('A`)の奇妙な冒険
- 24: 名無しさん :2006/11/07(火) 20:43:46
夜の学校に遊びに行こう! その3
時計は既に夜の11時を回り、俺は何をするでもなく、
ただ、学校の中庭に植えられている木にもたれかかって物思いに耽っていた。
普段行き慣れた場所でも、観点を変えてみると全く違った風に見えるということはよくある。
夜の学校なんてものはその代表例みたいなもので、
ほとんどの生徒は昼間にしか学校に来ていないので、夜のそれを見たことがある人はそう多くない。
俺にしても、夜の学校に忍び込むなんてことは初めてで、
月明かりだけの、一種の異界のような雰囲気を全身で感じていた。
俺はこの学校という所は、決して嫌いな場所ではなかった。
そりゃあ勉強は嫌いだったが、楽しいことだってそれなりにあった。
先生が授業中下らないジョークを言って場を和ませたり、
体育祭や文化祭、
何より、学校に来ればブーンやツンがいた。
俺は、学校に来るのが楽しかった。
だが――
('A`)「お前は、そうじゃなかったんだな」
まるで幽霊のように突然と中庭に姿を現したヒッキーに、俺は言った。
- 25: 名無しさん :2006/11/07(火) 20:57:16
(-_-)「……偶然出会った、というわけじゃないさそうだね」
ヒッキーが透けるように青白い顔をこちらに向ける。
口元だけが、血のように赤く染まっている。
というより、血そのものなのだろう。
(-_-)「どうして僕がここに来ると?」
('A`)「根拠なんて何も無い、下らない推理さ。
人殺しをしたとなると、警察に追われることになる。
そうなる前に最後の仕上げとして、
自分が最も気に入らなかった、諸悪の根源みたいな場所をぶち壊しに来る――
俺ならそうすると、考えただけさ」
ヒッキーにとっては、学校は地獄そのものみたいな場所だったのだろう。
だからこそ、この街から逃げ出す前にここを破壊しに来ると、俺は思ったのだ。
(-_-)「へえ、意外と頭が回るんだ」
少し驚いたようにヒッキーが言った。
('A`)「今度はこっちから質問させろ。
……お前の家の家族を殺したのは、お前だな?」
もしかしたらと思い、俺はヒッキーの家の住所を調べて尋ねてみた。
案の定、家の周りには警察がごった返しており、
それだけでもうヒッキーの家族が生きてはいないことが確信できた。
(-_-)「そうだよ。
ったく、あのジジイとババア、
僕が苛められてても助けちゃくれなかったのに、
僕が人を殺したと知ったら、泣きながら自首しろとか言ってさあ。
気に入らないから殺しちゃったよ」
ヒッキーにしてみれば、家族に最後のチャンスを与えたのだろう。
これまで自分を助けてこなかった家族が、最後の最後、自分を見捨てないかどうか。
……そして、ヒッキーの家族はヒッキーを満足させる答えを出すことは出来なかった。
- 26: 名無しさん :2006/11/07(火) 21:15:05
(-_-)「で、君はここで僕にあってどうするつもりだったのさ。
まさか、僕に罪を償えとか言い出すんじゃないだろうね?
一度は僕を見殺しにした君が」
ヒッキーが怨みの視線をこちらに向けた。
そうだ。
俺はこいつに怨まれても仕方が無い。
それだけの理由が俺にあり、ヒッキーにある。
('A`)「……そんなつもりはさらさらねえよ。
俺はただ、止めにきただけだ」
そっと懐の包丁に手を伸ばす。
こんなもので、ヒッキーをどうこう出来るとは微塵も思わない。
だが、やるしかない。
(-_-)「止める? 君が?
まさか君、今の僕を止めれると、本気で思ってるんじゃないだろうね?」
ヒッキーが心底おかしそうに笑い転げる。
ここまで笑うヒッキーを、俺は見たことがなかった。
('A`)「止めるのはお前じゃない。 『石仮面』だ」
(-_-)「ははっ! 『石仮面』を知ってて、なおもここにやってきたってのか!
そりゃあ君、馬鹿を通り越して感心するよ!
はははははははははは!」
更にヒッキーは笑い続けた。
そこには不可能な事に挑戦し続ける愚者に対する憐れみのような感情さえあった。
(-_-)「……まあいいや。
で、どうするんだい? そろそろ始めたいっていうなら始めるけど」
ヒッキーが口元から鋭い牙を見せ、笑い顔から獰猛な表情へと顔を変えた。
('A`)「いや、最後に一つ聞かせろ」
包丁に巻いてあった布をほどく。
刀身の部分が、月の光を受けて怪しく光った。
(-_-)「何だい?
('A`)「『石仮面』をお前に渡したのは誰だ」
(-_-)「どこの誰かまでは知らないよ。
僕達と同じ位の男の子だったかな。
――ああ、そうだ」
思い出したように、ヒッキーが言った。
(-_-)「『トラッシュ』……だとか何だとか言ってたっけ」
……『トラッシュ』?
覚えの無い――いや、俺はどこかで、この言葉を知っている。
失われた記憶が、そう告げている。
(-_-)「聞きたいことはそれだけかい?
なら――」
一瞬にしてヒッキーの姿が視界から消え――
- 27: 名無しさん :2006/11/07(火) 21:35:11
('A`)「がはッ……!」
気がついた時には、俺は地面に這いつくばっていた。
いつの間に、何をされたのか全く分からない。
人ならぬ膂力と速力。
人間以上の存在の力に、俺はただ愕然としていた。
(-_-)「ほらほら! どうしたんだい!
今のはちょっと体を撫でただけだよ!?」
ヒッキーが片手で倒れていた俺の右足を掴んで持ち上げ、勢いをつけて地面に叩きつけた。
全身に体がバラバラになりそうな衝撃が走る。
('A`)「ぐあああああ!!」
何度も何度も地面と熱いキスを交わし、俺の体はみるみる傷だらけになっていった。
その気になればすぐにでも殺せるだろうに、それをしない。
ヒッキーが俺を死なない程度にいたぶっているのは明らかだった。
(-_-)「そら」
今度叩きつけられたのは地面ではなかった。
ヒッキーが持っていた足を離し、校舎の壁へと俺を投げつける。
('A`)「がはあッ!!」
壁にぶちあたり、ボールのように跳ね返って俺は地面に倒れ伏した。
全身が痛い。
骨も何本か折れているだろう。
叫ぶ程痛いはずなのに、意識だけは薄靄がかかったようにぼんやりとしている。
死が俺の直前まで迫ってきているのを、俺は感じていた。
(-_-)「あーあ、もう飽きちゃった」
ヒッキーがつまらなそうに欠伸をした。
飽きた、ということはつまり、俺を生かしておく理由も無くなったということか。
これから俺は、子供が虫を潰すようにあっけなく殺されてしまうのだろう。
こうなることは分かっていた筈なのに――
人間が吸血鬼に敵う筈はないと分かっていたのに――
俺は何故、こんなところで、こんなになっているんだろう。
不思議と恐怖はなかった。
ただ――無性にもう一度、クーの顔が見たくなった。
クー、ごめんなさい。
勝手に出て行って、勝手に死ぬことになってしまって。
(-_-)「もういいからさ、そろそろ死んじゃってよ」
ヒッキーが止めの一撃を加えようと、俺に向かってくる。
今まで目にも映らない速さの筈だったのに、
今回だけはまるでスローモーションのようにゆっくりと見えた。
……それと、今まで、ありがとうございました。
俺は、あなたに逢えて、本当に――
* * *
そして、『私』が『彼』の中から出てきた。
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