( ^ω^)ブーンは色々な本の世界へと旅立つようです
- 133: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:00:46.48 ID:8/+1GVsZ0
『誰かさんの憂鬱 その2』
( ^ω^)「――というわけで、僕は他の世界からやってきたということだお」
キョン「……ちょっと待て。頭を整理させてくれないか」
一通り説明してしまうと、キョンは頭を抱えて考え込み始めた。
僕はベンチに座り、キョンに借りたマフラーを首に巻いてじっと待つ。
キョン「つまり……お前の世界では、俺達の世界は本になってて、お前はその本の世界に入ってきた。
それは、この世界にいるかもしれない友達を見つけるため……でいいんだな?」
( ^ω^)「おおむね合ってるお。さすがキョン君、状況を把握するのが早いお」
キョン「まあ、色々あったからな……しかし、信じられん。俺の住んでるこの世界が本だとは……」
( ^ω^)「まあ、確かにそうかもしれないお。簡単に信じてくれるとは思ってないお」
キョン「……おい、長門。お前なら何か分かるんじゃないか?」
彼が後ろを振り向いた時、初めてそこに背の小さな少女がいることに気がついた。
いつの間に? さっきまで誰もいなかったはずなのに。
- 135: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:02:44.31 ID:8/+1GVsZ0
長門っちは、ゆっくりと僕達の方に近付いてくる。
無表情だけれども、さっきよりは敵意がなくなっているように感じる。
キョンはこちらの驚き顔を見て「ああ、そうか」と紹介するように長門っちを前に出した。
キョン「内藤は長門のことはもう知ってるんだったな。
こいつからお前に関しての話を聞いていてな。
その矢先にこの手紙が来たもんだから、ついてきてもらってたんだ。
で、長門、どうだ?」
長門「……だいたいの状況は把握できた」
キョン「ってことは?」
長門「彼が言っていることは真実だと思われる。ただし、私の情報把握能力を超えている事態なので、確定はできない」
キョン「なるほどな……で、お前はどうだ?」
今度は、僕の後ろでガサリという音がした。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:05:09.40 ID:8/+1GVsZ0
振り返ると、そこにはむかつくほど整った顔をした好青年が立っていた。
制服を着ていて、ニヤケ顔でこちらを見つめている……ああ、これが古泉一樹だな。
「そうですね」と彼は口を開き、大げさなまでに手を広げた。
古泉「驚くべき話ですが、信じざるを得ないでしょう。
彼の顔は嘘を言っているようには見えないですし」
彼らはいつここに集まったのだろうか。
ああ、そういえば長門っちは姿を隠す魔法を持っていたな。それで隠れていたのだろうか。
古泉「この世界は涼宮さんに作られた世界どころか、
誰か他の世界の作家の手によって作られた……なかなかに興味深い話です」
「な、なら私達って本の中のキャラクターということなんですかぁ?」
こ、この舌ったらずで、かわらしいお声は……!
- 141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:07:06.64 ID:8/+1GVsZ0
古泉の後ろ、隠れるように茂みに身を潜めているそのお姿を見て、
僕は異常な興奮を覚えた。
なんということだ。アニメでも声は何度か聞いたが、
実際の声はなんとも天使のようなお声ではないか。
キョンが修飾過剰なまでに彼女を誉めるのもよく分かる。
茂みの中から現れたそのお姿は、なんとも神々しく、それでいて可憐な……!
朝比奈みくる、その人。
みくる「そんなぁ……私、ちゃんとした人間だと思ってました」
なんだか泣きそうになっているみくる様。
ああ、そりゃあ自分が物語の中で作られたキャラだとしったらショックだろうなあ。
- 143: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:09:38.85 ID:8/+1GVsZ0
古泉「いえいえ、気にすることはないですよ、朝比奈さん。僕達はちゃんと生きている。
たとえ作られた存在であろうと、僕達という存在は確かにここにいるんですから」
キョン「お前の言うことは時々哲学的すぎる。俺もけっこうショックなんだが」
長門「……彼の世界と私達の世界は別のもの。時空の軸が違う」
古泉「長門さんの言う通り。つまり、パラレルワールドのようなものです。
僕達の世界が本になっている世界がある。それだけですよ。
別に僕達が作られた存在というわけではありません。
そういう種類の世界が存在すするというだけのことです」
キョン「お前の説明好きも、その本では再現されてるんだろうな」
すごい。目の前で、あの4人がおしゃべりをしている姿を見ているだけで感動物だ。
古泉は本当に説明好きだし、キョンは突っ込み係だし、長門っちとみくる様は黙ってその話を聞いているだけ。
見ているだけで楽しくなってきた。
- 145: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:11:38.27 ID:8/+1GVsZ0
キョン「まあ、どうでもいいおしゃべりはいい。でだ。内藤、お前はいったい何をしなくちゃいけないんだ?」
( ^ω^)「え……うーん、友達を見つけなくちゃいけないんだお」
古泉「そのお友達というのは、どこにいるのでしょうか?」
( ^ω^)「それが分からないんだお。だから、キョン君にこのことを話して、協力してもらおうかと思って……」
キョン「協力って言われても……お前の友達の探し方なんて、俺は知らんぞ」
( ^ω^)「いや、キョン君に頼んで長門さんに探してもらおうかなって」
そこ、なんでも長門任せだな、とか言うな。
キョンだって同じじゃないか。
- 147: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:14:25.05 ID:8/+1GVsZ0
古泉「なるほど。確かに長門さんなら分かるかもしませんね」
キョン「どうなんだ? 長門?」
全員が一斉に長門っちの顔を見る。
彼女は無表情なままで目を少し見開き、その後小さく首を横に振った。
長門「私は何も感知していない」
キョン「長門でも無理ってことか……」
古泉「ならば、時間と人員をかけて根気よく探すしかないでしょうね」
みくる「け、けど明日とあさっては涼宮さんが会議をやるって……」
キョン「そういやそうだったな。すまん、内藤。協力してやりたいのはやまやまだが、俺達も色々とやることがあってな」
( ^ω^)「いや、いいんだお。世界の破滅と僕の願いとじゃ、天秤にかけても意味がないお」
僕の言葉を聞いて、キョンが少し驚いた顔をした。
- 149: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:16:39.40 ID:8/+1GVsZ0
キョン「そういや、俺達の世界は本になってるって言ってたよな?
お前が俺達のことを知ってるってことは、その本に俺達が出てくるのか?」
( ^ω^)「出てくるというか、君達が主人公だお。
毎回はちゃめちゃなSOS団の活動を、面白く読ませてもらってるお」
キョンがゲッ、という感じで顔をゆがめ、古泉がやれやれという感じで肩を上げる。
長門っちは無表情。みくる様は顔を赤めた。
キョン「俺達の奇行が本になるとは……死んでしまいたい気分だ」
みくる「わ、私のあの服を着た姿も……!」
古泉「おやおや、これは面白いものですね」
キョン「面白くない!……そうだ。ちょうどいい。
その話が本当だというなら、証明してくれないか?
何か俺達についてのエピソードを語ってくれ」
どうやら、キョンはまだこの話が信じられないらしい。
当たり前だろう。いきなり異世界からやってきました、と言って信じる方がどうかしている。
いや、まあ今までキョンは色々とあったから、信じる気になっているのだろう。
ただし、証拠がほしいんだろうね。
- 150: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:18:01.42 ID:8/+1GVsZ0
( ^ω^)「うーん……今は何月だお?」
キョン「2月だ。2月の後半。もうすぐ春休みでもあるぞ」
( ^ω^)「ということは……『涼宮ハルヒの陰謀』が終わったぐらいかお。
『サムデイインザレイン』も確か終わってるはず……
あ、『サラウンドアラウンド』もかお」
古泉「何のことでしょう?」
キョン「さあな」
( ^ω^)「ふむ……バレンタインデーで、キョン君と古泉君は地面の穴を掘ってハルヒさん達からチョコをもらったはずだお」
古泉「ほう、これはこれは」
キョン「ああ、当たりだ」
長門「しかし、その程度ならすぐに調べられる」
みくる「鶴屋さんも知ってるぐらいですし……」
( ^ω^)「なら、他の奴がいいかお? うーん……」
- 153: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:19:53.86 ID:8/+1GVsZ0
古泉「例えば、誰も知らないような秘密をあなたが知っていれば、信じることができますよ」
キョン「おい待て。秘密というのは普通知られたくないものだぞ」
みくる「そ、そうですよー」
古泉「しかし、本で書かれている程度の秘密でしたら、それほど重要なものだとは思わないのですが」
( ^ω^)「うーん……ああ、あれがいいかもしれないお」
いきなりみんなの話し声が止まった。
こちらを凝視して、話し始めるのを待っているかのようだった。なんだか怖い。
( ^ω^)「……七夕の前に、キョン君とハルヒさんが一緒に閉鎖空間に行ったことがあるはずだお」
キョン「あ、ああ。そんなことまで知ってるのかよ……」
( ^ω^)「もうすぐ世界が終わるー!っていう瞬間に、キョン君は元の世界に戻りたいと思った。
そのためにハルヒさんに取った行動が、」
続きを言おうとした瞬間、キョンが「ま、待て!」と慌てた様子でそれを止めた。
彼の顔はものすごく赤い。まるで恋人との逢瀬を語られた人のように。って、そんなもんか。
- 154: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:21:24.57 ID:8/+1GVsZ0
キョン「いい、それでいい。信じたぞ俺は」
古泉「僕はもう少し続きを聞かないと信じられないのですが」
長門「……」
みくる「え〜? キョン君と涼宮さん、何をしたんですかぁ?」
キョン「俺が信じたからそれでいいんだ。古泉達も信じたらしいぞ、うん」
( ^ω^)「はは、分かったお」
僕は自然な感じで笑った。彼らのどたばたコメディに参加しているというだけで、なんだか本当に楽しい。
- 156: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:22:39.83 ID:8/+1GVsZ0
キョン「じゃあ、明日またこれについて話をしよう。
SOS団の活動が終わった後でも、まだ時間はあるからな」
古泉「分かりました。では、学校が終わったらまたこの公園に集合ということで」
長門「……」
みくる「わかりましたぁ」
( ^ω^)「あ、ちょっといいかお。お願いがあるんだお」
キョン「なんだ?」
( ^ω^)「実は、僕には家がないんだお。泊まる所がなくて……」
今日彼に手紙を出したもう1つの目的はこれだった。
どうやら謎の声の主は、僕に関する記憶をこの世界の住人に植え付けてはいても、
ちゃんとした住居を用意してくれていないようなのだ。
試しに市役所に行って、自分の住民票を確かめてみたのだが、その住所は見事に存在しないものだった。
まるで振り込め詐欺グループの手口のようだ。
- 159: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:24:13.62 ID:8/+1GVsZ0
( ^ω^)「さすがにこの冬空の中、野宿するのは厳しいお」
キョン「異世界からいきなり放り出されたわけだからな。家もないわけか」
古泉「機関の方で用意してあげたいのは山々なのですが、
まずは報告して上層部に許可を取らなければならないので……
今日いきなりというのはちょっと難しいですね」
キョン「ああ、いいさ。お前に預けると内藤がどうなるか分からん」
(;^ω^)「そうだお。僕の純潔が危ないお」
古泉「おやおや、これは手厳しい。フフフ」
古泉に笑顔で見つめられると、背筋が凍る思いだ。
現実の世界ではこの古泉は色々と疑惑を孕んでいるのだが、
もしかしてそれがここでも反映されているのだろうか。
2人っきりになるのはよした方がいいのかもしれない。
- 162: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:26:17.93 ID:8/+1GVsZ0
キョン「そうだな……まあ、俺の家が順当な所だろ。
1日か2日程度なら大丈夫なはずだ」
(*^ω^)「もしくは長門さんの家でも一向に構わないお」
長門っちが寝ているかどうか確認してみたい、という下心があってのことだが。
キョン「却下だ」
( ^ω^)「ちぇー」
そんなこんなで、この日はこれで解散となった。
最後にそれぞれみんなが僕に一言安心できる言葉をくれた。
古泉「機関の上層部に報告した後、できるならあなたのお友達を探してもらうように申請してみます」
みくる「わ、私も上司に連絡して対策を聞いてみます!」
長門「……」
長門っちはコクリと頷いただけだけど、それだけでなんだか安心できた。
- 164: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:27:56.40 ID:8/+1GVsZ0
みんなと別れて、僕はキョンに連れられてキョン宅へと向う。
アニメでも何度か出てきたことがあるが、彼の家は本当に平凡でなんてことのない一軒屋だった。
これほど面白みのない家は他にはあるまい。
キョン「失礼な。これでもちゃんとした俺の家だ」
( ^ω^)「妹ちゃんはいるのかお?」
キョン「ん? 妹のことも知ってるのか? ああ、今の時間はお気に入りのテレビ番組でも見てるはずだが」
そんな雑談をしながら、キョン宅へと入る。
玄関でキョン母と遭遇し、一応挨拶をした。
「今日は友達を泊める」というキョンの言葉を簡単に信じてしまう母は、
どうにも危機管理能力がないのではないか? と思ってしまう。
キョン「人がいいと言ってくれ」
彼はそう言うだけだった。
- 166: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:29:28.55 ID:8/+1GVsZ0
僕はキョンの部屋にまっすぐと通された。キョン妹は、どうやらお風呂に入っているらしい。
あがったら紹介してくれると言ってくれた。これは嬉しい。
どうせなら一緒にお風呂にでも入りたいものだ。
キョンが椅子に座り、僕はベッドにごろんと横になった。
なんだか今日は異様に疲れたような気がする。
キョン「にしても、お前が異世界人とはな……これでハルヒが願った人間が全員出てきたわけだ」
( ^ω^)「と言っても、僕は本編になんら関わりがないと思うお。
だから多分、これから異世界人が出てきたりすると思うお」
キョン「そうなのか? んー……そうだ、内藤、その俺達が出てくるという本なんだが、いったいどこまで書かれてるんだ?
さっき今が何月か聞いてきたが、もしかして俺達がまだ経験してないことも書かれてるのか?」
( ^ω^)「あー……やっぱり気になるかお?」
確かに、今が1年の冬だとすれば、ここより未来の話もちゃんと本に載っている。
- 168: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:31:03.84 ID:8/+1GVsZ0
キョンは手を広げ「そりゃそうだ」と当たり前のように言った。
キョン「俺がこの先、どんな苦労を背負い込むのか考えたら、先に知っておきたいと思うのも当然だろう」
( ^ω^)「けど、こういうのって言っていいのかよく分からないんだお。
よく、未来から過去にきた人は、過去の人に未来のことを喋っちゃいけないとかあるように」
キョン「ああ、朝比奈さんの『禁則事項』みたいなもんか」
( ^ω^)「確かに、この先のことも少しだけなら知ってるお。例えば、君の中学校時代の元カノが――」
『それ以上喋るな』
その時、突然あの謎の声が僕の頭の中に響いた。
突然のことで僕は驚いてしまい、「うっひゃぁ!」と意味の分からない叫び声をあげてしまう。
- 170: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:32:56.79 ID:8/+1GVsZ0
キョン「な、なんだ? いったいどうした?」
(;^ω^)「え、いや、頭の中の声がまた……」
キョンが訝しげにこちらを見つめる間にも、あの謎の声はおかまいなしに聞こえてくる。
『それ以上喋れば、この世界に大きな矛盾が起きてしまう』
(;^ω^)「そ、そうなのかお? って、今までどこに行ってたんだお?」
『所用だ。それよりも、キャラクターにあまり本の話をするのはやめておけ』
( ^ω^)「どうしてだお?」
『お前はあるシリーズ物の3巻をまだ読んでないのに4巻の話を聞きたいと思うか?
もしくは、クイズの問題も知らないのに答えだけ聞きたいか?
本はデリケートなものだ。あまり矛盾した行動を起こさないように頼む』
(;^ω^)「はぁ、そうですかお」
- 171: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:35:55.43 ID:8/+1GVsZ0
キョン「おい、どうした?」
( ^ω^)「あ、僕をこの世界に連れてきた謎の声が、また聞こえてきたんだお」
キョン「そうなのか? 俺には何も聞こえんが……」
『この声は内藤ホライゾン、お前にしか聞こえん。私の存在は他に知られてはならないのでな』
( ^ω^)「そうかお……」
まあ、確かに他の誰かに聞こえるようじゃ、色々と不都合な面もあるだろう。
今回は僕が異世界人だということがすんなりと受け入れられたが、
もしそういうのが受け入れられない世界だったら謎の声が聞こえるのは危険だ。
まあ、僕専用の超AIが頭の中にあると思っておけばいいだろう。
- 172: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:38:10.82 ID:8/+1GVsZ0
『私は機械ではない。ちゃんとした魔法の下に生まれて、そして理性を持った――』
( ^ω^)「そういや、キョン君の本名はなんだお?」
キョン「うん? 知らないのか?」
『だから、変なことを聞くなってのに』
( ^ω^)「気になるんだから仕方ないお!」
キョン「本の主人公なのに本名が分からないとは変な話だな。俺の本名は……」
「キョンくーん!」
物語に核心に迫る事項をついに聞けそうなところになって、いきなりかわらしい声が部屋中に響いた。
ノックもせずに堂々と兄の部屋に入ってくるのは、やはりキョン妹だった。
風呂上がりなのか、パジャマ姿で少し濡れた髪が妙に色っぽい。
僕はちっ、と舌打ちをしつつも、そのかわいさに見惚れてしまう。
- 176: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:39:52.61 ID:8/+1GVsZ0
『まあ、無駄だがな』
( ^ω^)(何がだお?)
『言ったとしても聞けなかったはずだ。何せ、本の中に書いてないことだからな』
( ^ω^)(なるほど……ベースは全て本なのかお……)
キョン「こらっ! 部屋に入るならちゃんとノックしろって言ってるだろ!」
キョン妹「お客さんってどこー? あ、そこの人ー?」
( ^ω^)「お?」
キョン妹「始めましてー」
( ^ω^)「始めましてだお。内藤ホライゾンって言いますお」
キョン妹「変な名前ー」
キャハハという笑い声を無邪気なまでに発するキョン妹。何もないのにやけに楽しそうだ。
彼女はこういうキャラクターなのだろう。
かわいらしい妹がいるというのは至極うらやましいことであり、
僕はキョンを恨まずにはいられない。
- 178: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:42:20.80 ID:8/+1GVsZ0
キョン妹は僕のことを見にきただけらしく、
「シャミ、おいで」と部屋の端っこの方で寝転がっていた猫を強引に引っ張り、出て行った。
猫がいるのにまったく気付いていなかった僕は、あれがシャミセンかと納得して、キョン妹の残り香をまったりと匂っていた。
( ^ω^)「あんな妹がいるだなんて……なんて幸せものなんだお」
キョン「はあ?」
( ^ω^)「ものは相談だけど、あの妹ちゃんを僕にくれないかお?」
キョン「却下だ。どうもお前の妹を見る目は怪しいからな。
大事な妹を異世界人にやるわけにはいかん」
( ^ω^)「ちぇ……まあいいお。同人誌で気を紛らわせておくことにするお」
キョン「ん、ちょっと待て。同人誌とはどういうことだ?
まさか、本だけじゃなく一般の方々が俺達の漫画でも書いてるのか?」
(;^ω^)「あ、しまった……」
失言だった。まさかこちらの世界では「涼宮ハルヒの憂鬱」を題材にした同人誌がたくさんあり、
しかもその中には目も当てられないような内容のものもあるなんて……言えない。絶対に言えない。
- 181: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/24(日) 00:44:13.69 ID:8/+1GVsZ0
だが、キョンは聞き捨てならないらしく、目を血走らせて詰問してくる。
キョン「同人誌なんて怪しいものが多いと聞くが……おい、お前の話しぶりだと、妹を題材にしたものもあるのか!?」
(;^ω^)「きょ、キョン君! スモークチーズはあるかいっ!?」
キョン「答えろー!!」
『だから無駄な情報をキャラクターに与えるなと……』
その日の夜、僕はキョンに色々と問い詰められてまともに寝ることができなかったのだった。
『誰かさんの憂鬱 その2』終わり
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