( ^ω^)ブーンは色々な本の世界へと旅立つようです
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:43:07.75 ID:MB973zwV0
( ゚ω゚)「どわああああああ!」
僕は光の中を上に行ったり下に行ったり、回転したりワープしたり……とにかく移動していた。
何時間経ったのか。それとも1秒も経ってないのかもしれない。
まるでドラえもんに出てくる四次元空間のようなところをずっと通っていると、いきなり出口が見えて、
( ゚ω゚)「ぐはっ!」
ドスッ、という大きな音と共に尻餅をついた。
(;^ω^)「いてて……いったいなんなんだお」
大事な尻を撫でながら、僕は自らの置かれている状況を把握しようと周りに目を這わせる。
どうやら、学校の教室のような場所に落ちたらしい。
落ちた、という表現が適切なのか分からないが、
この木の板の地面に尻餅をついたことから考えると、多分自分は落ちてきたのだろう。
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:44:50.27 ID:MB973zwV0
こじんまりとした部屋だった。片側に窓、もう片側には扉があり、
左右には本棚と黒板が置かれていた。
部屋の真ん中に大きな会議机が置かれ、窓側にはもう1つ小さな作業机が置かれている。
と、外を見るとやけに太陽の位置が低いような気がする。
友達を集めたのが昼頃だったはずなのに、今はもう夕方に近いような気が……
( ^ω^)「あれ……なんだかデジャブを感じるお」
僕はもう一度部屋をぐるりと見回した。
大きな会議机、本棚、パソコン、服をかけるハンガーラック。
ん? 本棚にはやけに分厚い本が揃ってる。
ハンガーラックには奇妙な服が数多くかけられており、中にはカエルの着ぐるみもある。
待て、この光景、どこかで見たことないか?
僕はそんな既視感を全力で否定した。
待て、そんなわけがない。ありえないんだ。そんな……
どうして、あの小さい机の上に「団長」マークの入った三角錐の置物があるんだ?
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:46:58.01 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「あはは……どうやら僕の頭がおかしくなっているようだお」
そうだ、冷静に考えよう。
まずは、あの本棚だ。あそこには分厚いが本が数多く並んでいる。ハードカバーのものばかりだ。
僕の家でも見かけるようなものもちらほらとあるが、ほとんどは題名を見ただけで頭が痛くなりそうな難しいものばかり。
次に、ハンガーラック。先ほどの着ぐるみといい、コスプレ衣装ばかりがかけられている。
メイド、ナース、バニーガール。なんでもござれだ。
奥の方を見てみよう。小さな棚に、所狭しとボードゲームが置かれている。
メジャーなものから、おもちゃ屋さんでも見ないようなマイナーなものまで。
ん、人生ゲーム平成版がある。あれはルールが複雑ですぐに飽きたなあ。
よし、最後に小さな机の方を見よう。とりあえず「団長」と書かれた三角錐は思考の範疇から除外しておく。
デスクトップパソコンがドンと置かれているその机。
いかにも団長様が座るに適しており、椅子に座布団が置かれているのを見ても座り心地よさそうだ。あらゆる意味で。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:48:28.21 ID:MB973zwV0
で、だ。冷静に状況を分析してみた結果……
(;^ω^)「……いやいや、やっぱりありえないお」
そうだ。ありえない。
僕がこの高校の制服を着ているのも、この際ありえないということにしておこう。
じゃないと精神がおかしくなりそうで……
「みんなー!! 揃ってるー!?」
何の前触れもなく、突然扉が大きな音を立てて開いた。
中に入ってきたのは……
大きな目をきらきらと輝かせた、黄色いカチューシャをつけた女の子。
「ん? あんた誰?」
(;^ω^)「あうあう……」
一時期は猿のようにそのお姿を拝見していたあの「団長」様だった。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:49:57.77 ID:MB973zwV0
1番目の世界 『誰かさんの憂鬱』
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:51:06.32 ID:MB973zwV0
ハルヒ「もう一度聞くわ。あんた誰?」
( ^ω^)「え、いや、その……」
落ち着け、僕。落ち着いて対処するんだ。スネークも言っていたじゃないか。「さいふぁーふぁい」と。
今僕の目の前にいるのは、ラノベ界を席巻し、アニメは大好評を博したあの「涼宮ハルヒの憂鬱」の登場人物……によく似た人だ。
だってそうとしか考えられない。確かによく似ているけれども、あれは一次元、二次元での物語の人間だ。
こんな風に目の前に三次元になって現れるはずがないんだ。
いくら僕が「ブラックホールの中に入れば二次元にいけるかも」なんて考えたって、
二次元のキャラが現実に出てきてくれることなんてない。
そのはずだ。夢は叶わないもの。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:52:22.12 ID:MB973zwV0
ハルヒ似の少女「あやしい奴……もしかして、生徒会のスパイね!」
けど、目の前で大げさに手を広げ、僕を指差してくるこの少女は……そっくりだ。あのキャラに。
「おい、どうした?」
そんな声が聞こえ、ハルヒ似の少女の後ろから、これまた驚くべき人物が現れた。
身長は高めだけど、冴えない風貌をした細目のお兄ちゃん。
本名不明、素性不明の普通の人間。
「誰か部室にいるのか。って、こいつは……」
( ゚ω゚)「きょきょきょきょきょ……キョンー!!」
キョン似の少年「なんだ、いきなり人の名前を……いや、あだ名か」
あのライトノベルの主人公にして、最強の愚痴王。
物語の鍵だとも言われ、モーホー連中には絶賛人気急上昇中のキョン君が、そこにはいたのだった。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:53:49.05 ID:MB973zwV0
キョン似の少年「おい、ハルヒ、こいつを知らんのか?」
ハルヒ似の少女「知らないわ。少なくとも話したことはないはずだけど」
キョン似の少年「よく見ろ。クラスメイトだ、俺達の」
はい? 僕がクラスメイト?
ハルヒ似の少女「いちいちクラスメイトの顔と名前なんて覚えてないわよ」
キョン似の少年「まったくお前は……ええと、そうだ、内藤だったな。ここに何か用か?」
( ゚ω゚)「……」
キョン似の少年が僕のことを知っていることもさることながら、
まさかここで自分の苗字を呼ばれるとは思わず、
僕はただ口をぽかんと開けて呆然としていることしかできなかった。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:55:15.87 ID:MB973zwV0
キョン似の少年「……反応なし、か。おいハルヒ。お前、何かしたんじゃないだろうな」
ハルヒ似の少女「失礼ね。何もしてないわよ。とにかく、あんた! 何か用があるの!? ないの!?」
少女に詰問されて、僕は我に帰り、「うっ……」と口を詰まらせる。
どうする? 何と言えばいい? まったく状況が把握できない今、僕はいったいなんと言えば……
ハルヒ似の少女「……あー、もうじれったい!!
何もないなら、この神聖かつ不可侵領域であるSOS団の部室から出て行きなさい!」
(;゚ω゚)「す、すみませんでしたー!!」
怒鳴り声にとっさに反応し、僕は力いっぱい地面を蹴って教室から逃げていった。
ハルヒ似の少女「まったく……なんなのよあいつ」
キョン似の少年「さあな」
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:57:28.34 ID:MB973zwV0
※
( ^ω^)「はぁ、はぁ……これはいったいどういうことだお?」
目一杯走って行き着いた先は、校舎と校舎の間にある中庭だった。
あのライトノベルで説明すれば、文化祭の後に少し様子の変だったハルヒが大きな木の下で寝転がっていた場所……とでも言えばいいか。
まさかこんなにもそっくりな場所があるとは思わなかった。制作会社はよく作りこんでるよねー
……よそう、現実逃避は。これまで走ってきて周りの状況をよく見てきた今、もう分かってしまった。
もう認めざるを得ない。ここは確かにそうだ。
あの「涼宮ハルヒの憂鬱」の世界と、まったく同じなのだ。
( ^ω^)「……今北産業に誰か答えてくれる人はいないのかお」
『お前は
今
別世界にいる』
- 37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 21:59:32.34 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「……僕はもう何があっても驚かないと思ってたけど、ここはひとつだけ」
( ゚ω゚)「どういうことだお!?」
頭の中に突如響いた聞きなれた声に、僕は大声で怒鳴り返した。
周りにいた高校生達が一斉に振り向くのを感じたが、それどころではなかった。
『どうもこうもない。今お前は、元の世界とはまったく別の世界にいる。ただそれだけだ』
( ^ω^)「その声は、あの白い本から聞こえてきたのと同じだお。どういうことか、もう少しkwsk聞かせてもらうお」
『ふむ、いいだろう。少し長くなるが、心して聞け』
僕はあの大きな木の下に座り込み、頭の中の声に注意を向けた。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:01:12.63 ID:MB973zwV0
『あの黒い本があっただろう? あれがお前の友達を取り込んでしまった。そこまでは話したな?』
( ^ω^)「まったく聞き覚えがない話だけど、ここは聞いていたことにするお」
『お前はその友達を取り戻したいと言った。だから私は、お前をこの世界に送りこんだんだ』
( ^ω^)「どういうことだお。ここは……どういう世界なんだお?」
『もう気がついているだろう? ここは本の中の世界だ』
いや、気がついていたけど、信じたくなかっただけさ……
『お前の友達は、あの物置の近くに散らばっていた本の中のどれかに吸い込まれてしまったのだ。
よって、その友達を取り戻すためにお前も本の中に入り込まなくてはならなかった。
で、私がそれをしてやった。しかも本の世界でスムーズに動けるように住民登録やら記憶操作やらはすでに行っている。
感謝してくれてかまわんぞ。ほら、どうだ? 感謝しろ』
- 40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:03:15.17 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「……つまり、ここは『涼宮ハルヒの憂鬱』という本の中の世界であり、
この世界のどこかに僕の友達がいると……そういうわけかお」
『ちっ、スルーか……そうだ。ようやく状況が把握できてきたようだな』
( ω )「なんということだお……」
僕はぷるぷる震え、拳を握りしめる。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:05:14.58 ID:MB973zwV0
『そんなに怒るな。これは仕方のないことだ。大丈夫。目的さえ達成すれば、すぐに元の世界に――』
(#^ω^)「んなことはどうでもいいんだお! 問題はあの団長様なんだお!」
僕は謎の声に向かって怒鳴り散らした。
『……は?』
謎の声の呆然としたような声を無視し、あの団長の身体をもう一度思い浮かべてみる。
しかし、ダメだ。一瞬のことだったのでちゃんと覚えていない。
こんな形で自分の夢が実現されるとは思いもよらなかった。
今の話が本当なら、さっきのハルヒ似の少女はまさしく本物の「涼宮ハルヒ」だったということだ。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:06:15.77 ID:MB973zwV0
( ゚ω゚)「くそ、しまったお! もっとちゃんとあの身体を見ておくんだったお!
現実世界ではあんなカワイコちゃんは存在しないというのに……
いや、待つお……ということは、もしかして本好きで無口な彼女も、ロリっ子な彼女もいるということかお!?」
『ああ、そういうことになるが……』
(*^ω^)「うっひょー!! これは行かなくちゃいけないでしょう! 大将!」
『誰が大将だ……落ち着け! 内藤ホライゾン!』
( ^ω^)「は、はい!」
僕は思わず直立不動で気をつけをする。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:07:53.90 ID:MB973zwV0
『時間はあまりない。遊んでいると、お前の友達はこの世界に取り込まれてしまって、
2度と元の世界に戻れなくなってしまうかもしれないんだぞ』
(;^ω^)「そ、それはどういうことだお?」
『そのままの意味だ。早く友達を見つけて、助けろ。私にはそれしか言えん』
( ^ω^)「どこにいるか分からないのかお?」
『探すのはお前の仕事だ。私はそれをサポートするに過ぎん……幸い、お前はこの本の世界についてよく知っているようじゃないか。
どうやれば見つかるかはよく考えれば分かるはずだ』
(;^ω^)「うーん……」
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:09:23.62 ID:MB973zwV0
『とにかく急げよ。私は少しやることがあるので、しばらく話はできない。
また連絡できるようになるまで、頑張れ』
(;^ω^)「え、ちょ、ちょっと待ってくれお!」
『世界の行方はお前の双肩にかかっている……頑張ってくれ……』
ぷつり、という音と共に謎の声は聞こえなくなった。
( ^ω^)「どうしよう……」
僕は途方に暮れて、木の下に座り込んだ。
いきなりこんな所に放り出されて「友達を見つけろ」なんて言われても、いったいどうしろと言うのだろう。
何の力も持たないただの少年が、こんな広い世界の中から一人の人間を見つけろだなんて。
無理だ、そんなの。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:11:07.38 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「うーん……ん? なんか視線を感じるような……」
僕は後ろを振り向く。
すると、
「……」
(;゚ω゚)「うおわお!」
誰かが僕の真後ろに立っていた。
まったく気配を感じなかった。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:11:52.55 ID:MB973zwV0
小さな背丈。ショートカットの髪と、制服の上にカーディガンを着た少女。
永遠に変わることのない表情をこちらに向けている彼女は……
( ^ω^)「な、長門……さん!」
長門「……」
読書好きの宇宙人「長門有希」がそこに立っていたのだ。
無表情な目でこちらを見つめている彼女は、まさしく僕の嫁。
ああ、なんということだ。三次元の彼女をこの目で見ることができようとは。
もう死んでもいいかも……
長門「あなたは……何者?」
( ^ω^)「へ?」
液体ヘリウムのような目が、こちらを見つめていた。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:13:42.83 ID:MB973zwV0
長門「あなたという存在は、私の記憶データに含まれていない。
3分54秒前、突然あなたは私の情報探査圏内に入ってきた。
しかも、北高生徒全員に、あなたに関しての記憶の改ざんが施された痕跡がある。
普通の人間ではこんなことはできない。あなたは……誰?」
なんかまずい雰囲気が漂っているような気がする。
ここは無難な答えをしておいた方がいいかもしれない。
( ^ω^)「え、えーと……僕はキョン君と同じクラスの内藤と言って……」
長門「それは改ざんされた記憶の内容。私にその力は及んでいない。嘘を言っても無駄」
( ^ω^)「あ、あー……」
長門っちの目が徐々にきつくなっているように感じる。
実際は無表情のままだけど。
だが、そんな能面のような顔をよく見れば分かる。
彼女は明確な敵意をこちらに向けていた。
- 58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:15:43.07 ID:MB973zwV0
長門「敵性だとみなされた場合、私はあなたの情報連結を解除しなくてはならない」
( ^ω^)「そ、それは困るお! さすがに光の粒子になりたくはないお!」
長門「……情報連結解除のことを知っている。あなたは何者?」
さらに敵意が強くなった。
まずい、これはまずいぞ。
ここは本当のことを話すべきなのか……?
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:17:14.59 ID:MB973zwV0
「おーい、長門ー」
突然、第3の人物がここに割り込んでくる。
キョン「なんだ、こんな所にいたのか。部室にいないから心配したぞ」
長門「……」
キョン、その人だった。
彼は本当に安心したという様子でこちらに近付いてきて、長門の隣に自然に立つ。
キョン「どうしたんだ? お、内藤じゃないか。長門、内藤と何か話してたのか?」
長門「……」
長門っち(僕の嫁なので、こういうあだ名をつけてみた)は何も答えなかった。
ただ、僕の方をずっと見つめているだけで、キョンには何も話そうとしない。
逆にそれが怖い。
キョン「うーん、よく分からんが、長門、ハルヒが呼んでるから行こうぜ」
長門「……」
こくり、と小さくうなずいた。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:19:47.55 ID:MB973zwV0
キョン「うーん、よく分からんが、長門、ハルヒが呼んでるから行こうぜ」
長門「……」
こくり、と小さくうなずいた。
キョン「じゃあな内藤。また明日な」
( ^ω^)「お、おうだお」
キョンと長門っちは一緒に去っていった。
長門っちがずっと僕の方を見ていたが、気にしないでおくことにしよう。怖いし。
僕は呆然とそれを見送りながら、安堵感に包まれていた。
よかった。どうやら光の粒子になるのは免れたようだ。
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:22:42.61 ID:MB973zwV0
ふぅ、と息をつき、僕は辺りの様子をうかがった。
どうやら、今の時間は放課後らしい。
夕方だし、何よりSOS団の活動が始まっていることからしてそうに違いない。
しかも季節は冬だときた。
服は制服の冬服だからいいものの、もう少しコートを着せてくれるとか、
気遣いというものがなかったのだろうか。寒い寒い。
( ^ω^)「うーん……」
僕はあの大木の下で相変わらず考えていた。
これからどうするか。どうやって友達を探すのか。
この広い世界、たった1人の人間を探すのなんて至難の業だ。
しかもその友達はどうなっているのか分からない。
あの謎の声の調子からして、無事でいるようには思えない。
もしかしたら敵になってたりとか……ね。
- 67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:25:25.59 ID:MB973zwV0
とにかく、自分ひとりでは無理だ。これだけは確信できる。
協力者を募らなければならない。
で、『涼宮ハルヒの憂鬱』の中で一番頼りになる人と言えば……
( ^ω^)「長門さん……かお」
だが、彼女はこちらのことを物凄く警戒していた。
もし敵になれば「情報連結を解除する」とも言っていた。
それはさすがに困る。朝倉さんのように光の粒子になって消えたくはない。
まずは彼女の誤解を解くことが先決だろう。別に自分は彼女達に危害を加えるつもりはない。
できたら助けてほしいぐらいなのだから。
といっても、宇宙人製アンドロイドを説得する自信なんてない。
となれば、一番話を分かってくれそうなのは……
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:26:56.83 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「……よし! 手紙でも書くお!」
ここはこの世界の礼儀に従って、彼に手紙を書くことにしよう。
『午後7時に、あの公園で』という感じで書けば大丈夫なはずだ。
きっと、自転車を必死で漕いで駆けつけてくれるだろうら。
ああ、そうだ。ピンクの便箋にかわいらしい文字で書いた方がいいかもね。
少しは夢を見させてあげないと。
もちろん、宛名は不明でね。
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:28:36.17 ID:MB973zwV0
※
午後7時。
季節は冬なので、やたらと寒かった。正直、冬物の制服だけじゃかなりきつい。
北高の制服はブレザーなのでジャケットに保温効果は期待できないし、
本当にコートがほしかった。
(;^ω^)「さ、寒い……もっと早い時間にすればよかったお」
僕はぶるぶると震えながら、例の公園のベンチに座っていた。
もちろん、例の公園とはこの本の主人公が何度も待ち合わせで使っていた公園である。
時には宇宙人製アンドロイドと、時には未来人と。
彼はいつもここに呼び出され、自転車でひいこら言いながらやってくる。
で、今日もそのはずだ。ピンクのかわいらしい便箋で手紙を出しておいたのだから。
(ちなみに、便箋はそこらへんの教室に忍び込んで盗んできた。これぐらいの犯罪は許して欲しい)
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:31:21.87 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「早く来てほしいお……」
手をこすり合わせ、できるだけ体温を失わないように身体を縮ませながらひたすら待つ。
待つという行為は本当に疲れる。
宇宙人製アンドロイドでもない限り、何時間も待ち続けるなんてことは不可能だ。
だから、彼がちょうど午後7時の10分前に現れてくれて、本当に助かった。
キョン「お前は……内藤か」
自転車に乗って現れた彼は、心底嫌そうにベンチの前で降りた。
その顔は、まるで親の仇を見つけたかのようであり、
ああやっぱり騙されてくれたんだな、
と思って僕は少し笑いそうになった。
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:33:03.01 ID:MB973zwV0
キョン「ちっ……なんだ? 谷口でもそこらへんに隠れてるのか?」
( ^ω^)「んー、いや、ここにいるのは僕だけだと思うお」
キョン「この手紙」
彼が取り出したのは、僕が出した手紙だった。
ピンクの便箋で、できるかぎりかわいらしく書いた文字。
彼が勘違いするには十分だっただろう。
キョン「何の冗談か知らないが、冗談にしては性質が悪いと思うぞ」
( ^ω^)「えーと、それはすまないお。まさかそこまで簡単に騙されてくれるとは思わなかったお」
キョン「用はそれだけか? まったく。俺だって忙しいのに、今日は厄日だな」
彼の顔が思いっきり歪む。本当に忌々しそうだ。
今日は何かあったのだろうか?
まあ、気にせずに話をしよう。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:34:27.45 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「呼び出したのには訳があるお。ちょっと僕の話を聞いてほしいんだお」
キョン「……まさかとは思うが、ハルヒ絡みか?」
ん? 彼の顔がすぐに真面目なものになった。
もしかして、誰かから話を聞いているのだろうか。
ありえる。長門っちのあの不信具合。きっと彼女から何か聞いているのだろう。
( ^ω^)「うーん、違うと思うお。多分」
キョン「なんだそりゃ。断定できないのかよ」
( ^ω^)「僕にも色々と分からない所があって……宇宙人製アンドロイドさんから、何か聞いてないのかお?」
キョンの顔が、また訝しげなものに変わった。
さっきよりも警戒感を高め、腰を据えている。
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:35:44.14 ID:MB973zwV0
キョン「……誰のことだ?」
( ^ω^)「長門さんだお。ついでに、未来人の朝比奈さんとか、超能力者の古泉君とかからも話はあったのかお?」
キョン「……」
( ^ω^)「というか、今の話、合ってるのかお?」
キョン「お前、なんでそのことを知ってるんだ? 何者だ」
何があろうとも反応できるように、キョンは身構えていた。
今にもナイフが飛んでくるかもしれない、とでも思っているのだろうか?
この人にはトラウマがあるからね。
まずいまずい。早く話を進めて、警戒心を解かないと。
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/23(土) 22:37:24.78 ID:MB973zwV0
( ^ω^)「うーん、ちょっと待ってほしいお。自分でも何から話すべきか……」
キョン「どうせハルヒ絡みなんだろ……なんだ? また俺を殺すとか、そういう類の奴か?」
( ^ω^)「いやいや、僕はさすがに人殺しはしたくないお。
うーん、平たく言えば……」
僕は1つ息を吸い込み、続く言葉をはっきりと口を開いて言った。
( ^ω^)「僕は『異世界人』……とでも言っておくお」
キョン「何……!?」
彼の顔が驚きの色に染まった。
あー、なんだか楽しくなってきたんだから困っちゃうね。
『誰かさんの憂鬱 その1』 終わり
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