('A`)ドクオが現実にスクゥようです

15: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:53:01.04 ID:newcWmVQ0

 海は青い。雲は白い。陽は赤い。
 いつからかテンプレートと貸したそれらは、
嘘でありながら本当だ。

「世界は彼を、彼女を、執拗に迫害した」

 嘘か本当か。
 そんなことはいかにも些細なことなんだろう。
 信じられるか、信じられないか。
 少なくとも「彼女」にはそれだけだった。

「皆、何で死なないんだろうね」

 そうして彼女は、涙を流し、また現実に巣食う。
 
1st_se.



20: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:55:56.34 ID:newcWmVQ0

('A`)「太陽が、赤いですね……」

(*゚ー゚)「……」

 そんな当たり前の事を呟いてみても、やはり彼女から返事はない。
 必死で次の言葉を探す俺の脳内は、
次第に「いかにあの太陽が赤いか」で埋め尽くされていった。
 それが童貞クオリティ。

('A`)「凄く……赤いです……」

 童貞は死ぬべきだと思った。



21: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:56:26.76 ID:newcWmVQ0

 一度、脳内をリセットしようと俯いてみるが、それは失敗に終わる。
 繋がれた俺の右手と、彼女の左手。
 混乱の一端を担うのは、間違いなくこれだ。。

 なかなか悪くはないのだけど。

(*゚ー゚)「何か、馬鹿みたいですね……」

('A`)「ですよねー」

 かなり厳しい一言だった。泣きそうだった。
 彼女は相変わらず、まっすぐ前だけを見ていて、
一切の表情は読み取れそうにない。



22: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:56:57.27 ID:newcWmVQ0

(*゚ー゚)「いや、先輩がじゃなくて……全部?」

 そういうとすぐ、少しだけ恥ずかしそうに笑って、
「いや、馬鹿みたいなのは私だけですよね」、と謝った。

 悲しい笑顔だった。

('A`)「……ごめん」

 俺も何故か謝った。
 いつの間にか彼女の頬を伝う涙は赤い。

 悲しくて、綺麗な涙だった。



26: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:58:11.97 ID:newcWmVQ0

(* ー )「何で、死にたいんだろ……死ぬたくないのに」

 空。
 ついでみたいに染められた雲は、テンプレートに反して赤い。

 場違いに間違った赤い雲。
 少しだけ愉快な「嘘」だった。

('A`)「……」

 夕日を背に、手を繋ぐ二人の男女。
 俺がいなければ、さぞ絵になるんだろう。
 幸い、俺の目に俺は写っていない。
 なかなかの皮肉だ。
 全くの何もかも、が。



28: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/19(土) 23:59:48.94 ID:newcWmVQ0

('A`)「それくらい、とっくに知ってる……」

 嘘吐き、迷路。
 脱出、ルート。
 加害する、被害者。

('A`)「逃げ易いよう嘘を吐きます。『死にたい』、と」

 定着した嘘は、「本当」と見分けが付かない。
 気がつけば、迷宮の出来上がりだ。



29: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/20(日) 00:00:19.38 ID:Qb7CbpLM0

 文章にすると僅か数行の、たったそれだけの事。
 迷路だって上から見れば、そんなものだ。

「知っている、理解している、反省も、後悔もしている」

 何もかも、とっくにお見通しだった。
 俺は一瞬目を閉じて、この景色を記憶する。
 エンディングにして、オープニング。
 序章にして、終章。
 一歩進んで、一歩下がって、二歩進む、意。



30: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/20(日) 00:00:49.78 ID:Qb7CbpLM0

 ――再開。

 「スタート」。
 展開された窓に並ぶタブ。

「――ほら、また夜が来るよ」

 再会。再来。再生。
 形のない何かが、
「救い」だか「巣食い」だか、曖昧かつ透明な何かが、
ゆっくりと街を覆う。
 不気味で無意味で、意味深な何か。

「スクェ」

 それがゆっくりと、二人の世界を包んだ。

1st_se...end.



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