( ^ω^)ブーンは魔法使いに会いにいくようです
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:15:40.37 ID:oKTbcD+R0
第七話 「思い通りになんてならないこんな世の中だから」
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:16:46.75 ID:oKTbcD+R0
「おや、これはモララー殿お久しぶりですな」
(;・∀・)「あ、ああ」
「ここ暫く王宮にはすっかりご無沙汰となっていましたが……
一体今日はどういったご用件で?」
(;・∀・)「実はだな、有能な召使いを雇ってな。
正直召使いとして終わらせるには惜しい人材だと思って、
女王様にこいつを役人として雇ってもらうよう進言しに来たのだ」
「ほう……モララーさんがそこまで見込む人材とは……
で、その隣に居る人がどうなのですか?」
(;・∀・)「あ、ああ。そうだ……」
( <●><●>)「ワカッテマスです。以後お見知りおきを」
「はは、なかなか賢そうな人ですな。きっと女王様もお気に召すと思いますぞ!」
(;・∀・)「はは、ありがとうございます。では私達はこれで……」
「ええ、では御機嫌よう」
(;・∀・)「ははは」
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:19:42.81 ID:oKTbcD+R0
ワカッテマスの作戦。
それは自らが王宮に隠密として潜入すること。
( <●><●>)「既に一般兵として、一人隠密を送り込んでいます」
( ・∀・)「何故そいつじゃ駄目なんだ?
送り込んでから実は愚図だったことがわかったのか?」
( <●><●>)「いえ、そうでは無いのです」
その隠密は非常に有能で、多くの有益な情報を掴んでくれた。
しかしその有益な情報には偏りがあったのだ。
( <●><●>)「ただ、その情報が全て軍事関係のものでして、たしかに我々革命軍にとって
これほど役に立つ情報は無いのですが、それでは駄目なのです」
そう、わざわざ王宮に潜入してまで欲しい情報。
それは他でもない。
( <●><●>)「我々は魔法使いの情報を何よりも欲しているのです」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:29:27.33 ID:oKTbcD+R0
( ・∀・)「しかし肝心の隠密は、潜入する場所をミスってしまったわけか」
( <●><●>)「いえ、決して潜入の場所をミスしてしまったわけでは無いのです」
そもそも王宮に、身分を詐称して潜入出来る場所が、軍部。
つまり兵としてしか、王宮に潜入することが出来なかったのである。
( <●><●>)「やはり兵では、動ける場所にも限りがあります。
下手に王宮内をうろちょろしますと、必ず尻尾を掴まれるでしょう」
兵以外の潜入手段。
それは役人として潜り込むこと。
しかし、それは不可能だった。
( <●><●>)「役人となるには」
( ・∀・)「貴族。もしくは貴族の推薦が必須だったわけだ」
( <●><●>)「そのとおりです。貴方に我々が接触したのも、最初からこれが狙いでした」
( ・∀・)「たしかにな。王宮というところは怖ろしく格式に拘る輩の巣窟だからな。
どこぞの馬の骨ともわからん輩を役人として取り上げてもらえるとは思えない」
そう。
これがワカッテマスの作戦。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:30:44.95 ID:oKTbcD+R0
(;・∀・)「しっかしこんな時に限って女王様は不在か……」
王宮に入った二人は、真っ先に女王との対面を求めたのだが、あっさりと却下されてしまった。
('A`)「女王様は今いないから帰れよ」
だそうだ。
( <●><●>)「仕方が無いですね」
(;・∀・)「まぁこんな日もあるさ」
あっさりと門前払いを喰らってしまった二人は、
仕方なく出直そうと、引き返し始めた。
そのとき。
一人のローブを纏った男とすれ違った。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:31:27.92 ID:oKTbcD+R0
爪'ー`)y‐
( ・∀・)(おや? 誰だあいつは?)
見たことも無い人種だった。
おそらくは異民族。
もしかしたら異大陸人かもしれない。
そしてその男はゆっくりと、ドクオに近づく。
('A`)「なんだお前は? 女王様は留守だ。
今すぐ帰ってもらおうか」
爪'ー`)y‐「私に帰れと言うのですか?」
('A`)「あぁ? 貴様何様のつもりだ? さっさと帰れよカス」
爪'ー`)y‐「そうですか……」
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:34:58.00 ID:oKTbcD+R0
男は手を突き出す。
すると手の平から、突然火柱が燃え上がった。
そして言った。
爪'ー`)y‐「折角直々に”魔法使い”が会いにきてやったというのに……」
('A`)「!」
( ・∀・)「!」
( <●><●>)「!」
三人は目と耳を疑った。
あの魔法使い本人だと言うのか?
しかし男はこうしてはっきりと主張し、なおかつはっきりとした証拠。
そう、何もないところから火柱を出して見せたではないか。
モララーは思わず息を呑んだ。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:36:17.15 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒( ・ω・)「へぇ、君はやはり闘技場出身だったのか」
(´・_ゝ・`)「だからいきなり”小隊長”を任命されたのか」
⌒゜(・ω・)゜⌒「羨ましい限りじゃないか」
( ^ω^)「そうかお?」
進軍を開始して早三日。
最初こそぎこちなかった部下との会話も、大分慣れてきた。
そしてブーン自身も、ある程度軍に馴染んできたような実感があった。
やはり共に時間を共有することは、関係を自然に深めてくれる。
しかし
⊂⌒( ・ω・)「でも、なんかあれだよね」
(´・_ゝ・`)「入っていきなり上のポジションってのもね」
⌒゜(・ω・)゜⌒「結構対人関係悩みそうだよなぁ〜」
(;^ω^)「……」
馴染んだと実感しているのは、実はブーンただ一人だけなのかもしれない。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:39:40.81 ID:oKTbcD+R0
( ^ω^)「そういえば」
⊂⌒( ・ω・)「ん?」
(´・_ゝ・`)「なんだい?」
⌒゜(・ω・)゜⌒「言ってみぃよ」
(;^ω^)「……」
( ^ω^)「あの黒い鎧の人って何者なんだお?」
⊂⌒( ・ω・)「それは?」
(´・_ゝ・`)「なんだい」
⌒゜(・ω・)゜⌒「将軍様のことかい?」
( ゚ ゚)
( ^ω^)「そうだお。全身黒鎧だし、こういっちゃなんだけどただの不審者にしか見えないお」
⊂⌒( ・ω・)「まぁ」
(´・_ゝ・`)「たしかに」
⌒゜(・ω・)゜⌒「色々と不審な人であることに間違いはねぇな」
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:40:37.83 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒( ・ω・)「ただあの人は滅茶苦茶強い」
(´・_ゝ・`)「あの重装備で『蝶のように舞い、蜂のように刺す』お方だからな」
⌒゜(・ω・)゜⌒「中の人は『天狗』とまで言われているほどだ」
( ^ω^)「中の人って……もしかして他にも色んな説があるのかお?」
⊂⌒( ・ω・)「そりゃもうな」
(´・_ゝ・`)「異民族の戦士だとかZ戦士だとか、実はドクオ様とか戦う女王ツン様だとか戦うウェイトレスだとか」
⌒゜(・ω・)゜⌒「黒尽くめの不審者繋がりの某兄者だとか、色々あるぜ!」
(;^ω^)(いじくられてるなぁ……)
そんな他愛も無い話をしながらも、行軍は続く。
そしてどれほど歩いただろうか。
やがて前方に、一つの村が見えてきた。
そのときだ。
グワァーンと大きく、銅鑼が重たい響きを奏でた。
進軍を止まる合図だ。
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:41:44.52 ID:oKTbcD+R0
そして件の将軍がゆっくりと軍全体を見渡す。
( ゚ ゚)「さて、これより! 村狩りを始める!」
(;^ω^)「え?」
村狩り。
ブーンには聞き慣れない言葉だ。
しかし聞き慣れていなくとも、その言葉の示す意味は容易に想像できる。
(; ω )「まさか……」
( ゚ ゚)「相手は異民族だ! 何の躊躇もいらん!」
口をも覆う鎧のせいで酷く不鮮明だが、
それでもものすごく響く大音声で、将軍が叫ぶ。
そして言い放つ。
( ゚ ゚)「すべてを奪え! すべては帝国のために!」
( ゚ ゚)「銅鑼を鳴らせ! 全軍突撃だああ!!!」
銅鑼が三度グワァンと重く鳴り響く。
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:42:47.36 ID:oKTbcD+R0
それと同時に、全軍が一斉に叫ぶ。
轟く。
そして、走り出す。
土煙を巻き上げ、地面を揺らし、
一直線に、前方に広がる、村を目指す。
⊂⌒( ・ω・)「さぁ行きましょう隊長!」
(´・_ゝ・`)「我らが第08小隊の実力!」
⌒゜(・ω・)゜⌒「とくとみせつけてやりましょう!」
(; ω )「……これって」
⊂⌒( ・ω・)「ええ! 略奪ですよ! 略 奪 ! 」
(´・_ゝ・`)「相手は武装してないから楽勝なんだぜ!」
⌒゜(・ω・)゜⌒「しかもたくさん奪えば、そのまま自分達に還元すると考えていい」
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:44:02.24 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒( ・ω・)「まさしく!」
(´・_ゝ・`)「おいしい作戦!」
⌒゜(・ω・)゜⌒「さぁ行きましょうなんだぜ! 隊長!」
( ゚ω゚)「間違ってるお!!!!!!」
ブーンは叫んだ。
将軍よりも大きな声で、喉から声を絞り出すように叫んだ。
その声に、一瞬周囲が静まりかえる。
⊂⌒( ・ω・)「え……」
(´・_ゝ・`)「なにを……」
⌒゜(・ω・)゜⌒「おっしゃるのかな? かな?」
( ゚ω゚)「だって……だって……」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:45:03.35 ID:oKTbcD+R0
言いたいことは山ほどある。
一瞬にして爆発した感情は、ありとあらゆる言葉をブーンに流し込む。
しかし、それが言語となって、口から出て行かない。
変換が上手く行かない。
なんてもどかしい。
( ゚ω゚)「奪われた人たちは……いったい……どうなるって……」
⊂⌒( ・ω・)「いやそりゃあ」
(´・_ゝ・`)「ねぇ」
⌒゜(・ω・)゜⌒「うん」
⊂⌒( ・ω・)「まぁ現実ってこんなもんっすよ」
(´・_ゝ・`)「異民族なんて人にあらずって感じですし」
⌒゜(・ω・)゜⌒「羊さんから毛を刈るのと同じ感じですよ」
( ゚ω゚)「違うお!」
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:45:45.57 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒(; ・ω・)(う〜ん)
(;´・_ゝ・`)(真面目と言うか……)
⌒゜(;・ω・)゜⌒(空気読めないっていうか……)
( ゚ ゚)「おい、第08小隊。何をしている。
さっさと行かないか」
⊂⌒(; ・ω・)「失礼! 将軍様!」
(;´・_ゝ・`)「ちょいと隊長が腹を痛がりましてね!」
⌒゜(;・ω・)゜⌒「でも良くなたみたいですよ。ね。隊長。
さぁ異民族の村へ、ヨ〜ソロ〜!」
( ゚ω゚)「こんな作戦今すぐ取り消すお!」
( ゚ ゚)「いまなんて?」
( ゚ω゚)「こんなの人のやることじゃないお! 今すぐやめるお!」
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:47:04.62 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒(; ・ω・)(あ〜あ)
(;´・_ゝ・`)(しーらね)
⌒゜(;・ω・)゜⌒(なんまんだぶ……)
( ゚ ゚)「ほぅ、この作戦は帝国の意思。従ってこれは女王様の意思である」
( ゚ ゚)「女王様に逆らおうというのか、貴様は」
( ゚ω゚)「そうだお!!!!!!」
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:47:55.32 ID:oKTbcD+R0
⊂⌒(; ・ω・)
(;´・_ゝ・`)
⌒゜(;・ω・)゜⌒
( ゚ω゚)
( ゚ ゚)
( ゚ ゚)「そうか……」
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:48:41.76 ID:oKTbcD+R0
将軍は静かに答えると、ゆっくっりと腰に差した剣を、
鞘からゆっくりと抜いた。
神の光を受けたそれは、ぎらりと鋭く輝いた。
( ゚ ゚)「ここまで清々しく反抗する奴は久々だ」
そして将軍は、同様にゆっくりと剣を構えた。
剣の切っ先は、真っ直ぐにブーンの喉元を捕らえている。
( ゚ ゚)「来い、私が直々に調教してやろう」
( ゚ω゚)「……」
ブーンもまた、背中にしょった斧を素早く抜き放ち、構えた。
⊂⌒(; ・ω・)(あ〜あ)
(;´・_ゝ・`)(ご愁傷様)
⌒゜(;・ω・)゜⌒(殺されたな)
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:49:25.53 ID:oKTbcD+R0
( ゚ ゚)「さぁ、来い」
( ゚ω゚)「おおおおおおお!!!」
ブーンは斧を振り上げ、そのまま素早く将軍に接近する。
自慢の俊足を生かした肉薄。
一気に将軍の懐に入り込んだ。
かに思えた。
(;゚ω゚)「うぉ!」
たしかに
先程まで。
将軍はここに居た。
剣を構え、ここに立っていた。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:50:06.99 ID:oKTbcD+R0
しかし
消えている。
ブーンが接近するために駆けた。
その間の、どこかで、一瞬にして
忽然と将軍は消えた。
そして風がブーンを襲った。
つむじ風?
はたまた魔法?
いや違う。
超高速で移動したのだ。
それによって巻き起こった風。
そう、文字通り将軍が風のような速さで移動し、
ブーンを回避したのだ。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:51:28.67 ID:oKTbcD+R0
(;゚ω゚)「くそ!」
ブーンの頬に冷たい汗が一筋。
それが垂れる時間すら与えず。
非情の言葉をブーンは浴びせられる。
( ゚ ゚)「後ろだ。うつけ者め」
そして
- 36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:52:10.27 ID:oKTbcD+R0
(;・∀・)「魔法使いだって? お前、一体……」
爪'ー`)y‐「言った言葉。その通り。それ以上でもそれ以下でも。クククククク」
ローブの男は、妖しい笑みを浮かべモララーを睨んだ。
(;・∀・)(こいつが、魔法使い? いや、だっていきなり御本人登場だなんて……)
出来すぎている。
世界中の人々が血眼になって探す魔法使いが、こうも堂々と自分からやってくるなど。
あり得ない。
何かおかしい。
モララーは唾を飲み込んだ。
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:52:53.78 ID:oKTbcD+R0
ごくりという音が、頭の中で響く。
そして意を決し、魔法使いに質問を投げかけようとした。
しかし
('A`)「オルァどけこのあほんだらが!」
(;・∀・)「うぉぁっ!」
いきなりドクオが間に、強引に割って入ってきた。
その際に、モララーは思い切りドクオに突き飛ばされた。
(;・∀・)「な、なにを」
モララーがドクオに、何か言ってやろうとするが、
既にドクオは、モララーなど眼中にないようだ。
いかにも下心が丸見えな目を、魔法使いに向けている。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:53:34.57 ID:oKTbcD+R0
('A`)「いやはや、よくぞおいでました。魔法使い様。
ささ、奥へどうぞ。ゆっくりと女王様を待ちましょうではないですか。フヒヒヒヒ」
そして再度モララーの方を向き直り。
('A`)「女王様は不在だ! さっさと帰るぁんかくそがぁ!」
そして魔法使いの方へ向き直り。
('A`)「いやはやお見苦しいところを……ささ、どうぞこちらへ〜」
爪'ー`)y‐「ふふ、お話のわかる人がいて助かりましたよ」
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/20(金) 21:54:18.01 ID:oKTbcD+R0
(;・∀・)「……」
( <●><●>)「行ってしまいましたね……」
(;・∀・)「……私はあいつほど姑息な男を見たことが無い……」
( <●><●>)「いえ、モララーさんも負けてないと思いますよ」
(;・∀・)「……」
(;・∀・)「そうか?」
第七話 「思い通りになんてならないこんな世の中だから」 おわり
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