( ^ω^)はミュージカルをするようです

43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:33:26.79 ID:N5bPwnepO

二曲目・高岡



空を赤く染める夏の夕暮れ。
ハインリッヒ高岡は中年男性と繁華街を歩いていた。

(,,゚Д゚)「そ……それじゃあ、ホテルにでも、行くか、ゴルァ?」

从#゚∀从「んだとコラァァァッ!!!」

高岡は怒声を上げながら、男の股間を蹴り上げた。

(,,;゚Д゚)「ふぎぃっ!?」

从#゚∀从「つけあがんのも、大概にしとけよな!
     エロいことはしねぇって最初から言ってあっただろ!?」

(,,*;Д;)「………」

男は局部を押さえながら涙目になっていたが、
若干頬が赤く染まっていた。



45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:34:22.63 ID:N5bPwnepO

もしかしたら高岡の様な十代後半の少女に
蹴られたことが快感だったのかもしれない。

(,,゚Д゚)「ちが……違う!
     俺はただ、ホテルでオナニーを見てもらいたいだけ――」

高岡は男の後頭部を両手で持ち、顔面に膝蹴りをした。

(,,゚Д゚)「ぼぎゃ!」

男は派手に鼻血を吹き出しながら尻餅をつく。

从 ゚∀从「少し黙れ。耳が腐んだろ」

(,,゚Д゚)「見てもらう!見てもらうだけだから!!」

(,,゚Д゚)「プリーズ!プリーズ!!お願いだゴルァァァッ!!」

从#゚∀从「だから、うっせぇぇぇって!!」



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:36:50.23 ID:N5bPwnepO

勢いよく腰をひねった回し蹴りを男の側頭部に叩き付けた。

(,,゚Д゚)「あふんっ!」

蹴り飛ばされた男は、地面に激しく頭を打ち付けて失神してしまう。

从 ゚∀从「……今日はこのぐらいで勘弁してやるよ。金もたっぷり貰ったしな」

从 ゚∀从「言っとくけど次はこうもいかねーぞ?
     なぜならよ、私に触れていいのは一人だけだからだ」

从*゚∀从「ねーっ!ドッくん?」

从//Д/从「とかなんとか言っちゃったりしてなぁ!!」

独り言を喋りながらに盛大に照れる高岡。

从*゚∀从「ふひひひぃ!」



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:38:40.78 ID:N5bPwnepO

彼女の収入は主に援助交際だ。
だがそうはいっても、性行為は(例えキスだって)しないし、するつもりも無い。
それは愛しい彼に対する裏切りになるからだ。

あくまで女に縁の無い男を相手に食事やお喋りをして小遣いをもらうだけだ。
そう彼女は決めている。

从 ゚∀从「よっし!目標金額達成!
    これで最新式の盗聴機もゲットだぜぇっ!!」

高岡は手提げ鞄から、
愛する彼の現在位置を教えてくれる受信機を取り出した。

从 ゚∀从「買い物にも行きてーけど……やっぱドッくんも気になるしなぁ……」



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:40:24.78 ID:N5bPwnepO

思案する高岡。
でも長い時間は用さない。

从*゚∀从「やっぱ会いに行こっと!」

いつもこうだった。
迷ったら彼。
いつもそう決めていた。

しかし彼女の言葉には些細な語弊がある。
正確に言うと、会いに行くのではなく、覗きに行くのだ。

彼女はストーカーだ。
ドクオという名の男をストーキングしていたのだ。
彼が住むアパートの隣に部屋を借り、
一挙一動をチェックするぐらいの、筋金入りの変態なのだ。


―――――


从 ;∀从「ウグッ……エグゥッ………」

ドクオに付けた発信機が示した場所は喫茶店だった。



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:42:14.52 ID:N5bPwnepO

彼はさっきまで就職活動のため、ある会社に面接に行っていたはずだ。
だがいまは暗い表情でコーヒーを飲んでいた。

从 ;∀从「……ドッくん……ドッくん……」

喫茶店の外からドクオを見つめる高岡は、顔をクシャクシャにして泣いていた。
彼の様子から面接が上手くいかなかったのが推測出来たからだ。

彼が悲しい時は自分も悲しい。
自分達は一心同体なのだ。

从 ;∀从(また落ちちまったのか……でも安心しろよ……
     後でその会社に火をつけといてやるから……)



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:43:16.20 ID:N5bPwnepO

高岡が放火の決意を固めたその瞬間、ドクオは力無く椅子から転げ落ちた。

从;゚∀从(っ!!?)

外から覗き込んでいる高岡には、喫茶店の中で何が起きているか分からない。

从;゚∀从(どうしたんだよ!?)

ドクオは倒れたまま動かない。

从;゚∀从(ドッくん!どうしたんだ!?ドッくん!!)

心配で胸が張り裂けそうだった。
すぐに彼の元へ駆け寄りたかった。
だが、出来ない。

――怖い。

从 ∀从(………)

高岡は人間が怖かった。
人とどう接すれば良いのか分からない。
何を話せば良いのかが分からない。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:45:29.53 ID:N5bPwnepO

从; ∀从(…………)

初対面の人や自分が優位に立てる相手なら平気だ。
強気に出て怒鳴り散らせばそれですむ。
だが一歩踏み込もうとするともう駄目だ。

例えばコミュニケーションのために自分に話しかけてくる人がいるとする。
するとすぐに、喋りたい言葉や言わなければならない言葉が口から出てこなくなる。
その結果、子供の癇癪の様に、感情を爆発させるだけになってしまう。

从; ∀从(………ドッくん)

生涯で初めて好きになり、強く愛する相手でも、きっとそれは変わらない。



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:46:28.38 ID:N5bPwnepO

だからストーカーなんてしていた。
付け回すことでしか自分の気持ちを満たせなかったのだ。

从 ∀从(……私は……)

やがてドクオが卒倒した理由が判明する。
店内に居たカップルが原因のようだった。
彼が床に倒れたまま、その方向を凝視して震えているのでそれが分かった。
――自分には分かるだけだ。

从 ;∀从「……ドッくん……」

ドクオには恋人がいたことが無い。探偵を使って過去を洗ったので、確かな情報だ。



61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:48:52.15 ID:N5bPwnepO

彼にはそれが激しいコンプレックスで、
強いストレスを感じることを知っている。
――自分はただ、知っているだけだ。

あの二人は制服を着ているので高校生のカップルだろうか?
もしそうなら同年代だ。
高岡は羨ましかった。
自主退学したので学生生活が羨ましいわけではない。

从 ;∀从(ああなりたいな……なりてぇよなぁ……)

彼女はドクオと、あの恋人達みたいに振る舞いたかったのだ。

憧れの二人の顔は視界がぼやけてよく見えない。
でも幸せそうなのは伝わった。
女の子は彼氏の元へとゆっくり歩き、膝の上に座ったからだ。



63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:50:12.26 ID:N5bPwnepO

そして微笑んでから優しく頬にキスをした。

世間の人から見れば腹がたつだけのこの行為も、高岡には羨ましくて仕方なかった。
体中から力が抜けるぐらい。

从 ;∀从「……うぅ」

彼女は悲哀と羨望で激しく揺れる心の動きについていけなくなった。
そのせいで立っていられなくなってしまう。

堪えるのは無理だった。
体が言うことを聞かなかった。

最後に見えたドクオの姿。

それはテーブルにあったタバスコを飲み干そうとしているところだ。
きっとあれで命を絶つつもりなのだろう。



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:51:22.51 ID:N5bPwnepO

ドクオは些細な理由で無茶な方法の自殺を試みるのだ。

彼はいつもそうだった。
そしていつだって止められない。
いつだって、自分じゃない誰かが、なんとかしてくれる。

――なんとか、してしまう。

―――――

从 ∀从「………」

泣き崩れてしまった高岡は這う様にしてその場から離れ、
残る力を振り絞りながら自宅まで帰ってきていた。

援交で家賃を稼ぐ、一人暮らしの我が家。
今は部屋の明かりもつけずにぼんやりとしていた。

从 ∀从「………」

いつもならドクオを尾行する時間帯だったが、今日はしなかった。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:52:38.62 ID:N5bPwnepO

だからいま現在の彼の行動は分からない。
こんなことは初めてだった。

从 ∀从「はぁ……」

方法が無いわけではない。
ドクオの靴の中に仕掛けた発信機は、
いまも変わらずに信号を送り続けている。
それを確認すれば良いのだ。
でもしない。

从 ∀从「……私は何がしたいんだ?」

いまは暗くてよく見えないが、
部屋の中にはドクオに関するコレクションが山の様にある。
盗撮した姿、盗聴した声、拝借したゴミ等、様々だ。

从 ゚∀从「……そりゃ決まってるよ」



67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:54:17.58 ID:N5bPwnepO

从*゚∀从「付き合いたいんだ、ドクオと」

从*゚∀从「いや、まずは友達……知り合いからでもいいな!」

高岡は暗い部屋の中で立ち上がる。

从*゚∀从「それならよ、朝にでもさ、声を掛けりゃあ良い!」

从*゚∀从「よう!おはよー!いい朝だな!」

高岡は笑顔を作り、手を振り上げながら言った。

从*゚∀从「ドクオは言うよ『うん、おはよー!』ってな」

从*゚∀从「それを聞いた私はこう答える!」

胸を張る高岡。
だが口篭る。

从;゚∀从「………」

从;゚∀从「い、いい天気だなーって!」



69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:56:08.11 ID:N5bPwnepO


从;゚∀从「そんでドクオも言うよ!……『いい天気だね』……って」

从;゚∀从「そして私は……私は………」

徐々に高岡の顔は不安気になり、目が泳いでいた。

从;゚д从「………」

从#゚∀从「わ、私は言うよ!メシでもどーかって!!」

怒鳴りつけて部屋の荷物を蹴り崩す。

从#゚∀从「あいつは言うよ!『いいよー!行こう!』ってさ!!」

物を手に取り、次々と壁に投げつける。

从#゚∀从「ほらみろ!簡単じゃねぇか!!そう言えばいいんだよ!
     簡単だ!簡単だよ!誰にでも出来んだろ!!」

从#゚∀从「そんな簡単なことをなんでテメーは出来ねぇんだよ!!!」



72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:57:25.59 ID:N5bPwnepO

荒い呼吸をつきながら、拳を握りしめていた。
暑さのせいか、それとも感情の高ぶりのせいなのか分からないが、
全身を汗が濡らしていた。

从 ;∀从「………やれよ……やれって……なあ?」

高岡は倒れ込むように腰を下ろした。

从 ;д从「バーカ……根性無し……アホ……カス……クズ」

腕で顔を被いながら声を上げて泣いた。
いつまでも嗚咽は止まらなかった。

―――――


翌朝。
家に居たくなかった高岡は、泣き張らした顔であてもなく歩いていた。



75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 00:59:14.74 ID:N5bPwnepO

良く晴れた夏の午前。
少し暑いが絶好の散歩日和のはずだ。
でも高岡の心は暗雲が立ち込め続けている。

从 ∀从「………」

ドクオの事を考えると頭が割れそうな程に混乱した。
どうすればいいのか全く分からない。

陽炎のようにゆらゆらと歩きながら、ドクオを思い続ける高岡。
やがて彼女は商店街に辿りつく。
そこに、彼がいた。

从 ゚∀从「っ!!?」

(#'A`)「ぬぉぉぉぉ!!」

自分の目が信じられなかった。
道の真ん中でヤケクソ気味に暴れている彼を見て。

(#'A`)「ぐわぁぁぁぁ!!」



78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:02:05.65 ID:N5bPwnepO

有り得ない偶然に動揺した。
まさか会えるとは思っていなかったからだ。

(#'A`)「ちくしょぉぉぉぉっ!うわぁぁぁぁぁ!」

从 ゚∀从「………」

(;A;)「……あっ…あああ………あ……」

从;゚∀从「っ!!」

暴れていた彼は、地面に倒れ込んで号泣した。
昨夜の自分みたいに。

从;゚∀从(ドッくん……!)

慰めなくてはならない。
今こそ踏み出す時だ。

从;゚∀从(……行け!行けよハインリッヒ!!
    いま行かなくてどーすんだよ!?)

(;A;)「…ちくしょう……ちくしょぉ……」



79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:03:43.07 ID:N5bPwnepO

从;゚∀从(行けよぉぉぉ!クソォォォッ!!)

彼は泣いている。
でも自分の体は動かない。
まだ怖いのか?

从 ;д从(…ちくしょう……)

昨日あれほど流した涙が枯れてなかったことに驚いた。
無駄なことには活発に反応する体に怒りを覚える。
そのせいでつい、目の前を通り過ぎようとする
柔和な表情の青年に絡んでしまった。

从# ;∀从「おいテメー!!」

(;^ω^)「はっ、はいですお!!」



80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:05:20.12 ID:N5bPwnepO

从#;∀从「ニヤついてんじゃねぇよっ!何がそんなに楽しいんだ!?」

(;^ω^)「いえ!この顔はこれは生まれつきのなんですお!!」

从#;Д从「うっせぇ!!テメーの意見なんざ聞いちゃいねーんだっ!!」

(;^ω^)「すいませんでしたお!!」

脅える青年の顔を見て、妙案を思い付いた。
どうせ自分には無理なんだ、もうどうにでもなっちまえとヤケになる。

从 ;∀从「……悪りぃーと思うならよ、誠意を見せろよな」



83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:06:47.24 ID:N5bPwnepO

(;^ω^)「生憎、現金は持ち合わせてございませんおっ!
       この服で良ければお納めくださいおっ!!」

青年は大急ぎで洋服を脱ごうとした。

从#;Д从「誰がテメーの小汚い裸を見たいって言ったんだよ!!
     このクソカスがっ!!」

((((;^ω^))))「はわわわ……申し訳ありませんお……」

从 ;∀从「……罰として、あの人を慰めてこい」

(;^ω^)「……お?」

从 ;∀从「あの人だっ!!」

高岡は道で横になっているドクオを指差した。

(;A;)「ブゴッ……ブビ……ボゴッ……ブッ……」



86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:08:14.52 ID:N5bPwnepO

( ^ω^)「………」

青年はドクオを見て、何度かうなずくと、高岡に顔を向けた。

( ^ω^)「わかりましたお。
       そうすれば……貴方の涙も止まるんですおね?」

从 ;д从「えっ……?」

大きく深呼吸をし、背筋を伸ばしてから、ドクオの方へ歩いて行く青年。
高岡はそれを目で追った。

( ^ω^)「どうしたんですかお?」

青年がドクオに声をかけた。

(;A;)「……どうもしない……死なせてくれ……」

ドクオは答える。

( ^ω^)「駄目ですお、死んでは」



87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:09:18.45 ID:N5bPwnepO

(;A;)「俺なんていなくて当然の人間なんだぁぁぁぁ!」

彼にそんなことはないと言ってやりたかった。

(;A;)「死なせてくれぇぇぇぇっ!」

从 ;Д从(駄目!!死んじゃ嫌だよドッく――)

( ^ω^)「……死んじゃダメお♪ダメダメお♪」

从 ;∀从「?」

(;A;)「……?」

( ^ω^)「君が死んだら悲しいお♪きっと寂しい泣いちゃうお♪」

( ^ω^)「だからダメお♪ダメダメお♪」

从;゚∀从「………」

意味が分からなかった。
なぜ彼は歌っている?
自分は慰めてと頼んだはずなのに。



91: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:10:46.70 ID:N5bPwnepO

从 ∀从「……そーかよ、そーいうことかよ」

きっと嫌がらせだろう、と推測した。
当たり前だ。あれだけ怖がらしたんだ。
やり返されても仕方ないかもしれない。

从 ;∀从(ごめんねドックン……こんなことになっちゃって)

从 ;∀从(あいつは私が責任持ってぶっ殺すからさ……ゴメン)

ドクオは歌い続ける青年を見て、怒りを露にしていた。
彼がこんなに怒ってるのは初めてだ。
そんな新たな一面を見れて、少しだけラッキーだなと思ってしまった。

从 ;∀从(……不謹慎だよな)

だが高岡には絶頂の幸運が待っていた。



93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:13:00.85 ID:N5bPwnepO

ドクオが立ち上がり、高らかに歌い出したのだ。

(;A;)「ふざけんな♪お前に俺の何が分かるんだ♪」

从//Д/从「シャッターチャァァァンスッ!!!」

全力で相棒を取り出した。
盗撮用のカメラのことだ。
踊るドクオを連写で撮った。

(;A;)「死にたい俺は放っといて♪」

从//Д/从「ドッくん、カッコイイィィィ!!!」

高岡はまるで豪雨が地面を叩く水しぶきのように、
バシャバシャといったシャター音を鳴らしている。



96: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:14:02.35 ID:N5bPwnepO

( ^ω^)「ほっとけないお心配だ♪だって僕らは皆兄弟♪」

从# ゚∀从「うっせぇぞ豚野郎!!引っ込んでろっ!!」

(;A;)「そんなの嘘に決まってる♪燃えるゴミとは俺のこと♪」

从//Д/从「イヤァァァッ!素敵過ぎるぅぅぅっ!!!」

一心不乱に撮り続ける高岡。
こんなに幸せでいいのだろうかと心配になった。

从;゚∀从「はっ!やべぇっ!声録らなきゃ!!せっかくの歌声がっ!!!」

从;゚∀从「いや違うよ!動いてんだよ!!それを記録しなきゃ!!」

从;゚∀从「なんかねーの!?クソ!!!」



97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:15:30.28 ID:N5bPwnepO

高岡は必死で辺りを探してみる。
だが役にたちそうな物は見当たらない。

从#゚∀从「ちくしょぉぉぉっ!
     こうなりゃ脳だ!脳に焼き付けてやる!!!」

高岡は通行人を跳ねのけながら、
ドクオが見えるベスト・ポジションに正座した。

从 ゚∀从(家に帰ったら脳内とPCを繋いでやるぜ!!
     人間の壁を越えるんだハインリッヒ!!)

そこで辺りの人達に気が付いた。
大勢の人が次々と声を揃えて歌い出していたのだ。

『みんな君を見ているよ♪君のために歌いたい♪』

从 ゚∀从(はっ……!)

同じ失敗を繰り返すところだった。



100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:17:16.39 ID:N5bPwnepO

自分はまた傍観者を選択するところだった。
それでは駄目だ。

从 ゚∀从(脇役だって良い……バックコーラスだって良い!!)

从 ゚∀从「私だって混ざってやるよ!この大騒ぎにさ!!」

歌に自信の無い高岡の決断は早かった。
近くあった魚屋から活きの良いのを一匹強奪したのだ。

从 ゚∀从「そいやっ!ほいやっ!」

彼女は景気良く魚を叩いた。
掌で何度も何回も叩き続けた。
魚からはビシャンビシャン、と音が鳴っていた。

从 ゚∀从「そいやっ!ほいやっ!」



103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:19:17.04 ID:N5bPwnepO

愛するドクオのために、
情けない自分のために、
高岡は必死で魚を叩く。

从 ゚∀从「せいせーい!ほいほーいっ!!」

無理して声を上げる彼女は音痴だった。リズムもでたらめだ。
だが、今まで味わったことのない充実感をはっきりと感じていた。

( ^ω^)「死んじゃダメお♪」

( ゚∀゚)「ダメダメお♪」

从 ゚∀从「そい!ほほーいっ!!」

彼女は全く気付いていなかった。
いまこの時この瞬間、最初の一歩を踏み出せたことを。


―――――


歌が終った時には汗まみれになっていた。



104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:21:13.36 ID:N5bPwnepO

手にした魚は尻尾しか残っていない。
恐らく、叩き過ぎて千切れてしまったのだろう。

从 ゚∀从「いまなら……なんか……いける気がする……」

高岡に不思議な勇気をくれた青年は、スーツ姿の男と話し合っていた。
きっとお互いの健闘を称え合っているに違いない。
彼女は心の中で青年に礼を言った。

('A`)「………」

道路に大の字になって放心しているドクオを見付けた。
なんだかスッキリした顔をしている。
決して美男子ではないが、自分はこの顔が好きだった。

从 ゚∀从(……そういえば、何がきっかけで惚れたんだっけか?)



105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:22:30.44 ID:N5bPwnepO

思い出そうとしても、思い出せなかった。
まるで何年も前に埋めたタイムカプセルの中身のように。

从 ゚∀从(まあいっかぁ!好きっつー気持ちが大事なんだしさ!)

高岡はそこで思考を切り上げて、
持っていた魚の尻尾を放り投げた。

(,,;゚Д゚)「ぐはぁぁっ!」

誰かに当たったようだが気にしない。
早く彼に声を掛けなければならない。

从 ゚∀从「よう!」

('A`)「……?」

从 ゚∀从「……シカトしないでくれよなぁ」

(;'A`)「えっ!?お、俺ですかぁ!?」



107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:24:21.48 ID:N5bPwnepO

从 ゚∀从「そーだよ、そう。あんただよ」

从*゚∀从(――やっと言えた……)

(((((;'A`)))))「おおお女にょ方が、おおお俺になんにょ用でひょう???」

……まずはゆっくりお話して――その後はうちにでも来るか?
二万枚はあるあんたの写真を披露してやるよ。
どれぐらい好きかってのを証明してやるさ。

でもその前に――。

从 ゚∀从「良い天気だな……メシでも食いに行かねーか?」

高岡は練習の成果を発揮させた。家でやったやつだ。



110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/06/26(火) 01:26:11.52 ID:N5bPwnepO

('A`)「…………っ!!」

ドクオは自分の言葉を聞いて、泡を吹きながら倒れた。
満面の笑みを浮かべながら、彼女は彼を介抱することにした。


記念すべき変われた日。
それは凄く暑い夏の午後。




二曲目・完



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