( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

2: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:18 hJuavnb7O

プロローグ


時空の狭間に存在する、隔絶された世界があった。
その世界には狭い土地と、研究所のような、しかし城塞らしき壮大な建物がただ一つ。それだけ。
世界と呼ぶにはあまりにも狭い空間だが、それだけで十分だった。

その世界に在る命もまた、ただ一つだけだったのだから。



3: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:19 hJuavnb7O

「……」

城塞内部。
暗く静かな、研究室のような広間。
巨大な魔方陣が部屋の中央で怪しく光り、その周囲四カ所には奇妙な装置がいくつか並べられている。

「…あははー」

人気のない空間で、女性の無邪気に笑う声。
その両手に何かを手にしている。
片方は黒く不気味に輝く大きな物質。
そしてもう片方は、何とも表現しにくい奇妙な物質。

彼女は、決して手を出してはならない禁断の実験を、今まさに試みようとしていたのだ。



4: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:23 hJuavnb7O

「準備は全て整ったよ。後は魂の源となるこれを…」

言葉が終わる前に、手にした物質を魔方陣の中心に放り込む。
それに呼応するように魔方陣の光が一層増し、周囲の装置も発光。

「恐るべき霊力に多大な魔力。
 闇の力をも制し、さらには高度な戦闘能力…
 全てにおいて優秀な、私の―――」

光が魔方陣の中心へと集中し

「さあ、目覚めよ…!」

朗々と放たれた言葉と同時に光は一瞬で黒く染まり、そして魔方陣の中心に吸収されるようにゆっくりと薄らいでいく。



5: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:26 hJuavnb7O

「……」

黒い光が完全に収まると、魔方陣の中心には何者かが立っていた。
その手には長い何かを持っている。

「…あはは…やった、成功!」
「…?」

状況を理解していない相手に、女性は嬉々とした様子で話しかける。

「いい? 君は私によって生み出された生命…いや、造り出された『魂』と言うべきかな」
「…よく…わからない」
「要は私が御主人様で君は部下。わかるかな?」
「…造られ、た?」

曖昧ながらも状況を読みとったのか、相手は途切れ途切れに言葉を発する。



6: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:28 hJuavnb7O

だが、彼女の思惑通りに事が進みはしなかった。

「うん、君は私の命令通りに動く…そう、君は私が初めて造り出した――」
「成る程…それは、嫌…だよ」
「…は?」

突如として出た拒絶と思われる言葉。
予想だにしなかった事態に、女性は言葉に詰まる。
すると

「…自由だよ」
「え?」
「自由、ってモノが欲しい…何にも囚われず、自分の思うがままに…ってのが」

静かにそう言い放った相手は、その女性を見据えながらゾッとするような笑みを浮かべた。

「…そんな訳で、こんな狭いとこにいつまでも居れない…よ」

瞬間、相手は止める間もなく部屋を飛び出していった。
その後、この世界のどこにも『造られし魂』はなかった。

「…これって、失敗? どこでどう間違えたの………」

残された女性。
元々捻れ曲がっていた彼女の心に、この時恐るべき考えが芽生えた。


――この出来事が、後に大戦を引き起こす引き金となる。



7: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:30 hJuavnb7O

それから二百年後、別の世界で事が起きた。
先程述べた狭間の世界とは大きく異なる、数多くの生命が存在する広い世界。

その世界のある村で発生した、世界の危機ともいえる異変を人間達がくい止めた、というのだ。
詳しいことは結局明らかにならなかったが
初めに異変を引き起こしたのは幽霊という非科学的な存在であり、その異変を終息させた者達の中にも人間以外の何かがいたという噂が立った。

その真相は本人と、そして共に居合わせた人間達しか知らない。



8: ◆wAHFcbB0FI :07/29(日) 12:31 hJuavnb7O

―――そして、それからさらに百年後。
世界を救ったと言っても過言ではない存在であったその人間達は、最早存在しない。

だが、年をとるということを知らない『奴等』は、未だに存在していたりする。



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