( ^ω^)ブーンは麻雀の世界に生きるようです

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:31:05.91 ID:b4YXKgDY0


【第六話:予選、その二】


 ドクオは、焦っていた。

(;'A`)。oO(ここでラスを引いたら最終戦でほぼ目無しになっちまう…!)

 頂上戦東京ブロック予選、第2回戦。
 ドクオの卓では、東2局、
 下家に座った初老の男性が親の倍満をツモり上げて、試合を早々と決めてしまった。 
 ならば2着をと目論むも、東4局に
 対面へ早い巡目のダマテン5200を放銃してしまい、暫定ラス目に陥ってしまう。

 それから何局か進むも、ドクオは一向にアガリが拾えないままオーラスに突入する。
 その差は2着目と約8000点弱、満貫1つ分といったところ。

 果たして逆転はなるか。
 賽が、カラカラと乾いた音を立てて回った。

(;'A`)。oO(ヤバイ…)

 祈りにも似た想いで配牌を持ってくるドクオ。
 だがやはり、手は重たい。

('A`)配牌:128m1168p299s西北發 ドラ6s

( A )。oO(いつも…こうなんだよな…)



5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:33:40.12 ID:b4YXKgDY0


 昔からそう。
 ここぞって時に、俺は力が出せないんだ。

 中学までやっていた野球では、
 大事な試合の前に決まって怪我をしたり、食中毒にかかったり。
 体調を整えて、さあ今度こそと思ったら…
 チームメイトのタバコが見つかって出場停止処分!なんてこともあったっけ。

 高校で知り合ったブーンと麻雀をやるようになってからもそう。
 金欠で負けたくない時に限って、勝負強さが欠片も無くなっちまう。

 ツキってヤツに、俺は見放されているんだよ。
 望みなんて持つもんじゃない。
 どうせ今回もムダな足掻きに終わるんだろ。

 ハッ、だせぇ。

 ドクオは第1打を切り出しながら、そう自らを笑った。

 だがそんなドクオに対して突如、一筋の光が差し込んだ。
 第3・第4ツモで、ドラを連続で引き込んで来たのである。

('A`):128m1168p26699s發 ドラ6s

('A`)。oO(ドラは引いたけど…それでもアガリは遠いな…)



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:36:03.16 ID:b4YXKgDY0


 その刹那。
 試合開始前のブーンがドクオの脳内にフラッシュバックした。

( ^ω^)『例え負けても悔いの残る一打は残さないよう、思う存分僕らの麻雀を打つんだお!!』

 …ああ、そうだった。
 ブーン。お前はいつだって、自分なりにベストを尽くそうと必死だったよな。

 それは麻雀だけじゃない。
 このサークル運営にしたって、朝からチラシを撒いたり、
 青空麻雀を始めたり、会長としてブログを始めたり。
 手間を惜しまず思いつくことは全部やる、いつだって全力投球だったよな。

('A`)「…チッ」

 ブーン、大したヤツだよお前は。

 気が付いたらネガティブでとんだひねくれ野郎になってた俺も、
 お前といると何故だか前向きになれるんだよな。
 頑張らないとって気持ちになるんだよな。

 まったく。
 面倒なヤツを友達にしちまったぜ。 

('A`)。oO(しょうがねぇ…ダメでもともと、いっちょ気合を入れ直すか…!)



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:40:15.16 ID:b4YXKgDY0


 南4局も中盤に差し掛かる8巡目。
 下家の切った1pへ、ドクオはおもむろにポンの声を上げた。
 
('A`):12m68p6699s發發 ポン111p ドラ6s

('A`)。oO(この手、ブーンだったら七対子に行くのだろうが…
      俺は…俺の麻雀は、こう打つ!)

 一見すると、發に一縷の望みを賭けた単なる役牌バック(※1)の仕掛けに見える。
 だが、ドクオの狙いはもう一歩踏み込んだ所にあるようだ。

('A`)。oO(この半荘絶好調だった下家のツモ筋には、オイシイ牌が寝ているはず…ッ!)

 そんなものは何の科学的根拠無いただの思い込みで、
 実に馬鹿げたオカルトだ、と主張する人も少なくないだろう。

 だが結果として、ドクオのこの感覚は正しかった。


※役牌バック…役牌を2枚持っていて別の所から鳴くこと。後付けとも言う。



10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:44:31.98 ID:b4YXKgDY0


 まず、仕掛けてからすぐ3mを引いてペンチャンを埋めると。
 次巡になんと3枚目の6sを引き、ドラを隠れ暗刻にする。

('A`)。oO(そうら、喰い取ったッ!)

 それからほどなくして、ドクオにとって待望の發が場にこぼれた。

('A`)「ロン、8000!」

 狙い通りの展開に少し驚きつつ、勢いよく手牌を倒すドクオ。

('A`):123m66699s發發 ロン發 ドラ6s
 
 ちなみにこの時、下家の手牌はこの形。

下家:45m223344p5578s北

 つまり、ドクオが動かなければ下家がツモっていたことになる。
 ドクオは独自の嗅覚で、アガリへの唯一の道を辿ったのだ。

 …と、実にヒヤヒヤものではあったが、
 この起死回生の満貫で2着への滑り込みに成功する。
 ポイントこそ小さいもののまさしく値千金、これで決勝進出を最終3回戦目に望みを繋いだ。

(;'A`)「やれやれ、だぜ…」



11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:47:26.82 ID:b4YXKgDY0


 そんなドクオが緊張感から解放されフラフラになりながら喫煙所に向かうと、
 先に対局を終えたジャン研の仲間達が休息を取っていた。

 だが、一部メンバーから生気を感じられない。
 どうやら2回戦でえらい目に合ったようだ。

ξ )ξ「…」

(´゚ω゚`)「…」

(* ω *)「…」

(-_-)「…」

(;'A`)「ど、どうしたお前ら」

( ;><)「あっドクオさん!みんな早くも決勝進出の可能性が無くなって、
      抜けガラになっちゃったんです!ヒッキー君は普段と表情変わってないですけど!」

('A`)「あー、まぁ…やっぱりそういう人も出てくるよね…」

 ドクオがそう言い終えてタバコをポケットから取りだすと、ブーンも遅れて登場。
 そして彼らの様子を見て、一言。

(;^ω^)「あらま」



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:51:20.30 ID:b4YXKgDY0


 予選が3半荘しか行われないため、2回戦目を終えた時点で
 早くも目無しが出てしまうのはシステム上仕方の無いこと。
 それはわかっていたのだが、この時点で生まれてくるであろう敗退濃厚者に向けて
 どんな言葉を掛けるべきか、ブーンは考えていなかった。

(;^ω^)「うーん…」

( ゚∀゚)「どうしたブーン、便秘かい?」 

( ^ω^)「あ、ジョルジュ!」

 ブーンが声を出して悩んでいると、ジャン研屈指の能天気男も対局を終えてやって来た。
 そしてその悩みを相談すると、そんなの悩む必要ないぜと言わんばかりに口を開く。

( ゚∀゚)「…諦めるのは最後の親が流れるまで早いだろ。それを伝えればいいだけじゃん」

 ブーンは目の前の男のポジティブさに少し呆れつつも、見直した。

 それは確かにその通りで。
 トビ終了が無い今回のルールでは、親で大物手を連発出来る可能性もあるわけだから、
 それまで失点を最少に留めるべく努力すれば良いのである。



14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 21:56:38.69 ID:b4YXKgDY0


 ジョルジュからの言葉を受けたブーンは、負け越している者をその言葉通りに励ました。

 1半荘で役満を2回アガれるかもしれない。
 インパチ4連発の可能性だって、ゼロというわけではない。
 10万点のトップを取ればその1半荘だけで+110ポイント入る。

 だから、最後の親が流れるまで希望を捨てるな、と。
 それがVIP大学麻雀研究会メンバーのあるべき姿だと、力説した。

ξ )ξ「…そ」

ξ゚听)ξ「そんなこと言われなくたってわかってるわよ!
      見てなさい!大トップ取って決勝くらい行ってやるわ!」

( ^ω^)「おっおっ、そうだおその意気だお!みんなもやる気出して頑張れお!」

 そう奮起を促すブーンに、心の中でツンはこう呟いた。

ξ゚ー゚)ξ。oO(ありがとね、ブーン)

 この何気ない出来事は、後にツンが奇跡を引き起こすキッカケとなる。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:01:04.58 ID:b4YXKgDY0


('A`)y━~~「…ところで、2回戦はどうだった?」

( ^ω^)「浮き2着だったお。ボーダーポイントがどれくらいかわからないけど…
       2着以上ならまず通過出来そうだおね」

('A`)y━~~「そうか。俺も2着で、最終戦トップ条件と言ったところだな」

( ;><)「4着だったんです…」

( ゚∀゚)「2連勝。俺はもう大丈夫だなっ!」

 ジョルジュが軽快に言い終えたところで、クーの声が後ろから聞こえてきた。

川 ゚ -゚) 「ジョルジュを見習って6万オーバーのトップを取って来たぞ」

( ^ω^)「おおっ」

 この時点で、ジャン研メンバーではまずジョルジュが決勝進出が当確。
 ブーンとクーが3回戦でマイナスにならなければOK。
 そしてドクオとビロードはトップ条件という具合であった。

 出場者108名のうち16人しか予選決勝へ行けない過酷な今大会だが、
 この成績はかなり良いものだと言って良いだろう。

 ( ^ω^)「じゃあ、最後まで気を引き締めて頑張るお!」

 ブーンがそう声を掛けると2回戦開始前と同様に皆目を合わせて頷き、最終戦の卓へ向かっていった。
 だが先程の時と違い、それぞれが緊張した面持ちだったのは言うまでもない。



19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:08:11.56 ID:b4YXKgDY0


 一方、ラウンジ大学陣営はというと。

(´<_` #)「お前ら!だらしないぞ!!」

 副部長で、説教役でもある弟者が怒号を轟かせていた。

 そう、10人で参加しているラウンジ大学麻雀部であるが、
 そのほとんどが早くもほぼ完全目無しとなってしまったのだ。

 「すみません…」と情けなくこうべを垂れる一同に対し、兄者が続ける。

( ´_ゝ`)「確かに…決勝に行けそうなのが俺らとロマネスクの3人しかいないのは寂しいな。
      それに、VIP大の連中が好調そうにしているのが癪に障る…なぁロマネスクよ」

 すると、ロマネスクと呼ばれた男が口を開いた。 

( ФωФ)「それもそうですが、不甲斐無い連中を叱るのはひとまずこれくらいが良いでありましょう」

 対して、「む、そうだな…」と弟者は返し。

(´<_` ) 「わかっているな?例え決勝進出の目が無くなろうと、全力で勝ちに行け。
       1つでも上の着順を目指す。それがラウンジ大学麻雀部の一員であるお前らの使命だ!」

 こう、もっともらしく指示をした。
 だがこの指示には裏がある。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:12:57.87 ID:b4YXKgDY0


( ´_ゝ`)。oO(他人のポイントを少しでも削ってくれれば、
        それだけ決勝進出争いをしている俺達に有利になるからな…)

 勝ちの目が無くなった人間は、アガらず鳴かせず、おとなしくしているべし──

 競技麻雀の世界には、そういった考え方もある。 
 
 もちろん流石兄弟はそれを知っていた。
 しかしながらそれでも全力で勝ちに行けと指示を出したのは、
 それだけ彼らが勝つ事にシビアであるからだ。

 これも1つのチームプレイの形。
 相反する考えの人間にとっては、ルールには反せずともモラルに反する行為なのだろうが…。
 自分達に有利になる事は全て実践すべき。
 麻雀の世界に身を置いて3年目、彼らはそう考えるようになっていたのである。

 また、他にも理由はある。
 こういう公式戦の場で勝つことにより経験値を積んで欲しい。
 そして少しでも良い対局内容を残し、ラウンジ大麻雀部の名声を広げて欲しい。
 そんな目論見もあった。

 だが、流石兄弟は多くを語らない。

( ´_ゝ`)(´<_` )「では、行くぞ」

 口では何も言わずとも、背中で語っているのだ。



23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:18:14.48 ID:b4YXKgDY0


ミセ*゚ー゚)リ「それでは…最終戦開始前に、今現在のボーダーを発表したいと思いまぁす☆」

 司会役のミセリがそう言うと、会場内は静まり返った。
 全ての卓が準備を終えており、参加者全員が彼女の方向に視線を向けている。

ミセ*゚ー゚)リ「現在16位の方、ボーダーポイントは…プラス48.2ポイントです!」
      ボーダーは最終戦が終わると上がっていることが多いので、皆さん頑張ってくださいねっ☆」

 ミセリの軽い口調とは裏腹に、会場内の空気はよりピンと張り詰めた。
 この場にいる全員が、例え可能性が限りなく薄くとも決勝進出を目標にしているのだ。
 そうなるのも無理はない。

 参加者は、手持ちの成績記録用紙で持ち点を確認している者、
 じっとこちらを見て合図を待つ者、目を閉じて気を落ち着かせようとしている者など、様々だ。

 それらを一瞥し少し間を取ってから、ミセリが改めてマイクを口に近付ける。

ミセ >ー<)リ「それでは最終戦、開始してくださいっ!」

 その号令と同時、各卓で一斉に闘牌が始まった。



27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:27:57.62 ID:b4YXKgDY0


 ツンは、燃えていた。

ξ゚听)ξ。oO(やってやるわよ…!)

 現在の持ち点はマイナス51ポイント。決勝に進出するためには、ただのトップを取るのでは足りない。
 要するに、かなりの点数を叩かなければならないのだ。
 野球で例えるなら、9回裏1アウト6点差といったところだろうか。絶望的な数字である。

 だが、ツンの心は折れていない。むしろ気持ちは高ぶっていた。
 対面には、試合前にジャン研を馬鹿にしてきたラウンジ大のアサピーが座っている。
 ブーンに励まされたことはもとより、この事もツンの勝負熱をより上昇させているのだろう。

ξ゚听)ξ「リーチ!」

 その甲斐あってか開局早々に大物手が入り、リーチをするツン。 

ξ゚听)ξ:2234466p556677s ドラ中

 少々時間が掛かったが目当ての3pを引き入れ、裏ドラも乗せて倍満をツモった。

ξ゚听)ξ「リーチ、ツモ、タンヤオ、リャンペーコー、裏2で…4000・8000!」

 美しい巻髪をなびかせながら翻数を指折り数えるその姿を見て、萌えるアサピー。

(*-@∀@)。oO(かわええ…今晩使わせてもらうでヤンス…)

 だが次局、そんな余裕すら奪い去るアガリをツンは引き起こす。



29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:32:51.26 ID:b4YXKgDY0


ξ゚听)ξ「リーチ!一発ツモッ!!」

(;-@∀@)「くッ…!」

ξ゚听)ξ:13m12399p112233s ツモ2m ドラ1s 

 おぼつかない手つきで倒されたその手牌は、
 リーチ一発ツモジュンチャン三色イーペーコードラドラ。
 数え役満の無いルールなので、裏ドラを見る必要の無いまごうことなき三倍満なのだが(※)、
 経験の浅いツンはそれを行い、またしても指折り数えて点数申告をする。
 
 だが今回は、アサピーも萌えてはいない。
 役満よりも珍しい三倍満を目の前で引かれ、彼もスイッチが入ったようだ。

(-@∀@)。oO(…そろそろ俺も本気を出さないといけないようだな……)

 クイとメガネを上げたアサピーの表情から、笑みが消えた。


※三倍満…数え役満が無ければ、ちょうど11翻のこの手はどれだけ裏ドラが乗っても高くならない



31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:35:23.80 ID:b4YXKgDY0


 次局、ツンの親番。  

(-@∀@)。oO(確かこの女のポイントは、マイナス50程度…)

 通常こういった大会では、仲間打ちでもない限り、持ち点を詳しく話し合ったりはしない。
 ライバルに教えても有利に働くことは無いからだ。

 しかし、経験の浅いツンはそんなことを考えもせず、
 成績記録用紙を開けてサイドテーブルに置いていた。
 目ざといアサピーは、場決めの時にそれを見て覚えていたのである。

(-@∀@)。oO(これ以上叩かれたら決勝に行かせることになりかねないな…)

 どれだけ可愛かろうが、やはりライバル校であるVIP大学の人間を決勝へ進ませたくないのだろう。

(-@∀@)。oO(ならば、お嬢さんには悪いが…速攻!)

(-@∀@)「チィ!」

 そう考えた彼は戦略を変え、やはり動いて出た。 
 それからもう一鳴き入れて、テンパイを果たす。

(-@∀@):44p234s西西 ポン888s チー867p ドラ1m

 自身の風牌である西バックで、1000点の仕掛けだ。
 6巡目にして場には字牌がほとんど出ておらず、まだアガれる可能性が高い。

 しかし時として、緩い仕掛けは勢いある者を加速させる。
 ツンの捨て牌を見ると、どうやら萬子の染め手に走っているようだ。



33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:40:36.66 ID:b4YXKgDY0


 だが、テンパイを入れて5巡が経過するも、西は出て来なかった。
 親のツンの捨て牌を見てみても、まだ字牌は姿を現していない。
 通常であれば、染め手に向かった場合、
 ある程度まで手が進んだ所で字牌が切られる筈である。
 そろそろ切られてもおかしくはないのだが…。
 
(;-@∀@)。oO(ほら、オタ風の字牌なんていらないだろ!?早く切っちまえ!)

 焦り出すアサピー。
 だが目当ての西は一向に放たれる気配は無い。 

 そのうちに、ドラそばの2mを持ってきた。

(-@∀@)。oO(余り牌はおろか、字牌すら出ていない…まだテンパイはしていない筈!)

 そう考え、2mを強打する。
 だが予想とは裏腹にツンは「ロン」と言い放ち、彼の打牌を咎めた。

ξ゚听)ξ:13678m東東東西西北北北 ドラ1m

ξ゚听)ξ「ダブ東、ホンイツ、ドラ1…18000ね」

(-@∀@)「ギャフン!」



35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:42:51.88 ID:b4YXKgDY0


 完全に勢いに乗ったツンは、この後もアガリを連発。

ξ゚听)ξ「リーチ、ツモ、ドラ2、あ…裏2で3000・6000」

(;-@∀@)。oO(この女…マジで太ェ!!)※

 道中にフリコミが数回あったものの、
 目標としていた10万点にはわずかに届かなかったが
 プラス105ポイントという1半荘最多得点の大会記録を叩き出した。

ξ゚听)ξ「ま、こんなものね」

 これでトータルポイントはプラス54に。
 決勝へ進めているかどうか、別卓の結果発表待ちとなった。


※バカヅキの人を指して、ツキが太い、略して太いと言う



38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:47:03.02 ID:b4YXKgDY0


 対局を終えたツンは、意気揚々と歩きながら考え事を始めた。

ξ゚听)ξ。oO(アイツ、私が大勝ちしたのを知ったら何て言うかしら…)

 

    
( ^ω^)『やっぱツンは凄いお!麻雀教えてくれお!僕の師匠になってくれお!』

ξ///)ξ『そ…そこまで言うなら弟子にしてあげてもいいわよ…』

    ・
    ・   
    ・

モットツンノコトガシリタイオ…

   アアッイケナイワブーン…

    ・
    ・   
    ・




ξ*゚听)ξ ポワワーン



40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:50:53.08 ID:b4YXKgDY0


「ぉぃ…おい…ツン!」


ξ゚听)ξ ハッ!



 少女が妄想の世界から意識を現実へ戻すと、そこにはドクオがいた。

('A`)「…何ボーっとしてんだ?」

ξ゚听)ξ「な…何でもないわ!ちょっと疲れてただけよ!」

ξ*゚听)ξ。oO(まさか脳内でブーンに突かれてたなんて…言えない……)

('A`)「しかし凄いじゃないか、どえらい大トップを取ったんだって?」

ξ゚听)ξ「まぁね。そういうアンタはどうだったの?」

('A`)「小さいトップだった…別の卓次第って感じだな」

ξ゚听)ξ「そう。トータルで言えば私も同じね…」

 2人が歩きながらそう話しているとすぐ、皆のいる喫煙所へ辿り着く。

 そこでは、ジョルジュ、ブーン、クーが余裕の表情で話し合っていた。
 どうやら3人とも安全圏らしい。



43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 22:56:25.23 ID:b4YXKgDY0


 そんな彼らに3回戦のことを話すツン。
 
( ゚∀゚)「ヘェ!やるじゃねえか!」

川 ゚ -゚) 「正直無理だと思っていたが…驚いたよ。通過出来てるといいな」

(* ^ω^)「今までの練習の成果だおね!凄いお!」

 まるで家族が受験に成功したかの如く、彼らは祝福してくれた。 

 今まで麻雀初心者である自覚が強く、
 同学年だが上級者である彼らにちょっとした引け目を感じていたツン。
 だが、これでようやく仲間入りが出来たように思い、それだけで嬉しかった。

 しかしながら、そんなことはもちろん口に出さない。

ξ゚听)ξ「けど…ドクオもそうだけど、まだ決勝に行けるって決まったわけじゃないから喜べないわ」

 このように、思っているのと裏腹な言葉を発する。 
 これもまた彼女の性格なのだろう。

('A`)「まあとりあえず…発表を待とうや」

 ドクオがそう言うや否や、マイクを通したミセリの声が聞こえた。 

ミセ >ー<)リ「お待たせいたしましたっ!集計が終わりましたので、決勝進出者を発表しまーす☆」



44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:01:13.43 ID:b4YXKgDY0


ミセ*゚ー゚)リ「1位通過…杉浦ロマネスクさん。プラス153.1ポイントです!」

( ФωФ)「うむ」

 そう言うと、ラウンジ大のブレーカーを着たロマネスクと呼ばれた男が立ち上がった。


  オオー

  パチパチパチパチ


ミセ*゚ー゚)リ「続きまして2位通過…ジョルジュ長岡さん。プラス148.5ポイント!」
 
( ゚∀゚)。oO(チッ、1位通過を取り損ねたか…)

   ・
   ・
   ・

ミセ*゚ー゚)リ「6位…流石弟者さん。プラス94.4ポイント!」 

ミセ*゚ー゚)リ「8位…流石兄者さん。プラス88.4ポイント!ご兄弟揃っての決勝進出ですね!」

( ´_ゝ`)b 「流石だよな、俺ら」 d(´<_` )

   ・
   ・
   ・



47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:05:33.92 ID:b4YXKgDY0


ミセ*゚ー゚)リ「10位、内藤ホライゾンさん。プラス79.9ポイント!」

( ^ω^)「うっし!」

   ・
   ・
   ・

ミセ*゚ー゚)リ「12位…素直クールさん。プラス75.5ポイントです!」

川 ゚ -゚)「ふむ…」

 ここまでは予想通り。問題は、ドクオとツンだ。
 2人は、その眼を見開いてミセリの発表を待っている。

 しかし彼らの名前は15位まで出て来なかった。
 この時点で、少なくともどちらか1人の敗退が確定したことになる。

(;'A`)「…」ゴクリ

ξ;゚听)ξ「…」ドキドキ

 彼らにとって永遠とも思える長い時間が経過し、
 ようやくその時がやってきた。

ミセ*゚ー゚)リ「それでは決勝進出最後の方…16位は!」



49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:09:52.32 ID:b4YXKgDY0


ミセ*゚ー゚)リ「ツン・デレさん、プラス52.4ポイント!おめでとうございまぁす☆」

ξ゚听)ξ「!」

ミセ*゚ー゚)リ「ちなみに次点、17位の方は…鬱田ドクオさん。プラス52.0ポイントでしたぁ☆」

( A )「…」

 400点差。リーチ棒にも満たない差が、2人の明暗を分けた。 

ξ゚听)ξ「ドクオ…」

 少し申し訳無さげにツンがドクオへ歩み寄る。
 ドクオは茫然自失といった表情だったが、ふと我に返り、彼女へこう言った。
 
('∀`)「ツン、やったな!」

 そう言いながら、手をグっと握りしめ、震わせている。
 きっと精一杯の強がりなのだろう。
 ツンはそれを察し、慰めを言わなかった。



50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:12:12.94 ID:b4YXKgDY0


ξ゚听)ξ「あたし…アンタの分も頑張ってくるね」

 ブーン達も遅れて話し掛ける。

( ^ω^)「ドクオ…よくやったお」

( ゚∀゚)「ドンマイ。悔しいだろうが落ち込むなよなっ」

川 ゚ -゚)「惜しかったな…まぁ、次があるさ」

 彼らに対し、ああ…とだけ返事をするドクオ。
 しかし、これではいけないと思ったのか、こう返した。

('A`)「お前ら、精一杯応援してやるから、勝って来いよ!」

 近場でこのやりとりを見ており空気を読んだミセリは、
 ドクオがそう言い終えたタイミングで喋り始めた。

ミセ*゚ー゚)リ「では、決勝戦4卓の組み合わせを発表しまっす☆」

( ^ω^)「おっ」



53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:16:45.57 ID:b4YXKgDY0


 ブーンは正直、忘れていた。
 ドクオを励ますので精いっぱいだったが、
 この決勝戦の組み合わせも非常に大事なことである。

ミセ*゚ー゚)リ「予選決勝A卓。…さん、杉浦ロマネスクさん、ジョルジュ長岡さん、内藤ホライゾンさん」

(;^ω^)「!」(゚∀゚;)

 その瞬間、2人は顔を合わせた。

 まさか地区予選の段階で戦うことになるとは。
 お互いにそういう思いなのだろう。

 身内の潰し合いになるのは避けたい所であったが、
 そういう組み合わせならば仕方がない。
 あとは全力を出し合うだけだ。

( ^ω^)「…お手柔らかに頼むお」

( ゚∀゚)「ああ…こちらこそ」

 そう言い終えると、黙々と同時にA卓へと歩いていった。



56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/11(金) 23:21:39.74 ID:b4YXKgDY0


ミセ*゚ー゚)リ「続きましてB卓、…さん、流石兄者さん、素直クールさん、ツン・デレさん」

ξ;゚听)ξ「!」(゚- ゚;川

 この2人もお互いに視線をぶつけ合った。 

 ブーンとジョルジュだけでなく、私達も潰し合い。
 勝ち進んでいけばいずれは当たるのであろうが…なんという非情な組み合わせだろうか。
 ツンはもちろん、普段から冷静なクーもこの時ばかりはそんな思いを顔に出していた。

 けれども、まさか拒否するわけにもいくまい。

川 ゚ -゚) 「…行こうか」

ξ゚听)ξ「…ええ」

 彼女達もそれだけ言葉を交わし、B卓に向かった。






続く。



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