( ^ω^)はミュージカルをするようです

5: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:02:41.50 ID:HXhYKscXO
九曲目・しぃ




 私は今でも恋してる。
 空にいるヒロに、恋してる。
 だから私は祈っちゃうV(^-^)V

 この空への恋が、雲にまで届いて行きますようにって。。。

 「死ニナサーイッッッ!!!」

 黒人ピッチャーの豪速球。
 162キロのスライダー。

 私はバットの真芯で、それを捉えた。


     カキーン!!!


              〜fin〜

      ※    ※    ※

しぃは自室で読み終えた本を静かに閉じた。

(*;д;)「うわあああああああっ!!!」



8: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:04:19.10 ID:HXhYKscXO
信じられないほどの感動と息が詰まるぐらいの慟哭。
それらをくれたこの作品は、
なんて純然で深淵なセツナイ愛の物語なのだと彼女はうち奮えたのだった。

(*;‐;)「……うぅ……えぐっ……」

最初は話題の携帯小説が書籍化したというので話の種にしよう、と冷やかしで購入。
だが目を通してすぐに没頭。
気が付いたら、あっという間に読み終えていた。

二時間程しか経っていないが。

(*;‐;)「これだよ!これが文学だよ!!」

これ程までに涙を誘うストーリーを、しぃは生涯で初めて知った。
知り得たことに、感謝した。

しぃには一刻も早くこの心の昂りを付き合っている彼に知らせる必要があった。
だから迷わず携帯を手に取る。

(*゚ー゚)】「……あっ!もしもし、寝てたかな?ごめんね!
     てかさぁ、今すっごい本を読んじゃってね!」



12: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:05:56.55 ID:HXhYKscXO
しぃは感想と感動を、熱弁。
その言葉の一つ一つを丁寧に聞く彼は、相槌を打つ最中に咳をした。

(*゚‐゚)「……えっ……どっ、どうしたの?」

別になんでもない、と答える彼氏。
しぃはそれを自分に心配かけないようにするための嘘ではないか、と勘繰った。

(*゚‐゚)(ま……まさか……)


(;゚‐゚)(癌っ!!!!)


電話を切った。電源も切った。
なんてことだ、小説とまったく同じ展開じゃないかと動揺し、混乱したからだ。

(*;‐;)「……うえぇ……うぐっ……!」

枕に突っ伏して、号泣。
悲しくて悲しくて仕方がなかった。
どうしてこんな悲運が自分達を襲うのかと、運命に涙した。



13: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:07:33.81 ID:HXhYKscXO
やがて朝になり、泣き腫らした顔で立ち上がる。

(*;‐;)「私がなんとかしなくちゃ!!
    悔いを残さないようにしてあげなくちゃ!!!」

悲劇のヒロインが、誕生した。


―――――


しぃは口に運ぼうとしたはずのアイスティーを豪快に頭から掛けてしまった。
原因は緊張から手が震えていたこともあるし、
なによりどう切り出せばいいのか夢中で考えていたからだ。

(;゚‐゚)(どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう……)



15: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:09:18.04 ID:HXhYKscXO
何事かと心配そうに見る恋人に、流行りの納涼法だ、と手を振って誤魔化すしぃ。
彼を安心させるための微笑みを顔に浮かべ、注文したパフェを素手で食べ始めた。

(;゚‐゚)(やっぱ引いちゃったりするのかな?止めた方がいいのかな?
     でもそんなのダメだよね、薄情者は彼女失格決まりだもん。
     でもなんて言えばいいんだろ?どう言えばベストだろ?
     あーもう、どうしよう、どうしよう……)

いま自分達は、喫茶店にいる。
学校終わりに直接来たので互いに制服のままだ。

目の前には恋人がアイスカフェオレを飲みつつ、
家庭菜園で発芽したばかりのもやしの話をしていた。

彼はニコニコとしていて、とても上機嫌。
しかしこの笑顔もこれから話すことのせいで氷ついてしまうかもしれない。
しぃはそれが、怖かった。

(*゚‐゚)(……もし、それはないわぁ〜って感じで
    どん引きされたりなんかしちゃったりして……
    そんで……別れよう……だなんて……言われたら……)

(*゚q゚)(…………)

(*;‐;)(ひぃぃぃ……ヤダよぉ!そんなの嫌だよぉ!!)



16: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:10:15.45 ID:HXhYKscXO
文字通り、頭を抱えて振り回す。
恋人はしぃのそんな様子にとまどいながらも、自慢の栽培テクニックを解説していた。

(*;‐;)(…………)

(*゚‐゚)(……でも……ひょっとしたら……喜んでくれる、かもよ?)

遠心力のお陰で血の巡りが良くなったせいか、
しぃはさっきより少しだけポジティブに考えられた。

何事もやってみなきゃ分からないじゃないか、と。

(*゚ー゚)(そうだよ……希望は持たなくちゃだよ!!)

自らを鼓舞させるために両手で数度、腿を叩く。
向かうは一か八かの大博打。
奥歯を噛み締め、腹をくくり、大きく一度息を吸う。

(*>ー<)「イェェェイッ!拍手拍手ぅぅぅっ!!」

しぃはパチパチと手を打ち鳴らしながら勢いよく起立した。
椅子が倒れて大きな音を出し、店中の注目が彼女達に集まる。



19: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:12:17.40 ID:HXhYKscXO
(*゚ー゚)「これからとってもハッピーなお知らせがありまーす!」

突然騒ぎ出した彼女を見て、恋人はあんぐりと口を開いて呆気にとられていた。
そんな彼に、しぃはびしっと敬礼してから最高の笑顔を作った。

(*゚ー゚)「実は……なんと!」


(*゚ー^)「今日は二人の子作り記念日に決まりましたぁー☆」


(;゚∀゚)「ぶはぁっ!?」

('A`)「…………」

会話が聞こえていたのだろうか、
後ろの席にいたスーツ姿の男が勢い良くコーヒーを吹き出し、
窓際で座っていた痩せた男も椅子から転げ落ちた。



21: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:13:19.89 ID:HXhYKscXO
(*^ー^)「やったー!やったー!楽しみだね!楽しみだねぇ!!」

その場で跳び跳ね、万歳三唱。
まるで何かの大会で優勝したかのような大はしゃぎ。

(*^ー^)「頑張ろうね!元気な赤ちゃん作ろうね!!」

しぃはピースして、スカートをチラリと捲り上げる。
このパンチラは雰囲気を和ませるためのサービス精神の現れだ。

(;゚‐゚)(どう?……失敗!?)

死に向かう彼のために何をするのが最善か。
それは間違いなく、子種を残すことであろうとしぃは思った。

自分達は交際を始めて一年近くが経過していたが、キスより先に進んではいない。

ならば男の子の本懐を遂げさせ、
彼の遺伝子を現世に残させるのが自分の役目に違いないと痛烈に感じた。



25: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:15:11.14 ID:HXhYKscXO
( ゚∀゚)「あっ……ごめんなさい、おしぼりと追加でコーヒーを」

('A`)「俺には楽に死ねる毒薬を」

(;゚∀゚)「……気持ちは分かりますけど、取り合えず立ちましょうよ」

しぃに課せられた最大の難関は、どうセクロスに持って行くか、だった。

今までは照れや気後れからどちらからとも言い出せず、スルーして来た男女の行為。
しかし、もう避けては通れない。

それならもう、強引にでも言おうじゃないか。
高らかに、性を謳歌しようじゃないか。

しぃはそんな風に開き直っていた。

(*゚‐゚)(……ビー君……!!)

順序にも過程にも、拘ってなどいられない。
一刻も早く性交しなければならない。



26: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:16:56.37 ID:HXhYKscXO
(*゚‐゚)(私は貴方の子供と幸せにやるから……!)

涙は見せられない。
彼が病気のことを隠すのなら、それに追従するのが女の器量。
だから、見せる。精一杯で満面の笑みを。

(*゚ー゚)(……安心して逝っていいから……)

そしてしぃはすたすたと歩いて恋人の膝の上に座り、艶かしく彼を見た。

(*゚ー^)「……ラブしちゃってるよ、ダーリン☆」

頬にキスをして、えへっと微笑む。
その瞬間、喫茶店にいた全員が凍りつく。



27: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:18:21.71 ID:HXhYKscXO
(;><)「……わかんないん……です……」

店内に響くは恋人であるビロードの絞り出すような声。
ガラス張りの向こう側では、夏の日差しがアスファルトをじりじりと焼いていた。


―――――


何故か困惑し、躊躇するビロードを、宥めてすかして店を出た。

大汗かいてラブホテル。風呂は交代、順番で。さあさあいよいよ本番よ。
と、いう最高潮に盛り上がったところで、二人の行為は頓挫してしまった。

経験の無さと緊張から、ずっぽりすっぽりとは楽しめなかったのだ。

(*;‐;)「ごめんね……ごめんね……。
    私のが……ちゃんと濡れない……せいで……」

(;><)「だから気にしないでください!
     それに言ったじゃないですか、
     焦ることなんてないんです!二人のペースでやるんですって!」

(*;‐;)「ビー君……」



30: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:20:17.74 ID:HXhYKscXO
つい自己嫌悪に走り勝ちになってしまう彼女を救うのは、彼のこういう優しさだ。
しかしそれは同時にしぃを追い詰めることもあった。

申し訳ない、と感じてしまうのだ。

彼の男の子の部分は、
サガットのタイガーアッパーカットのように天を貫こうと隆起している。
でもビロードの表情からはそんなことを微塵も感じさせない。

堪えているのだろう、と容易に推察出来るのが心苦しかった。

その後も励ましと慰めの言葉を沢山かけてもらい、
ますます彼のことが好きになるしぃだったが、
いまは不甲斐ない自分が許せないので、彼を風呂へと追いやってしまった。

(*;‐;)「……もぉ……私のバカ!!」

顔は涙でびしょびしょなのに、なぜ下はこういかないのか、
としぃは自責の念にかられる。

こういうトラブルの責任は女性側だけにあるとは限らないのだが、
彼女にとってはこの開かない門が最大の戦犯に感じられた。



34: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:21:52.02 ID:HXhYKscXO
(*;‐;)「…………これは……?」

目に止まったのはテーブルの上にあるビニール袋。
ここに来る前にコンビニへ寄り、お菓子やジュースを買った時に貰ったものだ。

(*;‐;)「暴君……ハバネロ……?」

赤と黒に彩飾されたパッケージ。
禍々しく笑うキャラクター。

(*;‐;)(……辛いもの食べると……汗出るよね……)

(*゚‐゚)(なら……その理屈で……!)

そこでしぃは一計を案じた。

それは圧倒的な思い付き。
別次元からの閃き。
頭の中を雷鳴が走り、大地が粉々に砕けた。



36: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:23:57.79 ID:HXhYKscXO
(;゚‐゚)(でも……本当にいいの、しぃ?
    成功しても失敗しても……とてつもないダメージが……)

……ざわ……っ

(*゚‐゚)(……いや、それはただの自己保身……
    体の良い逃げ文句……唾棄すべき己の弱さ……)

ざわ……ざわ……

(*゚‐゚)(詭弁……っ!……まるで負け犬……!
    足をとられたか……恐怖という……泥濘に……っ!)

……ざわざわ……ざわ……

(*゚‐゚)(……命は粗末に扱うべきよ……大切にするから澱む……腐る……)

ざわ……ざわざわっ……

(*゚‐゚)(そう……ここはHするか……死ぬべきよ……っ!!)



39: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:26:11.09 ID:HXhYKscXO
眠気が吹き飛んだ彼女は決意し、行動に移した。

(*゚‐゚)(……漕ぎ出そう……勝負という……大海へ……っ!)


(;>_<)「……〜〜っ!」


(;>_<)


(;゚_<)


(;゚‐゚)

(*゚‐゚)「なんとも……ない?」

(*゚‐゚)「あてがはずれちゃったなぁ……」



40: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:27:04.42 ID:HXhYKscXO
(*゚ー゚)「……それにしても大したことないね、ハバネロ君は。
    緊張して損しちゃったよ」

( ゚ー゚)フフンッ





Σ(*;゚д゚)





(*; д ) ゚ ゚



43: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:28:52.83 ID:HXhYKscXO
( ><)「ふぅ……さっぱりしたんです」

バスタオルで頭を拭きながらビロードがやって来た。
だがしぃの出迎えは苛烈なものになってしまった。

((((((*;д;))))))「ぎゃああああああああああああああっ!!!!」

(;><)「し、しぃちゃんっ!!どうしたんですかっ!!?」

((((((*;д;))))))「股間が燃えるように熱いぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

(;><)「こ、股間……!?」

((((((*;д;))))))「ぐげぇぇぇぇぇっ!!があああああああっ!!!」

発狂したように床で転がるしぃ。
汗が垂れ、涙が出ていた。

((((((*;д;))))))「あっ……ああぁっ……がっ……あぁっ……!!!」

(;><)「わかんないんです!どうすればいいかわかんないんです!!」



46: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:31:14.11 ID:HXhYKscXO
((((((*;д;))))))「……しょう……か……き」

(;><)「なんですか!?」

((((((*;д;))))))「消火器を突っ込んでっ!!!」

(;><)「っ!!?」

((((((*;д;))))))「早く消火器をぶちこんでぇぇぇぇっ!!!」

しぃの思考はまさに錯乱状態。
自分でも何を言ってるか分からないが、
とにかくこの体内に渦巻く業火を消し止めなければならないと思ったのだ。



48: ◆PxaeLV0ois :2007/11/29(木) 00:33:56.46 ID:HXhYKscXO
(;><)「し、しぃちゃん……」

((((((*;д;))))))「があああああああっ!!うわああああああああっ!!!」

(;><)「…………」

( ><)「…………」

( ><)「……させないんです」

( ><)「消火器なんかにしぃちゃんは渡さないんです!
     絶対に渡さないんです!!」


( <●><●>)クワッ


( <●><●>)「しぃちゃんの初めての相手は僕だということはわかってます!!!」

((((((*;д;))))))「ビー君……!!」

( <●><●>)「ムードゼロなのはわかってます!!!」



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