( ^ω^)がどこまでも駆けるようです

85: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:40:26.99 ID:HZI3Yr7m0
(´・ω・`)『うん……どうにも納得できないな』

ニダーの心の呟きに、声に出して同意を示したのは白眉の青年である。

(´・ω・`)『怒り出すのが分かりきっている者を派遣しているような印象がある。
     これが単なる教会改革の一環であるだけとは思えない』

爪゚ー゚)『同感だわ。むしろ、政治が絡んでいると考える方が自然ね。
    贅沢云々と言うのは理由付けで……大乗派のモナーから同じ小乗派のフッサール様に
    アルキュ島での管理権を移したかっただけじゃないかしら?』

(´・ω・`)『……』

それでも、かすかにしこりは残る。
聞く限り、レモナと言うアリスの姉は実に“真面目”な宗教家であるようだ。
だが、その父トマス1世はどうなのだろう?
東部7国をまとめあげたその手腕は、宗教家と言うよりも政治家の物であるように思える。
おそらく、レーゼの言を正解と見るのが正しいのであろうが……。

ル∀-*;パ⌒『どうなんだろうね? でも、これが父様の決定であった事は確かだにゃ』

言いながらアリスは、父の元を訪れたラウンジからの使者を名乗る男の顔を思い浮かべていた。
何故なら、トマスにアルキュ島内の教会腐敗を伝えたのは、その男であったからだ。
ラウンジから神聖ピンクに渡るにはアルキュは貴重な中継点であり、自らの目で見たという男の話は信憑性が高い物に思われた。

彼女自身は男と一度しか話した事が無い。
が、若い割には口調も丁寧で、礼節も弁えており、穏やかな微笑みには不思議な魅力があった物だ。
身形格好も洗練されており、瀟洒な桃色の薄絹を首に巻きつけていた記憶がある。
けれども、その回想はおそらく今宵の話には無縁であろう話で。
彼女はすぐさま、男の思い出を脳内から追い出してしまった。



86: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:42:16.40 ID:HZI3Yr7m0
ミ,,゚Д゚彡『政治が絡んでいるというのは……事実でありましょうな。貿易の中間点であるアルキュを押さえる事は、
      新法王の足場を磐石とし、東部勢力を固める為の必須条件の一つですから』

そこに口を挟んできたのは、治療を終え王座の間に戻ってきた【天使の塵】フッサールである。
付き添いを命じられたミセリとヒートの肩を借りているものの口調はしっかりとしており、先程まで見せていた焦りは影を潜めている。

( ,,゚Д゚)『……ちっ』

(´・ω・`)『……』

3つ空いていた座の中からギコの隣を選ぶと、腰を下ろす。
九竜の剣士は砂漠の老将とは目もあわせようとせず、これ見よがしに舌を打った。

ミ,,゚Д゚彡『モナーには彼なりの理想があります。神の御名の下でこの島を統一し、誰もが争わぬ世界を築きあげる。
      その上で13番目の枢機卿として選定会議に参列し、アルキュを永遠に戦火から守るのが、奴の考えなのです』

教義を政の場に持ち込む事は、フッサールからすれば決して相容れぬ考え方である。
が、そこにはただ一片の私利私欲は存在せず、だからこそフッサールはモナーに従ってきた。

先年のヴィップ内乱においてテネシー公兄弟を裏で支援し、軍を派遣するなど良い印象をあまり持たれていないモナーだが、
それもまた戦乱の時代において自国を勝利に導く為の有効的な戦略であった事は否定できるものではない。
もし、あの内乱でツンが敗れていたら、今頃メンヘルはモスコーとギムレットを支配する島内最大勢力となっていた筈であり、
その功績を前にすれば新法王も彼を援助し続けるほかなかったであろう。

(´・ω・`)『だが、新法王の命をモナーは拒絶した。
     兵を挙げて抵抗し、フッサール老は善戦虚しく敗れた……って言う事で良いのかな? 
     そうでなければ、かの【砂漠の涙】がこんな北の地まで落ちのびて来る理由が他に思いつかない』

ショボンの言葉に、アリスは少し戸惑ったふうな顔を見せてから、重々しく頷く。
そうして、彼らの身を襲った事件を再び語りだした。



89: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:45:57.85 ID:HZI3Yr7m0
         ※          ※          ※

━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━━

それから7日以上が経過した。
フッサールの居城【城塞都市】スピリタスに宿営を求めたレモナは、
【神都】モスコーより動かぬモナーの行いを、新法王への叛意による物である、と解釈した。
城主フッサールに命じ、1000の兵を連れ城を出る。
【不敗の魔術師】ツーが副官。【光明の巫女】シューを参謀とし、実妹であるアリスと共に自ら陣頭に立つ考えであった。

ミ,,゚Д゚彡。oO(モナー……早まった事だけはしてくれるなよ)

指導者などと言う肩書きに興味の無いフッサールにとっては、いい迷惑でしかないが、
更に法王の命に逆らったりすれば、モナーを庇う事も復帰させる事も難しくなる。
やりすぎる嫌いはあるが、メンヘル族の指導者はやはりモナーで良いと思う。
この騒動はおそらく神聖ピンク帝国内の派閥争いに端を発した物であり、落ち着けばモナーが返り咲く日も来よう。

その為にも今は大人しくしていて欲しかったし、同じ神を崇める者同士、軍事行動は望むものではない。
出来るならば、1000の兵は2人の法王使者の護衛で。最悪でも威圧行動で終わって欲しかった。
しかし。

ミ;,゚Д゚彡『愚かな……何を考えているのだ』

しかし、老将の期待は清々しいほど見事に裏切られた。
南十字星の旗印を頭上に掲げたフッサール軍の前に、黒地に弓月を描いた旗をたなびかせる兵達が立ち塞がる。

【預言者】モナーは、自ら1000の兵を率いて玉砕覚悟とも思える決戦を挑んできたのだ。



92: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:48:41.05 ID:HZI3Yr7m0
ミ;,゚Д゚彡『何と言う事を……己もメンヘルも共に滅ぼすつもりか』

思わず吐き捨てていた。
両軍が対峙したのは、スピリタスから南西に進んだ場所に位置する盆地である。
神都と城塞都市を結ぶ街道のちょうど中間地点、ぽっかりと現れるその地は、南北に山を抱く石ころだらけの荒地だ。
北の山を越えればストロワヤ。南に直進すればズブロッカに辿り着き、
何故か南東の山だけ高さが無く、上空から見ればちょうど袋の口のようになっている。
そこからシーブリーズ方面からの温風が吹き込むため、“袋の中”は蒸し風呂のような熱気を漂わせていた。
更に、粘土質の土壌は水はけが悪く、そのくせ水に乏しい。
旅人を目当てとした茶屋すらないような、ろくでもない土地であった。

( ´∀`)『……』

モナーの背後に従うのは十二神将・第五位【神の巨人】クックルと、同じく第六位【打虎将】ジタン。
共に平地での力押しを得意とする将である。
兵の数も互角であれば、真正面からのぶつかり合いになるだろう、とフッサールは判断した。

(*゚∀゚)『アサピーと貞子はいないみたいだねっ。ミルナは……探すまでも無いかっ』

彼同様、敵陣を観察していたツーが漏らす声が聞こえる。
第九位【断罪の聖印】アサピーが刃を向けるのは異教徒に対してのみであり、
第十位【雷獣】貞子は元より戦を好まない。
第四位【羅王】ミルナは何を考えているのか分からぬ男であり、今も北のシルヴァラードを守っているのだろう。

(*゚∀゚)『これなら伏兵はなさそうだねっ!! いたとしても100か200……って所かなっ!?』

言いながら、額に貼りつきそうになる明るい色の前髪をかきあげた。
ツーの言葉にフッサールは頷かざるを得ない。
何故なら、500を超える数の兵をまとめあげられる者がいないからである。
彼らの記憶にある限り、100程度の兵を率いた経験のある百歩長程度しか存在しない筈であった。



96: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:53:55.84 ID:HZI3Yr7m0
ミ,,゚Д゚彡『線は50の100……といった所か』

(*゚∀゚)『だねっ!! ただ、相手がジタンとクックルだし、60の120で考えてもいいかもしれないさっ』

禅問答のような呟きに、ツーは即座に反応を返した。
新法王に面と向かって弓引く以上、モナーが望むのは最後の一人まで殺しあう血戦であろう。
が、兵の意思がそれと一致するとは思えない。
この戦いが家族を護る為の物でもなければ、憎き敵を討つ為の物でも無い以上、軍が瓦解する一線が必ずある。
それをフッサールは戦死者50・戦闘不能者100と判断し、ツーは自軍被害も考え訂正したのだ。

ミ,,゚Д゚彡『む?』

(*゚∀゚)『おっ!?』

一人の将がモナー軍陣中から馬を進めてきたのは、ちょうどそんな時である。
その男を見ただけで、彼が使者としてではなく、開戦前の一騎討ちを希望している事が分かってしまう。

(#・へ・)『フッサール!! 出て来い!! 臆病風にでも吹かれたか!?』

ミ,,゚Д゚彡『ジタンか……あの馬鹿め』

lw´‐ _‐ノv 『うわぁ……ひくわー』

どなりちらす将を、顎髭を撫で付けながらフッサールは苦々しげに見据えた。
やたらと自分に噛み付いてくる男だが、老将にとっては小鳥が囀っている程度の存在だ。
元々、同じ民同士でいがみ合う行為自体がくだらぬのであり、
それを理解して己を押し殺せる位は出来ないと、まだまだ嘴が黄色いと言わざるを得ない。
更に言えば、常にモナーに付き従うクックルは別として、このような急時に主を諌めなくてどうするのか。



100: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:56:30.31 ID:HZI3Yr7m0
(#*゚∀゚)『キャンキャン騒ぐでないよっ!! 弱い犬ほど良く吼えるって言葉を知らないのかいっ!?』

だがしかし、彼の娘はそこまで達観の域に辿り着いてはいなかったようだ。
ツー自身もジタンを騒々しいが、どうでもいい相手くらいにしか考えていない。
が、見境無く喧嘩を売ってくる相手をうっとおしく思っていたのも、また事実である。

ミ;,゚Д゚彡『ま、待ちなさい!! ツー!!』

(#*゚∀゚)『やだねっ!!』

平地ではノロノロと歩むしか能が無い愛亀はスピリタスに残してきた。
父が静止する間も無く、彼女は陣を駆け出て行く。
その姿を目に捉えたジタンは、野獣の笑みを浮かべると両軍の中間に馬を進めた。

互いの瞳の動きまで分かる位置まで接近しあったところで、
虎殺しの猛将は手にした鎚鉾の柄を磨き上げるようにしごく。
不敗の魔女は尻の後ろに下げた鞘から二本の山刀を引き抜いた。

( ・へ・)『ツーか!! フッサールの前の手慣らしにはちょうどいい!!』

(*゚∀゚)『舐めんじゃないよっ!! 半べそかかせてやるから覚悟しなっ!!』

言うや、二人は同時に地を蹴り、斬りかかる。

こうして、アルキュ史上初ともいえる、一つの神を崇める同じ民同士の殺し合いは。
共に統一王七英雄と謳われた砂漠の英傑同士の戦いは、その火蓋を切って落とされた。



102: ◆COOK./Fzzo :2009/10/10(土) 23:58:05.71 ID:HZI3Yr7m0
(;*゚∀゚)『アヒャッ!?』

左耳の上で縛り上げた髪の毛先を、振り抜かれた鎚鉾がかすめた。
大きく後ろに飛び退いて、息を吐き出す。

(;*゚∀゚)『あっぶない事しないでおくれよっ!!』

( ・へ・)『戯言を!! それに今のは“危ない”では無く“惜しい”と言うのだ!!』

どなるやジタンは己が獲物を振り上げた。
二年前、キール山道の戦いでフィレンクトに敗れてから、彼は主武器を両手持ちの物に代えている。
圧倒的実力差を見せられた後に小細工で差を埋めようと考えるのではなく、
更なる破壊力を求めたのは、なるほどこの男らしい考え方であった。
馬上からの振り下ろしに重量と遠心力を加え、更に打点の距離も広げた鎚鉾が不敗の魔女を追い回す。

対するツーは、北方の神話の国から伝わった三本の山刀を手にしている。
聖人マタヨシが竜の首を刎ねたと言われる七星宝剣や、磔になった彼の命を奪ったとされる天星十字槍とは出を異にしており、
宗教国家であるメンヘル内では今一つ扱いが低いが、本来はニイトの至宝“西方の焔”と同格の神刀である。
彼女自身もそれを手にするに恥じない手腕なのだが、それでもジタンに押されかけていた。

理由の一つが、徒歩と騎馬の差であろう。
一尺(約30cm)程度の山刀は、馬上の猛将を討つにはあまりにも短すぎる。
トリッキーな動きを得意とする彼女にとって三本の神刀は持って来いの武器なのだが、
馬上の敵を討つ為に長槍が発達した歴史的事実から考えても、最悪の相性だった。

そして、もう一つが純粋な力量差である。
後年の歴史家達から、【急先鋒】ジョルジュと比較される事の多いジタンだが、
彼らの力は一昼夜斬り結んでも勝負がつかなかったとされるほど拮抗している。
ジョルジュが利き腕を失った後のフィレンクトとほぼ互角なのだから、虎殺しの猛将は相当な実力者である筈なのだ。
にも拘らずジタンがフィレンクトに大敗したのは、砂漠の魔女曰く『馬鹿だから』と言う理由に他ならない。



105: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:00:30.77 ID:HZI3Yr7m0
これが、彼女の身軽さを行かせる山岳地帯や、愛亀ペニス丸に騎乗していれば話は変わってきていただろう。
だが、それでも砂漠の魔女は怯まなかった。
腰骨までスリットの入った腰布をひらめかせて宙を舞い、身を仰け反らせて鼻先ならぬ胸先で横薙ぎの一撃を回避する。

( ・へ・)『相変わらず品の無い服装だな!! どこぞの花売りからでも恵んでもらったか!?』

(*゚∀゚)『あひゃひゃひゃひゃっ!! 年寄りみたいな事言ってるんじゃないよっ!! いや、もしかして童貞君かいっ!?』

(#・へ・)『言い直そう!! 貴様は存在自体が下品だ!!』

怒鳴りつけて、猛将は大地ごと掬い上げるような一撃を放つ。
両膝を揃えて飛び上がるような格好で回避した。
着地した瞬間にはジタンの鎚鉾が振り上げられていて。

(;*゚∀゚)『ひゃっ!?』

音を置き去りにして振るわれた攻撃を、指一本の隙間で避わす。
両軍陣中から感嘆に似た溜息が吐き出された。
しかし、ツーにとっては他人事ではない。
触れてもいないのに、風圧だけで腸を揺すられたような錯覚に陥る。

ジタンの様な膂力頼みで押しまくる将に対し、キール山道で【白鷲】フィレンクトが披露して見せた戦い方が
最も効果的なのはツーも理解している。
つまり、ぶんぶん振るわれる鎚鉾をひたすら避わし続け、疲労を待てば良いのだ。
だが、一方的に攻められ続けるのも、ただ誰かの真似をするだけなのも、彼女の性には合わない。

(*゚∀゚)『劣化コピーしか出来ないジャンルなら、最初から手を出さない方が億倍マシさっ!!
    どうせやるならオリジナルってのが最高だろっ!!』

( ・へ・)『ぬ?』



110: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:03:46.21 ID:HZI3Yr7m0
ツーの目の色が変わった。
彼女自身も此処に来てようやくスイッチが入ったのだろう。

(*゚∀゚)『あたし様はね、一方的にヤって終わりの“山なし オチなし 意味なし”が大嫌いなのさっ!!
    誘い受け愛好家としては、ヘタレ攻めのあんたにだけは負けたくないねっ!!』

(#・へ・)『誰がヘタレだっ!!』

力任せに叩きつけられた鎚鉾が、乾いた大地を穿つ。
粉砕された土くれが飛び散り、それが目に入ったとでも言う風にツーは顔を反らした。
どのような軽業師でも避けきれぬタイミングで、身体のど真ん中を狙った追撃が横薙ぎに襲い掛かる。
直撃すればそれだけで即死に繋がるであろう一撃を、咄嗟に両手の山刀で受け止めた。
が、当然軽量級の彼女の身体が耐え切れる筈も無く、身体が宙に浮き……。

(*゚∀゚)。oO(っ!! よっしゃあっ!!)

そして、それこそが“誘い受け愛好家”の狙いだった。
ジタンの鎚鉾を受け止めた瞬間、彼女はそれを頭から飛び越えるように地を蹴っていたのだ。
振るい抜かれた鎚鉾の柄を支点に、鉄棒の前回りの原理で一回転した彼女は、そのまま見事に着地してみせる。

(;・へ・)『なっ!?』

(*゚∀゚)『焔星っ!!』

一瞬、呆気に取られた猛将を背にする馬の鼻面に、腰を飾っていたギヤマン玉を千切って投げつけた。
パリンと音がしてそれが割れると、閉じ込めれてていた発火性の液体が空気に触れ、数秒だけ青く燃え上がる。
驚き、前足を跳ね上げた軍馬だったが、よほど訓練されているのか、すぐに落ち着きを取り戻してしまった。

ツーとしては、虎殺しの猛将を好いてはいなくても殺そうとまでは考えていない。
あわよくば落馬を狙ったのだが、失敗に終わり舌打ちでもしたい気分になった。



115: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:06:20.90 ID:Qzt6qIig0
(*・へ・)『わはははははっ!! 楽しいな、ツーよ!!
       貴様やフッサールと本気で戦える日を、どれ程俺は待ちわびていたかっ!!』

言うや、砂漠の魔女に踊りかかった。
ジタンにとってもフッサールやツーは屈服させたい相手であって、殺してやりたいとまでは考えていない。
本気で戦おうとするのは、ツーならば腕の一本を砕かれた程度で被害を抑えるだろうという、確信があるからだ。
『当たり所が悪ければ仕方が無い』くらいの開き直りこそある物の、同族による殺し合いを望まないのは同じである。

また、防戦一方に回るかと思われたツーが攻めに転じてきた事も、猛将を喜ばせた。
たとえ守りに専念されても打ち破る自信はある。
が、やはり一騎射ちとは互いの全力をぶつけ合える時間が最も面白いと思うのだ。

(*・へ・)『どうした!! その程度では無いだろう!? もっと攻め込んで来い!!』

(*゚∀゚)『言われなくてもそうするさっ!!
    受けばかりだった側が、突如一方的な攻めにまわる……こーゆー展開がいちばん萌えるんだっ!!』

(*・へ・)『その通りだっ!! 燃える!! 実に燃えるぞっ!!』

意思の疎通が成り立たぬまま、不思議と会話だけは成立させ両者は斬り結んだ。
危険を承知でツーはジタンの懐に飛び込み、罠と知ってなお猛将は魔女の隙に攻撃を仕掛ける。
両雄の手にした獲物がぶつかり合うたびに火花が飛び散った。
そんなやり取りを30合程続けたところで、このままでは決着はつかぬと見たのだろう。両軍陣地から退却を命ずる鉦が鳴らされた。

( ・へ・)『命拾いをしたな、ツーよ』

(*゚∀゚)『やれやれだよっ!! 次の一撃で決める予定だったのに残念でならないさっ!!』

肩を上下させ、減らず口を叩きあいながらも、刃を下ろす。
そして、互いに1000の歓声に応えながら二人は自陣に戻っていった。



119: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:09:21.87 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

|゚ノ ^∀^)『なかなかやるなっ。この僕でもあそこまでは剣を使えないぞっ!!』

(*゚∀゚)『あひゃひゃひゃひゃっ!! まぁ、本番はこれからだけどねっ!!』

義妹であるシューから乾いた手拭いを受け取り、顔を拭った。
戦っている時には気にならなかったが、夕立にでもあったかのように全身が汗に濡れている。
足に纏わりつく腰布がうっとおしく、脱ぎ捨てたい衝動に駆られたが、流石に自粛した。

ミ,,゚Д゚彡『疲れているだろうが、左翼は任せるぞ。わしは右翼を見る。
      レモナ殿とアリス殿には、シューと共に中央をお願いする』

父から手渡された竹筒から、生温くなった水を口に流し込む。
飲食の際に勢い良く口に物を入れすぎるのは彼女の癖のようで、顎を伝って豊かな胸元に水が流れ落ちた。

(*゚∀゚)『ぷはーっ。あ、何もしなくて良いよっ!! とにかく固く守って崩れないようにしてくれればいいさっ!!
    多分“誘い受けからリバ”って感じだから、よろしく頼むよっ!!』

lw´‐ _‐ノv 『了解』

どうやらモナー軍は右舷をクックル。左舷をジタンに率いらせた横陣を敷き、
総大将自身はその後背で200程度の兵に守られ、指揮に専念する構えのようだ。
対するフッサールは軍を分けず、横長の方陣を敷く。
互いに、山間から前線を迂回されるのを警戒したような形である。

ミ,,゚Д゚彡『くだらぬ戦いだ!! 手早く終わらせるぞ!!』

老将の掛け声と同時に、まず矢戦が始まった。



122: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:11:36.00 ID:Qzt6qIig0
( ・へ・)『ありったけの矢を放て!! 飛蝗が如く全てを喰らい尽くせ!!』

大波が岩にぶつかる様な音と勢いをもって、銀の雨が両軍の頭上に降り注いだ。
なめし皮を何枚も重ね合わせた盾を頭上にギッシリと構え、襲い来る死の恐怖から身を守る。
盾を支える左手には雨垂れを何十倍も凶悪にしたような音と衝撃が絶えず鳴り渡り、
時折、運の無かった者が盾の隙間を潜り抜けた矢に身を穿たれれ、こもった呻き声を漏らす。

兵士『っ……ぅぐっ!!』

よほど不信心者だったのか、更に神から見放された男が首を貫かれ、血の泡を吐きながら絶命した。

共に、鉄球に繋がれた奴隷のような、緩々とした進軍である。
が、それでも確実に両軍の距離は確実に縮まっていく。
やがて、向かい合う者の顔つきまで見てとれるようになってから、どちらとも無く叫んだ。

( ・へ・)『弓を捨てろ!! 剣を抜け!! 神は我らを護りたもうぞ!!』

ミ,,゚Д゚彡『始祖マタヨシよ、御照覧あれ!! 【天使の塵】フッサール参る!!』

それに各部隊長達の号令が連鎖し、兵は自らを奮い立たせるような大声で応える。
絶望と悲哀と嫌悪と高揚を混ぜ合わせた声をあげながら、両軍は真正面からぶつかり合った。

槍の穂先が盾に突き刺さり、刃と刃が火花を散らす。
兜に矢を突き立てたままの神官兵士が振るう棍棒が鎖骨を叩き割り、
足を負傷して倒れこんだ男が、人馬の脚にもみくちゃにされ鉄を混ぜ込んだ肉の塊へと変わった。

渇いた大地が血と汗と涙と吐瀉物とを吸って、久方振りの水の恵みと歓喜する。
が、人馬の脚に練りあげられて、すぐに単なる水気の多い泥と化し、兵士達は滑りやすくなった地面と同胞の死体に
気を使いながら戦わなくてはならなくなってしまった。



123: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:13:36.69 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

(;*゚∀゚)『なっ!?』

その光景を見た時、砂漠の魔女は目を大きく見開き、直後に激怒した。
モナー軍右舷先頭に立つ男が、フッサール軍の兵士を次々と殺し続けていたのだ。
灰色の髪を短く刈り込み、水鳥の羽を一面に飾りつけた袖無しの戦外套を、背に回している。
岩盤の様な上半身を陽に晒し、黒い腰布を巻きつけていた。

その戦いぶりは、正に“異常”という表現その物。
掌底の一撃で兵の上頭部を弾き飛ばし、噴き出す鮮血を身に浴びる。
巨大な手で別の兵士の腹を皮鎧ごと握り潰し、上下に分かたれて即死した顔を踏み砕く。

兵士『ひ、ひぃっ!?』

恐怖にとらわれて逃げ出そうとした男の肩を背後から捕まえた。
がし、と頭を掴みジャムの蓋でも開けるようにして首を捻じ切ると、興味なさげに放り捨てる。

彼女とて戦場に生きる者の端くれだ。兵の生き死には常であって、悲しくは思っても感情を乱されたりはしない。
が、男の殺し方は残忍極まりなく歓喜すら感じているようだ。彼女の正義は逃げようとする者を背後から襲う事を是としない。

(#*゚∀゚)『クックルーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!』

叫び、斬りかかった。
その男。メンヘル十二神将・第五位【神の巨人】と呼ばれる男が振り抜いた腕を掻い潜り、
擦れ違いざまにがらあきの胸を斬りつける。
分厚い胸板の表面をなぞっただけの斬撃が、一瞬だけ血を吹き出させた。
胸につけられた赤い線を、やはり興味なさげに見やってから、巨人は口を開く。

( ゚∋゚)『……殺すぞ』



128: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:15:44.22 ID:Qzt6qIig0
(#*゚∀゚)『やれるもんなら、やってみなっ!!』

叫ぶや、左手に持つ円錐形の神刀を突き出した。
それを事も無げに膝蹴りで払いあげると、クックルは魔女の頭を叩き潰さんと、右腕を振り下ろす。

(#*゚∀゚)『このやろっ!!』

一部の迷いも無く、ツーは巨人に向かって飛び込んだ。
丸太のような足を踏み台に高く跳躍し、攻撃を回避する。
行き掛けの駄賃とばかりに、男の頬を蹴り飛ばし、一旦距離を取った彼女が見たものは、
クックルの右腕によってパワーショベルで削り取られたようになっている大地だった。

(*゚∀゚)『その馬鹿力があんたの武器ってわけかいっ!?』

( ゚∋゚)『……』

頷きもせず、巨人は首の関節をコキリと鳴らしてみせた。
【神の巨人】の異名を持ち、常にモナーの背後に控えるこの男は、戦場に立つ機会すら滅多に無い。
同じ神将の座にありながらも、ツーが彼の戦いぶりを目にするのは、この日が初めてで。
それでも、クックルが正規兵を率いた経験に乏しいという事は瞬時に判断した。
世の万事に関心を示さぬ、といった風の巨人は、付き従う兵に指示を与えたりはしていない。
自ら陣頭に立って暴れまわり、その行動によって兵を鼓舞するタイプだ。
敵にとっては悪夢のような存在も、味方からすればこれほど頼りになる戦士はいないだろう。

(*゚∀゚)『中央に向けて退却!! 前列に槍先を並べ、守りつつ下がっておくれっ!!
    負傷者に肩を貸すのを忘れるんじゃないよっ!!』

後退の指示を出しつつも、ツーはクックルをそれ程恐れていなかった。
クックルが強敵である事は確かだが、彼さえ抑えてしまえば背後の兵達は指示系統を欠いた烏合の衆に過ぎないからだ。
多数同士の決戦と言う事になれば、モナー軍左翼で暴れているであろう猛将の方が、はるかに厄介な相手であると言えた。



131: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:18:12.60 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

(#・へ・)『うおおおおおおおおおおっ!!!!!!!』

ミ#,゚Д゚彡『ぬううううううううううっ!!!!!!!』

二頭の馬が、頭を下げて全力で突進する。
猛将の鎚鉾と老将の十字槍が正面からぶつかり合い、火花を散らした。

(#・へ・)『押せ!! 叩き潰せ!! 背教者どもの血肉を大地への供物と捧げるのだ!!』

耳鳴りを起こさせるような大声に、怒涛が如く兵が応えた。
フッサールが【神聖騎士団】を、ツーが【砂亀騎士団】を連れていないよう、ジタンも子飼いの【六翼騎士団】を率いていない。
彼に従うのは、モナーから与えられた、誰の所で訓練されていたかも分からぬ一団である。
が、それでもジタンは強い。メンヘル族最強の猛将、面目躍如といったところであろう。
平地。正面決戦。そして一刻(約2時間)と条件を限定すれば、この男に敵う将など存在しない。
“攻撃は最大の防御”という言葉を体現したかのような猛攻は【常勝将】シャキンの戦車隊すら討ち破る事だろう。

ミ,,゚Д゚彡『誰が背教者だ!! この愚か者め!!』

( ・へ・)『愚かなのは貴様だ!! 新法王に金で取り入り地位の安定を図るとは、恥を知れフッサール!!』

その言葉を聞いた老将は、白い髭の奥でかすかに口角を吊り上げた。
日頃の敵愾心が視界を狭めた事も関係しているのだろうが、猛将は全てを知ってモナーについているのではなさそうだ。

ミ,,゚Д゚彡『なるほど、安心したぞ!! どうやら貴様は馬鹿であっても愚かではなかったらしい!!』

(#・へ・)『誰が馬鹿だっ!!』

怒鳴りつけ、再び襲い掛かる。



140: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:22:04.92 ID:Qzt6qIig0
さて。
【天使の塵】フッサールは、かの大いなる災厄【人形遣い】フォックスと並び、統一王七英雄が一人である。
だが、にも拘らず、この二人が正面から斬り合った場合、老将は陰の王に遠く及ばない。

それもその筈で、陰謀家であると同時に暗殺者の顔も併せ持つフォックスと違い、彼は用兵術を得意とする純粋な“将”だからだ。
戦略家のモナー、戦術家のスカルチノフ、用兵家のシャキン、万能型のモララーといった面々を見れば分かるよう、
一介の戦士として勇名を馳せただけの者は七英雄には数えられていない。
唯一の例外が、当時最盛期であり【引き千切る猛禽の爪】と謳われた頃のフィレンクトであったが、
彼も【薔薇の騎士団】を率いれば将として活躍していたし、利き腕を失ってからは用兵型の将へと転身している。

フッサールに言わせれば“個をもって多を討つ”戦い方を追及する暗殺者に劣るのは、決して恥ではない。
何故なら、如何に戦況を“多をもって少を討つ”に持ち込むかが、用兵術の真価だからである。
そして、痛覚や死への恐怖を持たぬ“生き人形”などと言う兵を率いるのは用兵術でも何でもない邪法と軽蔑していたし、
そうした“人としての感情”を持つ者を率いて勝つ者こそ、真の将だと思うのだ。

ミ,,゚Д゚彡。oO(全く……この馬鹿は……)

そう考えるからこそ、フッサールはジタンと言う男が勿体無くてならない。
どのような兵を率いても強い、と言うのは誰にでも体得できる技術ではなく、天分の才である。
今は短慮ゆえに局地的活躍しか出来ない男だが、もし戦略的視野を身につければ、
それこそ己など全く敵わぬ将に成長する資質を秘めている。

( ・へ・)『なるほど……そう、動かしてきたか!!』

この時、猛将ジタンに押し負けそうにしながらも、戦況を支配しているのは【天使の塵】フッサールであった。
そして、いつか打ち負かしてやりたいと常に考えるているからこそ、ジタンは老将の狙いに気付く。
フッサール軍は両翼をジタンとクックルの二人に攻め立てられ、一見不利であるように思えるだろう。
が、中央前線部はモナー軍中央と小突きあうような斬り合いをするだけで、大きく動く様子は無い。
その中央を支点に、左右から両翼を折り曲げられるようにして後退するフッサール軍の方陣は、
今やモナー軍中央に狙いを定める鏃のような形に姿を変えようとしていた。



142: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:24:10.43 ID:Qzt6qIig0
( ・へ・)『させはせんぞ、フッサール!!』

喚き散らしながら、ジタンは更にフッサールを攻め立てた。
錐行系の陣形に構えていくと言う事は、狙いはモナーのいる本陣への突貫であろう。
そして、そこには耐えられるだけの兵を残していない。
ならば、フッサールが陣形を整え終える前に、それを崩さねばならなかった。

ミ,,゚Д゚彡『ところがな。わしもお前をいかせるわけにはいかんのだ』

(#・へ・)『……っ!!』

二人が手にする鎚鉾と十字槍が、幾度目かになる火花を散らした。
戦場での支配力と老獪さはフッサールがはるかに上回っている。
両軍にとって得る物の無い戦いは、始まって早一刻が過ぎていて、猛将ジタンに率いられる兵も攻め疲れ足取りを重くしていた。
もっとも、老将はその機を見計らいながら、軍を組みなおしていたのであるが。

(#・へ・)『国家の急時ぞ!! 進め!! マタヨシの加護は我らにあるのだ!!』

必死に兵を鼓舞する猛将の頭に“後退”の文字は存在しない。
それは性格上の問題ではなく、一旦放たれた矢を防ぐのに薄紙を何枚重ねようと、何ら意味を為さない事を知っているからだ。
防ぐには、正面から同等以上の強さで矢をぶつけるか、左右から万力が如く力で掴むか。
もしくは放たれるより早く側面から破壊するしかない。
これはジタン独特の戦術ではなく、攻撃型陣形の基礎である錐行陣への対策として、どのような用兵書にも記されている事柄である。
しかし。

(;・へ・)『馬鹿な!! 奴は戦の初歩も知らんのか!?』

しかしこの時、ジタンからすれば最悪の展開が起こった。
フッサール軍左翼のツーと刃を交えていたクックルが、モナーを狙われている事に気付き慌てたのか?
隊を後退させたのである。



147: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:26:45.20 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

( ゚∋゚)『……』

【神の巨人】クックルがスッと右腕を掲げると、それが予め決められていた合図であったかのように
モナー軍右翼兵士達は中央本陣に向けて後退を始めた。
大男自身も背に回しこんでいた袖無しの外套をまといなおす。

(*゚∀゚)『なんだい、なんだいっ!! 逃げるってのかいっ!?』

ジタン・クックルと言った二人の凶暴な戦士と一騎討ちを演じてみせて、当然ツーは疲労していたし、いたるところに傷を負っていた。
が、この残忍極まりない男には自身以上の手傷を負わせていたし、このまま許したくない気持ちもある。

( ゚∋゚)『……遊びは終わりだ』

(*゚∀゚)『……っ』

彼女が“誘い受けからリバ”と表現したフッサールの策は、今まさに完成しようとしている。
ツーもまた、それを完成させるために必要不可欠な一片であり、それを自覚しているからこそ退かぬ訳にはいかなかった。

(#*゚∀゚)『モナーをひっとらえたら、次はアンタの番だからねっ!!
     はらわた引き抜いてから香草詰め込んでオーブンにぶち込んでやるから、覚悟しておきなよっ!!』

子供がするようにアカンベーとしてから、
周囲に残っていた数人の兵士と共に、鏃型に変化を終えようとしている自軍に駆け戻っていく。

( ゚∋゚)『どうせ貴様はここで死ぬ』

そんな大男の呟きは、彼女の耳には届かなかった。



149: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:29:11.74 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

lw´‐ _‐ノv 『パパ様、お疲れ』

ミ,,゚Д゚彡『うむ』

今や完璧に1つの鏃へと姿を変えた自陣の先頭で、師弟は一刻(約2時間)ぶりの再会を果たした。
疲労が激しい砂漠の魔女ツーは法王の使者レモナと共に後続の指揮を取り、
勢いを全く無くしてしまったジタン軍には、アリスが200の兵を連れて壁を作り受け止めている。

ミ,,゚Д゚彡『一息に片をつけるぞ』

陣頭に馬を進めたフッサールの目に、200程度の兵と守りを固めるモナー本陣が映っている。
右翼に展開していたクックルの援軍は間に合いそうになかったし、
それならそれで無駄な犠牲を出さずにすむと喜ぶべきであった。

もし、最初から陣を鏃型に構えていれば、モナーも両翼を包み込むように広げ、左右からの挟撃を仕掛けてきていただろう。
最悪【打虎将】ジタンを先頭においた錐行陣同士のぶつかり合いとなり、両軍共に壊滅するような泥仕合になっていたかもしれない。
故にフッサールはまず、陣を横に広げた。
血戦を望んでいるであろうモナーに応えるようにしつつも守りに専念し、
犠牲を最小限に抑えながらジワジワと陣形を変えていったのである。

ミ,,゚Д゚彡『投降する者、逃げる者には刃を向けるな!! モナーの身柄は発見しだい捕らえよ!!』

高く掲げた十字槍を陽光に煌かせ、一斉攻撃に転じる命を飛ばす。
その瞬間。



突如、霰のような音が鳴り響き、数百の絶叫が山間にこだました。



157: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:32:24.11 ID:Qzt6qIig0
ミ;,゚Д゚彡『な、何事だっ!? 何が起こっているっ!?』

我武者羅に手にした十字槍を頭上で振り回した。
彼の周辺には、眉間に矢を突き立てた者。首を貫かれた者。腹を穿たれた者が地に伏せっている。
数本の矢を身体に受け、苦痛に暴れまわった軍馬が数人の兵を下敷きにしながら倒れこんだ。
驚愕に見開いた白目を飛び出さんまでにして、ダラリと舌を出した口から血を垂れ流し痙攣している。

それだけではない。
ただの一瞬。それだけで立っている者も一人の例外なく傷を負わされ、身体のあちこちに矢が突き立てられていた。
総指揮官であるフッサール自身も、左肩の鎧の隙間を、突如飛来した矢に射抜かれている。

兵士『敵襲!! 南東の方角より敵襲です!! その数、最低でも……3000!!!!!!』

悲痛な叫びをあげる兵士の遠方に、引き絞った弓に矢をつがえる一軍の姿が見えた。
咄嗟に盾を掲げよ、と命ずるが浮き足立ったフッサール軍兵士は盾を手に集合する事も出来ない。
再び、ざあっと音がした後には、更に50を超える兵達が苦痛の声を漏らしながら、バタバタと倒れていった。
多くの者が盾を持つ、左方からの攻撃である事など慰めにもならなかっただろう。

ミ;,゚Д゚彡『3000の伏兵だと!? そんな馬鹿な……っ!?』

戦が始まるより早く確認したとおり、アサピー、貞子、ミルナの三将はこの場に居ない。
もし、【打虎将】ジタンのように口先で丸め込んだとしても、それを今の今まで伏せておく必要がない。
南東の方角には同盟国であり、神将・第七位の座を与えられた妹者を頂点とするシーブリーズがあるが、
彼らはリーマンのシャキンと睨み合いを続けている最中である。
そして何より、その兵達はメンヘルの鎧を身につけてはいるが、その先頭に立つ将の顔は老将が身も知らぬ男である。

兵士『伏兵、突っ込んできます!!』

ミ;,゚Д゚彡『っ!!』



162: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:36:01.95 ID:Qzt6qIig0
兵士『う……うわぁぁぁぁああああぁぁぁぁあっぁぁぁっ!!!!!!!!!』

ただの一撃で横腹を喰い千切られた。
錐行陣形の最大の弱点とも言える側面から奇襲を受けたのだ。
フッサール軍に、3倍もの兵力差を受け止めきるだけの体力など残っていなかった。

ミ;,゚Д゚彡『ツー!! レモナ殿っ!!』

lw´‐ _‐ノv 『パパ様!!』

ル∀゚*;パ⌒『フッサール!! 無茶だよ!!』

馬首を反転させ、分断された後続の救出に向かおうとした老将を、二人は必死に押し止めた。
守りに専念していて大した傷も無かった筈の彼女らであったが、
たった一杯の茶を飲み干すほどの僅かな時間に、血と泥で全身をまだらに染め上げている。

ミ;,゚Д゚彡『離せ!! あそこにはレモナ殿が!! ツーが……わしの娘がっ!!』

lw´‐ _‐ノv 『姉上なら大丈夫!! 姉上は絶対に死なない!!』

らしくない大声は、おそらく自分自身にも言い聞かせる為の物だったのだろう。
戦場は既に、フッサール軍に対する一方的な虐殺の場へと変わり果てていた。
倒れこんだ者の頭に斧を叩きつけ、逃げ惑う背中に槍を突き立てる。
戦意を失って剣を捨てた者ですら首を刎ねられ、それならばと自棄に等しい抵抗を試みた者は取り囲まれて殺された。
窒息しそうな血臭の中に、死への恐怖と嫌悪の叫びが響きわたる。

ミ;, Д 彡『……っ!!』

襲撃者達の刃は当然フッサール達にも向けられた。
十重二十重に取り囲まれて後続の救援どころか身動きを取る事すら。左右を確認する事すら困難になっていく。



165: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:39:37.69 ID:Qzt6qIig0
ル∀゚*#パ⌒『下がってっ!!』

言うや、アリスが老将と巫女を背に庇うように前に出た。
このような時でも後生大事に背負っていた葛篭から、鉄杖を引き抜く。
その先端を敵兵の群れに向けた。

ル∀゚*#パ⌒『切りひらくっ!!』

渇いた音と共に鉄杖を構えた右腕が跳ね上がり、複数の男達が『ぎゃっ』と叫んで倒れこんだ。
先端から煙を燻らせている杖を大きく振るって、その腹から金属筒を吐き出させると、再び鉄杖の先端を人馬の壁に向ける。
弾ける様な音の直後に、やはり複数の兵が血を吹き出させた。
それを幾度か繰り返し襲撃者達が怯んだところへ、フッサール自ら槍を振るって突っ込み、囲みを突破する。
群がり寄せる謎の伏兵に斬りつけられ、鎧と鎧がぶつかり合っては方向を見失う。
何度と無く包囲されかけたが、その度にアリスの鉄杖が火を吹いた。
そして。

ミ,;メД 彡『……』

彼らが戦場を脱出した時、周囲に付き従う者は10に満たなかったという。



……その後の話は、長くならなかった。
途方にくれていた彼らは、レモナと共に島に渡ってきたという“元・塩商人”からの使者と出会う。
後背の兵糧部隊に従って、商売の機会を狙っていたと言う彼は、伏兵が現れると同時に部隊と共にいち早く離脱。
やはり、ほうほうの体で戦場を抜け出してきたツーと合流すると、敗残兵をまとめあげ、
スピリタス城外の小高い山頂に陣を構えているという。
その使者の口から“元・塩商人”が掴んだと言う伏兵団の正体、規模を聞いた彼らは、
今回の出来事が自身の手に乗せるには大きすぎる問題である事。この島の滅亡に繋がりかねない大事件である事を知る。
そして、彼らは【金獅子王】ツン=デレに助けを借りようと、北に馬車を走らせたのであった。



169: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:42:43.83 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

━━━━━━━━━━
━━━━━━━━
━━━━━━

『ゴルァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!!!!!!!』

怒鳴り声と、鈍い音が重なった。
メンヘルからの亡命者が石畳に転がる。
その身体の上に影が重なり、砂漠の老将の襟首を締め上げた。

(;//∀゚)『何やってやがる!? この筋肉チビ!!』

【急先鋒】ジョルジュが、襲撃者の背後に飛びかかった。
王座の間を複数の叫び声が満たし、人影が入り乱れる。
ジョルジュやヒートといった力自慢達がフッサールの身体から襲撃者を引き剥がした。
それでも、その男は背後から羽交い絞めにする二人を何とか振り払おうと暴れ、
老将もまた押さえ込んでいた慙愧や悔恨の念を爆発させたかのように、襲撃者の腹を渾身の力で蹴り飛ばす。
男は背後の二人を巻き添えにして倒れこみ、力が緩んだところで脱出に成功した。
が、再び襲い掛かろうとした時には【白鷲】フィレンクトと【翼持つ蛇】ニダーが両者の間に立ち塞がっている。

(#,゚Д゚)『そこをどきやがれゴルァッ!!!!』

襲撃者。【九紋竜】ギコが鼻息荒く叫んだ。

(#,゚Д゚)『テメェは……今度はツーまで見捨てようってのか!!
    “大義”の為にと言い訳して逃げてきたってのかゴルァっ!!!!!』



171: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:45:25.25 ID:Qzt6qIig0
ミ#,゚Д゚彡『黙れ!! この馬鹿者がっ!! 国を捨てて逃げ出した貴様如きにとやかく言われる筋合いは無いわっ!!』

しかし、砂漠の老将も負けていなかった。
旧知の友である隻腕の老将を押し退け、掴みかかろうとする。
随分と口汚くなっているのは、敗北と逃走による鬱憤を破裂させたからだけではないのだろう。

lw´‐ _‐ノv 『姉上の救出に向かおうとしたパパ様をここまで拉致したのはわたし』

(#,゚Д゚)『あぁ!?』

lw´‐ _‐ノv 『恨むならわたしを恨むべき』

(#,゚Д゚)『…………っ!!!!!!!!』

暫しの間、肩を震わせていた九竜の剣士であったが、やがて力任せに足元に転がっていた卓を蹴り飛ばした。
やりきれない悔しさと悲しさ。憤怒と少しの諦観。
感情を紛らわせる対象となった簡素な卓は、その一撃で粉々に砕け散る。

(;^ω^)『……』

ξ;゚听)ξ『……』

ギコを眦を吊り上げ睨みつける白髭の老将と、フッサールに目も向けず歯軋りを止めぬ黒刀の剣士。
咳払いすら躊躇われるような空気の中に、茫然自失の表情で立ち尽くす諸将。
ギコの妻である筈のシィ。ワタナベやヒートと言った
空気の読み方を母胎に置き忘れてきたかのような者達まで、不自然に固まってしまっている。

(´・ω・`)『さっきから気になっていた事があるんだけどさ』

そんな中、口を開いた。いや、口を開けたのはやはりこの男だった。



175: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:48:46.96 ID:Qzt6qIig0
かつて乞食剣士としてギムレットを渡り歩いていた頃のギコは、不満の塊のような男であった。
常に己克の道を追い求め、強さへの飢えに目をぎらつかせていた。
そんな姿もヴィップに加入してからは形を潜め、家族を得て夕餉の買出しに付き添うほど落ち着きをみせていた筈である。

が、今やギコは襤褸を身にまとい彷徨っていた頃の彼へと完全に戻っていた。
いや、いくら押し殺そうとしても全身から立ち昇る不満と殺気は、当時以上の物だろう。
それでも顔色一つ変えず語りかけるショボンと言う男は、よほど肝が据わっているのか、天才と紙一重と揶揄されるものなのか。
給士ハインあたりであれば、薄い胸を反らして『両方だ』と答えるかも知れない。

(´・ω・`)『ギコ。そろそろ、君の正体を教えてくれないか? 
     もしかして、君はこの騒乱を僕達以上に他人事ではいられない人間なんじゃないのか?』

疑問形の形式を取りながらも、ショボンは九竜の剣士の“正体”に確信をもっていた。
かつて【紅飛燕】シィから聞いたギコの過去。
【天使の塵】フッサールに向けるぎこちない嫌悪と、先程見せた怒り。
そして、一介の乞食剣士が持つには立派過ぎる、黒塗りの長刀。

(#,゚Д゚)『……』

けれどもギコは口を開かない。
代わって答えたのは、砂漠の老将。

ミ,,゚Д゚彡『そこの馬鹿の名はギコなどと言うものではありませぬ。その者の真の名は……ハニャーン』

(;‘_L) 『ハニャーンですと!? まさか……』

苦々しげに言葉を繋げた。

ミ,,゚Д゚彡『十数年前、神都モスコーからマタヨシ聖遺物の一つ、七星宝剣を盗み出して姿を消したツーの兄。
      つまり、この老いぼれの息子でございます』



183: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:52:36.55 ID:Qzt6qIig0
(ii´-ω-)『はぁぁぁ……』

予想しきっていたにも拘らず、ショボンはまるで【神算子】レーゼのお株を奪うような溜息をついた。

(ii´-ω-)『【評議長】ニダーに続いてマスカレイド家の王女様。
      【砂漠の塵】フッサールが飛び込んできて助けを求めたと思ったら、
      今度はヴィップの元・乞食剣士が七英雄の息子ときたもんだ。
      ……今年の生誕祭は驚く事が多すぎるよ』

元々、彼の復帰も十分過ぎるサプライズであった筈なのだが、それを棚に上げて言う。
それでも誰もがその言葉に納得してしまうほど、生誕祭の夜は新鮮で、全く望まなかった驚愕に満ち溢れていた。

(´・ω・`)『提案だけどね。今宵の会談はここらで一度打ち切るべきだと思うんだ。
     あまりにも色々な事がありすぎて、感情や思考をまとめきれないと思う。
     個人的に、フッサール老には一つだけ聞きたい事があるけど……
     僕らには考えを整理する時間が必要じゃないかな?』

ショボンの言葉は尤もであり、全ての者が混乱と困惑の只中にあったから、否応も無く諸将は賛成した。
クーやレーゼ、兄者と言った面々でなく、評議長ニダーまでもが肩の荷を降ろしたかのような溜息をついたのだから、
彼らの精神的疲労がどれだけの物であったのか計り知れようと言う物だ。

(´・ω・`)『それでね、フッサール老。先程の話だと、将軍を襲った伏兵の正体や規模は分かっているんだよね?
     そこのところだけ教えておいてくれないかな?』

ショボンの問いに頷き、『その目的については憶測に過ぎませんが』と前置きしてから老将が口を開く。

ミ,,゚Д゚彡『我らを襲った者どもの正体。それは……』



187: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 00:56:19.29 ID:Qzt6qIig0
         ※          ※          ※

ぐぅ。

また腹が鳴った。ここまで腹が減っていると、幻想的な星座も食い物の形をしているように思えてくる。
書物を広げただけでは『なんでその形が、熊に見えるのさっ!?』と言いたくなる星座図だが、
こうして不安や空腹と戦いながら眺めていると、本当にその姿に見えてくるから不思議だ。
きっと、幾千の旅人が今の彼女と同じように、多くの伝説や物語で不安を紛らわせようとしてきたのだろう。

『よぉ。こんな所に寝てると風邪ひくぜ』

かけられた声に、草地に大の字で横たえていた身体をバッと跳ね起こした。
がらにも無く乱れた腰布を整えるその横に、一人の“元・塩商人”が腰を下ろす。

爪 ,_ノ`)『どうした? 眠れねぇのかい?』

(*゚∀゚)『あひゃひゃっ!! 腹……じゃなくて、ちょっと考え事したくてねっ!!』

生地の面積よりも、星光に晒した素肌の面積の方が多いような服を“貼り付けた”彼女でも、
腹が減って眠れないと口にするのは憚られた。乙女心は複雑なのだろう。きっと。

(*゚∀゚)『アンタには感謝してるさっ!! アンタがいなけりゃアタシ様達はとっくに全滅してただろうからねっ!!』

兵糧部隊に同行し、伏兵に気付くや部隊を離脱させた“元・塩商人”。
更に同時刻、謎の軍隊によって陥落したスピリタスから武具食料やツーの愛亀ペニス丸を連れ出し、
彼らの正体を掴むや、人を派遣してそれをフッサールらに伝えた男。それが彼、神聖ピンクの商人シャオランであった。
しかし、彼は己の功績を大袈裟に謙遜したり、誇るような真似はしない。
礼を告げようとする彼女を制して、こう言った物だ。

爪 ,_ノ`)『感謝の気持ちは言葉より金貨で……いや、持ち運びしやすい宝石で頼む』



190: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 01:00:03.95 ID:Qzt6qIig0
野犬や盗賊の脅威に怯えながら南の大国中を渡り歩いた“元・塩商人”は
危険察知能力でなく、肝の太さや三日月刀の腕前も人並み外れていた。
故に、伏兵の矢傷に倒れたレモナを担いだツーを救い出し、
この山頂に陣を構えると言う離れ業を成し遂げられたのである。

(*゚∀゚)『アタシ様達は……この山を降りられるかねぇ』

爪 ,_ノ`)『大丈夫さ。砂金を1斤賭けても良いぜ』

やはり、不安なのだろう。
かすかに肩を落とし呟く砂漠の魔女に、事も無げに答えた。

爪 ,_ノ`)『アンタの親父が生きてヴィップに辿り着いていれば俺達も生きて山を降りられる。
     もし、死んでたら俺達は死体になって山を降りる事になる。それだけの事さ。
     どっちに転んでも俺の負けは無い勝負だね』

(*゚∀゚)『ひゃひゃっ!! もっともだっ!!』

笑って、ツーは立ち上がった。
風が腰布を揺らし、明るい色の髪を靡かせる。
左耳の上で縛ったリボンを解いてやると、解放された髪が夜に踊った。

腹を括れ、と元・商人は言外に口にしているのだ。
不安は更なる不安を掻き立て、伝染していく。
そして、それは籠城戦最大の敵だ。
眼下には彼らを幾重にも取り囲む松明の灯り。
どうせ、どこにも逃げられる事など出来やしないのならば、
開き直って鼻歌でも歌っているくらいが丁度良い。



194: ◆COOK./Fzzo :2009/10/11(日) 01:03:29.95 ID:Qzt6qIig0
(*゚∀゚)『それにしても……未だに信じられないよっ……』

爪 ,_ノ`)『目で見た物が真実だ。楽になりたきゃ、受け入れちまえ』

山間の戦いで、フッサール軍の後背を襲うだけでなく、居城スピリタスまで数刻で落城させた謎の軍隊。
彼らは小城であるスピリタスに全軍を留まらせる事は出来ず、
再び南に戻って【鉄門都市】ズブロッカに宿営の地を求めていた。
が、そのズブロッカにも全軍を進駐させきれず、城外に陣を敷いている。

あまりにも巨大な陣のあちこちで松明を灯しているのだろう。
複数の山を越え、はるか遠く離れているにも拘らず
彼女の立つ場所からは、まるで野を焼いているかのように見えるのだ。

爪 ,_ノ`)『皇帝……西部5国……教皇庁……それに……神聖国教会様、か。
     全く、他人様の国で何を考えてやがるんだか……』

幾度見ても呆れるしかないような光景に、シャオランは思わず漏らした。
山頂の風を身に浴びながら、砂漠の魔女は遠き炎を力強く睨みつけている。
彼らがどのような経緯の後に、この島を訪れたかは予想しか出来ない。
が、その目的は明らかである。
【天使の塵】フッサールを討ち破り。メンヘル族を飲み干し。
更にその目的が為に、アルキュ島その物まで食い尽くそうとしている巨大な海竜。

神聖国教会。
その、誰もが耳にした事のなかった名を持つ者達が、伏兵の正体。
そして、その規模は……。



━━━━━およそ、100000の大軍であった。



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