( ^ω^)はミュージカルをするようです

52: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 00:50:49.48 ID:1Y48UeqXO
(;ムΘラ)「……マジかよ……」

(;ムΘラ)】「もっ……もしもし……?」

『……なんですか?いたずら電話ですか?』

(;ムΘラ)】「ち、違いますよ……」

『じゃあ、いったい誰なんですか?』

(;ムΘラ)】「…………」

(ムΘラ)】「ツインズです」

『…………』

電話が、切られた。

[`↓´]「…………」

从'‐'从「…………ウナギ……」

(ムΘラ)「…………」
―――――

渡辺さんは二人組から、路地裏に誰か連れて来い、
と言われたのでその通りにした。

从'ー'从「連れて来たよ〜」



53: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 00:52:54.93 ID:1Y48UeqXO
彼女がそう言うと、
待ってましたと言わんばかりに色めき立つ二人。

[`↓´]「よっしゃ!よくやった!!」

(ムΘラ)「これで『美人局大作戦』が出来るぜ!!」

(#ムΘラ)「おい!このクソ野郎!人の女に手を出すとは良い度胸じゃ――」

(;゚ー゚)「は?」

学生服を着た少女が、困惑しながら言った。

[`↓´]「…………」

(ムΘラ)「…………」

从'ー'从「?」

(*゚‐゚)「あの……なにか?」

―――――

[#`↓´]「オラ!金出せや!」

ATM『いらっしゃいませ』

(#ムΘラ)「なんだその態度はよ!?」



54: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 00:54:37.55 ID:1Y48UeqXO

(#ムΘラ)「ずいぶんと余裕じゃねーか!ぶん殴られてーのか!?」

ATM『カードをお入れください』

[`↓´]「……カードってなんのことだ?」

从'ー'从「前に拾ったテレホンカードならあるよ〜?」

(ムΘラ)「きっとそれだ!入れろ!」

カードが、入らなかった。


―――――


店員「あと十秒でーす」

[;`↓´]「もう食えねー……ラーメンなんか見るのも嫌だ……」

(#ムΘラ)「ふざけんな!黙って箸を動かせよ!!」

从;ー;从「食べ過ぎて気持ち悪いよ〜」

(#ムΘラ)「甘ったれたこと抜かすな!!」



56: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 00:56:50.11 ID:1Y48UeqXO

(#ムΘラ)「食いきれば合計で1万5千円だぞ!頑張れ!!」

店員「――3、2、1……時間でーす」

店員「制限時間内に食べられなかったので、
お一人様2千円づついただきまーす」

[`↓´]「…………」

从;ー;从「…………」

(ムΘラ)「…………」


(;ムΘラ)「うおおおおおっ!!走れぇぇぇぇっ!」

立ち上がり、風のように逃げ出した。


―――――


从;'ー'从「ふええ〜食べたばっか運動は疲れるよ〜」

[;`↓´]「しっかしよ……どのくらい掘れば石油なんて出てくるんだ?」



57: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 00:57:41.41 ID:1Y48UeqXO

(ムΘラ)「たしか……ざっと1000〜4000mのはずだな」

[;`↓´]「深っ!!」

从'ー'从「でも私、学生の時は1500mを30分ぐらいで走れたよ〜?」

[`↓´]「……じゃあ、掘るのに1、2時間ってとこか?」

(ムΘラ)「そんなもんだろ。
     掘るのも走るのも、そう違いがあるとは思えねーからな」

彼女達は掘り続けた。
一心不乱に掘り続けた。

やがて日が暮れた。

石油なんて、出なかった。


―――――


同日の深夜。
さっぱりと思うように行かなかった三人は、肩を落として歩いていた。



60: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:00:30.05 ID:1Y48UeqXO

(ムΘラ)「…………」

[`↓´]「…………」

从'ー'从「……ねぇ〜、いつになったらウナギが食べれるの〜?」

[`↓´]「……うるせぇな、メシなら食っただろ?」

从'ー'从「ふえぇ〜……話が違うよぉ〜」

(ムΘラ)「少し黙ってろ」

从'ε'从「…………」

[`↓´]「おい、あれ見ろよ」

(ムΘラ)「……なんだよ?」

しんと静まりかえった路上に、
ぽつんと冷蔵庫があるのが三人の目に止まった。

(ムΘラ)「なんだこりゃ?粗大ゴミか?」

そう言って扉を開ける男。



62: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:02:27.54 ID:1Y48UeqXO

(ムΘラ)「……中身入ってるじゃんか。
     こりゃいいや、ちょうど喉が渇いてたんだ」

[`↓´]「俺、オレンジ系な」

从'ー'从「私ポカリ〜!」

(ムΘラ)「牛乳とポンジュースしかねぇな」

[*`↓´]「ポンジュースたぁ、分かってるじゃねぇか!」

从'ー'从「ポカリ無いの〜?」

(ムΘラ)「無い」

从'ー'从「じゃあジュースで我慢するよ〜」

[`↓´]「半分こしよーぜ」

从'ー'从「うん!」

(;ムΘラ)「おいおい、俺は強制で牛乳か?」

瓶の蓋を取り、回しのみする二人。



63: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:04:02.63 ID:1Y48UeqXO

[*`↓´]从'ー'从『美味い!もう一杯!!』

(#ムΘラ)「人の話聞けや!!」

怒声をあげながら扉を叩き閉める男。

L’)「――ぐぅっ!」

(ムΘラ)「ん?なんか声しなかったか?」

从'ー'从「しないよ〜」

(ムΘラ)「……ならいいや」

頭を振って、歩き出す男。
それを見てジュースを飲みきってから後に続く二人。

[*`↓´]「いや〜久しぶりに甘いもん飲んだわ!」

(ムΘラ)「…………」

从'ー'从「美味しかったねぇ〜」

(ムΘラ)「……駄目だな、このままじゃ」

从'o'从「ふええ〜?」



65: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:06:20.39 ID:1Y48UeqXO

[`↓´]「そんなに牛乳が気に入らないのか?心が狭いやっちゃのー」

(#ムΘラ)「違ぇーよ!」

牛乳パックの中身をラッパ飲みで空にすると、それを投げ捨てる男。

(ムΘラ)「俺達はこのままじゃいけねぇってことだ!!」

(ムΘラ)「お前らは今の暮らしで満足してんのか!?
     いいや、そんな筈は無いね!」

从'ー'从「そうだねぇ〜なんとかしたいねぇ〜」

[`↓´]「だな」

(ムΘラ)「だったらよ、何が必要だと思うよ?」

从'ω'从「…………」

[`↓´]「…………」



67: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:07:44.04 ID:1Y48UeqXO

(ムΘラ)「答えはシンプルだ!
    金だ!金だよ!!金がありゃ俺達は人生をやり直せるんだよ!」

[`↓´]「かもな」

从'‐'从「…………」

(ムΘラ)「だったらよ、ドカンと稼ごうぜ?イチかバチかでよ」

从'ー'从「……何するの〜?」

(ムΘラ)「ハッ!決まってんだろ!」

(ムΘラ)「銀行強盗だよ、定番だろ?」


―――――


今ではエコロジストも青くなるような地球に優しい暮らしをしていたが、
生まれ育ちはかなり裕福だった。

父親は政治家をし、母親は化粧品会社を経営していたからだ。



68: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:09:57.41 ID:1Y48UeqXO

そんな両親は、注意散漫でおっとりとした性格の渡辺さんを溺愛していた。
だが彼女はその過保護とも言える束縛から、常に解放されたいと思っていた。

間伸びした言動と浅慮な思考。
これは自分でも容易に認められる欠点だ。

でもだからと言って、無遠慮にあれこれと口を挟む両親には辟易する。

自分の人生ぐらい、自分で決めたかったのだ。

そんな風に不満を溜め込む高校時代に、節目とも言える出来事が起きた。
それは、進学先までを勝手に決められたことだ。

選ばれた大学自体には特に文句が無い。



69: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:11:00.86 ID:1Y48UeqXO

だが、いくらなんでもやり過ぎだと言いたかった。

両親が出した傍若無人な結論には、呑気な彼女と言えども頭にきた。

彼等が勝手を言うなら、私にだってその権利はあるだろう。
渡辺さんはそう思い、生まれて初めて両親に反論した。
貴方達が用意したレールの上を、これ以上走る気にはならない、と。

しかし、それは即座に却下されることになる。

世事に疎く、どこか抜けている彼女は、
自分達の言う通りにした方が良いに決まっていると
両親は信じこんでいたのだ。

从'‐'从(それならそれでいいもん……)



72: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:12:35.64 ID:1Y48UeqXO

行動力と自立心が希薄だった渡辺さん。
けれどもそれは、無器用な両親からの
愛情を我慢しながらも受け入れていた結果だ。

今まで抑圧されていた分、
彼女の解放されたそれは、大胆な行動に出ることになる。

大学受験に行く振りをして、美容師の専門学校への入学の手続きをし、
預金通帳からありったけの現金を引き出して家を出たのだ。

从'ー'从(世界の全てを見たいんだよぉ〜)

随分前に読んだ冒険小説の中で、
旅立ちの景気付けにお尻の穴にフリスクを突っ込む、
というのがあったので彼女は実践してみた。



73: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:14:12.49 ID:1Y48UeqXO

从*'ー'从(みwwなwwぎっwwてwwきwwたwwwwww!!!)

痺れるような清涼感が体内で爆発し、
束縛からの解放が如実に実感出来たものだ。

そして専門学校に入学し、
住居のための保証人などいないので公園に住むこにした。

そこで、あの二人に出会った。

(ムΘラ)『ツインズ!!』

[`↓´]『参上!!』

从'ー'从『ふぇぇ?』

路上生活のノウハウを教えてもらい、
あれこれと面倒を見てもらった。

細々と使っていた現金が尽き、
片っ端から仕事をクビになる現在まで、その付き合いは続いていた。



75: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:15:35.74 ID:1Y48UeqXO


―――――


翌朝。

从'ー'从「朝だよ〜!」

細かい計画は明日にたてる、
ということに決まったので昨晩はそうそうに就寝した。

焼失した家はやっつけ仕事で修復させ、
渡辺さんはそこで寝た。

心地良い朝の空気を肺に溜めながら、
顔を洗うために表に出る。

家の前には、二人組が熟睡していた。

(ムΘラ)「ごがぁぁぁぁ!ぐごぉぉぉぉっ!!」

[`↓´]「クピー……クピー……ムニャムニャ……」

从'ー'从「…………」

彼等はいつもこうして夜の番をしてくれていた。



76: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:16:26.08 ID:1Y48UeqXO

冬場でも毛布と新聞紙にくるまり、
渡辺さんに何か起きないようにと気を配っていた。

从'ー'从(いつもありがとうだよぉ……)

蛇口から出る生温い水で眠気を覚ます。
塩を指先につけて歯を磨く。

从'ー'从(でも……いつまでもおんぶにだっこじゃ女が廃るよ〜)

学習とは優れた物を模倣することだ。
彼女はそう思いつつ、昨日の出来事を反芻した。

渡辺さんは、彼等の手助けをしたかったのだ。

从'ー'从「電話〜電話〜♪」

公衆電話に行き、ポケットから出した小銭を入れる。



78: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:18:05.29 ID:1Y48UeqXO

从'ー'从(今日から私も出来る女だよ〜)

最初の十円で104に掛け、目的の電話番号を聞く。
時間は大丈夫だ。もう開店しているはずだ。

意を決して番号をプッシュする。

从'ー'从(ドキドキするよぉ〜)

電話が掛り、非常に丁寧な言葉使いな女性が対応してくれた。
渡辺さんは相手の言葉の終りを待たずに口を開く。

从'ー'从「私だよ〜私だよ〜」

『……はい?』

从'ー'从「私、私だよ〜」

『どちら様でしょうか?』

从;'ー'从(う〜ん、この後なんて言えば良いんだろ……)

从'ー'从(そうだ!)



79: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:19:37.11 ID:1Y48UeqXO

从'ー'从「銀行強盗の私だよ〜後で行くからお金を貸してね〜」

そう言うと、満面の笑みで受話器を置く渡辺さん。

これで相手は知り合いが強盗に来るに違いないと勘違いするはずだ。
それならきっと同情してくれる。

これでスムーズにお金の受け渡しが出来ることになるだろうな、
と彼女は思った。

从'ー'从(あれれ〜?私も意外と賢いよ〜)

鼻唄を歌いながら、段ボールハウスに戻る。
ぐんぐんと日が登り、真夏の暑さが空気に混じり出した。


―――――


(ムΘラ)「…………」

[`↓´]「…………」



81: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:20:53.49 ID:1Y48UeqXO

从'‐'从「ふぇぇ……なんで銀行が閉まってるのぉ〜?」

渡辺さんは目を覚ました二人に連れられて、
襲撃予定の場所に辿り着いた。

しかしなぜかシャッターが下ろされており、
休業しているようだった。

[`↓´]「正月でもねーのに銀行が休みとはなぁ……」

(ムΘラ)「クソッ!幸先悪いな」

从'‐'从(せっかく電話したのに……酷いよ……)

自分の行為が徒労に終ったことに落ち込む渡辺さん。

(ムΘラ)「仕方ねー、他のとこ行くか」

从'ー'从「どこにするの〜?」

[`↓´]「隣街にあったな。でっかいやつが」



83: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:22:59.71 ID:1Y48UeqXO

(ムΘラ)「バストと銀行は大きい方が良いからな。そこにしよう」

[`↓´]「胸はツルペタだろ」

(ムΘラ)「知るか」

从'ー'从「どうやって行くの〜?」

(ムΘラ)「歩くの面倒だからタクシーだな」

[`↓´]「おい、ツルペタなめんなよ」

从'ー'从「あれれ〜贅沢過ぎるんじゃない〜?」

(ムΘラ)「贅沢もクソもはなから金なんてねーだろ。踏み倒せばいい」

[`↓´]「ツルペタ……」

从'ー'从「それもそうだね〜」

(ムΘラ)「ほれ、ちょうど来たみたいだぜ」

[`↓´]「ツルペタがかっ!?」

(#ムΘラ)「いい加減うるせーぞ」



85: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:24:30.91 ID:1Y48UeqXO

从'ー'从「ねぇねぇ〜私が止めてもいい〜?」

(ムΘラ)「ガキかよ。まっ、好きにしな」

[`↓´]「えー!俺がやりたかったのに……」

(ムΘラ)「きめぇー」

从'ー'从「じゃあ一緒にやろ〜」

[*`↓´]「ふへへへ……ありがと」

(ムΘラ)「ガチできめぇー」

\从'ー'从人[`↓´]/「「ヘイ、タクシー!」」

手と手を合わせて片足を上げる二人。

(ムΘラ)「おっさん、キモ過ぎるぞ」

緩やかに減速して目の前で停止するタクシー。



87: ◆PxaeLV0ois :2007/09/15(土) 01:25:43.02 ID:1Y48UeqXO

しかし運転手はドアを開け、
渡辺さん達に一瞥もせずにどこかへ歩き出してしまった。

从'‐'从「……あれれ〜?」

[`↓´]「新手の乗車拒否か?」

(ムΘラ)「テメーのせいで吐きに行ったんだろ」

運転手を追う渡辺さんの目。
二人組の会話は耳に入らない。

从'‐'从(なんだろ……胸がざわざわするよ……)

膝まずき、頭を垂れる運転手。
ぞくぞくと集まり、次々とそれに倣う通行人達。

从 ‐ 从「…………」

その光景は大名行列のために道を開けている民衆を連想させた。

(ムΘラ)「あれっ、銀行が開いてやがる」



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