( ^ω^)ブーンは麻雀の世界に生きるようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:32:19.07 ID:Cd7KXFuB0
- 【第七話:予選、その三】
- 時刻は、5時前。
- 予選3半荘が終わって敗退者の多数が帰宅したため、
- 現在会場内にいるのは16名の決勝進出者と観戦者、
- そして数名の係員で合わせて40名ちょっとだった。
- つい先程まで100人以上いた広い会場内が閑散としており、少し寂しく感じる。
- しかしながら、予選決勝を目前に控えてその空気は張り詰めていた。
- これから運命を分ける試合が始まるのだ。
- 否が応にも緊張感が高まる筈である。
- だが、そんな中。
- ムードなんてお構い無しと言わんばかりのテンションで、司会役のミセリが口を開いた。
- ミセ*゚ー゚)リ「じゃ、場決めと親決めまで済ませちゃってくださーい☆」
- 6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:34:15.26 ID:Cd7KXFuB0
- ──予選決勝・A卓──
- ( ФωФ)「では、参る」
- そう言いながら、ブーンの対面に座ったラウンジ大のロマネスクが
- 親決めのサイコロを振った。
- 出た目は、7。
- ブーンが起家となる。
- ( ^ω^)。oO(東家スタートかお…)
- そう思いつつ、中央に置かれていた起家マークを拾い、
- 自分の右側にカシャリと小さく音を立てて置いた。
- 予選通過となるのは各卓のトップ者のみ。それ以外の着順は意味をなさない。
- そのため、大きな加点の望める親は後半で迎えておきたい所であった。
- 中盤で得点を叩いても、追う者から目標にされるだけだからだ。
- ( ^ω^)。oO(ま、仕方ないかお。やれる事をやるだけだお)
- ジョルジュを見習って、深く考えないようにするブーン。
- 焦ったら、負けだ。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:40:02.31 ID:Cd7KXFuB0
- 一方ジョルジュは、ブーンの上家。
- ( ゚∀゚)。oO(ここでブーンと当たるか…)
- 出来ることなら予選の段階で当たることは避けたかった。
- なるべく多くの人数で予選を通過したかったからだ。
- それはジャン研メンバー全員、同じように考えていただろう。
- ( ゚∀゚)。oO(でも…ここで戦うことになるのも、ちょっとした運命かもな…)
- しかし内心では、ブーンとの対決を喜んでいる自分がいる。
- ブーンは、強い。
- ジャン研でも自分のライバルだと認めているからこそ、ヤツを乗り越えて本戦に勝ち進みたい。
- そんな考えも、無いわけではなかった。
- 起家で始まるブーンに対し、自分は北家スタート。
- 決勝は時間打ち切りが無いので、標準が定めやすくなる分、有利だ。
- そう考えながら、ジョルジュはチラと右にいるブーンを見る。
- ( -ω-)「…」
- 目を瞑りながら、右手を開いては閉じるという動作を繰り返していた。
- 良い具合に集中しているようだ。
- ( ゚∀゚)。oO(…ブーンにゃ悪いが、勝ちに行くぜっ!)
- ジョルジュはパンパンと顔を叩いて気合を入れ直し、開始の合図を待った。
- 11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:44:48.59 ID:Cd7KXFuB0
- ──予選決勝・B卓──
- ξ゚听)ξ。oO(ここまで来たなら、勝ちたいわね…)
- ツンは、自分の実力が足りないことを自覚していた。
- 今回の相手は、ジャン研でも負け越しているクーに、ラウンジ大麻雀部の部長である兄者。
- 明らかに分が悪い。
- しかし、麻雀というゲームは1回勝負であれば何が起こるかわからないもの。
- もしこれが半荘10回戦ならば、実力で劣るツンが勝てる見込みはほぼ無いのだが…。
- ξ゚听)ξ。oO(やるしかない、か)
- 場決めの掴み取りで東を引いていたツンは、親決めのサイコロを振った。
- 出た目は6。
- 彼女の右側に座っていた、兄者が起家となる。
- ( ´_ゝ`)「…」
- 賽の目をほぼノータイムで確認し、兄者は無駄のない動きで起家マークをセットした。
- ξ;゚听)ξ。oO(やっぱり場慣れしているようね…)
- ツンは、相手の発する無言の圧に早くも飲まれかけていた。
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:49:17.37 ID:Cd7KXFuB0
- 対して、ツンの対面にいるクーはというと。
- 川 ゚ -゚)。oO(誰が相手だろうと関係無い)
- 普段通りの冷静さを保てていた。
- ラウンジ大の部長であろうとチームメイトのツンであろうと、
- そんなことは卓に着いたらどうでもいい。
- 与えられた配牌とツモで、自分の麻雀を打ち切るだけだ。
- 今は目の前の牌にだけ集中すべし。
- そう考えながら卓の中央を見つめ、開始の号令をじっと待つクー。
- それから数秒経つと、ミセリがマイクを構えた。
- ミセ*>ー<)リ「それでは麻雀頂上戦東京ブロック予選決勝、開始してくださいっ!」
- その声と同時、16名を4名に絞る、予選最後の対局が始まった。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 22:54:53.97 ID:Cd7KXFuB0
- ('、`*川「さぁて、どの卓を見ましょうか斉藤くん」
- 会場入口から4つの決勝卓を眺めつつそう口を開いたのは、ペニサス伊藤。
- この大会を主催する全国誌、“現代麻雀”の女性デスクである。
- 年齢は20代半ばから後半といった所だろうか。
- 黒のスーツを身に纏い、大人のフェロモンを醸し出している。
- (・∀ ・)「あの卓なんか良いんじゃないっすかー、女の子2人もいるしー」
- カメラ片手にB卓を指差し返事をしたのは、新人編集の斉藤またんき。
- アニメキャラが書かれたTシャツをズボンにイン、その上にリュックを背負って、
- ペニサスとは対照的な“いかにもアキバ系です”と言った格好だ。
- そんな2人の共通点は、右腕に「取材班」と書かれた腕章を付けていること。
- 彼らは特集のページのため来場し、決勝開始と同時に取材を始めたのである。
- ('、`*川「おおっ、金髪巻き髪に黒髪ロング!見事なコントラストを描いている卓ね…」
- (・∀ ・)「使えそうな絵、撮ってきますねー。僕三次には興味無いんすけどねー」
- カメラを構えながらどたどた走っていく斉藤。
- 対局中は静かにしろよと思いつつもペニサスは黙って頷き、
- ゆっくりとB卓へ歩いていく。
- だが、数歩進んだ所である事に気付き、立ち止まった。
- ('、`*川。oO(あら…VIP大の子、何人か勝ち残ったのね。
- それにラウンジ大の子達もいるわ。これは面白そうね…)
- 14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:03:12.21 ID:Cd7KXFuB0
- 実は、ペニサスもブーンが立ち上げたブログの読者であった。
- 現代麻雀の編集者にとって、業界内で目立っているブログをチェックするのも
- 仕事の一つだと考えているのだろう。
- そのため、当然ブーン達が頂上戦に出場することも知っており、
- 何か記事の足しになるかもと隙無く目を通していた。
- で、そのブログには写真が多く使われていたため、
- ペニサスはジャン研メンバーの容姿をある程度把握していたのである。
- 『頂上戦予選in東京ブロック、VIP大学VSラウンジ大学、因縁の対決!』
- なんてミニコーナーを作るのもアリかしら。
- そうすれば女の子の写真も違和感無く使えるし…。
- などと特集記事の編成を考えながら、ペニサスは再び決勝卓へ向けて歩きだす。
-
- ('、`*川。oO(そうねぇ…まずはあの黒髪美少女を見るとするか)
- そして、素早くポケットからメモとペンを取り出し、クーの後ろ見を始めた。
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:09:47.30 ID:Cd7KXFuB0
- 見られている事など一切気付かないクーは。
- 川;゚ -゚)。oO(苦しいな…)
- 思うように手牌が進まずにヤキモキしていた。
- クーは、流れやツキといった非科学的なものを意識しない、
- いわゆる"デジタル派"と呼ばれる効率に重きを置いた打ち手だ。
- 与えられた手牌を元に、基本的には他家が仕掛けようが愚形が残ろうが
- 気にせずアガリへ向かって直進する。
- そのため、テンパイまでのスピードには自信があった。
- だが、この数局は好配牌に恵まれず、仕掛けて出るも一度鳴き始めると甘い牌が一切降りて来ない。
- やむなくメンゼンで手を進めても自分のツモではイーシャンテン止まりで、
- チーテンすら入れさせてもらえない。
-
- だがそれもそのはず、上家の兄者がクーをマークしていたからだ。
- 視線やモーションを観察し、鳴きたいという気配を感じると同時、受けに転じる。
- 相手手牌の推理力と気配察知能力の高い兄者にとって、それは容易いことだった。
-
- ( ´_ゝ`)。oO(真っすぐ来てくれる分、手牌が読みやすいのさ)
- 兄者は心中でそう呟き、淡々と打ち続ける。
- 川 ゚ -゚)「…ノーテン」
- ( ´_ゝ`)「テンパイ」
- クーの点棒は、ノーテン罰符でじわりじわりと削られていく。
- 逆に兄者は、アガらずとも東3局にして3万点を超えてしまった。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:13:06.47 ID:Cd7KXFuB0
- ('、`*川。oO(兄者君が場を支配しているわね…)
- 後ろから見ていたペニサスがそう思うのも無理はない。
- 実は、クーだけでなく対局者全員に対して必要牌を鳴かせずにテンパイを入れているからだ。
- 相手のポン材すらケアをしながら手を進める。
- これは非常に地味な事柄だが、こういった部分も麻雀に必要なのは間違いない。
- ('、`*川。oO(やはり実力では兄者君が一枚上手か…)
- そうメモを取りつつ、局と局の合間にツンと兄者の間へ移動するペニサス。
- そして、立ち止まった瞬間、「けれど」と付け足した。
- ('ー`*川。oO(実力通りにならないから麻雀は面白いのよね)
- 親のツンが手にした配牌を見ながら、彼女はニヤリと笑った。
- ξ゚听)ξ配牌:3455m133346p1359s ドラ3p
- 配牌ドラ暗刻のリャンシャンテン。
- 大きなチャンス手だ。
- ξ;゚听)ξ。oO(この手は逃せないわね…)ゴクリ
- 19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:17:43.49 ID:Cd7KXFuB0
- 第1打、9s。
- ツンは、さもつまらない配牌を手にしたかのように切り出した。
- 数巡後、4sをツモり、打1p。
- 急所が1つ埋まった。
- ξ゚听)ξ。oO(よし!この手は絶対にアガリ切るわ…!)
- しかし、ここで焦り過ぎが裏目に出たか、上家から切られた2mで止まってしまう。
- チーテンを取るか考えていなかったのだ。
- ξ:゚听)ξ。oO(あ、あ、どうしよう…)
- 2mをチーしたらテンパイするが、ドラそばで愚形のカン5p待ち。
- 普段ならば鳴かない。でも手を止めてしまった。
- ツンの悩みはそんな所だろう。
- 手牌と切られた2mを見つめながら考えるツン。
- それから10秒程経過し、ええいままよ言わんばかりにと声を上げた。
- ξ><)ξ「チー!」
- ξ゚听)ξ:55m33346p345s チー234m ドラ3p
- その一部始終を見ていたペニサスは、苦虫を噛み潰したような表情をする。
- ('、`*川。oO(あちゃー、やっちゃったわね…)
- 20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:23:52.43 ID:Cd7KXFuB0
- ペニサスがそう思うのも無理はない。
- 隣で見ている斉藤も、カメラを構えながらも口をあんぐりと開けて少し呆れているように見える。
- 仕掛けるにしても普通ならば愚形のピンズから動くべき手だからだ。
- 早い巡目で親がこんな両面チーをしてしまえば嫌でも警戒されてしまうし、
- この形から7pを引いて両面テンパイになれば良いが、
- 2p、4p、6pを引いてもしシャボ待ちに変化したとしても
- いずれも真ん中に近い牌なので非常にアガリ難い。
- また8pを引いてカン7p待ちに手変わりした所で、手出し4pがキズになり、ロンアガリは見込めないだろう。
- レベルの低い相手ならばこの仕掛けをしても簡単にアガれるのかもしれないが、
- 残念ながらこの場の敵はそうではない。
- ( ´_ゝ`)。oO(親がドラ2以上…させるか!)
- ( ´_ゝ`)「ポン、チー、ロン。1000は1900」
- ツンがツモ切りを繰り返しているうちに、うまく兄者に捌かれてしまう。
- ξ;゚听)ξ。oO(くっ…)
- 結果として、この動きで大きなチャンスを逃してしまった。
- まだまだ実戦経験の少ないツンにとって、これは仕方の無い事なのかもしれないが…。
- ミスをした人間に何度も好配牌がやってくる程、麻雀は甘い物でもない。
- この半荘、彼女に2度目のチャンスが訪れる事は無かった。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:27:45.12 ID:Cd7KXFuB0
- ──予選決勝・A卓──
- その頃、A卓は。
- B卓とは一転、打撃戦の様相を呈していた。
- 開局早々にジョルジュが満貫をツモると、負けじとブーンも跳満を出アガリ。
- 2人の争いになるかと思いきや、ロマネスクも満貫をツモり返す。
- (;'A`)。oO(とんだ殴り合いだな…)
- (;><)。oO(激しい麻雀なんです…)
- 観戦をしていたドクオ達も、手に汗握るといった具合であった。
- けれども、打っている当人達は意外と冷静なもの。
- ( ^ω^)。oO(状態は悪くないお)
- ( ゚∀゚)。oO(運気は三つ巴…)
- ( ФωФ)。oO(こいつらも中々やるのである)
- このままオーラスまでもつれるかと、誰しもが思った。
- しかし、東4局に最初の脱落者が現れる。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:30:57.31 ID:Cd7KXFuB0
- 7巡目。
- 一番最初にテンパイを入れたのは、親のジョルジュだった。
- ( ゚∀゚):24m23466679p678s ドラ3m
- この形に7pを引き込んでのテンパイ。
- ドラ待ちになってしまったが、リーチしてツモれば満貫になる手である。
- ( ゚∀゚)。oO(ドラの1枚くらいツモってやんよッ!!)
- 思うや否や、リーチ!と勢い良く捨て牌を横にし、意気揚々と千点棒を置く。
- だが、その刹那。
- とてつもない悪寒がジョルジュに襲いかかった。
- 下家のブーンが突如として勝負オーラを放ち始めたのだ。
- (;゚∀゚)。oO(コイツ…気配を殺していやがった!)
- そう思いながらも、気合込めて一発目のツモを引くジョルジュ。
- ぐりぐりと盲牌すると、マンズ独特の感触がした。
- が、持ってきたのはアガリ牌の隣、2m。
- ドラではなく、その表示牌だった。
- 27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:36:00.33 ID:Cd7KXFuB0
- ( ^ω^)「チー」
- 切られると同時にブーンは発声し、カンチャンで仕掛けた。
- 次巡のツモは7mで、これにも喰いつく。
- こうなってくると、能天気なジョルジュも後悔の念で一杯だった。
- 下家のブーンはドラ色の染め手であるのに対し、自分はアガリ牌以外はツモ切りし続けねばならない。
- あまりにも無防備だ。
- もう少し冷静に場を見ていれば、捨て牌からマンズの一色手に気付けた筈。
- 気付いていれば、同じ色のドラ待ちカンチャンならば流石にダマテンに構えていただろう。
- 恐らく普段のジョルジュならそうしていた。
- だが彼も公式戦初出場。気付かない所で、綻びが出てしまったのである。
- ( ∀ )。oO(ああ、俺もここまでか…)
- 勘の鋭いジョルジュは自らの敗退を察する。
- 数巡後、マンズを引いてきた。
- それはやはり、目当てのものではなくて。書かれていた数字は、九。
- 力無く置かれたそれに、今度はロンの声を上げ、手牌を倒すブーン。
- ( ^ω^)「…12000」
- ( ^ω^):5556799m チー768m チー213m ドラ3m
- チンイツドラ1、跳満の放銃。
- それは、ジョルジュの夏が終わった瞬間だった。
- 29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:40:38.06 ID:Cd7KXFuB0
- ──予選決勝・B卓──
- こちらは変わらず、小場(※)だった。
-
- 川;゚ -゚)。oO(追いつけない…)
- 南場に入っても大物手は出現せず、兄者が淡々と場を軽く流して進む。
- クーはノーホーラのままで、気付けばその差が12000点にまで広がってしまった。
- もう南3局。2回目の親も流された。
- そろそろアガっておかないと、本当に苦しくなってしまう。
- だがそれでもクーは無心で配牌を揃え、最初のツモを引いた。
- 川 ゚ -゚)配牌:129m119p3578s中西北 ツモ南 ドラ東
- 正直、苦しい。ここから進むべきは、チャンタか、やぶれかぶれで国士か。
- 息を整え、最善手を考える。
- 川 ゚ -゚)。oO(落ち着け。私は…今、出来る最善手を続ければ良いだけだ)
- そう考え、ポーカーフェイスで手牌から西を掴み、初手を打つ。
- そして──。
- はらり。
- クーは一度だけ、そのストレートヘアーをかき上げた。
- ※小場…小さなアガリしか出ない試合展開のこと
- 31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:46:08.92 ID:Cd7KXFuB0
- 川 ゚ -゚)「チー」
- 10巡目、クーは兄者の切った3mをペンチャンで仕掛けた。
- ( ´_ゝ`)。oO(む、捨て牌から察するに…チャンタか?あるいは三色?役牌暗刻もあるな…)
- そう考え、場を改めて見直す。
- ドラの東はまだ見えていない。役牌も全てが出尽くしたわけでもない。
- となると最悪、チャンタにドラや役牌を絡めた満貫まである仕掛けだ。
- ジロリと睨み、クーの気配と捨て牌を伺う兄者。
- どうやらまだテンパイはしていないようだ。
- ( ´_ゝ`)。oO(懲りない女だ。また絞り殺してやるよ…)※
- ( ´_ゝ`):567m3557p34568s中 ツモ發
- ここから打5pとし、ピンズをほぐす。
- 抱えた字牌はどちらも場に出ていないため、受け主体への切り替えだ。
- 点棒があるのでそこまで無理はしなくても良いという、余裕の後退である。
- ※絞る…鳴かさないように打ち回すこと。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:51:21.29 ID:Cd7KXFuB0
- その3巡後。クーは1pをポンし、中を手の内から切り出した。
- ( ´_ゝ`)。oO(やはりチャンタか…)
- 兄者は少しだけ困惑した。
- 牌を絞る相手がチャンタとなると、真ん中寄りの数牌以外全て喰われる可能性があるからだ。
- 役の仕様上、1〜3と7〜9、どれも必要牌になり得るのである。
- そうこうしているうちに、ドラの東を掴む兄者。
- ( ´_ゝ`)。oO(これはもう無理か…。うむ、ここはほぼ諦めよう)
- 彼の手持ちの字牌は發、東、中の3枚であるが、
- そのうちの2つが場に出てないとなると、流石に止めた方が良さそうだ。
- そう思い、とりあえず今切られた中を切り出す。
- オリると思いながらも、こうしておけば展開次第で
- 危険牌を切らずに形式テンパイを入れられる可能性も残されるからだ。
- だが、次に持ってきたのは北。
- 序盤に1枚だけ切られているが、これはクーの風牌。
- ヘタに切って動かれ、中堅手の可能性を誘発するよりも、切らない方が無難だ。
-
- ( ´_ゝ`)。oO(はいはい、止めればいいんでしょ)
- 兄者は、これで完全撤退を決めた。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/19(土) 23:56:08.65 ID:Cd7KXFuB0
- そして16巡目。
- ベタオリを決めていた兄者は、上家に合わせる形で4sを切り出した。
- 今通ったばかりだし、チャンタをしている筈のクーに動かれる事も無いからである。
- が、予想外の出来事が起こった。
- 川 ゚ -゚)「チー」
- 兄者の読みとは裏腹に、下家のクーが手牌から3sと5sを晒したのだ。
- 自分の犯したエラーとは言えないエラーに凍りつく兄者。
- (;´_ゝ`)。oO(何ィッ!?)
- それを横目に、何食わぬ顔でクーは1sを捨てる。
- その狙いは──
- 川 ゚ -゚)「テンパイ」
- (;´_ゝ`)「…ノーテン」
- 川 ゚ -゚):678s東 チー435 ポン111p チー312m ドラ東
- ブラフにより兄者をオリさせる事だった。
- この局は結局、狙い通りクーの1人テンパイに終わる。
- テンパイ料の受け渡しで差し引き4000点ほど縮まり、その点差は8000弱。
- すなわち、オーラスの満貫条件となったのだ。
- 38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:01:11.20 ID:x9DQRP6j0
- (# ´_ゝ`)。oO(まだだ!点差を見ても俺の方が有利なのは間違いない!!)
- 南4局。
- アガリトップの兄者が、序盤から仕掛けて出た。
- 前局クーにしてやられたせいか、今までよりも声が荒く聞こえる。
- (# ´_ゝ`)「チー!ポン!!」
- 7巡目にして、タンヤオのみを張る。
- だがそれらは、全てを見ていたペニサスから見れば無駄な足掻きにしか見えなかった。
- ('、`*川。oO(あの配牌で流れを変えるとはね…)
- 全てを見ていた彼女は確信している。
- もちろん、クーの逆転を、だ。
- ('ー`*川。oO(ミニコーナー、決まったわね)
- 11巡目。
- 「ツモ」の発声と同時、クーの小さな右手が弧を描いた。
- 川 ゚ -゚)「タンピンドラドラ…2000・4000は2100・4100」
- 開かれた手牌を確認しうなだれる対局者達。
- 勝負が、終わった。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:07:33.64 ID:x9DQRP6j0
- 川 ゚ -゚)。oO(ブーンに感謝だな…)
- 集計表に得点を記入し「ありがとうございました」と局後挨拶をしながら、クーは思った。
- 南3局のブラフ成功は、ブーンの情報提供があったからに他ならないからだ。
- クーは以前、守備派で甘い牌を鳴かせないという兄者の雀風を聞いていた。
- それにより思い切った作戦に出る事を決断するに至ったのである。
- 川 - )。oO(しかし…本当に紙一重だった…)
- ふぅと息を吐き、目を閉じて半荘を振り返ろうとする。
- すると、後ろから聞き覚えのある甲高い声が聞こえてきた。
- (*`ω` *)「おめでとうございますっぽ!ずっと見てましたっぽ!」
- ピョンピョンと飛び跳ねながら祝福してくるちんぽっぽ。
- それを受け、再び目を開けて表情を和らげながらクーは返事をする。
- 川 ゚ー゚)「そうか、ありがとう」
- クーがこの様に顔をやわらげる事は非常に珍しいことだった。
- おめでとうと言われた事で、自分が勝ち残った事実を改めて認識したのだろう。
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:11:16.92 ID:x9DQRP6j0
- だがそれは、自分と反対側、
- すなわち敗者側にツンがいるという事実も合わせて、だった。
- (*`ω` *)「女の子の先輩が勝ってくれて嬉しいっぽ!ツンさんは残念だったけど…」
- 川 ゚ -゚)「ああ…」
- そう言いながらツンの方に視線を向ける2人。
- ξ )ξ「…」
- その瞬間、彼女は神妙な面持ちをしていた。
- だが間もなく立ち上がり、クーに手を開いて伸ばしてくる。
- ξ゚ー゚)ξ「悔しいけど今回は完敗ね…。本戦、頑張って来なさいよ!」
- 言われて、再びクーはほほえんだ。
- 川 ゚ー゚)「ああ、もちろんだ」
- そして、固く握手する2人。
- この握手は、きっとお互いに忘れられない思い出になるだろう。
- 43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:13:06.33 ID:x9DQRP6j0
- ('、`*川。oO(じゃ、次はブーン君の方にでも行こうかしら)
- B卓を見終えたペニサスは、取材の続きをすべく
- ブーン達が戦っているA卓の方へてくてくと歩き出した。
- しかし、目当ての場所から数メートルと行った箇所で、立ち止まる。
- 熱気。
- それも、近くにストーブでも置いているのかと錯覚する程の、かなりのものだ。
- ('、`;川。oO(な、なんなの…!?)
- 熱源の方へ視線を向けると、陽炎が起きているようにも見えたその先に、ロマネスクがいた。
- ('、`;川。oO(そう言えばラウンジ大の2年に恐ろしい子がいるって聞いた事があるわ。確か…)
- 炎のロマネスク。
- それが、熱を放つ男の通り名だった。
- 46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:16:28.16 ID:x9DQRP6j0
- (;^ω^)。oO(こ、こいつは…)
- ブーンの頬に数滴の汗が流れた。
- それは決して空調が乱れたからではなく。
- 対面にいる男から伝わってくる、異様な熱気とプレッシャーによるものだ。
- ロマネスクは序盤に満貫をツモって以来、何の動きも見せなかった。
- ブーンがジョルジュから跳満をアガってからもそれは変わらず。
- 好調を維持し続けるブーンを、ただ観察していたのである。
- だがそれは、南3局。サイコロボタンが押される直前の事だった。
- (#ФωФ)「はぁぁぁぁ…」
- いきなり額に青筋を立てて、親番のロマネスクは息を深く吐きながら賽を回す。
- それから雰囲気が一変した。
- 突如として空気が熱く、重たくなったのだ。
- (;'A`)。oO(やばいぞ、ブーン!!)
- ブーンの後ろで応援していたドクオは、ロマネスクの勝負手をいち早く察する。
- 親だというのに、序盤から油っこい牌のバラ切り。
- かといって、染めに走っているわけではない。
- そう、ヤツはおそらく対子手だ。それも、とてつもなく危険な香りがする。
- もちろん声に出すわけにもいかないので、念じる以外にドクオがする事は無い。
- 心中でひたすら応援するのみなのだが…。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:19:36.01 ID:x9DQRP6j0
- (;'A`)。oO(ほら、さっさとかわしに行け!)
- 2万点に近いリードがある。こうなれば逃げるが勝ちだ。
- そんな願いが通じたか、ブーンが配牌から1枚だけ切りきれずに持っていた役牌が重なる。
- さらにはその直後にそれをポンし、アガリへの特急券を手にした。
- (;^ω^)。oO(厄介な事になる前に逃げ切るお…)
- もう1つ晒し、どうにかテンパイまでこじつけるブーン。
- しかし、間に合わない。
- ( ФωФ)「リィィチ…!」
- それから、瞬く間にロマネスクの手牌が倒された。
- 一発目に引いた東をアンカンすると。
- 目当ての牌を、リンシャンから掘り起こしたのである。
- ( ФωФ)「ツモォッ!!」
- アガリ牌の9pを、力強く手元に叩きつけるロマネスク。
- ( ФωФ):111m23499p11s ツモ9p アンカン東東東東 ドラ7s、4m
- リーヅモリンシャン東三暗刻。それだけで6翻ある。
- が、それだけでは済まなかった。
- 彼が2つの裏ドラ表示牌をめくると、北が仲良く並んでいたのだ。
- 48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:22:21.21 ID:x9DQRP6j0
- ザワッ
- ウオオォォ…
- ギャラリーからも感嘆の声が漏れる。
- 他ならぬ同卓者も、目の前の光景が信じられないといった具合だ。
- (;^ω^)。oO(そんなバカな…)
- (;゚∀゚)。oO(おいおいウソだろ…!?)
- ( ФωФ)「裏8で…12000オール…ッ!」
- 一撃必殺。
- まさにそんな言葉を彷彿とさせる親三倍満だった。
- 51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:26:20.84 ID:x9DQRP6j0
- 対面へ点棒を渡し終えると、ブーンは頭を上げて天井の方を見上げた。
- 見上げた、と言っても視界には何も入って来ない。
- あるのは、白だった。
- それも、絶望に満ちた、残酷な白。
- ( ω )。oO(何も…見えないお……)
-
- 実際には、卓の真上には蛍光灯があるので、
- ブーンの眼に直接光が差し込んでいるだけなのだが…。
- それに気付けないほど、冷静さを失ったのだろう。
- おそらく何があっても同じ様な光景に見えたに違いない。
- 2万点も差を付けていた筈が、たった1局で逆に3万点近くリードされてしまった。
- こんな事は滅多にない。
- 可能性にしてみたら、1%にも満たないのではないか。
- だが現実として、今この場で起こってしまった。
- 『どうしてこうなった。
- 僕は麻雀の神様から嫌われてしまったのだろうか。
- こんなにも、麻雀を愛しているのに…』
- ブーンの脳内では、そんな思いが交錯していた。
- 54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:30:18.48 ID:x9DQRP6j0
- ブーンが放心状態に陥ってから、10秒程経過した頃だろうか。
- 見るに見かねたジョルジュが、思いもよらぬ助け舟を出した。
- (;゚∀゚)「す、すいません…トイレに行かせてください」
- ミセ*゚ー゚)リ「わかりました。局と局の合間なので認めます。早く済ませてきてくださいね」
- (;゚∀゚)「あ…あざっす!」
- そう言いながら、わざとらしく腹に手を当てて席を立つジョルジュ。
- そのまま一目散にトイレへ駈け込んでいった。
- ( ゚∀゚)。oO(あったく…世話の焼ける会長だぜっ)
- おわかりの通り、これは彼によるブーンの精神的な回復を待つための時間稼ぎだ。
- どうせやるなら満足のいく状態で対局に臨んだ方が良いに決まっている。
- しかしブーンが正気を取り戻すまで少し時間が掛かりそうだ。
- ならば俺が時間を稼ぐから、あとはアイツの後ろにいる仲間達に託そう。
- 点棒的にトップの可能性がほぼ無くなってしまったジョルジュは、
- 少しでも仲間の援護射撃をしようと、そんな作戦を閃いたのである。
- 57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:33:59.82 ID:x9DQRP6j0
-
- そう、ブーンの後ろには先に対局を終えた女子も含めて
- ジャン研のメンバーが全員揃っていたのだ。
- 皆彼にエールを送っているのである。
- しかし…当の本人は、一切気付いていない。
- 相変わらずぼんやりと上を向いていた。
- ξ゚听)ξ。oO(ブーン…)
- すると、真後ろにいたツンはふと何かを思いつき、掛け足で動き出した。
- それから1分程で戻って来る。
- ('A`)。oO(…なるほど!)
-
- ツンは缶コーヒーとおしぼりを抱えていた。
- 対局中、打ち手はギャラリーと会話する事を規定により禁じられている。
- それはトイレ休憩中とはいえども、変わらない。
- だが今大会では、物を差し入れする行為は禁止項目に入っていなかったのだ。
- ξ ゚听)ξ。oO(あたし…アンタのそんな顔は見たくない…!)
-
- 『アンタはアンタらしく、笑っていなさいよ!!』
- ツンは心の中でそう叫びながら、ブーンのサイドテーブルにそれらを置いた。
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:36:38.82 ID:x9DQRP6j0
- カタン。
- ( ゚ω゚)ハッ!
- ブーンは、サイドテーブルから聞き慣れた音が響いた事に気付いた。
- 目をパチパチさせながら頭を下げ、そのまま視線を左に向ける。
- これは…自分がいつも飲んでいるメーカーの缶コーヒーだ。
- 冷たいおしぼりも添えてある。
-
- それらに手を伸ばしつつ、無言で後ろを向いてみると。
- ξ゚ー゚)ξ
-
- そこには、お節介な金髪少女が立っていて。
- 両手を腰にあてながら、やれやれねと言いたげに微笑んでいた。
- ( ^ω^)。oO(…女神だお……)
- この時ブーンは、本気でそう思った。
- 62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:39:55.68 ID:x9DQRP6j0
- ブーンが正気を取り戻してほどなく、ジョルジュが戻って来る。
- ( ゚∀゚)「あー、どうもすみませんね、ハイ」
- と、大して悪びれもせず、席に着いた。
- それを確認し、マイクを口にあてるミセリ。
- ミセ*゚ー゚)リ「そ…それでは再開してください!」
- 彼女の合図と共に、南3局1本場から試合が再開された。
- ( ^ω^)。oO(ジョルジュにも感謝するお…)
- ブーンは視線をジョルジュに向けた。一瞬だけ目が合う。
- ( ゚∀゚)「…」
- もちろん無言。黙々と配牌を取っている。
- だけど。
- 『どうやら大丈夫みてーだな。
- あったく…仮病まで使わせやがって。
- そんじゃ残り2局、思う存分暴れてみやがれ!』
- そんな風に言っている…気がした。
- ・
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- ・
- 63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/20(日) 00:45:09.27 ID:x9DQRP6j0
- ・
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- ・
- 結論から書くと、ブーンは敗退した。
- 再開してすぐに満貫をツモり、ロマネスクとの1万2千点ほど差を詰めるのだが、
- オーラス倍満ツモ条件など易々と突破出来るわけもなく…。
- もちろん、悔しかった。
- でも、その代わり…ってわけでもないけれど。
- 今回の大会は何か大きな物を手に入れる事が出来た気がする。
- 自分にとっても。ジャン研にとっても。
- ( ^ω^)「だから…楽しかったから、これでいいんだお」
- 対局終了後、ブーンは缶コーヒーを片手に、そう語った。
- 続く。
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