( ^ω^)ブーンは色々な本の世界へと旅立つようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:20:25.63 ID:MB973zwV0
プロローグ
( ^ω^)「集まれー」
僕が大声で集合をかけると、みんなが一斉に集まり始めた。
(‘A`)「おー、早く始めようぜ」
ξ゚听)ξ「どんな本があるかわくわくするわ」
(´・ω・`)「僕の目にかなうものはあるかな?」
( ゚∀゚)「おっぱい! おっぱい!」
(*゚ー゚)「ジョルジュ君、少しは落ち着いて」
( ´∀`)「エロ本はないっていう話なのに、張り切りすぎだモナ」
友達が6人、僕の家の庭に一斉に集まっている。
一戸建ての小さな家。そこの庭にある、小さな物置。
その中に、みんなの目的のものが入っている。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:21:27.31 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「今日は集まってもらって何よりだお」
僕が話を始めると、みんなは急に静かになった。
気味悪くもあったが、気にせずに話を続けた。
( ^ω^)「いらない本をあげると言っただけで、まさか6人も集まるとは思わなかったお。
みんな、欲深いことこの上ないお」
('A`)「うるせえよ」
(´・ω・`)「いらないのならもらう。これが世の中の鉄則だからね」
( ^ω^)「まあ、いいお。とにかく、本はこの物置の中にあるから、好きなのを持っていってもらっていいお」
昨日のことだ。
自分の部屋を掃除していると、いらない本が大量にあることに気がついた。
気付かないうちに、僕の部屋は漫画やらラノベやら文庫本やらが本棚に大量に収納され、押入れの中にまで陣地を広げていたのだ。
これはいけないと、読まなくなった本を庭の物置にしまおうと思ったのだが、そちらも大変なことになっていた。
本、本、本の山。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:22:51.54 ID:MB973zwV0
なんでもおじいちゃんよりさらに前の世代から積み込まれてきた本が全てこの物置の中にあるらしく、
母ちゃんでさえその実態は把握できていないのだという。
物置の中には本が山積みにされ、それが天井にまで届くほどだった。
そこに僕の持ってきた本が入るわけもない。
途方にくれた僕は、それならば仕方ないと友達にあげることにした。
捨てるのはもったいないし、古本屋に持っていったって二束三文ばかりの金を手に入れるに過ぎない。
ブック○フは店員の主観で値段が決められちゃうし。
ならば友達にあげることでみんなに恩を売っていた方が後々有益になるだろうという下心が働き、
今に至る。
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:24:18.51 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「では……未知への扉、オープンだお!」
勢いよく物置の扉を開けると、
一斉にみんなから感嘆の声があがった。
山と積み上げられたその本達。
じいちゃんより前の世代から集められたというのは嘘ではないらしく、見た所では明治時代以前の本も混ざっているように見える。
ξ゚听)ξ「これはすごいわね……」
( ゚∀゚)「おっぱいの本はねえのかなあ」
(*゚ー゚)「昔の恋愛小説とかも読んでみたいな」
( ´∀`)「学術書まで混じってるモナ。これは貴重だモナ」
( ^ω^)「どれでも好きなのを持っていっていいお。母ちゃんからも了承を得ているお」
母ちゃんも、これほど大量の本の処分に困っていたのだという。
友達にあげると言ったら、快くおkをくれた。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:26:03.72 ID:MB973zwV0
('A`)「おい、これかなり新しいラノベじゃねえか。いいのか?」
( ^ω^)「ああ、それは同じ奴をもう一冊持ってるんだお。間違って買っちゃったんだお」
(´・ω・`)「これは……シラーの詩集じゃないか。かなり高価だけど、いいのかい?」
( ^ω^)「それは多分、おじいちゃん辺りが買った奴だお。興味ないから持っていっていいお。
じゃあ、僕はお茶でも持ってくるお。みんなは選んでてくれお」
('A`)「おう」
ξ゚听)ξ「ありがとね」
(´・ω・`)「これは伝説のksmsテクニック……!」
( ゚∀゚)「おっぱいはどこだー!!」
(*゚ー゚)「うわあ、随分古い本があるわねえ。『枕草子』……?」
( ´∀`)「松崎しげるの写真集まであるモナ……オエッ」
僕は熱中しているみんなをほほえましく見つめつつ、家の台所へと向かった。
夏の暑い日、30度を超えるこの天気の中、庭で本選びをするのはさぞかし辛いことだろう。
冷えたお茶でも持っていけば、きっと喜んでくれることだろう。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:27:39.82 ID:MB973zwV0
そんなご奉仕精神を気持ちよく感じながら、
僕は家の廊下にまで積まれている本の山を見つめる。
僕といい親といい、僕の家系は本好きが多かったらしい。
おじいちゃんは詩集や純文学を底引き網漁のように買いあさり、母ちゃんは恋愛小説、父ちゃんは歴史小説を集めていた。
そして僕も、ラノベや漫画を馬鹿みたいに買い続けている。
種類は違えども、これほど本好きの家系は珍しいと言えるだろう。
本というのはいいものだ。たった一枚の紙をめくれば、たちまちに別世界へと旅立たせてくれる。
時には未来に、時には過去に。時にはファンタジー世界に、時には宇宙に。
少年になることもあれば、老人になることもある。
色々な世界を満喫させてくれるのが本というものだ。
そう見れば、漫画だって純文学に後れをとることはない。僕はそう思っている。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:29:19.02 ID:MB973zwV0
トレーにお茶の入ったコップを7個乗せて、僕はゆっくりと庭に向かった。
セミがあわただしく鳴る外へと出て、改めて夏の暑さを噛み締める。
こんなに暑かったら、太陽の光を使って目玉焼きも焼けるに違いない。
どこかの山でそういうことをやっているレストランがある、と聞いたことがある。
( ^ω^)「おーい……って、あれ?」
物置のある庭にたどりつくと、すぐに変なことに気がついた。
みんながいない。
さっきまで楽しそうに本を選んでいた友達が、みんないなくなっていた。
(;^ω^)「……帰ったのかお?」
いやいや、そんなはずはない。
それなら挨拶のひとつでもするはずだし、
何よりさっきまで台所まで届くようなはしゃぎ声が聞こえていたのだ。
たった数十秒の間で、僕に気付かれることなく帰ることなんて、できるはずがない。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:30:59.62 ID:MB973zwV0
地面には本が散らばっていた。
ページが開かれているものもあり、みんなが中身を見て選んでいることがありありと分かる。
そんな本達の間に、ひとつ見慣れたものを見つけて、僕はそれを拾い上げた。
( ^ω^)「ツンの髪留め……」
いつもツンがつけているピンクの髪留めだった。
これは親にプレゼントされたものらしく、後生大事に持っていたのを覚えている。
これを落として、しかもそれに気付かずに帰るなんて……そんなことはありえない。
( ^ω^)「おーい、みんなー?」
僕は辺りを見回って、みんなを探し回る。
だが、どこにも彼らの姿はなかった。ただ少しの痕跡も見つからない。
静かだった。今家には親はいない。僕は夏休み。両親は共働き。慣れた静けさが、今はすごく嫌な感じ。
(;^ω^)「か、かくれんぼかおー? 僕が鬼だなんて聞いてないおー?」
自分の声だけがむなしく響く。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:33:16.08 ID:MB973zwV0
僕は物置の中に入った。本が外に出されたため、ある程度のスペースができている。
もしかしたらこの中にいるのかも、と思ったが、どうやら徒労に終わったらしい。
やはりそこには誰もいなかった。
( ^ω^)「……ん?」
地面を探っていると、奇妙なものを見つけた。
一冊の本。背表紙もページも、全てが黒く染まっており、題名も何もついていない。
こんな本、あったっけ?
それを拾い上げようと手を伸ばした瞬間、
『やめろ!』
大きな声がいきなり物置の中に響いた。
- 15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:34:30.39 ID:MB973zwV0
( ゚ω゚)「な、なんだお!?」
『その本に触れてはだめだ!』
( ^ω^)「この声……誰だお。どこにいるんだお」
普通の声じゃない。頭の中に直接響くようなその声の出所を探ろうと、僕は辺りを見渡した。
しかし、人の姿はどこにもない。あるのは本の山と、異様に目を引く黒い本だけ……
( ^ω^)「……あれ?」
本の山の陰に、なにやら光るものが見えた。
暗闇の中をまるで蛍のように光っているそれに目を奪われ、僕は本の山を崩さないように慎重に手を伸ばし、それを拾い上げた。
( ^ω^)「真っ白な本だお……」
さっきの黒い本とは対照的に、それは全てが白い本だった。
表紙にはやはり題名がない。こんな本、今まで見たことがない。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:35:42.40 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「……」
『なんだ。私の背表紙に染みでもついているのか』
( ゚ω゚)「おぅわあ!」
また頭の中に響いた声。それはさっきよりも遥かに大きなものだった。
もしかして、この声は……
(;^ω^)「ほ、本が喋ってるのかお」
『そう考えてもらって構わん。それよりも重大な話がある』
本が喋ってるよりも重大なことっていったいなんだよ。
頭が混乱してきた。
いきなり消えた友達。奇妙な白と黒の本。そして白い本は喋りだしたりするし……
僕の頭がおかしくなっているのか?
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:37:13.91 ID:MB973zwV0
『落ち着いて聞け。今、お前の友人がその黒い本の中に吸い込まれた』
( ^ω^)「……あはは、何を言ってるんだお。人間が本に吸い込まれるなんてそんな話、
あるわけないじゃないかジェニファー」
『つまらんコントは無視させてもらう。で、だ。友人を助けたいか? イエス、ノーで答えろ』
( ^ω^)「状況がまったく飲み込めないお。ちょっと待ってほしいお。考える時間を……」
『いいから答えろ! お前は大事な友人を助けたい。イエスorノー?』
( ^ω^)「そう言われても……」
僕は友人達のことを思い返す。
そう、彼らは大事な友達だ。いつも僕達は一緒にいた。
だから、今までにもすばらしい思い出が……
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:39:03.99 ID:MB973zwV0
――ここからブーンの華麗なる回想――
('A`)『おう、ブーン。前に借りたエロ本なんだけど、破っちまってさ。これ、弁償代。100円で足りるよな?』
ξ゚听)ξ『あ、あんたなんか死んじゃえばいいのよ! ふん!!』
( ゚∀゚)『おっぱいも持たない人種に興味はないのさ、俺は』
(*゚ー゚)『ごめんなさい。今日は用事があって、遊ぶ暇がないの。ごめんね』
( ´∀`)『ブーン、僕の貸した500円、早く返せモナ!』
(´・ω・`)『や ら な い か ?』
――回想終わり――
( ^ω^)「……」
(;^ω^)「うーん……」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:40:12.74 ID:MB973zwV0
(;^ω^)「助けたいか助けたくないかで言えば……どちかと言えばノーかもしれない……」
『では、助けたくないのだな。よし、それならば仕方ない。他の奴を――』
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお! 分かったお! 助けたい、僕はみんなを助けたいお!」
『よく答えた! では、今からお前を旅立たせよう!』
(;゚ω゚)「ちょ、何がなんだかさっぱり分からないお!」
『気にするな!』
そう一喝すると、白い本が急に光を発し始めた。
物置の中を明るく照らす白い光。
それが僕の目の前に広がり、視界を奪い去っていく……!
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:41:26.43 ID:MB973zwV0
(;゚ω゚)「さ、産業でいいから説明を!」
『だが断る』
(;゚ω゚)「アッー!!」
白い光が僕を全て包み込むと、僕の意識は遥か彼方へと飛んでいってしまった。
これが始まり。
無駄に壮大で、はちゃめちゃな旅の始まりだった。
プロローグ 終わり
戻る/1番目の世界