('A`)ドクオが現実にスクゥようです

3: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:49:57.80 ID:newcWmVQ0

op_to ginny.

 何だか全てが上手くいく気がした。
 何もかもが、何らかの予定通りに進んでいる気がした。

「それは全ての予兆さ。予定調和。ご存知?」

 不吉を告げる携帯電話は鳴かない。
 それが全ての完結を物語っているような気がした。

「それで、俺はこれからどうなるんだ?」

 魔王を倒した勇者は、幸せに暮らしました。そういう終わりも悪くない。

「この現実のどこに、魔王様がいらっしゃるんだよ?」

 ――つまりはやはり、全てはそうだった。



4: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:50:28.43 ID:newcWmVQ0

('A`)ドクオが現実にスクゥようです



6: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:50:59.08 ID:newcWmVQ0

 朝。
 時計を見る。
 七時四十分。
 今日も一日が始まる。

('A`)「爽やかな朝は翠星石の以下略。おはよ」

 返事はない。
 当然のことだった。そんな朝も悪くはない。
 纏わり付く布団を無理矢理に剥がし、体を起こす。

 寒い。
 ついこの間までは、日常生活になんら支障をきたさなかった四季。
 所が、ついうっかり仕事なんてものを始めてしまったせいか、
ここ最近は毎朝七時三十分の起床を義務付けられている。

 ……果たせてはいないけど。



9: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:51:29.62 ID:newcWmVQ0

 その程度の問題は、少し他への時間を短縮するだけで取り戻せる。
 詰る所、何の問題もない。

('A`)「何の問題もない……だってお」

 静かな部屋に、馬鹿みたいな「元」ヒキヲタニートの声が響いた。

('A`)「……嘘臭ぇ」

 「現」ヲタアルバイターの呟きに重なって、凝視していた携帯電話が鳴る。
 着信。
 相手を確認するまでもなく、俺は通話開始の「キーボード」を押した。
 キーボードを押した、だってよ。
 この時間にケータイを鳴らす相手は一人しかいない。

「……もしもし? ちゃんと起きてた?」



10: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:52:00.20 ID:newcWmVQ0

 電波に乗って聞こえる、やや潜めた声。
 後ろの喧騒から察するに、学校から掛けているのだろう。

('A`)「おう、起きてるから出たんだろ。また学校から?」

「そうだよ? ダメ?」

 「そんなに心配しなくても早起きくらいできます。
だからあなたは本業である学問に専念して下さい」。
 そんなことは再三伝えてあるので、今更「ダメ?」も何もあったものではないが、
実際それほどダメではなかったので、俺は短く「いいや」と答えた。

「じゃあ、仕事頑張ってね? でも、頑張っちゃダメだよ?」

('A`)「どっちだよ」

 彼女は小さく笑って、結局「どっちなのか」には触れずに電話を切った。
 割といつもの事だった。



13: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:52:30.64 ID:newcWmVQ0

 窓の外は相変わらず快晴だ。

('A`)「相変わらずってなんだよ……」

 何もかもが変わっていく。
 手の中のケータイの役割も、電話の向こう、彼女の位置も、
汚れた部屋、俺の場所も。

('A`)「なぁ……」

 いつの間にか、何者かの手によって掛け直されていた布団を引き剥がし、
今度こそ俺は体を起こした。

 朝。
 時計を見る。
 八時八分。
 今日も、一日が、始まる?

「……始めるとしますか」



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