('A`)ドクオが現実にスクゥようです

3: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:09:45.22 ID:oj9dSlRz0

( ・∀・)「――と、まぁ、そんな感じだったかな」

('A`)「なるほど……」

 その時、やはり遠くでチャイムの音が聞こえた。
 今度こそ、一限目の終わりを告げるチャイム、
という事で間違いないだろう。

('A`)「……さて、」

( ・∀・)「うん、頑張ってね」

 俺は決意に任せて、やけに重たい腰を上げる。

('A`)「お前は?」

( ・∀・)「僕はもう連絡しちゃったからね。
      『インフルエンザっぽいので休みます』、って」



4: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:10:15.59 ID:oj9dSlRz0

 確実に連休を満喫する気であろう友人に冷たい視線を送り、
俺は河原を後にする。

 空になったコーヒーの缶が、右手で冷たくなっていた。

5th_dead copy.



5: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:10:45.85 ID:oj9dSlRz0

 それから、

 何故、お前はいつも遅刻をするのか。
 何故、お前は反省しないのか。
 何故、お前はいつも遅刻するのか。
 何故、いつもお前は遅刻するのか。
 何故、お前は反省しないのか。

 そんな感じの話が、小一時間続いた。
 場所は職員室。
 ようやく俺が開放されたのは、
三限目開始のチャイムが鳴り終わった丁度その頃だった。



7: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:11:15.91 ID:oj9dSlRz0

 失礼しました、と後ろ手にドアを閉め、静まり帰った廊下。
 大袈裟に響く自らの足音が、何故だか罪悪感をかき立てた。
 それは勿論、明日になれば忘れてしまえる程度のものだった。

 俺は歩きながら考える。
 今日は月曜日だから、二限目は現代文だ。

('A`)「また説教か……」



8: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:11:46.36 ID:oj9dSlRz0

 憂鬱な気持ちを振り払うように、俺は目に入った教室に逃げ込んだ。

 「保健室」。
 それが、この教室の名前だった。



9: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:12:16.71 ID:oj9dSlRz0

(;゚−゚)「あ……」

('A`)「……は?」

 コソコソとドアを開けると、知らない女生徒が、
気まずそうに俺を見た。
 室内に置かれた石油ストーブに手をかざし、
言葉通り「あ……」、という顔で俺を見た。

 はいはい、どうせ気持ち悪い顔ですよ。
 身の毛もよだちますとも。はい。

 俺は、なるだけ平静に努め、
「あなた如きに何を思われようと、僕は一向に気にしませんよ」、
という姿勢で彼女に声を掛けた。



10: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:12:46.96 ID:oj9dSlRz0

('A`)「……先生は?」

 小さな声で「いらっしゃいませんか?」、と付け足した。
 ざまぁみろ。聞こえてはいない。
 彼女は、何故だか窓の外を振り返りながら、「知りません」、と
短く答えた。

 どうやら、なかなか手ごわい相手のようだった。

 俺はそれすらも努めて気にせず、
彼女のすぐ傍にあった椅子を奪い、少し距離を置いた場所に座る。
 ざまぁみろ。完全に俺の間合いだ。



11: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:13:17.38 ID:oj9dSlRz0

('A`)「……ゴホン」

 会話は一切なかった。
 彼女は、あれからずっと窓の外を熱心に見つめていた。
 何を見ているのか、少し興味深かったが、
ついに尋ねることはなかった。
 別に、気まずいという事はない。

 ただ、時間が過ぎ去るのを待つだけだ。 

('A`)「ご、ゴホン……」

 その時、ふいに彼女が、声をあげた。



12: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:14:18.06 ID:oj9dSlRz0

(*゚ー゚)「昨日、ライブしてましたよね?」

 勢いよく振り向いた顔は、
さっきまでとは別人のようににこやかだった。
 少し可愛いな、と思った。

('A`)「してましたよ」

 が、俺は短く答えた。
 これといった理由はない。
 ただ、そうしたかったから、そうした。



14: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:14:48.35 ID:oj9dSlRz0

(*゚ー゚)「なんで途中で止めたんですか?」

('A`)「……別に」

 それは、今日二度目の問いだった。
 想定はしていたが、やはり返す言葉はない。

(*゚ー゚)「ロックだから、ですか?」



15: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:15:18.62 ID:oj9dSlRz0

('A`)「違う」

 自分でも驚くような、暗い声だった。
 無意識のうちに俺は立ち上がっていた。

('A`)「……違う」

 彼女には、恐らく悪気はないのだろう。
 俺のこの感情は、きっと八つ当たり、と呼ばれるものだ。
 もう少し、棘のない言い方を、と言い直してみたが、
それは失敗に終わった。
 立ち上がった勢いのまま、俺は保健室を出る。

 小さな声で「違うんだよ」と繰り返してみたが、返事はなかった。
 やはり聞こえていないようだ。



16: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:16:00.91 ID:oj9dSlRz0

 静まり返った廊下は、コツコツコツコツと、
やはり冷たい響きを返す。

('A`)「帰ろ……」

 引き上げられた罪悪感は、そろそろ大した量だった。
 例のごとく、記憶は曖昧なまま、俺は校門を抜け外に出た。

 ポケットを漁ってみたが、煙草は見つからなかった。
 冬はこれからだな、と思った。



17: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:16:37.88 ID:oj9dSlRz0

( ・∀・)「……で、帰ってきた、と?」

 帰り際、河原を覗くと相変わらずそいつはいた。
 寒くないのか、暇じゃないのか、
疑問はあったが、面倒臭さから聞くのは止めた。
 聞いてもいないのに、「待っててあげたんだよ」、と満足気に答えていた。



18: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:17:08.34 ID:oj9dSlRz0

( ・∀・)「っていうか、
      謝りに行った相手と険悪になって帰ってくる、ってどうなの?」

(;'A`)「いや、あの子がお前の行ってた子だってわかんないじゃん……」

( ・∀・)「わかるよ。
      分かんなくてもライブに来てたのはわかるでしょ。常識的に考えて」

 今日、学校に行ったのはメンバーに謝るためだった。
学生が学校に行く理由としては間違っている気もするが。
 それとは別に、彼からの助言もあった。



21: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:18:25.06 ID:oj9dSlRz0

 「何か、うちの学校の生徒も見に来てたよ。
      君ら目当てかは怪しいけど、凄い熱心に見てたよ。口開けて」。

 「謝った方が良いんじゃないの? きっと落胆してるよ。自殺とかするかも」。

 「あと、物凄く可愛かった。時代が違えば三大美女にカウントされてたよ。うん」。

 やけに強引なそれらに押され、ついで程度には考えていた。

('A`)「……あ、メンバーにも謝れてない」

 隣から、「駄目だなぁ」と声がした。

 全くだ、と思った。



24: ◆hNdx3bVk06 :2008/01/28(月) 00:23:34.24 ID:oj9dSlRz0

 あぁ、それも見越していたから、待っていたのか。
 それに気付いて、何となく馬鹿馬鹿しくなった。
 遠くの山の、頂を彩る雪化粧。
 もしかしたら彼女は、これを見ていたんじゃないだろうか。
 何となくそんな事を思いながら、俺は立ち上がった。

('A`)「何か暖かい飲み物買いに行こう。煙草もないし」

( ・∀・)「奢り? 珍しいね。雪降るかも」

 馬鹿馬鹿しさはいっそう増す。
 俺は相も変わらず、冬はこれからだな、と思った。

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