( ^ω^)ブーンは色々な本の世界へと旅立つようです
- 2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:01:11.84 ID:56AI/Y7O0
『誰かさんの憂鬱 その4』
今日も今日とて学校へ向かう。胸には相変わらず「団長その4(仮)」の団員証を貼りながら。
こんなことをやるよりも早く友達を探せといわれるかもしれないが、甘いね。
涼宮ハルヒやみくる様や長門っちや、阪中さんやらがいるこの学校に、どうして来ないでいられようか!
僕は自らの欲望に忠実な男なのだよ……3次元空間に存在する2次元キャラをこれからも見られるという保障などない。
僕は、僕の進む道を取るのだ!
( ^ω^)「ニヤニヤ……」
キョン「なんだ内藤。ニヤニヤして気持ち悪いぞ」
( ^ω^)「ああ、ちょっとクラスの女子達を観察して……」
キョン「なんだって?」
( ^ω^)「ああ、いや、なんでもないお」
この世界にやってきて3日目。僕は北高にて昼休みを満喫していた。
- 3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:03:08.41 ID:56AI/Y7O0
ただ、お金など持っていないのでキョンから借りた100円でカロリーメイト1箱を買ってきて、それを食べている。
ああ、カロリーメイトはおいしいなあ。
スタミナゲージが全回復しそうな気分だ。あくまで気分だけど。
( ^ω^)「キョン君は何を食べてるんだお?」
キョン「うん? 俺か? 俺はスモークチーズだ」
( ^ω^)「スモーク……チーズ?」
はて、どこかで聞いたことのある単語だ。
なんだったか……
キョン「ん、まずいな。あの人が来る」
( ^ω^)「はい?」
キョンがそう言ってスモークチーズを机の中に隠した瞬間……
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:04:08.32 ID:56AI/Y7O0
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽピキーン!!
______/ {_{`ヽ ノ リ| l │ i|._∧,、_________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄レ!小l● ● 从 |、i| ̄'`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ|l⊃ 、_,、_, ⊂⊃ |ノ│ 匂う、匂うぞ!
/⌒ヽ__|ヘ ゝ._) j /⌒i ! この教室には間違いなく
\ /:::::| l>,、 __, イァ/ /│ スモークチーズがあるにょろ
. /:::::/| | ヾ:::|三/::{ヘ、__∧ |
`ヽ< | | ヾ∨:::/ヾ:::彡' |
変な物体が教室に入ってきた。
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:06:41.95 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「な!? あれは!?」
キョン「鶴屋さんだ。しまったな。やはり早めに食べておくべきだったか……」
ちゅるやさん「キョンくんっ! ここにスモークチーズはあるかいっ!?」
めがっさ明るい笑顔でこちらに近付いてくるその姿は、たしかにあのちゅるやさんだった。
元々、「鶴屋さん」というキャラとしてこの本の中に出ていたのだが、
ネットや同人誌の世界でそれを少し変えた「ちゅるやさん」というキャラが誕生し、けっこう流行っていたりする。
しかしおかしい。あれはあくまで二次創作のキャラであり、本編には出てこないはずなのだが……
ちゅるやさん「本当にないのかいっ!?」
- 7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:09:17.10 ID:56AI/Y7O0
- キョン「ええ、ありませんよ」
-‐ '´ ̄ ̄`ヽ、
/ /" `ヽ ヽ \
//, '/ ヽハ 、 ヽ
〃 {_{ リ| l.│ i|
レ!小lノ `ヽ 从 |、i|
ヽ|l ● ● | .|ノ│
|ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j | , |
| /⌒l,、 __, イァト |/ |
. | / /::|三/::// ヽ |
| | l ヾ∨:::/ ヒ::::彡, |
ちゅるやさん「にょろーん……」
落ち込み顔のちゅるやさんはそのまま教室を出て行った。
- 8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:10:55.49 ID:56AI/Y7O0
一方キョンは、机の中から取り出したスモークチーズを一度に口に含んだ。
キョン「危ないところだった」
( ^ω^)「あの、あれは……」
キョン「ああ、鶴屋さんと言ってな、SOS団の特別顧問なんだ。スモークチーズが大好きで、よく校内を徘徊してはスモークチーズを探している」
( ^ω^)「いや、あの人のことは知ってるんだけど……」
キョン「なんだ? 知ってるのか。じゃあ、説明する必要もないか」
(;^ω^)「……何かがおかしいお」
僕は首をひねるしかなかったのだった。
- 9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:12:25.24 ID:56AI/Y7O0
※
ハルヒ「遅い! 罰金!」
そんな怒鳴り声をかけられたのは、もちろん僕ではなくキョンだった。
今日の学校も無難に過ごし、放課後になって不思議探索の時間が訪れた。
校門の前に集合ということで、僕は授業が終わった瞬間にダッシュでその場所に向かったのだが、
驚いたことに古泉と長門っち、みくる様はすでにその場所で待機していたのだ。
古泉「おや、お早い到着ですね。涼宮さん達は?」
( ^ω^)「まだ教室にいるはずだお……けど、君達早すぎるお。今さっき授業終了のチャイムが鳴った所なのに……」
古泉「僕のクラスは早めに終わったんですよ」
みくる「私もです」
長門「……私も」
古泉とみくる様はともかく、長門っちはどうなのだろう。
授業に出ているかどうかすら怪しいものだ。
これが、キョンが絶対に最後になってしまう法則の秘密なのだろうか。
それとも、僕の知らないことがまだまだあるというのだろうか。謎は深まるばかりだ。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:13:48.95 ID:56AI/Y7O0
そうして、涼宮ハルヒがしばらくして現れ、その数分後にキョンが驚き顔でやってきた。
罰金を涼宮ハルヒから告げられ、情けない顔をしながら財布の中身を見ている姿が、
昨夜の恨みを少しは晴らせたかもしれない。
ハルヒ「じゃ、今日も二手に分かれましょう。仮団員がいるから、3:3で綺麗に分かれられるわね」
彼女がそう言って差し出したのは、あの紙のくじ引きだった。今日は6本ある。
それぞれの団員達が引いていくと、あっけなくメンバーが決まった。
A組 キョン 長門っち 僕
B組 涼宮ハルヒ 古泉 みくる様
なんだか嬉しいような悲しいような。このメンツだと行くべきところは決まっているように思う。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:16:25.03 ID:56AI/Y7O0
ハルヒ「ちゃんと探しなさいよ! 不思議はどこに隠れてるか分からないわ!
内藤! あんたは新参者だけど、新しい視点で見ることによって見つかることもあるわ。
心してかかりなさい!」
( ^ω^)ゝ「アイマム!」
ハルヒ「じゃあ、解散!」
そうして始まった不思議探索なわけだが。
キョン「……で、どうする長門?」
長門「……今日はあなた達の好きな場所でいい」
キョン「珍しいな。図書館はいいのか?」
長門「今度の休日に行ってもらうことにする」
今度の休日って……次もキョンと一緒になれるという確信でもあるのだろうか。
ああ、情報操作が得意だっけ、そういや。
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:17:57.62 ID:56AI/Y7O0
キョン「じゃあ、今日はどうするかな。ハルヒの言う通り、新参者の意見を尊重してみるか」
(;^ω^)「え、いや……うーん、じゃあ試しに行ってみたいところがあるお」
そうして僕達が向かったのは……
キョン「どうして野球場なんだか……」
長門「……」
( ゚ω゚)「すごいお! アニメそのままだお! ここまで完璧だとは思わなかったお!」
あの伝説の野球場だった。
あれはハルヒシリーズの第2巻『涼宮ハルヒの退屈』での出来事だ。
ハルヒのわがままにより野球をすることになり、ここで上ヶ原パイレーツと試合をし、
長門っちとキョンの活躍でハルヒ達は勝ちを納めた、あの伝説の試合。
あの話を何度アニメで見たことか。あんな風に野球をしたいと思ったのはいつのことか。
楽しそうで、それでいて充実した試合だった。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:20:32.29 ID:56AI/Y7O0
キョン「そうか? ただ単にインチキして勝っただけだがな」
( ^ω^)「それが楽しそうなんだお。不思議な力で平凡なチームに勝つ。それが楽しいんだお」
キョン「……はあ、お前は本当に病気だな」
( ^ω^)「な、長門さん。ためしにあのミステリアスボール(命名俺)を見せてほしいお!
というか、僕が投げたボールをそれにしてほしいお!」
長門「……」
長門っちは、液体窒素のような目で僕を見つめた。
長門「……できないことはないが、推奨はできない」
( ^ω^)「どうしてだお?」
長門「局所的な情報操作は、地球環境に悪影響を及ぼす可能性がある」
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:22:04.51 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「けど……あの試合ではめちゃくちゃやってたお」
長門「あれはその必要があったからであり、情報統合思念体によるアフターフォローもあった。
しかし、今は私の力しか使えない。カオス理論により、ここでボールの軌道を変化させることによって、
100年後巨大台風が起こる可能性もある」
( ^ω^)「んな馬鹿な……」
キョン「ああ、つまりだな。長門はこう言いたいわけだ。
『お前の欲望に付き合ってられるか糞野郎』
ってな。そうだろ?」
長門「……」
長門っちは肯定も否定もしなかった。それが逆にショックで、僕はしばらく言葉を失ったのだった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:23:11.76 ID:56AI/Y7O0
1時間ほど野球場を見学して、今度はあのみくる様とキョンが一緒に歩いた川沿いに行きたいと僕は思った。
キョンと長門っちは快く了承してくれて、僕達は道路を歩き、その公園へと向かう。
その間、キョンからSOS団の活動について色々聞けた。
時には本に載ってないようなこともあり、これは作者がまだ書いてないネタなのか、
それとも実際にこの世界があるという証拠なのだろうか。
それらはとても面白いものばかりで、僕は大声で笑うしかなかった。
正月の時の話なんて傑作だ。
僕とキョンが楽しく会話し、その前を歩く長門っちが時々事実と違うところを丁寧に訂正してくれる。
楽しい時間だった。
だが、そんな中、長門っちが急に立ち止まった。
空を見上げたまま動こうとしない。
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:24:15.71 ID:56AI/Y7O0
キョン「どうした?」
長門「……今から3秒前、涼宮ハルヒに異変が起こった」
キョン「ハルヒに? 何があったんだ?」
そうキョンが問い返すと同時に、彼の携帯が鳴り始めた。
忌々しそうにそれを取り出したキョンだが、そのディスプレイを見た瞬間にその顔を青くした。
キョン「俺だ……古泉、どうした。何があった?」
どうやら電話相手は古泉のようで、キョンはしばらく話をして、一瞬「何やってたんだお前は!?」と激昂したかと思うと冷静になり、
最後に「分かった。校門前だな」と確認を取るかのように返事をして、電話を切った。
そして、僕と長門っちに向かって、真剣な表情でこう言った。
キョン「……ハルヒが消えた」
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:26:15.02 ID:56AI/Y7O0
※
急いで北高の校門前に戻ると、そこで待っていたのは珍しく真剣な表情をした古泉と、泣きそうなみくる様だった。
古泉「状況は芳しくありません。手短に起こったことを話します」
そう言って、古泉は話をし始めた。
古泉「僕達はショッピングモールをぶらぶらと歩いていました。
お茶を買ったり、涼宮さんの服を買うだけで特に異変はなかったのですが、
途中、涼宮さんがトイレに行ってしまったので、僕達は近くで待っていたのです」
みくる「け、けど時間が経っても戻ってこなくって……」
古泉「あまりにも遅いので朝比奈さんに様子を見に行ってもらったのですが、トイレはもぬけの殻でした。
近くを探してみたのですが、やはりどこにもいなかった。
念のため、機関のエージェントにも確認を取ったのですが、彼女の姿はやはりトイレに入ったところで見失われています」
- 22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:27:28.29 ID:56AI/Y7O0
そこで一端話を切って、古泉は長門っちの方を見る。確認するかのような目で。
長門「……私もそこで見失っている」
古泉「こういうわけです。これは異常事態です。まさか涼宮さん一人が消えてしまうとは……僕も油断していました。申し訳ありません」
キョン「謝罪はいい。長門でも止められなかったのなら仕方ない。
それよりも、ハルヒがどこにいったか、それが問題だろう?
わざわざこの場所を集合場所に指定したということは、ある程度の見当はついてるんじゃないか?」
古泉「相変わらず勘の鋭いことで……そうです。涼宮さんが消えた30秒後、僕はこの場所でも異変を感知しました」
キョン「なんだ?」
( ^ω^)「特に何もないと思うお……」
僕は辺りを見渡してみる。学校の校庭では生徒達が部活動に励んでいるだけ。校舎内には人影が見当たらない。
一方、学校の外でもいつもの風景が広がっているだけだ。
- 24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:29:29.55 ID:56AI/Y7O0
古泉はひとつ息をつき、人差し指を立ててゆっくりと言った。
古泉「閉鎖空間です」
彼は指を校庭に向けた。
古泉「この北高全体を覆うように、閉鎖空間が発生しているのです。
おそらく涼宮さんが発生源と思われます」
閉鎖空間。
涼宮ハルヒによって作り出される、異世界。ドーム上の異空間。
キョン「なら、お前の能力で中に入れるだろう。さっさと様子でも見てこい」
古泉「それがですね、この閉鎖空間は通常と少し違うのです。
僕の力だけでは半分しか壁を突破できません。
残り半分が不可思議な力で封鎖されていて、
どうやっても入り込むことができないのです」
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:31:06.15 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「それってまるで……」
古泉「ええ。七夕前に起きた世界の破滅未遂の時とよく似ています。ただし、今回少し違うのは……」
古泉は一瞬キョンの方を見て、また校舎の方へと視線を戻した。キョンは気付かない。鈍い奴。
古泉「それに、僕が見たところ涼宮さんの精神は最近至極安定していました。
世界の破滅など願うはずもありません。少々身体的な疲労は感じていたようですが。
……その程度で世界を作り変えようとするほど、彼女も幼稚ではないはずです」
キョン「ハルヒが自分でそれをやっていないということは……誰かが、ハルヒに何かしたってことか?」
古泉「分かりません。しかし、その可能性が高いと」
キョン「ち……一体誰だ? こんなことするやつは。あの雪山の豪邸の奴か?」
長門「……それは違う。彼らが動けば私が感知している。今回は別の勢力が動いたと思われる」
みくる「ど、どうしましょう〜」
古泉「このまま涼宮さんがいなくなったままだと、世界はどうなるか分かりません。
文字通り、世界の危機ですね……」
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:33:00.15 ID:56AI/Y7O0
おろおろとし始めるみくる様。キョンや古泉も手を組み、ただ考えるだけ。
長門っちは立ち尽くしたまま動かない。
いったいこれはどういうことだろう。こんな事件、本の中にはなかった。
もしかして、本では語られなかった隠されたストーリーという奴か?
それとも、僕が現れたことで何らかの影響が及んだということなのだろうか?
『奴の仕業だな』
突然、僕の頭の中にあの謎の声が響いた。今日初めてのことであり、僕は驚いて「ひゃっ!」と声をあげた。
一斉にみんなが僕の方を見るが、それよりも僕は謎の声の言っていることが気になった。
( ^ω^)「どういうことだお?」
『お前の友達をさらったら奴の仕業だということだ。
おそらく、この空間の中には涼宮ハルヒという少女と一緒に、奴がいるだろう。
友達もいるかもしれん』
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:34:48.68 ID:56AI/Y7O0
キョン「おい、内藤。また謎の声か?」
僕はキョンに向かってちょっと待ってくれというジェスチャーを送り、謎の声との会話に集中する。
( ^ω^)「じゃあ、どうすればいいんだお? この中には入れないお」
『そのために私がいる。奴のしでかしたことなら遠隔的に対処できるはずだ。
とりあえず、その閉鎖空間とやらの壁に手をつけ』
( ^ω^)「アドバイスしかしてくれないと思ってたのに……!」
『アドバイスではない。サポートだ。早くしろ。あまり時間はないぞ』
僕は古泉に向かって、「閉鎖空間の境目ってどこだお?」と尋ねた。
すると彼は戸惑いながらも、校門のレールの真上を示してくれた。
- 30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:36:17.85 ID:56AI/Y7O0
『手を掲げろ』
( ^ω^)「ほい」
何もないと思われる空間に手をあげると、何やら手のひらが熱くなってきた。
ってか、熱い。本気で熱いよ! まるで火であぶられてるかのようだよ! ママン!
( ゚ω゚)「熱い熱い!」
『我慢しろ。男の子だろう』
( ゚ω゚)「ギャー!!」
僕がそう叫ぶと同時に、手のひらから光があふれ出した。
その光は空へと飛び散り、校舎を覆うようにして広がっていく。
そして、何秒間かでついに空を覆いつくし、そして消えていった。
『完了だ』
(メ^ω^)「ひいふぅ……や、やけどするかと思ったお」
手のひらを慌ててみるが、別にそこには何の異常もなかった。
どうやら神経にだけ作用する熱さらしい。あれはきつい。もう2度とやりたくない。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:37:41.45 ID:56AI/Y7O0
古泉「これは……不可思議な力が消えました! これで中に入れます!」
キョン「よし! よくやったぞ内藤! よく分からんが!」
みくる「じゃあ、さっそくいきましょう!」
キョン「無論、俺達もついていくからな」
古泉「そうですね。今回は僕一人だけでは辛そうだ。機関にも連絡を入れましたが……みなさんの力を借りるとしましょう。
みなさん、僕の背中に手をついて目を閉じてください。僕がいいと言うまで開けないで」
彼の指示に従い、僕達は目を閉じた。今から全員を閉鎖空間に入れようとしているのだろう。
古泉がゆっくりと歩き出したのを感じた僕は、手が離れないように気をつけながらその後を追う。
古泉「もう、目を開けてもいいですよ」
そう言われて、僕は目を開いた。
すると、目の前に広がっていたのは異形の空間だった。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:39:06.74 ID:56AI/Y7O0
アニメで見た通り、そこはどこもかしこも灰色で、全ての時間が止まっているかのように静かだった。
空に太陽がなく、なのに校舎の電気だけが点いているのが不気味だ。
唖然としている僕を横目に、他のSOS団メンバーは平然とその場に立っている。いや、1人を例外に。
みくる「な、なんなんですか、ここ……」
みくる様はおびえた目できょろきょろと辺りを見渡し、身体を震わせている。
あれ? 彼女はここに入るのは初めてだっただろうか? 閉鎖空間のことは知っていると思ってた。
古泉「閉鎖空間ですよ。朝比奈さんは入るのは初めてでしたか? まあ、すぐに慣れます」
キョン「おい古泉。どうして俺の手だけ握ってるんだ」
古泉「おっと失礼。確実にこの場に招待しないといけないと思ったもので」
古泉は「んふ」と笑ってキョンの手を離す。
あれは何か、そこはかとなくヤバメな吐息のような気がする。僕の貞操本能がそう叫んでいた。
- 34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:40:18.45 ID:56AI/Y7O0
古泉「それでは、涼宮さんを探しにいきましょう。おそらくこの中のどこかにいると思われます」
長門「現在サーチ中……3分待って」
キョン「遠足じゃないが、固まって歩いていた方がよさそうだ。何か嫌な予感がする」
( ^ω^)「僕とキョン君は何も力を持たないから余計に怖いお……」
僕がそう呟くと、長門っちが一瞬だけこちらに振り返った。
冷静沈着な目が僕を見つめる。
長門「……」
だが、またすぐに顔を戻す。なんだ? 何か変なこと言ったのか?
みくる「あ、あああああれはなんですかぁ?」
震えるみくる様が、突然一方向を指差した。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:42:07.90 ID:56AI/Y7O0
そこにいる者を見て驚いた。まず何より、『者』がいることに驚いた。
ここは閉鎖空間。涼宮ハルヒの作り出した次元位相空間だ。
古泉のような超能力者でないと入り込めないはず。
なのにその人間はいた。
緑色の帽子を深くかぶり、全身が真っ黒の服で統一されているその不審者。
服の間から見える肌は、なぜか光っていた。
キョン「なんだあれは」
古泉「人……ではなさそうですね」
キョン「そんなことは解ってる。非常に嫌な予感がしてならないのだが」
みくる「ゆ、幽霊さんですかぁ?」
長門「……来る。後ろへ」
( ^ω^)「はい?」
長門っちが小さく呟いたと同時に、不審者がすさまじいスピードで跳んだ。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:43:46.56 ID:56AI/Y7O0
キョン「どわっ!」
不審者がキョンの方へと一直線に飛んできたのだ。
さっきまで50メートル先に立っていたはずなのに、
助走なしで、しかも野球のボールのように一直線にドロップキックをかましてきた。
慣性の法則をまるで無視しているぞ。
キョンに直撃するかと思われたそのキックだが、刹那以下の瞬間に長門っちがその間に割り込み、それを手のひらで受け止めた。
こちらも何かおかしい。物理的に長門っちが吹っ飛ぶだろ、普通。
長門「後ろへ下がって」
僕とキョンとみくる様、それぞれ顔を見て言った長門っちは、捕まえた不審者の足をわしづかみにし、
そのまま一回転して不審者をぶん投げる。
( ^ω^)「うわお」
吹っ飛んでいく不審者だが、ダメだった。彼もまた驚くべき身体能力を発揮した。
空中で1回転し、綺麗な着地を決めたのだ。
その拍子に帽子が取れた。中から見えたのは、なんと透明で光るのっぺらぼうの顔だった。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:45:29.72 ID:56AI/Y7O0
古泉「ふむ……どうやらあれは神人の縮小バージョンといったところですか。
これは驚きだ。あんな神人は初めて見た。しかも服を着ているとは、なかなかにシュールなものです」
キョン「冷静に分析してないで、なんとかしろ! また何体か出てきたぞ!」
キョンがそう怒鳴るのも当然で、あの不審者と同じ格好をした連中がわらわらと校舎から出てきたのだ。
その数、一見しただけでも2ケタは超えている。
古泉「なに、大丈夫ですよ。身体能力は目を見張りますが、動きが単純です。
それにお忘れですか? この場所では僕の超能力がちゃんと使えるんですよ?」
キョン「なら、早くやっちまえ!」
古泉「了解しました。この程度なら10の分1の力で十分でしょう」
そう言うと、彼の手のひらに小さな赤い光球が現れた。
これは、あのカマドウマを退治した時と同じものだ。ならば、次に出てくる台詞は……!
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:47:51.00 ID:56AI/Y7O0
古泉「いきますよ……!」
野球のピッチャーのように大きく振りかぶる古泉。
古泉「ふんもっふ!」
出た! あの恒例のかけ声!
赤い光球は一直線に神人(縮小)へと飛んでいき、直撃した。
不審者はあっけなくそれで消滅する。弱い奴だ。
だが、何しろ数が多い。まだまだ敵は大勢いる。
と、今度は報復のつもりなのか、10体ぐらいの不審者達が一斉にこちらに飛んでくる。これはガードできない……!
そう思ったその時、
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:50:37.95 ID:56AI/Y7O0
- :. ゚・ *.
゚ .。
゚・ *:.。. * ゚
+゚
。 .:゚* +
゚
゚ /ヾー、
r!: : `、ヽ
l:l::..: :.|i: 〉
ヾ;::::..:lシ′
`ー┘
/ / l \ ヽ
! / / / ,' | l ハ ヘ、ヽ、_,
. | ! l l / / ,イ ! i ! l ヽ ',` ̄
. l | l l ,/ 〃 ,/ /│ l j l│ ! l
ノ | ! │ | /_// // /::::,' ∧ / | / j l│.
ノ l ァ| |尢/‐=乞t/ /::::/∠ニ「厂! / ,/ / リ
イ 八{´l !レ<f{矛:下 ':::::::::::::..イ孑テフ イ } /
. Vハ | i';;:::::;j :::::::::::::. i:;::::リ /}, '//
ヽ ', |  ̄ ..:::::::::::::;::::... ̄ チ' /
`ヘ lヽ _ _ 厶 ./
', {.代ト、 , イ | /
\_'i| > 、 _ , イ/ V l./
/ ヽj {`ヽ ′
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_, -‐ ´ l‐--‐、 _ -‐ | ` ー- 、
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y⌒ヽ \\ V  ̄ _ `ヽl| / / ∧
./ ヽ. \\ ∨ ̄ `ヽ | / / / l
長門「――」(画像はイメージです)
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:51:35.04 ID:56AI/Y7O0
あの、長門っちの超高速早口が炸裂した。
目の前に透明なバリアでも現れたのか、不審者達は空中でそれにぶつかり、吹き飛ばされる。
ATフィールドより堅いかもしれない。
その間に古泉が赤い光珠を再び手のひらに発生させていた。
古泉「セカンドレイド!」
赤い光球の2撃目が放たれる。今度はさっきよりも少し大きく、まるで手榴弾のように爆発して不審者達数十体を消滅させた。
だが攻撃は終わらない。
さらに古泉は赤い光球を発生させる。
古泉「らっきー……」
今度は身体全体から絞り出しているのか、一瞬赤い光が古泉の身体を包んだかと思うと、
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:52:36.65 ID:56AI/Y7O0
- 古泉「すたー!!」
__,,:::========:::,,__
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..‐´ ゙ `‐.. ●←古泉
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- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:54:00.24 ID:56AI/Y7O0
その光球は、まるで隕石のように不審者達の中心へと落下していった。
あまりにも巨大な爆発で爆風が吹きすさび、僕とキョンは身をかがめ、みくる様は「きゃああ!」と叫び声をあげた。
古泉「よしっ!」
ガッツポーズを取る古泉に、キョンが「よしじゃねえ!」と怒りの鉄拳を喰らわせた。
キョン「もう少し穏やかに倒せ! あれは隕石ってレベルじゃねーぞ!」
古泉「数が多いので一気に片付けたかったのですよ。ははは、すみません」
頬を押さえながらにこやかに笑う古泉。さわやかなのは感心するが、あんな力を持っているとはさすが超能力者。
だが、それで不審者達を殲滅できたわけではなかった。
一瞬全て倒したかと思ったものの、またしても校舎からわらわらと湧き出てきたのだ。
これではきりがない。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:55:38.76 ID:56AI/Y7O0
古泉「これは面倒ですね……!」
長門「サーチ完了。涼宮ハルヒの居場所を突き止めた」
( ^ω^)「どこだお!」
長門「あそこ」
彼女が指差したのは体育館だった。
キョン「よし! 早くあそこに!」
古泉「しかし、この包囲網を突破しないことにはどうしようもありません。ふんもっふ!」
赤い光球がまた放たれる。一瞬不審者達がひるむが、それでもすぐにこちらへと突進してくる。
今は古泉と長門っちのおかげで抑えられているのが、このままでは全滅するに違いない。フラグが立ちまくってる。
長門っちが、超高速早口を言い終えると左手から光の衝撃波を放つ。
不審者が吹き飛ぶ。それの繰り返し。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:56:50.23 ID:56AI/Y7O0
長門「ここは私と古泉一樹が引き受ける。あなた達だけで行って」
古泉「確かに、僕の仲間が来るのも遅い。もしかしたらこの空間にまた入れなくなっているのかもしれません」
長門「そう。おそらく、今回はあなたの白い光でも除去するのは不可能。
発生源が涼宮ハルヒのものだと思われるから。だから行って」
古泉「涼宮さんが僕達以外の侵入者を拒んだか、それとも他に何かあるのか……
何にしろ、援軍が期待できない以上、それが得策かもしれませんねっ!っと!」
( ^ω^)「け、けど敵が出てきたら僕達だけじゃあ……」
長門「これを」
片手で不審者を殴りつつ長門っちが差し出したのは、とても小さな箱だった。
- 52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 15:58:46.25 ID:56AI/Y7O0
長門「側面にボタンがある。危機的状況に陥った時に押して」
( ^ω^)「え……これは?」
マッチ箱より少し大きい程度のその箱。鉄で作られ、確かに側面に小さなボタンがある。
いったい何の箱なのか気になったものの、長門っちがあまりにも真剣な表情で僕を見つめてくるので、
それを受け取らざるをえなかった。
長門「私が合図をしたら、体育館に向かって」
古泉「では、露払いと行きましょう!」
そう意気揚々と言うと、古泉の身体は一気に赤い光に包まれていき、彼はそのまま不審者の方へと突撃していった。
これは神人を倒すための形態か。僕の頭に、巨大な神人がコマ切れになっていったあの一シーンが思い浮かぶ。
長門「――」
そして、長門っちの超高速早口もその本領を発揮した。
古泉が逃した獲物を、彼女がピンポイントで狙撃していく。
手のひらから白い光の球を出しているのはこの際気にしないことにしておこう。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:00:11.09 ID:56AI/Y7O0
彼らの攻撃力はすさまじかった。
何百人といたはずの不審者が一遍に吹き飛ばされ、体育館までの道ができあがる。
赤い一撃 攻撃力5000。
超高速早口 攻撃力5500。
と言った具合か。
長門「行って」
( ^ω^)「け、けど……」
キョン「……ちっ、行くぞ内藤!」
( ^ω^)「けど、2人を置いていけないお!」
長門「私達は大丈夫。それよりも涼宮ハルヒの心配をした方がいい」
古泉「その通りです」
赤い球体の古泉が戻ってきた。空中にとどまり不審者達の攻撃をガードしながら話している。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:02:00.63 ID:56AI/Y7O0
古泉「この神人も閉鎖空間も、涼宮さんが発生させているものとは異なっています。
彼女は今、異常な状態に置かれていると考えた方がいい。
時間が経てば経つほど、その状態は悪化してしまうかもしれません。
大丈夫。あの体育館の中には神人の気配はありません。
時間がない。あなた達だけでも先に行ってください」
( ^ω^)「……」
キョン「ち……いきないかっこいいこと言いやがって。だからお前はむかつくんだよ」
古泉「それは申し訳ない。けど、僕達は大丈夫ですよ」
彼は、微笑みながら僕の胸に貼られているものを指差した。
古泉「僕達はSOS団ですから。SOS団が一人でも欠けるというのは、涼宮さんが許さない。
死刑にされそうです。さすがに、僕は死んでまで死刑にされたくはありませんから」
長門「……」
古泉の言葉に合わせて、コクリと頷く長門っち。
- 56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:03:41.25 ID:56AI/Y7O0
僕は自分の胸に貼られているものを見た。
僕の胸に張られている。団員証。SOS団だという証。
( ^ω^)「……くそお、行ってやるお!」
キョン「いっちょやってやるか!」
みくる「頑張ります!」
僕達は一斉に走り出した。
不審者達がそれを阻もうとするものの、長門っちと古泉のフォローが完璧でまったく敵を寄せ付けない。
体育館の扉に手をかけ、キョンと力を合わせて一気に開いた。
キョン「よし!」
僕達は急いで体育館の中に入った。
( ^ω^)「長門さん! モーホー君!」
長門「私達は扉の前で敵を食い止めておく」
モーホー「全ての命運はあなた達が握っています。僕から言えることはただ1つ、頑張ってください」
徐々に閉じられていく扉。
最後に見えた、長門っちの無表情な目と、古泉のすがすがしい笑顔。
そして、扉は完全に閉められた。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:04:54.57 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「2人とも……」
キョン「行くぞ内藤。あいつらの分だけ俺達がやらなきゃいけない」
みくる「そうです!」
( ^ω^)「分かってるお……!」
僕は顔を上げ、体育館の中をぐるりと見渡した。もう僕の胸には決意に満ちていた。
体育館には特に異常な点は見当たらない。しいてあげるとすれば、発電施設もないのに光っている蛍光灯ぐらいか。
キョン「特に何もないな。長門はここにハルヒがいると言っていたが……」
みくる「少し辺りを探してみましょうか?」
キョン「それがいいですね。内藤、そっちを頼む。俺と朝比奈さんは舞台の方を見てくる」
( ^ω^)「分かったお」
そうして二手に分かれようとした、その時だった。
- 59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:06:26.41 ID:56AI/Y7O0
パチン!
(;^ω^)「な、なんだお!」
いきなり体育館の電気が全て消えたのだ。
突然の暗闇に驚いた僕は、慌ててキョン達の傍へと寄り、何が起こっても大丈夫なように身を構える。
明るい所から暗い所に行くとよくあるように、僕の目はまだまだ暗闇に慣れていない。
1メートル先も見えない状態が続いた。
キョン「何が起こるんだ……!」
みくる「こ、怖いですぅ〜」
あ、よく見たらみくる様がへたり込んで、キョンの足に抱きついている。なんてうらやましい。
「全ては平和を守るため!」
これまた突然、体育館の舞台の照明が点き、スピーカーから誰かの声が発せられた。
ものすごく張りのある、大きな声だったので僕はとっさに耳を塞いだ。
- 61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:09:00.85 ID:56AI/Y7O0
「全ては大切なあの子を守るため!」
キョン「声が大きいんだよ、くそ……!」
みくる「み、耳が痛いです〜!」
キョンとみくる様も怒声に耐えられず、耳を塞いでいる。
おそらくマイクの音量を最大にしているのだろう。外まで響いていきそうな声だった。
しかし、どこかで聞いたことがあるような……
「俺は力を手に入れた!」
スポットライトが一斉に点けられた。
舞台の一点が明るく照らされ、そこにひとつの人影が舞台袖から現れた。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:10:20.98 ID:56AI/Y7O0
\(‘∀`)┐
ヽ ノ
< \
バン!
ラジカセから出てるっぽい音「ワーワー! キャーキャー!!」
- 65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:11:45.02 ID:56AI/Y7O0
('∀`)「永遠(とわ)に光る俺の眼! この眼から逃れられるものなど存在しない! 正義の味方、参上!」
( ^ω^)「……」
キョン「……」
みくる「……」
微妙な空気が流れる。
舞台に現れたのは一人の男。
冴えない風貌をしているその男は、しかしその服装があまりにも奇天烈なものだった。
全身が真っ黒のTシャツとGパン、裾はちゃんとズボンの中に入れられているのがポイントなのだろうか。
頭には白い帽子。しかもナ○キのマークが入った普通の品。
そして、最大の特徴が背中のマントだった。
真紅に染められ、「I am a hero」という黄金の文字が縫い付けられているそれにくるまり、男は立っていた。
すっごい明るい笑顔で。
- 69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:13:27.86 ID:56AI/Y7O0
('∀`)「俺を止めにきたか悪の総帥! やれるものならやってみろ! 正義は必ずwinするのだ!」
( ^ω^)「……」
キョン「……これは何かの冗談か?」
みくる「わ、私には理解できません〜」
(;^ω^)「ど、ドクオ……?」
キョン「なっ! まさか内藤……」
みくる「お、お知り合いですかぁ?」
キョンとみくる様があからさまに僕から離れていく。
いや、待ってくれ。確かに知り合いだけど、というか友達だけど、そんなに離れないで。
キョン「だってお前……アレと友達なんだよな……」
みくる「よ、寄らないで〜」
違うんだ。僕はあんなのと知り合いじゃないはずなんだ。
僕はあそこまで変じゃないから、お願いだから冷たい目で見つめないでほしい。
- 70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:15:35.24 ID:56AI/Y7O0
('∀`)「む、お前は知った顔だな! 俺にリベンジしにきたのか?
DA☆GA! 俺を倒すにはまだまだだ! さあ、来い! 勝負だ!」
( ^ω^)「いや、僕は君を探しに来ただけなんですけど……」
('∀`)「問答無用! 目覚めよ! 俺の邪 気 眼 ― !!!」
いきなりめがっさ大きな声で叫んだドクオの体に、何やら靄のようなものが発生し始めた。
最初はただの湿気か霧みたいなものかと思ったのだが、よく目を凝らすと彼の体からそれが現れている。
キョン「なんだありゃ。オーラ力か?」
みくる「じぇ、ジェネシックオーラかもしれませんっ!」
「そんな生ぬるいものではないわ!」ドクオがまた叫んだ。
- 71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:16:38.90 ID:56AI/Y7O0
( ゚A`)「我が邪気眼に……捉えられぬものなし」
( ^ω^)「きめえwwwww」
ドクオの右目だけが、異様に赤かった。
( ゚A`)「そんなことを言ってられるのも今の内だけだ! くらえ!」
ドクオが右手を振りかざした瞬間、その手から赤いオーラが噴き出し、僕達の目の前へと直撃した。
なんということだ。たったそれだけのことなのに地面に穴が空いた。
明らかに物理エネルギーゼロな霧状の物体なのに、どうやったらそんな破壊力を持てるというのか。
- 73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:18:13.98 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「なんという能力」
( ゚A`)「それそれ行くぞおお!」
キョン「こ、これはヤバイ! 逃げるぞ!」
みくる「きゃー! きゃー!」
キョンはちゃんと「朝比奈さん、こっちです!」「はい!」っていう感じでみくる様の手を引いて逃げてる。
ここらへんが彼の優しいところなのだろう。
( ゚A`)「逃がすかあああ!」
( ^ω^)「うわああ!」
キョン「よけろ!」
みくる「きゃー! きゃー!」
ドクオの右手から繰り出されるオーラが、次々と僕らへと降り注いでいく。
体育館の中を走って逃げているからなのか、直撃を受けることはないものの、この状況は非常にまずい。
このままでは地面をめちゃくちゃに破壊されて、いつか逃げ場をなくしてしまう!
- 74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:19:22.03 ID:56AI/Y7O0
みくる「あ、あれを見てください!」
突然みくる様が舞台の方を指差した。
すると、ドクオの影で今まで見えなかったのだが、舞台の奥で誰かが横たわっていた。
黒髪に黄色いカチューシャ。そして団長腕章。
キョン「ハルヒ!」
『そういうことか。謎は解けたぞ』
またしても突然謎の声が聞こえたが、今回はそれほど驚かなかった。
というか、驚く暇なんてない。ドクオのオーラは息つく暇もなく降り注いでいるのだから。
謎の声は僕の返事を待たずに続けた。
『おそらく、あの少女の力を使ってドクオという少年はあのような力を得ているのだろう』
( ^ω^)「だ、団長様の力を使ってドクオが邪気眼を……!」
キョン「なんだって内藤? ハルヒの力が利用されてるのか?」
( ^ω^)「そ、そうみたいだお」
- 76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:21:12.08 ID:56AI/Y7O0
『あの少年、奴の力によって自我を失っている。黒い力に乗っ取られたか……』
( ゚A`)「正義はwin! はーはっはっはっは!」
( ^ω^)「元に戻す方法は?」
『倒せ』
( ^ω^)「簡単だけど難しすぎるおー!!」
『日本語が変だぞ』
キョン「上から来るぞ! 避けろ!」
みくる「きゃー! きゃー!」
みくる様、さっきから叫んでいるばかりでキョンの手にしがみつきすぎです。少しは自分で避けてください。
ちなみに、僕は冷静に考えているように見えるが、ドクオのオーラは絶え間なく襲ってくる。
これでは近付く間もない。あのオーラをまずなんとかしないと。
- 77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:22:55.14 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「なにか、何か武器はないのかお!」
キョン「武器ったって、長門達はまだ外にいるし……」
( ^ω^)「長門さん……そうだお! あの箱を使うお!」
『危機的状況に陥った時に押して』
そんな状況、今しかない。
僕はポケットからあの箱を取り出し、ボタンの位置を確認して指をかけた。
( ゚ω゚)「なんでもいいから出るお!」
ポチっとな。
ぷしゅ、という音が鳴った。
- 78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:24:01.07 ID:56AI/Y7O0
- , ^  ̄`ヽ
イ fノノリ)ハ
リ(l゚ -゚ノlリ
ー(_ )ー
/ \
- 79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:24:48.86 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「これは……」
キョン「……」
みくる「か、かわいい〜」
ボタンを押すと、箱の上面が自動で開いたのだが……これはなんだ?
中に入っていたのは、人形だった。
とても精巧で、シャーペン程度の大きさしかない人形が1体、入っているだけだったのだ。
( ^ω^)「こ、これでどうしろってんだお、長門さん!!」
これで危機的状況を回避できるというのか?
「ピッ……システム起動。エラーチェック、オールグリーン」
いや、待て。
この人形、よく見たら誰かに似ている(ちなみにこの間も僕達は走り続けてる)。
ボブショートの髪に北高の制服。凹凸のない細い身体。そして何より、人形のように整った顔。
長門っち……?
- 81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:26:07.88 ID:56AI/Y7O0
「起動シークエンス全て終了。情報統合思念体との接続、良好。全駆動システム起動」
よく耳を澄ませたら、人形から何か音が聞こえるような。
「視界オープン……」
そして、人形の目が開いた。
人形「……マスター、指示を」
( ^ω^)「は、はい?」
人形「全システムが正常に動作している。何も問題ない。指示を」
人形が喋っていることに驚きなのだが、その声がまた長門っちそっくりなのがすごい。
何から何まで、長門っちを小さくした姿そのままなのだ。
いや、頭が少し大きいので頭身は違うが、そこはかえって人形らしくていい。
- 82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:27:29.48 ID:56AI/Y7O0
キョン「おい、なんだその人形」
みくる「長門さんそっくりです〜」
キョン「さしずめ長門(小)だな」
得意の命名をありがとう、キョン君。
長門(小)「指示がなければ、私はまたスリープモードに移行する」
(;^ω^)「ちょ、ちょっと待つお! 君は何ができるんだお?」
長門(小)「情報操作」
( ^ω^)「それって、あの超高速早口かお?」
コクリと小さく頷く長門(小)。こんな所まで本人とそっくりだ。
しかし、情報操作ときた。
キョンの投げたボールを曲げたり、斥力場を発生させたりできるあの力。
これなら、ドクオに対抗できるかもしれない。
- 83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:28:41.87 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「じゃあ、ドクオを倒す力がほしいお!」
長門(小)「了解。松・竹・梅とコースがあるが、どれにする?」
( ^ω^)「え? じゃ、じゃあ松で……これって違いはあるのかお?」
長門(小)「ない」
(#^ω^)ビキビキ
長門(小)「マスターの脳を解析。最適と思われる概念群を採用し、それを現実世界へと具象化させる」
長門(小)の口が高速に動いていく。
( ゚A`)「死にさらせええええ!」
キョン「やばい、直撃だ!」
みくる「やああ!!」
ドクオのオーラが頭上に散開している。
周りは穴だらけ。逃げ場がない。
- 89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:42:51.01 ID:56AI/Y7O0
キョン「くそおお!」
長門(小)「フィードバック終了」
( ゚ω^)「こ、これは!」
オーラが落ちてくる瞬間、僕の右手からドクオと同じような青いオーラが噴き出した。
それを上に向けると発射されて、ドクオのオーラとぶつかり合い、混じり、消滅する。
( ゚A`)「何っ!?」
( ゚ω^)「こ、これはいったい……」
長門(小)「現在マスターが最も強いと感じている力をそのまま具現化させた」
いつの間にか長門(小)は僕の肩に乗っており、服を両手で掴んで振り落とされないようにしていた。
僕の右目が熱い……
- 92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:45:17.46 ID:56AI/Y7O0
キョン「内藤、お前の右目……ありえないほど青いぞ」
( ゚ω^)「え、え? ということは……」
『どうやら、あの少年の力を間近に見て、その眼を持つ者が最強だと感じてしまっていたんだろうな』
( ゚ω^)「なんという……ご都合主義!」
しかし、これでドクオに対抗できる!
僕は威勢よくドクオの方へと振り向いた。
彼はオーラを出すのをやめて、呆然とこちらを見ていた。
- 94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:48:08.35 ID:56AI/Y7O0
( ゚A`)「なんと……俺と同じ邪気眼使いがいるとはな。300年前の戦いの再現というわけか」
( ゚ω^)「ドクオ……僕は君を止めなくちゃいけないお」
( ゚A`)「やはり血は争えない、か」
( ゚ω^)「……」
( ゚A`)「ならばっ! ここで俺達の決着をつけよう! この世界をかけてな!」
( ゚ω^)「いいだろう!」
キョン「そんな簡単に世界賭けるなよ……頭を疑うぞ」
( ゚A`)( ゚ω^)「邪気眼を持たぬものには分かるまい!」
キョン「……(ダメだ、こいつら早くなんとかしないと)」
そして、戦いが始まった!
- 96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:50:14.84 ID:56AI/Y7O0
僕が青いオーラを放つと同時に、ドクオも赤いオーラを放つ。
空中でぶつかった2つのオーラは、すさまじい光を放つが、それで僕達の戦いが邪魔されるわけもなかった。
僕は横にステップして、両手から2つ同時にオーラを放つ。
光に目を奪われていたドクオは、瞬時にそれを避けようとするが、身体が間に合わず1つだけ直撃した。
( ゚ω^)「どうだお!」
( ゚A`)「ち、まだだ!」
負けずにオーラを出してくるドクオ。
だが、一発目のダメージが深いのか、見当違いのところへと飛んでいく。
僕はおかまいなしにオーラを出しまくった。右目が熱い。これならどんな敵だって倒せてしまう。邪気眼万歳!
キョン「朝比奈さん、そろそろ手を……」
みくる「あっ! ごごごごごごめんなさい! 私、気が動転しゃって!」
キョン「いや、俺はいいんですよ、はい。逆に嬉しいぐらいですから」
みくる「キョン君……」
ああ、隣ではなんだかラブコメちっくな展開が繰り広げられているし、早いところドクオをやっつけてしまおう!
- 98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:53:31.79 ID:56AI/Y7O0
( ゚A`)「これで終わらせる!」
ドクオがいきなり飛び上がった。
( ゚A`)「ボルテッカァァァ!!」
( ゚ω^)「って、別にオーラを何十個も出してきただけじゃんっていう感じの、
PSYボルテッカァァァ!!」
僕とドクオのオーラがぶつかり合う。この衝撃はすさまじい。
たった2つのオーラが衝突するだけで、核爆弾にも匹敵する……という設定だ。
長門(小)「さすがにそこまで具象化すると我々が危ないので、やめておく」
肩にのる長門(小)が小さく呟いた。そうだろうね。いきすぎた設定はこういう人にちゃんと直してもらわないとね。
( ゚A`)「ぐはあああ!」
僕のオーラが競り勝ち、ドクオに重大なダメージを与えた。
( ゚ω^)「やったかお!」
( ゚A`)「はぁはぁ……やるじゃねえか。俺をここまで本気にさせたのは、お前が初めてだ」
ドクオはかろうじて立っているような状態だった。当然だ。あれだけのオーラを身に受ければ、普通なら死んでしまう。
それでも立ってられるのは、ひとえに邪気眼を持つ者だからなのだろう……という設定。
- 100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:55:55.85 ID:56AI/Y7O0
( ゚A`)「へへ、だが、お前はひとつミスを犯した」
( ゚ω^)「負け惜しみを、ほざくなお!」
( ゚A`)「ちげえよ。俺はまだ、本当の力を出し切ってない。いや、出せなかった。
この力は俺自身をも破壊してしまうかもしれない。普段は抑えつけ、表に出さないように苦労したものさ。
だが、お前が相手なら使わざるをえないのだろう……300年前と同じように」
キョン「300年前に何かあったのか?」
『特にない、に一票』
( ゚ω^)「外野は黙るお! ドクオ……まさか君は……」
( ゚A`)「そのまさかさ。今、ここにその力を解放する!
邪気眼よ! 正義を貫く刃となりて、我が敵を打ち滅ぼせ! うおおおおおおおおお!」
ドクオの右目が激しく光を発する。今まで以上のオーラが身体中から噴き出し、それが彼の身体を包んでいく。
- 102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 16:58:19.34 ID:56AI/Y7O0
( ゚ω^)「何が起こるんだお……!」
僕はゴクリと生唾を飲んだ。
ドクオを包むオーラが徐々に晴れてくる。
僕はいつ攻撃されても構わないように手にオーラをまとわせて、盾とした。
これならば、少しぐらい強力な攻撃も防げるはずだ。
赤いオーラが晴れ、中から現れたのは……
- 104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:00:29.94 ID:56AI/Y7O0
┌('A`)┐
ヽ ノ
< \
( ゚ω^)「……お?」
('A`)「……あれ?」
ただの、薄気味悪い、いつもどおりのドクオだった。
- 108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:02:45.83 ID:56AI/Y7O0
('A`)「あ、あれ? どうしたんだ? 俺の禁じられた力が解放されて、それがあいつをビューンと攻撃するはずが……」
( ゚ω^)「ど、どういうことだお?」
「説明する」と肩に乗る長門(小)。
長門(小)「涼宮ハルヒの情報創造能力に対して、彼の情報操作能力、論理結合能力、状況把握能力、
その他創造に関する能力が欠如しており、また涼宮ハルヒの能力を受け入れるためのキャパシティが足りない」
( ゚ω^)「えと、つまりは?」
長門(小)「つまり」
長門「想像力が貧困」
人形は冷たくもそう言い切った。
( ゚ω^)「……」
キョン「……」
みくる「……」
('A`)「な、なんだよう。そんな哀れな目で俺を見ないでくれよう」
ああ、やっぱり厨2病なんだねドクオ。悲しくなってくるよ。お互いに。
- 109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:05:04.69 ID:56AI/Y7O0
( ゚ω^)「と、とにかくこれで終わらせるお!」
僕は精一杯のオーラを右手に発生させる。
( ゚ω^)「ヘル&ヘブンを片手でやってやるお!」
そして、いまだ混乱しているドクオの脳天に、すさまじい勢いで張り手をかました。
パーンッ!という小気味よい音が体育館に響く。
(゚A゚)「ぶごわぁ!」
『出るぞ! 気をつけろ!』
謎の声のその忠告通り、倒れたドクオの身体から、何やら黒い煙のようなものが出てきた。
それは宙を漂っていたかと思うと、急にスピードを速めて外に出ようとする。
だが、あれは外に出しちゃいけないと思った僕はオーラを放ってその進路を阻めた。
そのおかげで黒い煙は進むのをやめて、空中でとどまる。
( ゚ω^)「あれはなんなんだお!」
『あれが全ての元凶だ! あれを消さない限り、友達は元に戻らんぞ!』
- 111: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:07:08.29 ID:56AI/Y7O0
キョン「ハルヒ! 起きろハルヒ!」
僕が黒い煙に注意を向けている間に、キョンが舞台上で眠っている涼宮ハルヒの傍に寄り、その身体を揺り動かしている。
ハルヒ「ん……なによぉ、キョン。眠いんだから邪魔しないで」
キョン「それより、目を開けて周りを見ろ! よくこの状況で寝てられるな!」
ハルヒ「うーん……? 体育館?」
涼宮ハルヒは目を開け、周りを見渡す。
ハルヒ「あー、どうせ夢なんでしょ? いつもの悪い夢。どうでもいいから寝かせてちょうだい。
って、どうしてキョンが夢に出てくるのよ。また? またあんた? あー、もう!」
キョン「ああ、そうだ。これは夢だ。ハルヒ、夢だが危機的な状況にあるんだ。
SOS団に仇なす奴があそこにいるぞ! なんとかしろ!」
ハルヒ「なんですって!?」
涼宮ハルヒはいきなり立ち上がった。テンションが急に変わった。キョンの話術が巧みだからだろうか。
ハルヒ「って、今回はみくるちゃんも内藤もいるのね! まあ、いいわ。で、敵はどこ?」
キョン「あそこだ!」
彼が指差したのは、あの黒い煙。
- 112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:09:45.19 ID:56AI/Y7O0
ハルヒ「あいつね。よーし、みくるちゃん、ちょっと来なさい!」
みくる「え、えー? なんですかぁ?」
ハルヒ「いいから、早く来て! で、ここに立って!」
みくる様は言われた通りに舞台上に上がる。
涼宮ハルヒは彼女の手を取って、右目の周りでピースするように触れさせた。
何をする気だ?
ハルヒ「さあ! ビームよ! ビームであいつを倒すのよ!」
彼女は驚くべきことを恥ずかしげもなく言った。
もちろん、みくる様は困惑する。
みくる「え、えー!? 私、そんなの出せませんよー!」
ハルヒ「いいから、やりなさい! SOS団の平和を守るために、いつもは役に立たない少女が立ち上がる!
燃える展開じゃない! ほら!」
みくる「わ、分かりました……」
ついに観念したみくる様は、肩幅に足を開き、あの映画の時のように涙目でこう叫んだ。
- 113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:11:41.58 ID:56AI/Y7O0
- r‐-v'⌒V⌒レ‐-、
,. '" ̄ ` ー 、r‐=.ナ‐--'⌒ ー┘⌒l^マ┐ ,. '" ̄` 、
/: : : : : : ::.:::r=Y⌒,. ‐、/`ヾ"`ヽ、ミー‐ミYュ:..::::... : : : : : : :.ヽ
/: : : : : : : : へト-':/: ;..-ァ': : : : : :.\: : :`ヽ└Y、 __:::..: : : : : : :.ヽ
/: : : : : : : : : :⊥イl/: : : : : :!: : : : : : : : :ヽ: :ヽ: `ヽK´_}:::. : : : : : : :.ヽ
: : : : : : : : : :.(乂/: : : : : // |: :l: :!: : : : : : ヽ: :.i; :.!:.∨\:::::: : : : : : : : : i
: : : : : : : : :./>/:.i: : :l: :.l/ l: : 、:ヽ.:.: : : :.{.\l:: :.|:: :ト、:::\:: : : : :i: : : : l
: : : : : : : : : :./ |イ:.!: : }:.:/_,. ‐'ヾ: .ヽ:`ド'ー-ド、 \l:: /::::\::::: : : : : !: : : :|
: : i : : : : : :./:::::l:l:.ト:: :代´,. -=ミ \|ヽ!"ィ=ト、レ>、`メ-、:::::::::::: : : : : ト: : .l
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:.::l: : : : : !: : :.::::::::::ヽ|:::. c‐-つ ., ーっ/// / ヽ: : : : ::::.!l
::/: : : : : !: : : :.::::::::::::l:: ::.. /// ,._ __ //⊂ィ´__,.癶._,彳 ヾ\: r、:|
': : : : : :.:!: : : : .:::::::::::}.: :::.ト - /(´ ...... __ ノ `
: : : : : :.::!: : : : : :::::!::.l: : :::|;:;:> ,. '´;:;:!: : :.:l:::!::::::`t‐ '´ } フ
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: : : : .::::::!: : : : : :.,..l/: : :::l __ .ノ匸癶二フ>、__ r!: : : | ` ー-y'Lンr‐-=彡'
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: : : : :::::::::!: :./ !:.i: ::::ト ,.llxlト 、 〈 l: i: :.| |〉 ヽ.
: : : : :::::::::::> ..ヾ :::ト / \ 〈 }/l /./ ,..' l〉 `'
: : : : : :::/ ..::;yゝ|--< >' ⌒^\.:/ }>、_,.
みくる「み、み、みくるビーム!!」(衣装は仕様です)
全世界が、停止したかと思われた。
なんてのは嘘ぴょんで、それはすさまじい音と共に降り注いできた。
- 114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:14:08.74 ID:56AI/Y7O0
てっきり映画のように目からすごいビームを出すのかと思ったが、そんなことはなく、
みくる様が技名を叫んだ後の1秒は静かだった。
だが、その1秒が過ぎた後、それはやってきた。
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天井を貫く巨大な光の柱。
どこから照射されたのか、超巨大なビームが天空からこの体育館を貫いたのだ。
- 117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:16:09.28 ID:56AI/Y7O0
あの黒い煙はそのビームに巻き込まれ、消えた。
被害はそれだけでは済まず、天井と地面に巨大な穴が空き、僕の長門(小)は震動で振り落とされる。
しかも、ビームを出した本人に涙を浮かべさせもした。
みくる「あわわわ」
ハルヒ「すごいじゃない! やっぱりやる時はやるのね、みくるちゃん!」
キョン「……はぁ」
どうやら、団長様の想像力はすさまじいようだ。
- 119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:18:14.05 ID:56AI/Y7O0
- ※
そうして、戦いは終わった。
一撃必殺のみくるビームによって黒い煙は消し飛び、それに伴って表にわらわらといた不審者達も消えた。
長門っちと古泉も無事で、みくる様がへたり込んでいるのを介抱している間に体育館に入ってきて、
驚くような顔で巨大な穴を見つめていた。
ちなみに、ドクオは気絶したまま動かない。
古泉「これはこれは……すさまじい力ですね」
みくる「違うんですぅ〜。私じゃなくて涼宮さんが〜」
ハルヒ「何言ってるのよ、みくるちゃん! あなたが倒したのよ! 誇りを持ちなさい!
あら、今回は古泉君と有希もいるのね。なんだか豪華な夢ねえ」
まだ彼女はこれを夢だと思っているのか。
キョンの言葉をまるまる信じているのだろうが、それほど彼の言葉は信用に値するということなのだろうか。
ハルヒ「まあ、いいわ。私は疲れたから、また寝るわね。さっさと夢から覚めて、明日もSOS団するわよ!」
キョン「用法の間違ってる日本語はいいから、早く寝ちまえ」
ハルヒ「うっさいわね! 言われなくても……グゥ」
驚いたことに、彼女は喋っている間に眠ってしまった。
それほど眠かったのだろうか。
キョンが慌てて彼女を支えた。
- 120: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:20:26.39 ID:56AI/Y7O0
長門「彼女は、最近ずっとその能力を利用されていた」
長門っちが唐突に喋りはじめた。
長門「今回の事件を引き起こしたあの少年は、断続的に涼宮ハルヒの能力を利用していた。
そのため、彼女に大きな負荷がかかり、疲労を蓄積させていた」
キョン「なるほどな……だからこの前、疲れた顔してたのか」
長門「それを見抜けなかったのは私のミス。すまない」
キョン「いいさ。気にすんな」
長門っちの頭を撫でるキョン。ああ、うらやましい。あの2人は本当に仲が良いね。
古泉「ということは、この閉鎖空間も、元凶が取り除かれ、涼宮さんが眠ったことによって消滅していくでしょうね」
キョン「あのスペクタクル映像が見られるってわけか」
古泉「ええ。少し楽しみですね」
( ^ω^)「僕も楽しみだお……って、そういえば長門さん、この人形は」
僕は肩に乗っている長門(小)を手に乗せ、彼女に指し示した。
- 123: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:23:11.80 ID:56AI/Y7O0
- 長門「私が趣味で作った。役に立った?」
( ^ω^)「え、うん。けど、趣味でこんなものを作るなんて、なんという人……いや、宇宙人……」
長門「……」
長門っちは小さく頷くだけだった。
程なくして、閉鎖空間が徐々に光を帯び始めた。
みくる様がまだ呆然とへたり込んでいるが、まあ時間が経てば立ち直ってくれることだろう。
僕はわくわくしながら上空を仰ぎ見た。これから、アニメで見たような壮大な閉鎖空間崩壊ショーが見られるのだ。
まるで遊園地のヒーローショーを間近にしているような気分だった。
『残念ながら、お前はそのショーを見ることはできない』
( ^ω^)「え?」
謎の声の突然の言葉に、僕は困惑した。
( ^ω^)「どういうことだお?」
『この世界にとどまっていられる時間はもう少ない。友達を助けた以上、ここにいる理由もないしな』
僕は地面に寝転がっているドクオを見た。
( ^ω^)「じゃあ……どうするんだお?」
『次に行く。どうやらここにはこの少年しかいなかったようだしな。すぐに次の世界に行って探さなければ』
( ^ω^)「そうかお……」
- 124: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:25:13.26 ID:56AI/Y7O0
僕は、何やら話し合っているみんなの顔を順番に見ていった。
みくる「ふぇ……ふぇ……」
朝比奈みくる様……役に立たないと思ったのに、最後の最後でぶちかましてくれた。
あのビームは一生忘れらない。
古泉「おやおや、涼宮さんも可愛い寝顔をしていますね」
ホ泉……は省略。
長門「……」
長門っち……不思議な道具で僕を助けてくれた。まるでドラえもんだね。
ハルヒ「ぐぅ、ぐぅ」
涼宮ハルヒ……僕を仮団員にしてくれた人。
色々とハチャメチャなことをするけど、優しい人なんだなということはよく分かるような気がする。
キョン「ハルヒ……さすがにずっと寄りかかられるのは重いぞ」
そして、キョン。この世界でずっと世話になった人。
ありがとうと言いたい。みんなに。
- 136: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:37:08.51 ID:56AI/Y7O0
( ^ω^)「みんな……」
キョン「うん? どうした?」
古泉「顔色が悪いようですが」
( ^ω^)「……多分、僕はここでお別れだお」
その言葉に、4人は揃って目を見開いた。
キョン「どうしてだ? もう行かなくちゃいけないのか?」
古泉「そうですね……友達を見つけた今となっては、この世界にいる理由もないでしょう」
みくる「え? え? 内藤君、帰っちゃうんですかぁ?」
長門「……」
( ^ω^)「ごめんなさいだお……楽しかったお、この3日間。あ、長門さん、この人形返すお」
長門「いい」
( ^ω^)「え、だけど……」
長門「持ってて」
( ^ω^)「……けど」
これはすごく強力な武器になりえる。
こんなものをずっと持っていて、変な使い方をしない自信はない。
透明人間になって女湯に入るかもしれないのに。
- 139: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:39:12.96 ID:56AI/Y7O0
- 長門「それが必要になる時がくる。あなたを信じる。かわいがって」
( ^ω^)「……分かったお。ありがとうだお」
ありがたく持たせてもらおう。これからの世界で敵に出会わないという確証はない。
これは僕の切り札だ。
『あまり別世界にものを持ち込まないでほしいんだが……この場合は仕方ないか』
( ^ω^)「じゃあ、僕は行きますお」
キョン「ああ、頑張れよ」
古泉「あなたと一緒に夜を過ごせなかったのが残念ですが……応援しています」
みくる「がんばってくださいね」
長門「……大丈夫」
『ちなみに、お前がこの世界から消えた瞬間に、彼らの記憶からお前は消える……最後の最後にすまんな。今まで言えなかった』
いや、それでもいい。なんとなく予想はついていたし。
僕という存在の記憶が残ったままだと、この本の世界に何らかの支障をきたす恐れがある。
それを防ぐために、記憶を消してしまうのだろう。
それでもいいさ。もともと僕は異世界人。忘れられて当然の存在。
この楽しい記憶が僕の中でだけ持っていくことにしよう。
閉鎖空間が壊れていく。それと共に辺りが光に包まれ、キョン達の顔が見えなくなっていった。
いや、僕の身体が光に包まれているのか? 横で寝ているドクオも同じだった。
どちらとも分からず、僕の意識はそこで飛んだ。けれども、最初の時のような怖さは僕にはなかった。
- 141: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:41:16.13 ID:56AI/Y7O0
※
キョン「うん……? あれ? どうして俺達、こんなところにいるんだ?」
古泉「忘れてしまったのですか? これからSOS団課外活動をするところですよ」
みくる「そうですよ。確か、涼宮さんがたまには放課後に不思議探索がしたいって」
気がついたら、俺は校庭に立っていた。
しかも古泉や朝比奈さん、長門と一緒に。
こいつらが言うには、俺達SOS団はハルヒのわがままによって平日の不思議探索に向かっていたところらしい。
どうして俺にそれ以前の記憶がないのか分からないが、気にしていても仕方あるまい。
へいこらと街まで歩きに行きますか。
キョン「って、なんだか背中が重いな……」
古泉「おやおや、涼宮さん、いつの間に寝てらしたんでしょうね。しかもあなたの背中でとは」
ハルヒが俺の背中に乗って、寝ていたのだ。ぐうすかと幸せそうな顔で。
まったく、いったいいつの間に俺はこんなことをやっていたんだ。おい、過去の俺。ここに来て説明しろ。
ハルヒが目覚めそうにないので、俺達は予定を変更して部室に戻ることにした。
こいつが目覚めるとうるさそうだが、「お前が寝てたんだから仕方ない」と言えばぐうの音も出まい。
久々に静かな放課後が満喫できそうだ。
- 142: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/27(水) 17:43:24.56 ID:56AI/Y7O0
長門「……」
キョン「長門、どうした?」
みんなが歩き出す中、長門が空を見上げたまま動かなかったので声をかけてみた。
長門は静かに視線をこちらに向け、少しだけ感情のこもった目で「何も」と答えた。
キョン「そうか」
長門「そう」
久しぶりだ、長門がこういう目をするのは。
まるで楽しんでいるか、悲しんでいるか……そういう感じの目をしていた。
長門表情判定人の俺が言うのだから間違いない。
長門「……」
キョン「まあいいか」
俺は独り言のようにそう呟いて、部室の方へと歩き出した。
長門「内藤……ホライゾン」
『誰かさんの憂鬱』 終わり
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