( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:40:47.58 ID:YwG9JRsz0
第三話 「このくだらない世界」



3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:42:07.29 ID:YwG9JRsz0
早朝。

暗く冷たい独房にも、明り取りの窓から僅かながらの光が差し込んでくる。
ブーンは久々に、神様にお祈りをした。

クーが死んでからというもの、ブーンはすっかりこの祈りの習慣が無くなっていた。

しかし今になって何故急に祈りの習慣を再開させたのか。
おそらくこれがいわゆる神頼みという奴なのだろう。

なにせこの状況下で生還しようなど、それこそ神様に助けてもらうしか無いのではないだろうか。

( ^ω^)「神様……」

ブーンは小さな窓を、懇願の眼差しでみつめる。
そこに神様の姿を確認することはできないが、明かりだけは眩しいくらいに入ってくる。

( ^ω^)「すいませんお……神様は悪くなかったお……」

そう、神様は悪くない。
それは最初からわかっていた。

しかしブーンはその事実を認めたくなかった。



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:44:24.48 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)「神様は僕等を暗黒の世界から守ってくださったお……」

神様は世界を守ってくださった。

( ^ω^)「でも神様はクーの命を奪ったお」

神様はクーを殺した。

いや、正確にはハインリッヒが手を下したのだろうか。
でも結局は神様がクーの命を差し出すよう要求したのは事実。
ハインリッヒは、世界に生きる人々全員の命と、クーの命を天秤にかけ、
その傾きを判断したまでだ。

( ^ω^)「神様は……僕を見捨てるのかお?」


<ヽ`∀´>「さっきからぶつぶつうるさいニダ。静かにするニダ」

ブーンの祈りの時間は、ニダーの文句によって遮られた。

この狭い牢屋の中では、相手の姿は勿論喋る内容もダダ漏れだ。

( ^ω^)「すまんお。でもこれは僕の日課だから許してほしいお」

<ヽ`∀´>「っけ! あんた毎日朝っぱらからぶつぶつ独り言を言う気かニダ。
      正直迷惑ニダ。即刻中止を求めるニダ」

( ^ω^)「独り言じゃないお。お祈りだお。神様に祈るんだお」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:45:23.40 ID:YwG9JRsz0

ニダーはそれを聞いて、明り取りの窓に目をやる。
その眼つきは、なんだか忌々しいものを見るような眼だった。

<ヽ`∀´>「神様かニダ……そんなもんウリはこれっぽっちも信じちゃいないニダ」

( ^ω^)「そんなことないお! 神様はいるお。
       ちゃんといつだって空で輝いて、僕達を見守ってくださっているお」

<ヽ`∀´>「……神は見守るだけで、何もしてくれなかったニダよ」

( ^ω^)「……それはどういうことだお?」

<ヽ`∀´>「あんたには関係ないニダ。
      それよりも、もし今後騒音でウリに迷惑を掛けるようなら即刻謝罪と賠償を要求するニダ」

ニダーは言いたいことだけを、ずばずばとブーンに言うと、
そのままごろりと横になってしまった。

きっと二度寝でもするつもりなのだろう。

( ^ω^)「嫌な奴だお」

それがブーンの、ニダーに対する率直な感想だった。



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:47:25.49 ID:YwG9JRsz0


神様が姿を現して暫くが経過した。

どこか眠気を感じさせる小鳥達のさえずりにも、若干活気が出てくる。

(=゚ω゚)ノ「ふわぁ〜よく寝たょぅ」

ぃょぅが目を覚ました。

(=゚ω゚)ノ「おやブーン。君は朝が早いのかょぅ?」

( ^ω^)「うん。小さい頃からの習慣なんだお」

(=゚ω゚)ノ「早起きは良いことだょぅ」

/ ,' 3「...zzzZZZ」

ぃょぅとは対照的に、この老人はまったくもって元気が無い。
というよりも生きているのかどうかも、正直よくわからない。

(=゚ω゚)ノ「この人はスカルチノフっていうんだょぅ」

( ^ω^)「この人が自分でスカルチノフって名乗ったのかお?」

(=゚ω゚)ノ「……いや、そういうわけじゃないょぅ。いつの間にかそう呼ばれてただけだょぅ」

(;^ω^)「……」

スカルチノフ。謎の多い人物だ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:48:07.50 ID:YwG9JRsz0

そもそも見た目からして、それなりに歳をとっているのはわかるが、
正確に何歳かはよくわからない。

それに一体どうやってこの闘技場で勝ち残り続けているやら。

そのとき牢屋の前に、一人の兵士がやってきた。
その手には、パンとスープの入った容器が抱えられている。

「お前ら、飯だ」

そうぶっきらぼうに言い捨てると、兵士は牢屋の鉄格子の下の方に作られた、
食事を通す用の小さな扉を開き、そこにパンとスープをいれるとそそくさと行ってしまった。

(=゚ω゚)ノ「お、今回は少し量が多めだょぅ」

ぃょぅが歓声を上げた。

その声でニダーも目を覚ます。

<ヽ`∀´>「ウリの活躍のお陰ニダ。あんたら感謝するニダ」

明らかな皮肉のこもったニダーの台詞。
しかしぃょぅはそれを全く意にも返さない。

(=゚ω゚)ノ「ありがとうだょぅ」

本心からの謝罪をニダーに述べた。

<ヽ`∀´>「はん、皮肉のきかない奴は嫌いニダ」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:49:36.67 ID:YwG9JRsz0

そしてニダーはパンを一切れ掴み、手元にあった、ところどころが欠けている器を手に取り、
そこにスープを流し込んだ。

<ヽ`∀´>「いただくニダ」

そう言うや、ニダーはすぐさまパンを口に押し込み、スープを流し込み、
あっというまに全て平らげてしまた。

(=゚ω゚)ノ「さ、ブーンも食べるょぅ」

( ^ω^)「うん。そうだお」

ぃょぅも、自分の取り分を取ると、ブーンにも勧めてきた。

勿論ブーンも腹が減っていたので、喜んでパンを貰った。

そしてブーンはぃょぅからスープを受け取るときに、あることに気がついた。

どうやらこの部屋には、スープ用の器が四個しかないらしい。
そして各自にそれぞれ専用の器が分け与えられているらしいのだが、



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:51:37.79 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)(この器……ヒートさんのものだお)

ニダーは既に器を手に取っている。

ぃょぅも既に器を持っている。

/ ,' 3「...zzzZZZ」

そしてそのスカルチノフの足元に転がっているのが、彼専用の器なのだろう。

消去法で考えれば、間違いなく今ブーンが持っているのはヒート専用の器だったのだろう。

ブーンはぃょぅがスープを差し出してきたときのことを思い出す。
つい数秒前の出来事だ。

「ブーンはこれを器に使うと良いょぅ」

と、平然とブーンにかつてヒートのものだったものを差し出してきた。


短い付き合いだが、ぃょぅは無神経でないことがわかる。

だからそれが、彼らが死にあまりにも慣れていることを如実に語っていた。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:53:17.61 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)(僕は死なないお……絶対に……)

<ヽ`∀´>「さてと、今日もウリは大活躍してこんなしみったれた場所とはおさらばニダ」

( ^ω^)(僕も早く大活躍してこんな場所おさらばしたいお……)

( ^ω^)「……」

(;^ω^)「あれ? ここから出る方法があるのかお?」

これはブーンにとって思ってもみなかったチャンスだ。

<ヽ`∀´>「簡単な話ニダ。この闘技場で大活躍して女王の目に留まれば、
      帝国軍兵士として抜擢されるニダ」

(=゚ω゚)ノ「まぁ年に一人選ばれるかどうかって感じだょぅ」

( ^ω^)「……」

ブーンの腹は決まった。
さっきまではただ漠然と生き延びることを考えていたが、今は違う。

いかに活躍するか。

すなわち、いかに相手を魅力的に殺すか。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:54:55.97 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)(大丈夫……クーのためにも……殺る!)

ブーンの決意は揺るぎの無い、頑固たるものへと変換された。


そしてブーンは殺し続けた。




<_プー゚)フ「は、速い!」

⊂ニニニ( ^ω^)ニニ⊃「ブーーーーーーン」

ブーンは自分の長所である、俊足を惜しみなく活用した。

元々羊を追いかけるため、ブーンの足は通常よりも遥かに鍛えられていた。

一方この闘技場出場する者は、全員が罪人であるのだが、
その殆どが都で生まれ、都で育った純粋な都民ばかりだった。

身体能力の時点で、ブーンはほとんどの相手を圧倒出来たのだ。



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:55:57.96 ID:YwG9JRsz0

⊂ニニニ( ゚ω゚)ニニ⊃「しねぇ!」

そして容赦なくその凶刃を振り下ろす。

相手の頭が砕ける。
血が噴き上げる。

歓声が沸き起こる。

一人殺す。
そのたびにブーンはクーに近づいた。




「あの俊足の男は誰だ?」

そんな声が挙がるまで、さして時間はかからなかった。





17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 20:57:16.11 ID:YwG9JRsz0

(=゚ω゚)ノ「ブーン最近評判良いょぅ。すごいょぅ」

<ヽ`∀´>「一週間以内に殺されると思っていたニダ。期待外れニダ」

( ^ω^)「そうでもないお」

ブーンは自分の評判があがるたびに、より一層決意を固める。


すべてはここから出るため。


すべてはクーのため。






19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:00:16.93 ID:YwG9JRsz0

ミセ*゚ー゚)リ「な、なんであたしがこんな目に……ねぇあなた! 助けてよ!」

⊂ニニニ( ゚ω゚)ニニ⊃「黙れ!」

相手が誰であれ、ブーンは容赦なく切り伏せた。



ブーンの刃に迷いはもはや無い。

自分の邪魔をするものは容赦なく叩き斬る。

それだけだ。







22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 [ゆとりおもしれぇwww] 投稿日: 2007/06/10(日) 21:02:29.78 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)「神……」

ある日の明け方のこと。

ブーンはこの闘技場に来て初めての朝を思い出していた。

あの日ブーンは神に問うた。

「神様は……僕を見捨てるのかお?」

神は自分を見捨てたのか?

ブーンはそう尋ねた。
しかし今は、尋ねる必要は無い。

その答えはもう見つけた。

( ^ω^)「神……あんたは僕を見捨てた。それは揺るぎの無い事実だお」

ブーンがここ最近体験した不幸は山ほどある。

ショボンに売られたこと。

モララーに濡れ衣を着せられたこと。

そしてこんな闘技場にこさせられたこと。

しかしそんなことよりも、神は最初に、はっきりとした形でブーンを見捨てていた。



24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:03:17.22 ID:YwG9JRsz0

( ^ω^)「あんたは何故クーを選んだお?」

何故クーを?

何故他の子供では無い?


もちろんブーンは、クー以外なら誰でもよかったなどと言うつもりは無い。

ただ神は、他にもたくさん子供がいたのに、クーを選んだ。

誰を選んだところで、必ず悲しむ者は現れる。


それを承知の上で、神はクーを選んだ。

神はブーンが悲しむことを選んだ。



( ^ω^)「あんたは僕を見捨てたお。
       ならば僕は容赦なくあんたを捨てさせてもらうお」


それがブーンの選んだ答えだ。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:04:07.97 ID:YwG9JRsz0



<ヽ`∀´>「お前うるさいニダ。黙るニダ」

( ^ω^)「すまんお」

<ヽ`∀´>「神だのなんだの、そんなにウリを不愉快にさせたいニダか?」

ニダーの口調は、寝起きであることを考えても、かなり機嫌が悪そうだった。

( ^ω^)「ニダーは、神になにか怨みでもあるのかお」

これはただのブーンの勘だった。
きっと鼻で笑われて、それだけだ。
そのつもりで聞いてみた。

<ヽ`∀´>「神はウリ達を見捨てたニダ。ウリはあんな奴神と認めないニダ」



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:05:24.05 ID:YwG9JRsz0




奴はウリ達が苦しむのを、遥か上空で高みの見物ニダ。
ウリ達に手を差し伸べることは、一回も無かったニダ。
       そんな野郎が神だなんて笑わせるニダ。





31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:06:09.03 ID:YwG9JRsz0
( ^ω^)「……」

ブーンとニダーとは考えが同じようだ。

きっとニダーならばよき理解者となってくれるかもしれない。

ブーンはそう考え、話してみることにした。

( ^ω^)「ニダー、話したいことがあるお」

<ヽ`∀´>「なんだニダ。ウリはそんない暇じゃないニダ。
      よぉく要約して、端的に言うニダ」

( ^ω^)「僕は恋人を神に奪われたお――」



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:07:00.91 ID:YwG9JRsz0


ブーンは話した。

村での出来事。

話したからといってどうこうなる者でも無い。

しかしニダーならきっと理解を示すだろう。

そう思ってブーンは話した。



しかしニダーの反応は、予想外の反応だった。

<ヽ`∀´>「あんたは気づいていないニダか?」

ニダーのブーンを見る眼が変わった。

以前はブーンを、余所者を見るような、疎外の眼差しを向けていた。
しかし今のニダーの眼は、軽蔑の眼だった。

( ^ω^)「どういうことだお?」



34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:09:22.86 ID:YwG9JRsz0

<ヽ`∀´>「あんたは神に恋人を奪われた。
      世界を存続させるための犠牲としてニダ」

( ^ω^)「そうだお」

<ヽ`∀´>「そしてあんたは、犠牲の必要な世界は要らない。
      そう言ったニダね?」

( ^ω^)「ああそうだお。犠牲の必要な世界なんておそろしくくだらな……あれ?」

<ヽ`∀´>「ふふん、頭の悪いあんたでも気づいたみたいニダね。
      そう、つまりはこういうことニダ」



36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:14:12.73 ID:YwG9JRsz0



じゃあなんでお前は今、この時間を生きている?
   この闘技場で生き延びること。
すなわちそれは他者を、自らが生きるために蹴落とした明白な証拠ではないか。





37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:15:34.71 ID:YwG9JRsz0
(;゚ω゚)「おお、おお……」

ブーンの口から嗚咽が漏れる。

<ヽ`∀´>「あんたは予想以上につまらない人間ニダね」



ニダーの言葉がぐさりとブーンの心を抉る。

そうなのだ。

この闘技場においては、他人を犠牲に払わなければ、自分が生き延びることができない。

犠牲を払わなければ、それは自分が死ぬことを意味する。

ブーンは頭を抱え、髪を掻き毟る。
自分という存在が憎かった。

いつのまにかブーンは、神と同じ行為を行っていたのだ。



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:16:36.93 ID:YwG9JRsz0


<ヽ`∀´>「そんなに犠牲の必要な世界が嫌なら、とっとと死ぬことをお薦めするニダ
      犠牲のない世界なんて、ウリはあの世くらいしか知らないニダ」

(;゚ω゚)「死……死ぬ……?」


犠牲無くして生きることは出来ない。

なにもそれは闘技場に限った話ではない。

この世界は多くの犠牲によって成り立つ。

日々の食事から着るものから、何から何まで犠牲が必要なのだ。

そしてこの闘技場はそういった事実をわかりやすく圧縮し、簡潔に示してくれている。

ブーンの決意など、所詮世迷言だったのだ。

(;゚ω゚)「嗚呼……」

ブーンは世界に絶望した。







40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:17:18.24 ID:YwG9JRsz0







(  ω )「クー……」

今ならブーンは、夢の中でクーが哀しい眼をしていた理由がわかる。

そう、最初からクーにはブーンの決意がいかに馬鹿げたものであったのかを知っていたのだ。

そしてそのことにも気がつかず、ただ自分を救おうとするブーンを哀れに思い、
あのような眼差しを向けたのだ。


( ^Д^)「どうしたんだ、韋駄天のブーンさんよぉ。
      試合はもう始まってんだぜ?」

(  ω )




( ^Д^)「まぁこねぇならさっさと殺らせてもらうぜ!」

(  ω )「ぉ……」



41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:18:06.14 ID:YwG9JRsz0

男が剣を振り上げる。

ブーンは黙ってそれを見ていた。

剣は日の光を受け、白銀に輝く。
神々しい光だ。

なぜだかブーンは、その剣に引き裂かられればこの身は浄われる気がした。

剣が振り下ろされた。

ブーンは黙って半歩身を引いた。

鮮血が散った。

ブーンの胴体に、浅い裂傷が走った。

(  ω )「ぉ……」

( ^Д^)「ちぃ、寸前で避けたか」

何故今自分は生きているのだろう。
ブーンはそう思った。

だってこの身は、あの剣で斬られるはずだった。
やはり自分は命が惜しいのだろうか。

つい反射的に、剣を避けてしまったようだ。



42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:20:04.03 ID:YwG9JRsz0

( ^Д^)「こんどこそ死ね!」

男が再度剣を振り上げる。

隙がありすぎる。

きっとこの男は新人なのだろう。
幾多の戦いを既に経験したブーンにとって、この男はあまりにもちっぽけだった。

(;^Д^)「ゴブリャ……」

男が剣を振り下ろすよりも早く、
右手に握られた斧を横に薙ぐなど、ブーンにとってとても容易い動作だ。



「勝者! ブーーーーーン!」

歓声が沸きあがった。
いつものように観客がブーンに声援を送る。

いつもならちょっぴり照れ臭かったこれも、今はとてもどうでもいい。

ブーンはおぼつかない足取りで、控え室へと戻る。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:20:53.00 ID:YwG9JRsz0


その途中。
ブーンは一度観客席を振り返った。


あの大声を張り上げる男の隣――

そこに見知らぬ女性が立っていた。

純白のドレスを身に纏っている。
きっとさぞ高貴な身分なのだろう。

(  ω )「ぉ……」

ブーンはふと呟いた。

その女性と眼があった気がした。






46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/10(日) 21:21:43.75 ID:YwG9JRsz0




ξ゚-゚)ξ「ふむ……あの男……なんという名だ?」

「はっ! あの者は、ブーンと申すものでございます。
 その俊足は、三日三晩で大陸を横断するとまで言われております」

ξ゚-゚)ξ「そうか……」





ξ゚听)ξ「ニダーを見に来たんだけど……思わぬ収穫があったようね」

「? なんでございましょうか?」

ξ゚-゚)ξ「なんでもないぞ。少し黙れ」

「も、申し訳ございません!」

ξ゚听)ξ





第三話 「このくだらない世界」 終わり



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