( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです

1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:30:28.47 ID:NBZQKVRO0


第四話 「みんなの意見を尊重することはとても難しい」




3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:31:59.02 ID:NBZQKVRO0

ブーンは重い足を引き擦り、独房へと戻る。

(=゚ω゚)ノ「ブーン。血ぃ出てるけど大丈夫かょぅ?」

(  ω )「大丈夫だお」

ブーンは素っ気無く返事を返した。

ブーンはそんな傷のことよりも、あることで頭が一杯だった。

クーだ。

どうしたらクーを哀しませずに生き返らせることが出来るのだろうか。
きっとクーは、犠牲を要した方法を拒絶するだろう。

しかし、この世に犠牲なくして獲得するものなど何もないのだ。

<ヽ`∀´>「ふん、そのまま化膿して死ぬのも悪くないんじゃないかニダ?」

(=゚ω゚)ノ「それはちょっと酷いんじゃないかょぅ」

<ヽ`∀´>「ふん」



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:33:28.19 ID:NBZQKVRO0

ぃょぅとニダーが軽く口論になる。
しかしそれが激しさを増すことは無い。

一方的にニダーが、「ふん」の一言で会話をぶつ切りにしてしまうからだ。

しかしそんなこと、今のブーンにはこれっぽっちも関心は無かった。

(  ω )(クー……一体僕はどうすれば……)

ブーンの思考は抜け道の無い迷路を彷徨い、浪々と廻り続けるだけであった。


そして神が地に沈んだ。

独房を照らすのはもはやか細い月明かりだけになった。

(  ω )「傷が疼くお……」

ブーンは傷口に手を当てる。
今日斬られた場所だ。

じくじくと痛む。
熱い。

化膿してきたのかもしれない。



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:35:51.77 ID:NBZQKVRO0

(; ω )「うぅ……」

ブーンがごろりと寝返りをうつ。

しかし体制が変わったからといって、傷の疼きが止むことは無い。

(; ω )「このまま死ぬのもいいかもしれないお」

ポツリとそう呟いた。

その時だ。

聞いたことも無い声が突然、ブーンの鼓膜を震わせた。

「それでいいのか?」

(;゚ω゚)「え?」

ブーンは慌てて周囲を見渡す。

ぃょぅも、ニダーも寝ていた。

でも、一人。起きていた。

/ ,' 3「そうやって少女を見捨てるのか? 少年?」

なんとそこには……口をもごもごと動かし、
流暢に喋るスカルチノフの姿があった。



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:38:35.57 ID:NBZQKVRO0

(;゚ω゚)「でも、でも! 僕が生き延びるためには人を殺さなきゃいけないお!
      そんなことをしてクーが喜ぶわけがないお!」

/ ,' 3「...zzzZZZ」

(;゚ω゚)「あのぅ?」

/ ,' 3「...zzzZZZ」

(;゚ω゚)「……」

(; ω )「ふぅ……」

スカルチノフが喋った。

かと思いきや、すぐに寝てしまった。

いや、最初からスカルチノフは寝ていたのかもしれない。
そしてただ、ブーンが熱にうなされ夢を見ていただけなのだ。

そうブーンは今夢を見ているのだ。

だってそうでなければ、ブーンの後ろに立つ人物の説明がつかない。

(; ω )「立ってるだけじゃなくって……何か喋ってほしいお。クー」



川 ゚ -゚)「……」



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:52:41.22 ID:NBZQKVRO0

クーの綺麗な黒い長髪がなびく。
甘い香りがそよそよと吹きつけ、ブーンの鼻腔を擽る。

こうしてまたクーに会えるなど、ブーンにとって夢のようだ。

いや、実際これは夢なのだ。

(; ω )「ねぇクー。どうやったら僕はクーを救えのかおね?」

川 ゚ -゚)

(  ω )「僕はクーを救いたいお……」

川 ゚ -゚)

川 ゚ -゚)「私ハ……救ワレテイル」

(  ω )「え?」

それはどういう意味か?

そう聞こうとしたが、ブーンの口から音が発せられることはなかった。
口の形を作ったところで、クーは消えてしまった。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:54:34.65 ID:NBZQKVRO0

(  ω )「……」

(; ω )「ッッッッッ!!!!!」

ブーンは傷口を手で強く押さえる。

激痛が走り、全身を駆け抜ける。
焼けるような痛みだ。

じっとりとした脂汗が滝のように流れ始める。

(; ω )「はぁ……はぁ……はぁ!!!!」

ブーンの意識は徐々に、徐々に。

深淵へと沈んでいった。







22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:55:58.97 ID:NBZQKVRO0
真っ白い世界。

ブーンはどこまでも真っ白な無地の世界に居た。

この世界に来るのも、ブーンはすっかり慣れっこだ。

( ^ω^)「ここは……温かいお……」









从 ゚∀从「そうだな」

( ^ω^)「ハインリッヒ様もそう思いますかお」

从 ゚∀从「ああ、私もここは好きだ」

ハインリッヒの手が虚空を掴む。

そしてその手には……握られていた。

なにが握られているのかはわからない。
見えない。知覚できない。

でもハインリッヒは握っていた。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:57:18.94 ID:NBZQKVRO0

从 ゚∀从「ブーン、思い出せ。
     このままではクーは無駄死にになるぞ?」

( ^ω^)「クーの犠牲によって世界は救われたお。
       今更無駄も何もないお」

从 ゚∀从「質問を変えようか?
     クーは一体どんな世界を望んで死んだ?」

( ^ω^)「え?」

ブーンは尋ね返す。

誰もいない空間に向かって尋ね返した。

( ^ω^)「……」

ブーンは思い出す。

クーとの別れの瞬間を。

あの瞬間は鮮明に覚えている。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:58:09.42 ID:NBZQKVRO0




「ブーンは……私が助ける」



「私は生贄に選ばれた話を両親から聞かされたとき、泣いた。
 怖くて泣き喚いた。生きたいと、死にたくないと叫んだ」



「でもな、私が死ぬことでブーンが助かると気づいたとき」



「何も怖く無くなったんだよ」






30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 19:59:03.02 ID:NBZQKVRO0

( ^ω^)「クーが自分自身を犠牲にして得た世界――」



それはブーンが生きる世界。

クーはブーンが生きることを望んだ。

( ^ω^)「あのときクーが哀しそうな顔をしたのは、別に深い意味は無かったんだお……」

从 ゚∀从「そうだ。あのときクーは、見知らぬ男にヒョイヒョイついていって、
     結果、自身の命を危険に晒した。
     クーはそんなお前に対して嘆いた。ただそれだけのことだったんだ」

( ^ω^)「そうか。わかったお。僕は……クーのためにも――」







 死 ぬ 訳 に は い か な い 





从 ゚∀从「そうだ。だからブーン。お前は生きろ」



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:00:01.81 ID:NBZQKVRO0

( ^ω^)「たしかに……クーは僕が生きることを望んで……犠牲となったお」

从 ゚∀从「そうだな」

( ゚ω゚)「でも、でも! 僕は納得できないお!
      なんで僕が生きるためにクーが死ぬんだお! なんでクーが死ななきゃいけないんだお!
      自身が生きるために、クーの意思を守るために!
      僕に人を殺せと!
      自らの幸福のために他人を不幸に陥れろと言うのかお!
      そんな世界間違っているお!」

从 ゚∀从「……」


从 ゚∀从「……ああ、間違っているな」

ハインリッヒは言い切った。

その言葉は、そうギロチンの如く無慈悲に振り下ろされた。










36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:02:03.61 ID:NBZQKVRO0



(;゚ω゚)「そんなのあんまりだお!」

(;゚ω゚)「……」

(;゚ω゚)「あれ?」

いつのまにかブーンは、元の独房に戻っていた。

いや、たった今飛び起きたのだ。


どうやらすっかり寝入ってしまったらしい。
既に窓から明かりが差し込んでいた。

(;^ω^)「夢?」

ブーンは素早く後ろを振り返る。



やはりそこにはクーはいなかった。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:03:21.87 ID:NBZQKVRO0

(;^ω^)「つかそれどころか誰もいないお……」

そう、何故かこの独房には、ニダーもぃょぅもスカルチノフもいなかった。

ただひたすらにがらんとした空間が広がるだけだ。

(;^ω^)(あれ? みんな何処に行ったのかお?)

そのときブーンは、何か鼻にツンと来る匂いを嗅ぎ取った。
どうやらその匂いは、腹部から発せられているらしい。

ブーンは視線を腹部に落とす。

昨日の傷口には綺麗な包帯が巻かれていた。
どうやらこの匂いも、アルコールで消毒したためのようだ。

(;^ω^)(一体誰が……?)

こんなことをする人物。

あの三人がするようには思えないが、あの三人以外に候補者は居ない訳だし、
あえてあげるならばぃょぅだろうか。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:04:21.08 ID:NBZQKVRO0

そのときだ。

(=゚ω゚)ノ「ブーン!」

何故か息を切らせたぃょぅが、扉の前に立っていた。

(;^ω^)「な、なんだお?」

(=゚ω゚)ノ「女王がブーンの試合を見に来ているらしいょぅ!
     今日の試合に勝てば、帝国軍兵士に抜擢されるらしいしょぅ!」

(;^ω^)「なんだってお!」

帝国軍兵士への抜擢。
夢にまでみた、闘技場脱出のチャンスだ。

(;^ω^)「で、相手は誰だお!」

ブーンは焦る気持ちを押さえつけ、ぃょぅに質問する。
するとぃょぅは、一瞬答えを渋った。

しかし意を決したかのように、すぐに

(=゚ω゚)ノ「今日のブーンの相手は――」





47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:05:52.18 ID:NBZQKVRO0




湧き上がる歓声。

神の光りが、容赦なく闘技場を照りつける。

闘技場には、一人の男がうずくまっていた。
その男は、ただ一点を凝視していた。

そう、女王を射抜くような眼でみていた。

その眼にはたしかな力。
なにかを成し遂げようとする力が篭っていた。

「みんな……ようやくここまできた……」

男は視線を女王から逸らさずに言った。
手にもつ剣を、ぎゅっと握り締めた。

その時、女王が男の方を見た。

男と女王の目が合う。



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:06:50.50 ID:NBZQKVRO0

「……」

ξ゚ -゚)ξ「……」

ξ゚ー゚)ξ「……」

女王が笑みを浮かべた。

男は汚いものでも見たかのように、苦々しい表情を浮かべ女王から目を逸らした。

「ふん……すぐにそんな表情浮かべられないようにしてやる……」

突然観客達の歓声が、一際大きくなる。

男には、その理由は確認するまでも無くわかった。

「来たか……」

男は立ち上がった。

そして獲物を真っ直ぐにみつめる。



51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/17(日) 20:07:42.63 ID:NBZQKVRO0

<ヽ`∀´>「来い、ブーン。八つ裂きにしてやるニダ。
      感謝するニダよ」

( ^ω^)「……」









第四話 「みんなの意見を尊重することはとても難しい」  終わり



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