受け取り
( ・3・)『最初から無かった』
破り捨てる。
(,メ^Д^)『……!!』
( ・3・)『評議会の命令である!! 罪人タカラを兵奴に落とし北方に連行せよ!!
せめてもの情けだ!! 妻子の生活は僕が面倒を見てやる!!だが、もし抵抗すれば罪が妻子にまで及ぶと思え!!』
その言葉でタカラは理解した。
(,メ^Д^)。oO(…嵌められた)
全ては彼の妻を手中に収めんとするボルジョアの卑劣な罠。
しかし、愛する妻子を人質に取られた彼には為す術もなく、引き摺られる様にして連行されていく。
*(;;)* 『とーーーーーさまーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!』
その背に、父を呼ぶ幼子の泣き声だけがいつまでも響いていた。
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:19:46.26 ID:stEQpnSV0
- (,,^Д^)『……』
半年後。
戦は終わり、タカラは王都へ帰還した。
本来であれば生涯兵奴として過ごす筈であったが、彼と付き合いのあった貴族の嘆願により
罪を許されたのである。
終わってみれば戦いは一方的な評議会の勝利だった。
王都へ進撃するニイト公モララーの隙を突いて別働隊がニイト城を強襲。
評議会の懐刀【闇に輝く射手】により妻子を押さえられたモララーは降服し、首をはねられたのである。
(,,^Д^)。oO(【勝利の剣】と呼ばれたモララー公も…俺と同じという訳か)
愛する者を人質に取られ、道を断たれた。
ニイト公の無念や如何なる物であっただろう。
しかし、タカラは生きねばならなかった。
奪われた者を。護るべき者を再びその手の中に抱きしめる為に。
そして彼は彼のあるべき場所に帰還する。
そして。
そして。
(,,^Д^)『あ…あ……あああああああああああああああああ……』
そこにはもう何も無かった。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2008/05/22(木) 05:22:00.07 ID:stEQpnSV0
- 彼を出迎えたのは、かつて彼の家族が暮らす家を支えてくれた柱や梁。
ただしそれは黒く炭化していて、慎ましくも暖かい毎日を過ごした家はそこには無い。
隣接する家にまで被害を及ぼした火災跡地を前にタカラは呆然と立ち尽くした。
(街゚−゚)『半月ほど前でしたか……奥方は「操を守れなかった罪を死んで詫びる」と叫ぶや
家に油を撒き火を放ったのです』
(,,^Д^)『……』
街人の声は彼の耳には入らない。
タカラはフラフラと未だ大地すら黒ずんだ【家】にあがりこむ。
そうして、彼が拾い上げた物。
━━━━━それは煤で黒く汚れた陶製のアヒルの首。
(,, Д )『……』
なんで。
なんで。なんで。
なんで。なんで。なんで。
(,,^Д^)『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!』
男の絶叫が。
あの日の少女の泣き声にように、いつまでも響いていた。
戻る/次のページ