( ^ω^)はミュージカルをするようです

7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/17(火) 23:51:26.26 ID:EghcRhtpO
四曲目・ミセリ



ミセリは品行方正だ。

先生「じゃあ任せたよ、ミセリ君」

ミセ*゚ー゚)リ「はい!」

だから小学校での評判がとても良い。

先生「相変わらず良い返事だね」

ミセ*゚ー゚)リ「ありがとうございます☆」

ミセリは明朗快活だ。

友「じゃーねぇ!ミセリちゃん!」

ミセ*゚ー゚)リ「うん、また明日ー☆」

だから仲の良い友達が沢山いる。

友「バイバーイ!」

ミセ*゚ー゚)リ「バイバイ☆」

ミセリは振り返ると、家に帰るために歩き出した。
ランドセルをゆっさゆっさと動かしながら小さく微笑みつつ足を進める。



9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/17(火) 23:52:50.53 ID:EghcRhtpO

その姿はとても愛くるしかった。
道行く人々が笑顔で振り返るぐらいに。

ミセ*゚∀゚)リ「あっ!おばあちゃん!こんにちわ☆」

「あら、こんにちわ。ミセリちゃんは今日も元気いっぱいねぇ」

ミセ*゚ー゚)リ「だって夏が大好きなんだもーん!」

顔見知りの老婆に挨拶し、ニコニコとしながら通り過ぎるミセリ。
老婆の顔には、ふわりと柔かい微笑が舞い降りた。

ミセ*゚∀゚)リ「あっ!ワンちゃんだぁ☆可愛いいなぁ!」

犬「ワン!」

ミセ*゚ー゚)リ「よしよし☆」

犬の頭を優しく撫で、ウインクしてから通り過ぎるミセリ。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/17(火) 23:54:14.62 ID:EghcRhtpO

嬉しそうに尻尾を振る犬は、またね、という様に短く一度だけ吠えた。

(,,゚Д゚)「おっ!ミセリちゃんじゃねぇか!」

ミセ ゚‐゚)リ「………」

(,,゚Д゚)「初潮は来たかゴルァ?
     きたらすぐに教えろよ!」

ミセ ゚‐゚)リ「………」

(,,゚Д゚)「小豆を用意してやっから、赤飯炊け!赤飯!!」

ミセ ゚‐゚)リ「…………」

(,,゚Д゚)「ギコハハハハハハ!!」

八百屋を通り過ぎたミセリは
二度、三度と角を曲がり、帰り道を歩いた。

木漏れ日が彼女を照らし、
セミの鳴き声はファンファーレのようにリズミカルに鳴く。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/17(火) 23:56:46.34 ID:EghcRhtpO

夏に咲いた花達はミセリを見て優雅に花弁を散らし、
にこやかに歩く彼女の後ろからは小鳥が集まっていた。

やがて自宅に着いたミセリは、ドアを開ける。

母「おかえりなさい、ミセリ」

玄関で靴を磨いていたミセリの母親は、労うようにそう言った。

ミセ*゚ー゚)リ「………」

ミセリは半開きにしたドアから顔を出し、慎重に外を覗く。
辺りには誰もいない。
それを確認した彼女は、静かにドアを閉めて靴を脱ぎつつ飛び上がった。

ミセ*゚Д゚)リ「デットマンズ・ウォキィィィングッ!!!」



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/17(火) 23:59:06.31 ID:EghcRhtpO

意味不明の言葉を絶叫しながらミセリは着ていた服を豪快に引き千切る。

ミセ*゚д゚)リ「イヤッ!ハァァァッ!!」

ビリビリに破かれた服を見て、母親は悲しそうな顔をした。
だがミセリの目には写らない。
彼女は上下左右に頭を振った。

ミセ*゚Д゚)リ「アイム・アム・ア・デビル・ガァァァルッ!!」

母「…………」

赤いランドセルを床に叩き付けるミセリ。
でもすぐに座って、慈しむようにそれを撫で出した。

ミセ*゚д゚)リ「ブラッド・バック?ブラッド・カラー・イズ・バック?」

ミセリはうるむ瞳でランドセルを見つめる。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:01:28.30 ID:SAcAcR3NO

ミセ*゚Д゚)リ「ブラッド・カラー・イズ・ランドセル?
      ファッキン・ランドセル!!
      オー!オー!ファック・オーケー!?オーケー!!?」

母「……やめなさい」

ミセ*゚д゚)リ「ヘイ!デス・マザー!!
      ファッキン・デス・マザー!!ホワット?」

母「ミセリ、あなたは――」

母親の話を途中で無視してランドセルを放り投げ、
ミセリはブリッジしながら階段を駆け上がった。

ミセ*゚д゚)リ「イエェェェェェッ!ギャバッギャバッギャバッ!!」



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:03:34.47 ID:SAcAcR3NO

二階に辿り着くと、逆立ちしたまま足で自室のドアノブを回した。

ミセ*゚Д゚)リ「地獄へダイブゥゥゥッ!!」

扉が開くと、でんぐり返しの要領で部屋に入る。

ミセ*´ー`)リ「イエス……イエス……」

ゆっくりと立ち上がったミセリは恍惚な表情で目を閉じていた。

ミセ*´o`)リ「オーイェ……オー、オー、イェー……」

しばらくそのままの姿勢を保ち続けたミセリは、カッと目を見開いた。

ミセ*゚д゚)リ「ウエルカム・トゥー・ヘル・タイム」

呟く言葉と同時にコンポの再生ボタンを押す。



25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:05:37.72 ID:SAcAcR3NO

スピーカーからはデスメタルの曲が破れんばかりの音量で流れ出た。

『♪臓物浴びて血のシャワー!
 殺っちまったぜ今日もまたぁ!』

激しく頭を振るミセリ。

『♪棺桶なんか用意しねぇ!
 道にばら撒く死ねぇ!死ねぇ!!』

ミセ*゚Д゚)リ「ひゃはぁぁぁっ!!」

絶叫しながら部屋にある水槽を両手に持つ。
その中にはカエルが入っていた。

『♪気分は爽快、転落死!
 手首を切るって、あっそうかい!』

水槽を振り回すミセリ。
カエルはとても迷惑そうだった。

『♪だったら全員ぶっ殺し!
 全滅大好き悪魔だし!!』



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:08:01.79 ID:SAcAcR3NO

涎を垂らしながら歯を剥き出しにして頭を掻きむしるミセリ。
彼女は音楽に合わせて歌い、白眼を剥いていた。

いまコンポから流れているのは「殺人娘カルテット」というバンドの曲だ。
そのバンドはミセリが産まれる前に解散してしまっていたが、
時の流れとは関係無く、彼女のハートをがっしりと掴んでいた。

ミセ*゚Д゚)リ「♪殺れ!殺れぇ!!みんな殺害!!!」

外では天使のように振る舞うミセリだったが、
家の中では悪魔みたいに騒いでいた。



32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:10:39.59 ID:SAcAcR3NO

彼女は内弁慶ならず、内デビルだったのだ。

―――――


ミセリは物心ついた時からいつだって誉められていた。

『さすがミセリ君だ』

『凄いね、ミセリちゃんは』

『もし俺がロリコンだったらお前にファックしてたんだぞゴルァ!』

誉められるのは嬉しかった。
だからミセリはもっと誉めてもらおうと努力した。

『偉いな、ミセリは』

『頼りになるよミセリちゃん』

『やっぱ小学生でもオナニーするのかゴルァ?』

だが気が付くと、いつの間にか周囲の顔色を伺うだけになっていた。



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:13:25.99 ID:SAcAcR3NO

期待を裏切っては駄目。
失望させては駄目。
望まれる結果の更に上をいかなくては駄目。

『ちょっと俺の顔を踏んでみる気はねぇか?』

いつしかそれらが重荷になっていた。
初めは自分の行動に笑顔を見せてくれる人達の顔が嬉しくて、
ただただ頑張っていたのだが、今は逆だ。

溜め息が怖くて必死になって演じ続けていたのだ。

『なぁーんちゃってな!ギコハハハハハハハ!!』

幼いミセリに乗しかかる重圧は、呼吸を妨げるぐらいの重荷だった。
だがある日、彼女は出会った。
「殺人娘カルテット」に。



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:16:48.94 ID:SAcAcR3NO

金切り声に近いボーカルの「素直グール」に衝撃を覚え、
アグレッシブなギターを奏でる「ヘル沢近」に痺れ、
重厚な響きを持つベースの「ペニス伊藤」に感動し、
不思議なリズムで魅了するドラムの「チンポッポ暴淫」に魅了された。

聞いてすぐに心を奪われたミセリは、悪魔への転身を決意した。
禍々しい動物を揃え、CDを大音量でかけ、強信的に信仰する。

やがてミセリの自室は彼女にとっての天国
――ミセリの主張による地獄――となり、彼女は闇に堕ちた。


―――――


夜は深まり、月が静かに輝き出す頃。



48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:18:29.56 ID:SAcAcR3NO

小学生ならとっくに寝ていても
おかしくはない時間帯だったが、ミセリは起きていた。

なぜなら夜は悪魔の時間だからだ。
草木が眠る時刻になっても自分は目を開いていなければならない。
ミセリはせっせと魔法陣を描いたり、
地獄ポエムを作成したりしていた。

そんな彼女の耳に一階の方から、「ただいまモナー」と微かに聞こえた。

ミセリには年の離れた兄がいる。
あの声はその兄のものだろう。

そう確信したミセリは、お小遣いで買った槍を持って玄関に向かった。

ミセ*゚Д゚)リ「ジャバッジャバッギャバァァァッ!」



52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:20:33.70 ID:SAcAcR3NO

全速力で走り、舌をベロリと剥き、
槍を振り回しながら玄関の前に立つ。

ミセ*゚Д゚)リ「バックホーム!モナー・ブラザー!!」

(;´∀`)「………」

(;^ω^)「………」

ミセ*゚д゚)リ「………」

ワンピースを着ていた兄の隣には、柔和な表情をした青年がいた。

兄が一人でないのを見たミセリは槍を投げ捨て、
満面の笑みを浮かべながら挨拶した。

ミセ*゚ー゚)リ「いらっしゃいませ☆お兄さんのお友達ですかぁ?」

(;^ω^)「ぼっ、僕ですかお?」

ミセ*゚ー゚)リ「はい☆」

(;^ω^)「あの……どうなんですかお?」



54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:22:30.83 ID:SAcAcR3NO

青年は兄に向かって困った顔を向けた。

( ´∀`)「……命の恩人だから、マブダチ以上だモナー」

彼の肩を叩きながら兄はそう言った。

ミセ*゚ー゚)リ「なら――」

そこでミセリは、青年が隠すように手で抑えていた右手をチラリと見た。

ミセ*゚д゚)リ「もっ……もげっ!」

微かに見えた彼の手は赤く血に染まり、腫れていたのだ。

ミセ;゚д゚)リ「モゲガッ!ムゲ!!」

(;^ω^)「……お?」

( ´∀`)「あーあ、こりゃダメだモナー」

ミセ;゚Д゚)リ「ブゲラ!ゴホッ!!ブゲラ!ゴホッ!!」



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:25:19.36 ID:SAcAcR3NO

全身を激しく震わせるミセリ。
その様子に青年は困惑した。

(;^ω^)「これは……?」

( ´∀`)「こいつ気が狂ってるんだモナー」

ミセ;゚Д゚)リ「ブラッド!ファッキン!!
      ブラッド・ハンドォォォ!!」

血に濡れた青年の拳に、ミセリは興奮していたのだ。

ミセ;゚Д゚)リ「デビル・デビル・デビル!!
      ユーアー悪魔!?ホワット・デーモン!!?」

( ^ω^)「おっおっ〜♪あくま悪魔だお〜♪」

青年は両腕をぐるぐると回しながらそう言った。

( ´∀`)「ノリが良いモナね」



57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:26:58.54 ID:SAcAcR3NO

しかしミセリは青年を無視して狂ったように騒ぎながら
階段を駆け上がり、自室に戻った。

ミセ;゚д゚)リ(兄貴が……モナー・ブラザーが……悪魔を連れてきた!?)

悪寒が汗となって背中を辿り、ぞくりと体を震わせた。

ミセ;゚д゚)リ(間違いない……あの赤い手は……デビルハンド!!
      あいつは間違いなく闇の住人!!)

魔界と通じ、着々とその親交を深める自分に危惧した兄は、
対抗策として悪魔を現世に呼び寄せたに違いないとミセリは思った。

ミセ;゚Д゚)リ「ならばより強力な魔族を召喚しなきゃ!!」



59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:28:54.36 ID:SAcAcR3NO

電気を消して窓を開け放ち、ロウソクに火を灯す。
そして押し入れでこっそりと飼っていた
ヤギと蛇を引っ張り出し、自作の呪文を唱え出した。

ミセ*‐o‐)リ「ポラギノール・ポラギノール・ポポンエース」

ミセ*゚Д゚)リ「バッファリーン!!」

叫んで両手を上げるミセリ。
そこに窓からハエが飛んできた。

ミセ*゚Д゚)リ「イヤッホォォォォイ!!」

ミセリはそのハエを自分が召喚した悪魔だと思い、狂喜した。

ミセ*゚Д゚)リ「ベルゼブブ様!!ようこそ我が地獄へ!!
      ようこそおこしくださいましたぁぁぁ!!」



62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:30:57.43 ID:SAcAcR3NO

限界まで口を開き、飛び上がりながら絶叫する。

 #))д゚)リ「ブラァァァッ!!?」

だがその叫びは不意に訪れた衝撃に邪魔された。
高速で飛んできた湯飲みがミセリの頭を直撃したのだ。

ミセ*;д;)リ「いた……痛い……!」

「うっせぇぇぇんだよ!!このド低脳がっ!!」

声をする方に目をやると、
向かいのアパートから女性が怒鳴っていたのが見えた。

从# ゚∀从「いま何時だと思ってんだ!?ドックンが起きちまうだろ!!」



64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:33:00.18 ID:SAcAcR3NO

ミセ*;д;)リ「!!」

この湯飲みはあの女が投げてきたに違いない、
この魔界のプリンセスに対するとんでもない侮辱だとミセリは激昂した。

ミセ#゚Д゚)リ「なにすんのよこのバカ女っ!!バラバラにして―――」

文句を言うために窓から身を乗り出したミセリの口は、
違和感のせいで途中で閉じた。

ミセ*゚‐゚)リ「……?」

先程まで怒鳴っていた女性の姿が見えなかったのだ。

ミセ#゚д゚)リ(逃げたの!?…腰抜けが!!)

いくら相手が尻尾を巻いて逃げたとしても、
やられっぱなしでは自分の気が治まらない。



66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/07/18(水) 00:35:15.77 ID:SAcAcR3NO

ミセリは自身が宿す魔力を全力で振り絞った。

ミセ*゚д゚)リ(内臓爆発……内臓爆発……)

「ぬおおおおっー!!!」

ミセ*゚Д゚)リ「!?」

アパートから女性の声がした。

ミセ*゚ー゚)リ(やった!!効いた!!)

「んぎぎぎぃぃぃっ!!!」

ミセ*゚ー゚)リ(やっぱり私は悪魔だったんだ!!)

決壊したダムから溢れ出される水より多い喜びがミセリを包む。
だがその歓喜はすぐに裏切られた。

从# ゚∀从「んがぁぁぁぁっ!!!」

ミセ;゚‐゚)リ「っ!!?」

アパートの窓から見えた彼女は冷蔵庫を引きずっているところだったのだ。



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