( ^ω^)ブーンは麻雀の世界に生きるようです
- 4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:20:41.84 ID:Zi7Bed4s0
- 【第十一話:頂上、その一】
- 8月の最終日曜。
- その日の朝は、あいにくの曇天模様だった。
- 空にはどんよりとした雲が隙間無く広がっており、
- いつ雨が降り出してもおかしくないように思える。
- 予報では終日曇りとの事だったが…。
- 川 ゚ -゚)。oO(スッキリしない天気だな…)
- クーは自宅を出てすぐさま視界に入った灰色の空を眺め、そう思った。
- 今日はいよいよ、麻雀頂上戦の本戦が行われる日。
- どちらかと言えば、こういう時はカラっとした晴天が望ましい。
- そう思いながら視線を足元へ移し、無表情で駅に向かって歩き出す。
- 足を動かしながらも、考え事は尽きない。
- 川 ゚ -゚)。oO(果たして、自分の麻雀がどこまで通用するのだろうか…)
- 表情こそ普段と変わり無いように見えるが、
- 彼女の中では、楽しみである半面、ここに来て緊張や不安も顔を覗かせていた。
- 川 ゚ -゚)「…」
- 足を運びながら、再び無言で視線を上にやるクー。
- 頭上に広がる重々しい空が、自身の心中と重なって見える。
- 5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:25:12.10 ID:Zi7Bed4s0
- この日の為、自分に出来る事は全てこなして来たつもりだ。
- サークル内では頂上戦ルールの対局を幾度も重ねたし、
- ブーンを連れてフリー雀荘へ足を運び、見知らぬ人間と麻雀を打つのにも慣れた。
-
- しかし、自信というものがいまいち湧き出てこない。
- これまで部活やスポーツなどをしてこなかった彼女にとって、
- 生まれて初めての大舞台である。
- それが、現代麻雀の特集や大会HPで紹介された事によって人目が集まり、
- 「VIP大学の代表」という立ち位置になってしまったのだ。
- となれば、負けて傷付くのは自分だけではない。
- 20歳になったばかりの女子に、その重責は少し厳しいものがあるのだろう。
- ジャン研や仲間達を大事に思うからこそ、そのプレッシャーは大きくなるのである。
- 川;゚ -゚)。oO(今さら悩んでも仕方無いのだがな…)
- じめじめとした暑さと相まって、額から嫌な汗が流れ落ちた。
- 改めて、その重圧を全身で感じるクー。
- 歩を進め、会場が近くなるにつれ、それが増していくようだ。
- メンタルは強い方だと自分で思っていたが、どうやら間違っていたらしい。
- そんな負の思考を巡らせていると、ほどなくして最寄り駅に到着した。
- 目的地のナンジツ駅は通学で使っているのと同じ路線上にあるので、普段と同じように電車へ乗る。
- 幸いにも車内はそんなに混雑しておらず、クーはすんなりと座席に腰掛ける事が出来た。
- 10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:29:25.46 ID:Zi7Bed4s0
- 小さく溜息をつきながら、景色を眺める。
- 車窓に流れるいつもの風景が、天気の影響以上に陰りがあるように思えた。
- それは恐らく、精神的な作用によるものだろう。
- この本戦からは、150人以上の地方予選を勝ち抜いた打ち手の他に、
- 競技プロも多数参加してくるらしい。
- そんな強豪揃いの中で、準決勝へ行けるのは僅か16名しかいないのだ。
- 目を閉じて、うつむくクー。
- 自分の勝ち上がる可能性は、ごく僅かである事を再認識する。
- 川 - )。oO(正直、厳しい…よな……)
- 例え可能性が少なくとも、こんな諦めに近い精神状態ではさらに望みは薄くなる。
- そんな事はわかりきっているのだが…。
- クーは再び、気分重たげに溜息をついた。
- その瞬間、電車が隣駅に到着し、扉が開く。
- そしてそこに、ドクオがやや駆け足気味に飛び乗ってきた。
- ('A`)「やっぱりクーだ。うっす」
- 川 ゚ -゚)「ん、おはよう。同じ電車になったか」
- 12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:34:05.41 ID:Zi7Bed4s0
- 今回の頂上戦は観戦可能なので、サークル全員でクーの応援に行く約束になっていた。
- クーとドクオは、普段同じ路線を使っている。
- そのためドクオは、乗り合わせる可能性もあるなと思い、クーの姿を探していたのだ。
- そして来た電車の中に彼女を見つけ、ホームの中程から急ぎ足でこちらに来たらしい。
-
- 軽い挨拶を交わすと、クーの隣に座りながら、ドクオは心配そうに口を開いた。
- ('A`)「んん、何だかいつもより冴えない顔してるな。大丈夫か?」
- 川 ゚ -゚)「ああ…緊張してか、昨晩あまり眠れなくてな…」
- ('A`)「へえ…」
- ドクオは意外だと言わんばかりの表情を見せる。
- クーからそういった後ろ向きな言葉を聞くのは初めてなので、予想外に思ったのだろう。
- 川 ゚ -゚)「らしくない、よな。緊張もあるが、正直な所、恐怖に近い感覚すらある」
- ('A`)「恐怖?怖いのか?」
- 川 ゚ -゚)「ああ、怖い。考えてもみろ、
- 頂上戦本戦なんて大舞台、これが最初で最後になるかもしれないんだぞ」
- 彼らが出場した東京予選は、100名以上が参加した中で4名のみが予選通過するという、
- 非常に厳しいシステムだった。
- 13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:39:17.29 ID:Zi7Bed4s0
- 単純計算すれば、その確率は25分の1以下。
- 頂上戦は年に一度しか開催されないので、計算上では次に予選を勝ち上がれるのはかなり先の話になる。
- クーが「これが最後かもしれない」と言うのも、納得出来る話だった。
- 川 ゚ -゚)「それに、折角来てくれた皆の期待を裏切ってしまうのも辛い。
- 今回は期せずして、ジャン研…いやVIP大を代表する形になってしまったしな…」
- ('A`)「…」
- ドクオは少しの間言葉を返せず、眉間に小さくシワを寄せた。
- 初めての体験に緊張と戸惑いを隠せないクーに対し、
- 「難しく考えず、気楽に行けばいいんだよ」と返すのは簡単な事。
- しかし、それが彼女の心に響かなければ、何の意味もなさない。
- どう言えば伝わるだろうかと、ドクオはゆっくり言葉を選びながら、返事をした。
-
- ('A`)「…俺は、さ。 今のクーみたい立場になった事が無いから簡単に言えるのかもしれないけど」
- 川 ゚ -゚)「…」
- ('A`)「だめでもともと、当たって砕けろの気持ちでいいんだって。
- そりゃあみんな、クーに期待してる。けど、精一杯やって負けたなら、それはそれで仕方無いさ」
- 川 ゚ -゚)「ううむ…」
- ('A`)「緊張するなって言うのは無理な話だろうけど。後ろに俺達が付いてるから。
- クーは普段通りの麻雀を打てばいいさ。万一負ける事になっても、皆暖かく迎えてくれるよ」
- 16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:44:50.54 ID:Zi7Bed4s0
- 川 ゚ -゚)「それはまぁ、そうだろうが…」
- ('A`)「俺だって、きっとブーンだって、
- クーが後悔の無い麻雀を打ち切ってさえくれれば、勝ち負けにはこだわらないさ」
- 川 ゚ -゚)「ふむ…」
- ('A`)「てかさ、何か負けるの前提で話しちゃったけど」
- 川 ゚ -゚)「…」
- ('∀`)「勝つかもしんないんだし。元気出して行こうぜ?」
- 川 ゚ -゚)「…笑顔、キモいぞ」
- そう言って、励ましてくれたドクオを無表情で茶化すクー。
- 一見、その心境には変化が無いように見える。
- しかしながら、ドクオの優しさは彼女の心に届いたようだ。
- (;'A`)「ひどい…」
- そう言いながらションボリして下を向くドクオを横目に、
- 川 ゚ー゚)「…」
- クーは微笑みながら、声を出さずに「ありがとう」と小さく口を動かした。
- 17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:50:01.98 ID:Zi7Bed4s0
- _
- ( ゚∀゚)「うっす!」
- ( ^ω^)「おいすー」
- 川 ゚ -゚)「…おはよう」
- 10時30分。
- 約束の時間ちょうどにナンジツ駅で仲間達と合流すると、彼らは揃って会場に向かい出した。
- 目当ての会場は、駅から5分程歩いた場所にある大型ホテル。
- 今回は大会本戦ということで、雀荘ではなく、
- ホテルのワンフロアを貸し切って対局場が特設されたのである。
- ほどなくして目的地の“ナンジツ第一ホテル”に到着し、エレベーターを探す一同。
- 対局会場は5階にあるらしい。
- (;><)「ホテルとか初めてで緊張するんです…」
- _
- (;゚∀゚)「俺も初めてだよ、こういうトコってセレブしか来ちゃいけないようなイメージあるよな…」
- ('A`)「おいおい、お前らが緊張してどうする」
- 若い学生には不釣り合いな感もある小奇麗なロビーを通り過ごし、
- 彼らは大型のエレベーターに全員で乗りこんだ。
- 5と書かれたボタンを押し、数十秒経ってその扉が開かれる。
- するとそこには、広々とした対局場があった。
- 18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 21:56:31.75 ID:Zi7Bed4s0
- 東京予選が行われた会場はかなり大型のものだったが、
- 今回の特設ステージはそれすらも凌ぐ広さだ。
- ( ^ω^)「おお…!!」
- 思わず感嘆の声を漏らすブーン。
- 小さな学校の校庭ほど面積があるだろうか。
- そこにブルーを基調とした重々しい柄のカーペットが敷かれ、
- 規則正しく50台もの麻雀卓が並べられている。
- そんな会場内は既に多くの老若男女で溢れかえっており、ガヤガヤと賑わっていた。
- スーツ姿だったり、Tシャツ一枚の者もいる。
- 中には夏らしく浴衣を着た女性などもおり、その格好は様々だった。
- そんな会場内を一同が入口付近で見渡していると、見知った顔が足早に近付いて来た。
- 大会の主催であり、VIP大学に取材に来た事もある、現代麻雀編集部のペニサスだ。
- 右腕に目をやると、会場係と大きく書かれた腕章を付けている。
- ('、`*川「あら、サークル全員で来てくれたの」
- 川 ゚ -゚)「おはようございます」
- ('、`*川「受付はあそこにあるから、早めに済ませておいてね」
- 言いながら、会場の奥にある受付に手をやるペニサス。
- その一挙手一投足は実にきびきびとしており、出来る女というイメージを沸かせる。
- そんな彼女に「ありがとうございます」と一礼しながら、彼らはそこに向かった。
- 21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:01:36.86 ID:Zi7Bed4s0
- _
- ( ゚∀゚)「あっ」
- 受付を済ませ隅の方で雑談していると、ジョルジュが素っ頓狂な声を上げた。
- ('A`)「どうした?」
- _
- (* ゚∀゚)「あそこにいるの、“つー・しぃ姉妹”だ!」
- (*'A`)「ん?…ほ、ホントだ…!」
- (*゚ー゚)(*゚∀゚)
- ジョルジュが指差す方に目をやると、“麻雀ガチンコクラブ”という
- アーケードゲームのポスターや等身大パネルでよく見かける、美人女流プロ二人がいた。
- ゲームセンターへ行った事のある人間ならば、誰しも一度は見かけた事があるだろう。
- つー・しぃ姉妹。姉妹で麻雀プロになり、その美貌からデビュー間もなく
- 麻雀番組や雑誌に引っ張りダコとなった、人気プロ雀士である。
- (*゚∀゚)「あいよっ!」
- (*゚ー゚)「はい、これからも応援してね!」
- (∵◎∀◎∵)「デュフフwwありがとうゴザイマスゥゥwwwブシュゥwwww」
- どうやら今は、見学者に頼まれサインをしているようだ。
- 彼女達だけでなく、会場内では有名プロとそのファンの交流がちらほらと見受けられる。
- 23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:07:51.12 ID:Zi7Bed4s0
- そんな光景を眺めながら、ジョルジュとドクオが話し始めた。
- _
- ( ゚∀゚)「俺は色紙持って来てないから握手でもしてもらおうかな…」
- (*'A`)「お、俺も…」
- ( ^ω^)「記念だし、行ってくるといいお」
- ブーンがそう言うと、まだ対局開始まで時間があるため、
- 二人は姉妹のいる方へそそくさと歩いて行った。
- が、ブーンは動かない。
- ξ゚听)ξ「あら、アンタは女子プロには興味無いの?」
- ( ^ω^)「うーん…そんなには、って感じだおね。それよりかは…あっ!」
- 話している途中で、ブーンも先程のジョルジュと同じような声を出す。
- その視線の先には、つー・しぃ姉妹の横で談笑するベテランらしきプロ雀士達がいた。
- (;゚ω゚)「あれは…雀将位を三度冠載した渋沢プロ…!牌帝位三連覇中のプギャープロもいるお…!」
- 言いながら、「ちょっと行ってくるお」と言い残し、結局ブーンも駆け足でドクオ達の方へ向かった。
- その様子を見ながら溜息を付きつつ、ツンが口を開く。
- ξ゚听)ξ「…まったく、何の為に来たんだか。ほんっとミーハーなんだから…。ねえ、クー?」
- 川 ゚ -゚)「あ…ああ、そうだな」
- 川*゚ -゚)。oO(私も強豪プロにはちょっと興味あるのだが…行きづらいな……)
- 25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:14:31.86 ID:Zi7Bed4s0
- つー・しぃ姉妹の元へ到着するや否や、ジョルジュは元気よく、またドクオはどもりどもり声を出した。
- _
- (* ゚∀゚)「すいません!握手してください!」
- (*'A`)「お、おお、俺もおおねがおねが」
- ( ^ω^)。oO(コイツマジ美人に弱えお…)
- ジョルジュ達の突然のお願いにも、手慣れた様子でフランクに対応する姉妹。
- これまで何百回と同じ事を繰り返して来たのだろう。
- (*゚∀゚)「おー、随分若い子達だなっ!」 ←23歳
- (*゚ー゚)「ありがと、応援よろしくね!」 ←21歳
- そんな会話をしながら握手をする横で、
- ブーンも目当ての強豪プロへにこやかに声を掛けようとする。
- だがその前に、逆にその強豪プロの輪の中からブーンらに声を掛ける人間がいた。
- (,,゚Д゚)「おっ、来たな若人達」
- (;^ω^)「…?」
- ブーンは声の主に視線をやり、首をかしげた。
- 渋沢、プギャーというブーンでも知っているタイトルホルダーと談笑していた所を見るに
- 競技プロである事は間違いないのだろうが…。
- どう記憶を辿っても、この男とは話した事はおろか、フリー雀荘で同卓した覚えすら無い。
- 26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:19:07.56 ID:Zi7Bed4s0
- なので、ブーンが「どこかでお会いしましたかお?」と尋ねようとした瞬間、
- 先にジョルジュが声を出した。
- _
- ( ゚∀゚)「あっ、アンタは!麻雀プロだったのかあ」
- ( ^ω^)「ん、ジョルジュ、プロの人と知り合いだったのかお?」
- _
- ( ゚∀゚)「いや知り合いっつうか…ちょっと前にウチの店で同卓してよ、
- 軽く4連勝されたから痛烈に覚えてたんだ」
- ( ^ω^)「ほほう…ジョルジュを相手に4連勝…かお」
- 言いながら、ブーンはもう一度ギコをまじまじと見る。
- 胸に付けられたネームプレートには、「全日本プロ麻雀リーグ六段 猫田ギコ」と書かれていた。
- 見た目はまだ三十路前で、服装こそホスト崩れのような格好ではあるが、
- 六段という所からそれなりの打ち手なのだろうとブーンは察する。
- 言われてみれば、どことなく強者独特のオーラを放っているようにも感じた。
- (,,゚Д゚)「覚えててくれてたようで光栄だよ。無名プロとしては嬉しい限りさ」
- _
- ( ゚∀゚)「ギコさんには完敗だったからなあ…。
- それに気になってたんだ。どうして俺が頂上戦に出るの知ってたんだろ、って」
- (,,゚Д゚)「ああ、それは俺も彼のブログを見てるからさ。特に…ジョルジュ君だったかな、
- 君は髪の色が特徴的だったから、写真で見て覚えていたんだよ」
- 彼の、という台詞を口にしている最中、ギコは視線をジョルジュからブーンへ移した。
- それを受け、目を丸くして驚いた表情を見せるブーン。
- 28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:24:30.52 ID:Zi7Bed4s0
- _
- ( ゚∀゚)「なるほど!俺ってばオシャレで目立つもんな!」
- そんな風に、赤く染め上げた髪に手をやりながらガハハと笑うジョルジュに対し、
- 「別にオシャレとは言ってないお」とツッコミを入れつつ。
- 改めて、ブーンはギコに話し掛けた。
- ( ^ω^)「プロの方にも僕のブログを読んでもらってるなんて、本当にビックリで…嬉しいですお」
- (,,゚Д゚)「ブーン君のブログからは麻雀が好きという気持ちが伝わってきて、中々面白いぜ。
- 実は今日、一言くらい話せたらいいなと思ってたんだ。これからも応援させてくれよな」
- そう言うと、ギコはポケットから素早く名刺を取り出して、ブーンに手渡す。
- すると彼は一瞬目を丸くしつつ、ほんの少し慌てた素振りを見せながらも、
- それを両手で丁寧に受け取った。
- (,,゚Д゚)「何かあったら気軽に連絡してくれよな。
- 君達みたいに、本当に麻雀が好きだという若者とは出来るだけ協力し合いたいと思ってるんだ」
- ( ^ω^)「あ…ありがとうございますお…!
- 僕は名刺なんて持ってないから、後で連絡先をメールしておきますお!」
- (,,゚Д゚)「ああ、よろしくな」
- そして二人は目を合わせ、力強く握手をする。
- この時ブーンは、素直にギコとの出会いを喜んだ。
- 今後、彼から多くを学び取れるだろうという予感を、なんとなく感じたからだ。
- 32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:30:26.53 ID:Zi7Bed4s0
- だが、ブーンがそんな余韻に浸る間もなく、しぃが割って入る。
- (*゚ー゚)「ギコ君、お話の途中で悪いけど、もうすぐ開会式みたいだよ」
- (,,゚Д゚)「ん、そうか。ほんじゃ、俺は軽ーく優勝すっからよ、応援よろしくな」
- ( ^ω^)「もしウチのクーが負けちゃったら、ギコプロの観戦をさせていただきますお!」
- そう朗らかに返事をすると、ブーン達は一礼をし、元いた場所へ戻っていった。
- (,,゚Д゚)「…ふぅ」
- ブーン達の背中を見ながら、ギコは小さく息を吐く。
- すると、やりとりの一部始終を眺めていた男が声を掛けてきた。
- ( ^Д^)「まーた軽く優勝とか言ってwwいつも通りビッグマウスだねぇギコちゃんwwww」
- (,,゚Д゚)「ふふん、プロが揃って謙虚なキャラばかりだったら面白くないっしょ」
- ( ^Д^)「ま、お前の優勝なんて俺がいるから無理なんだけどなwwwサーセンwwwww」
- プギャー・アリスト六段。
- 牌帝位というタイトル戦を三連覇し、最近脚光を浴び始めた中堅プロだ。
- 今一番脂が乗っており、今大会では優勝に最も近いと噂されている。
- 彼とギコは同期入会で、かつ同じAリーグに在籍しているため、
- お互いをライバルだと認識しながらも同じ研究会に所属するなど、仲は存分に良い。
- 33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:35:28.82 ID:Zi7Bed4s0
- そして、ギコに話し掛けるのがもう一人。
- こちらも優勝候補の一角に挙げられている、大御所競技プロ・渋沢だ。
- _、_
- ( ,_ノ` )「ギコ坊、若い子の前でカッコつけんのはいいけどな、予選落ちしたら倍だせェぞ?」
- ( ^Д^)9m「優勝するっつってコロ負けしたらwwwもうギャグじゃんよwwwプギャーwwwww」
- そうやって茶化してくる二人に目をやりながら、自信満々に返すギコ。
- (,,゚Д゚)「いやまあ、実際優勝するつもりでやってますから。
- それにね、なんだか今日イケそうな気がするんスよ」
- 冗談ぽく言いながらも、その表情からは至って本気である気持ちが伝わってくる。
- 渋沢やプギャーと違い、彼はビッグタイトルを制した経験が無い。
- 今回に賭ける意気込みは、それなりに強いのだろう。
- ( ^Д^)「吟じちゃうのwwwギコちゃん吟じちゃうのwwww」
- だが、そうやって変わらぬノリでプギャーはツッコミを入れ、
- 合わせる形で渋沢はくっくっと笑った。
- _、_
- ( ,_ノ` )「…ふっ」
- それでもなお、渋沢は口では笑いながらも一瞬だけ真剣な眼差しをギコに送る。
- 35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:41:28.68 ID:Zi7Bed4s0
- そうだ、その意気でいい。
- それくらいの元気がなきゃあ、優勝なんてとても出来やしねえよな。
- 渋沢はそう思うも、口にはしない。
- ただ、話題を変えるだけだった。
- _、_
- ( ,_ノ` )「それにしても…あの学生達、素直そうな良い子らだったなァ」
- (,,゚Д゚)「でしょう?あの子達とはね、良い関係になれると踏んでるんすよ…お互いにね」
- _、_
- ( ,_ノ` )「ん?お前さん、あの大学生達を“例の計画”に組み込むつもりなのか?」
- ( ^Д^)「へーえ?そうなの?」
- 渋沢が問い掛けると、プギャーもそれに乗って少し真面目な表情になる。
- どうやらそれは、彼らにとって大事な案件らしい。
- (,,゚Д゚)「いや、それは…あの子達次第と言った所ですかね…」
- だがギコは、そうやって曖昧な返事をするだけだった。
- 彼らの話す“計画”とは、どういったものなのか。
- それは後の麻雀界を大きく揺るがす一大事件になるのだが、
- この時のブーン達は、そんな事を知る由もない。
- (,,゚Д゚)「それはさておき…そろそろ始まりますよ」
- 言いながら、渋沢らに向けて少しだけニヤリと笑い、ギコは卓に着いた。
- 39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:48:55.11 ID:Zi7Bed4s0
- ( ^ω^)「ただいま戻ったおー」
- ブーン達が戻ると、遠くからその様子を見ていたらしい仲間達から質問を受けた。
- ジャン研にとってこれが初めての、麻雀プロとの絡みになる。
- どのような内容だったか、やはり気になるのだろう。
- ξ゚听)ξ「プロの人達、どうだった?」
- (*'A`)「もうすんげー可愛くて…。握手してもらったから…うんこしても手を洗えない身体になっちゃった…」 ポワワーン
- ξ;゚听)ξ「ホント、バカね…」
- 川 ゚ -゚)「ブーンは男性のプロと長く話していたようだったが…(私も行けば良かった…)」
- (´・ω・`)「なんか名刺貰ったりしてましたね」
- ( ゚ω゚)「あっ!」
- 川;゚ -゚)「ど、どうした」
- (;^ω^)「ギコプロと話し込んだせいで、他のプロに握手してもらうのをすっかり忘れてたお…」
- ξ;゚听)ξ「じゃあ何のためにわざわざ行ったのよ…」
- そう言われ、ブーンがやりとりの顛末を皆に話し始める。
- あまりに予想外の出来事だったらしく、やや興奮気味に説明した。
- ( ^ω^)「…と言うわけで、ギコプロから名刺を貰ったんだお!凄く感じのいい人だったお!」
- 41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 22:55:04.50 ID:Zi7Bed4s0
- ξ゚听)ξ「へえ、アンタのブログを見てるプロもいるのね」
- 川 ゚ -゚)「ふむ、あのAリーガーの猫田六段が、か…」
- (;'A`)。oO(やけに詳しいな…)
- ( ><)「ジャン研もいろんな人に注目されるサークルになったんです!」
- (*‘ω‘ *)「凄いっぽ!」
- だが、ここで意外にもジョルジュが真面目な表情で切り返した。
- それは、彼がプロと絡むと言い出した当人であるからこそ、出てきた台詞なのかもしれない。
- _
- ( ゚∀゚)「でもまァ、今は俺達にとって敵である事には変わりないしな。
- それよりも、ぼちぼち気分を切り替えて応援する事に集中しようぜ」
- 彼の言う事は正しかった。
- 自分達にとって、大会が終わるまでクー以外の参加者は皆ライバルなのだ。
- 時計は定刻の11時を少し回っている。
- 間もなく開会式が始められるだろう。
- もうそろそろ、雑談を止めて気を引き締めなければならない。
- ( ^ω^)「確かにそうだおね、もうそろそろお喋りは止めにするかお」
- ブーンの言葉により一同が表情を固くした瞬間、ちょうど良いタイミングでアナウンスが流れた。
- ミセ*゚ー゚)リ『皆さんお待たせいたしました、第22期麻雀頂上戦、開会の挨拶を始めたいと思います!
- 選手の方は1回戦目の卓に、それ以外の方はひとまず奥の壁際の方にお願いしまぁす☆』
- 44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:00:18.62 ID:Zi7Bed4s0
- すると、会場内の人間がガヤガヤと指示通りに動き出した。
- ( ^ω^)「おっと、それじゃあ僕らもひとまず奥に行くとするおね」
- ( ^ω^)b ビッ 「それじゃあクー、1回戦頑張るんだお!」
- 去り際、そう言ってブーンが親指を立てると、クーも同じように返した。
- 川 ゚ー゚)b ビッ 「ああ、まかせておけ」
- そんなやりとりをしてから、ジャン研の一同はアナウンス通りに会場後方の壁際へ歩き出す。
- 彼らがそこへ到着する頃には人の流れがほぼ収まっており、
- しーんとした厳かな雰囲気が漂い始めていた。
- ミセ*゚ー゚)リ『皆さまご移動ありがとうございまぁす☆』
- 壇上に目をやると、声の主は東京予選でも司会を務めていたミセリだった。
- 相変わらずのユルい喋り方が、ピリッとした空気を緩和させる。
- ミセ*゚ー゚)リ『さて、まずは私から…。本日は私、“全日本プロ麻雀リーグ”所属・二段のミセリが
- 今大会の司会を務めさせていただきます。よろしくお願いしまぁす☆』
- ワーワー
- パチパチパチ
- 45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:06:28.94 ID:Zi7Bed4s0
- ミセ*゚ー゚)リ『続きまして…現代麻雀編集長で、大会委員長を務める原子王の式辞でぇす☆』
- 彼女が言い終えると、小太りで頭の禿げあがった中年がのしのしと壇上に上がり、
- マイクを受け取ってスピーチを始めた。
- (十)『えー、大会委員長の原子王です。皆さま本日は…』
- ・
- ・
- ・
- ( ^ω^)「…」
- 挨拶中、ブーンは壁に背をつけながら、改めて会場全体を見渡していた。
- その目に映るのは、広々とした会場に一定の間隔で設置された50台もの麻雀卓と、
- 黙々とスピーチを聞き入る選手達。
- 彼らは皆一様に背筋を伸ばし、壇上の方を向いている。
- 話を耳に入れながら、これから繰り広げる闘牌に向け、気合いを入れているに違いない。
- そう参加者達の心中を察していると、ある疑問がブーンの脳裏をよぎった。
- 何故自分は、あちら側で卓についていないのだろう。
- こうして見る側の人間になってしまったのだろう。
- 47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:11:57.05 ID:Zi7Bed4s0
- 思いながら、自分の立っている場所と選手達の間にそびえる、目に見えない垣根を感じ取った。
- 今の自分に、戦う権利など無いのだ。
- ( ^ω^)。oO(負けるっていうのは、こういう事なんだおね…)
- 今更ながら悔しさが改めて込み上げてくる。
- だが今は、ただ歯を食いしばる事しか出来ない。
- 来年こそ、来年こそ絶対勝ち上がってやろう。
- ぐぐぐ、と強く拳を握りながら、ブーンはそう決意した。
- ・
- ・
- ・
- 会場を包む大きな拍手で、ブーンは我に返る。
- 原子王による開会の挨拶が終わったのだ。
- やや遅れてブーンも手を叩ていると、再びミセリが口を開いた。
- ミセ*゚ー゚)リ「それでは、本戦のシステムを説明いたします!受付の際にお渡しした用紙をご覧くださぁい☆」
- 言われて、一斉にばさばさと用紙を開く参加者達。
- 後方にいるので、その動きが良く見える。
- ブーンは用紙を貰ってはいないが、それには予選スコアを記入する欄と、
- ルール・マナー等が書かれているのだろうと光景を眺めながら予測した。
- 49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:18:43.33 ID:Zi7Bed4s0
- ミセ*゚ー゚)リ『大会の麻雀ルールについて、詳細はそちらをご参照ください!
- 各ブロック予選(※)と同じですので、ルール・マナーの説明は割愛させて頂きますね☆』
- ( ^ω^)「赤ナシの東南戦、ウマ1−2のオーソドックスなルールだったおね…」ヒソヒソ
- ('A`)「ダブロンと途中流局、それとトビ終了が無いんだったな…」ヒソヒソ
- ミセ*゚ー゚)リ「皆さんには4半荘戦って頂きまして、そのスコア16位の方までが準決勝進出となります!
- そしてその準決勝でトップを取った方が、決勝戦進出でぇす☆」
- _
- ( ゚∀゚)「200人いる中の上位16人って事は…相当ボーダーが高くなるぞ…」
- (-_-)「爆発力も大事…ってことかぁ……」ボソッ
- ミセ*゚ー゚)リ「なお、本戦4半荘は予選と同じく60分打ち切りとさせて頂きまぁす☆
- ちなみに準決勝、決勝の各1半荘は時間無制限です!」
- (´・ω・`)「今回も北家がちょっと不利なんですね…親が2回来るかわからないから」ヒソヒソ
- _
- ( ゚∀゚)「なァに、大した差じゃねぇよ。早いウチに叩いちゃえば、親ッカブリしないで済む場合もあるしな」
- (;'A`)。oO(相変わらずのポジティブシンキングというか…モノは考えようというか……)
- ミセ*゚ー゚)リ「では、これにてご挨拶を終了とさせて頂きます!
- 東南西北の掴み取りで場決めをし、サイコロの一度振りで親決めまでしちゃってください☆」
- ※…第五話参照
- 50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:25:15.72 ID:Zi7Bed4s0
- ミセリによる号令の直後、各卓一斉に場決めが行われた。
- 打ち手達はほどなくしてそれを終え、各々の席に着き、開始の合図を待っている。
- 相手を見て様子を伺う者、目を閉じて集中する者、ぐるぐると肩を動かす者など、様々だ。
- (;^ω^)。oO(何か僕まで緊張してきちゃうお…)
- 会場一帯をピーンと張りつめた空気が包み込んでいる。
- 嵐の前の静けさと言った所だろうか。
-
- その静寂を打ち破るように、ミセリは大きく声を上げた。
- ミセ*゚ー゚)リ『それでは…第22期麻雀頂上戦本戦、1回戦を開始してくださいっ!!』
- 直後、「お願いします!」という挨拶が一斉に飛び交い、それとほぼ同時にサイコロの回る音が響き渡る。
- それから少し経って、タン、パシン、という心地良い牌の音があちこちから聞こえてきた。
- そして、およそ10名ほどのスーツ姿の運営係が、見回りを始める。
- またそれに合わせるように、ブーン達と同様壁側にいた一般人と思わしき者達も卓へ近寄り出した。
- どうやらもう観戦を始めても構わないらしい。
- ( ^ω^)「それじゃ僕らも、クーのいる卓に行くお」ヒソヒソ
- ブーンが小さく話し掛けると、ジャン研の一同は頷いて返し、
- 音を立てないようにこそこそと揃って歩き出した。
- 53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:36:01.51 ID:Zi7Bed4s0
- クーは、西家スタートだった。
- 川 ゚ -゚)。oO(ドクオのお陰…かな)
- 朝にあったような負の感情は、この時には消え失せていた。
- 全くプレッシャーが無いと言えば嘘になるが、それは丁度良い程度に落ち着いている。
- 緊張感を感じさせない普段通りの手つきで、配牌を取り揃えるクー。
- 川 ゚ -゚)配牌:235689m56p白白發中中 ツモ白 ドラ5p
- この日初めてのそれは、2000点から役満まで、様々な最終形が思い描けるものだった。
- だが、第1打に何を捨てるか、実に悩ましい。
- ホンイツ、イッツー狙いで、思い切ってドラターツを切り出すか。
- それとも堅実にワンズのペンチャンを処理していくか。
- あるいは、その両方を追いつつも大三元を見切り、初手から發を捨てるか。
- どれを切っても、裏目を引いたら致命的である。
- クーは早くも、逡巡して見せた。
- 川 ゚ -゚)。oO(最も効率的で、裏目の少ない打牌は…)
- 左手の人差し指を顎に添え、考える。
- その間、およそ15秒。悩みに悩んで、クーは發を切り出した。
- ダイレクトに發を引かない限り、ロスにならないからだ。
- この選択からは、リーチ白ドラ1、あるいは中をポンしての5200あたりが現実的だろうという、夢を見ない思考が伺える。
- 55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:42:17.55 ID:Zi7Bed4s0
- ブーン達がクーの打つ卓に到着すると、既に彼女は一つ晒してテンパイを入れていた。
- 状況は14巡目で、クーの狙い通り、白・中・ドラ1で5200の手だ。
- 川 ゚ -゚):2256m567p白白白 ポン中中中 ドラ5p
- だがブーンは、その捨牌を見て愕然とする。
- (;゚ω゚)。oO(大三元…逃してるお……)
- そう、河に發が3枚置かれていたのだ。
- 初巡と、4巡目と、9巡目に。
- クーの手牌と合わせて見ているためか、その3枚が余計に目立っているように感じる。
- 結局、この局は最後のツモで4mを引き当て、1300・2600のアガリを得るが、
- やはりクーは釈然とした表情ではなかった。
- 川;゚ -゚)。oO(クソ…)
- 他家の払った点棒を回収しながら、落ち着きを取り戻そうとするクー。
- あれでいい。
- アガリ逃しは結果論、効率的には間違っていなかった筈なんだ。
- 役満とは行かなかったが、加点した事には変わりない。
- そう考えながら、淡泊に点棒を箱にしまう。
- 60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:48:21.20 ID:Zi7Bed4s0
- _
- (;゚∀゚)。oO(うーん…ヤバいな……)
- ブーンの隣で観戦していたジョルジュは、その太い眉を歪ませた。
- 結果的には役満をアガれていた手を、5200点の中堅手にしてしまった。
- 例えアガれたと言えども、それを好ましく思う筈がない。
- オカルト派の打ち手の中には、「負ける流れを引き寄せる、しょっぱいアガリがある」と言う人間もいる。
- ジョルジュはこれと言ってオカルトを信じているわけでもなかったのだが、
- この大物手のアガリ逃しを目の当たりにし、流石に悪い予感を感じざるをえなかった。
- もっとも、デジタル派のクーにそれを話した所で、一笑に付すだけであろうが…。
- _
- ( ゚∀゚)。oO(このまま無事に逃げ切れればいいんだけどな…)
- 俺のこういう直感って、当たるんだよな。
- クーの手に取った東2局の配牌を見ながら、ジョルジュはそう思った。
- 川 ゚ -゚)配牌:136m22489p257s西北發中 ドラ4s
- イマイチと言った感の強い手牌ではあるが、クーは顔色を変えずに北から切り出していく。
- しかし、6巡目。
- クーの表情が、変わった。
- 64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2010/04/17(土) 23:53:51.82 ID:Zi7Bed4s0
- 「ロン、9600」
- 川;゚ -゚)「!」
- クーの切った牌を、親が咎めたのだ。
- 開かれた手牌は、七対子ドラ2のダマテン。
- 待ち牌は、奇しくもクーが大三元を逃したのと同じ、發だった。
- まだ6巡目なので、いわゆる交通事故、仕方の無い放銃だとも言える。
- しかしながら、ジョルジュにはそれが必然に思えてならなかった。
- _
- (;゚∀゚)。oO(ああ…やっぱりブチ当たっちまったか……)
- ジョルジュが卓から目を外し、視線を窓に向けると、
- 雨がぽつぽつと降り出してきたのが見えた。
- それは次第に大粒に変わり、音を立てて街を鉛色に染め上げる。
- _
- ( ゚∀゚)「…」
- その重苦しい風景は、戦いの結果を暗示しているかのようにも感じた。
- 続く。
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