( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです
- 34: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:02 YXwxW9s1O
第二話『二百年目の危機』
薄暗く、だがどこか活気満ちた雰囲気。
時折あちこちであがる叫び声。
それは狂喜のものか悲哀を意味するものか。
太陽は存在せず、無論星も見えない。
空に見えるのは赤く光る月だけ。
現世がどれだけ変わっても、百年前から魔界は殆どといってよいほど変わっていない。
そんな魔界に堂々と構えられた城の前に、タカラ達はいた。
( ^Д^)「えーと、今回はこの城見るの一日振りぐらいかな?」
(#゚;;-゚)「…折角二人で現世に遊びに行ったのに、日帰りになっちゃったね」
恋愛というものに全く興味のないつーは呆れるばかり。
(*゚∀゚)「いつまで話してるんだバカップル共。
早いとこ行かないと隊長に怒鳴られるよ」
( ^Д^)「隊長ねえ…隊長って何を根拠に隊長って呼ばれてんだ?」
(*゚∀゚)「知らん」
言いながら扉を開き、城内に入る。
- 35: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:06 YXwxW9s1O
(# ΦωΦ)「ゴルアァァァァ!!」
( ^Д^)「(あー五月蝿ぇ五月蝿ぇ)」
(*゚∀゚)「(アヒャヒャヒャ…言わんこっちゃないねぇ)」
城に入るなり、怒鳴り声を浴びせられた。
怒鳴り声の主は猫のように大きな目を持った、人型の魔物。
だが腕は四本あり、内の二本を胸部の辺りで組んでいる。
特有の鎧を身に纏い、背には四本の巨大なトマホークを束ねて背負っていた。
彼こそがタカラやつーが『隊長』と呼んだ者であり、名をロマネスクといった。
タカラやつーよりも前から魔界にいるらしいのだが、隊長と呼ばれている理由は謎。
城の兵隊長ということまでは解るが、単に強くて多少他の連中に比べて統率力があるだけ、という説もある。
- 36: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:11 YXwxW9s1O
(# ΦωΦ)「お前等遅い! 遅すぎる! 何してやがったんだ!?」
タカラ達が黙っていても、ロマネスクはただただ怒鳴りつけてくる。
同じフロアにいた兵士達が『また始まった』といった様子でこれを遠巻きに眺めている。
( ^Д^)「まあ落ち着け、そう熱くなるな。
急に戻ってこいなんて言われたんだから仕方ねえだろ」
(*゚∀゚)「それに、私だって魔王さんに命令されたのほんのちょっと前だし。
大体私と隊長がまともに殺り合ったら絶対に勝てる自信が…」
(# ΦωΦ)「じゃかましいわ! さっさと魔王さんのとこ行ってこい!」
( ^Д^)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)「……」
抗議も怒声によって打ち消されてしまった。
このまま突っ立っていてはまた怒鳴られる。
そう思った三人は階段から二階へ上がることにした。
- 37: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:15 YXwxW9s1O
「ようwwwww来たなwwwwww」
( ^Д^)「あーもう、何でこの城は五月蝿い奴ばっかなんだ」
タカラ達の前には、王座の間の入口の扉を守っている、槍を持った獣人が一人。
一応兵士の一人なのだが、これがまた別の意味で五月蝿い。
( ^Д^)「呼ばれたから 仕 方 な く 来た訳だ、通しやがれ」
「おkwwwww」
獣人は扉の前から退き、入れという動作をとる。
(#゚;;-゚)「…ここの見張りって確かもう一人いなかった?」
「あいつは見回りに行ったよwwwww」
(#゚;;-゚)「…ふーん」
魔界は相当荒んだ世界だが、それを統べる魔王の首を討ち取ろうなどと考える愚か者は流石にいない。
多分見張りは一人でも十分だろう。
- 38: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:30 YXwxW9s1O
「そうそう、魔王様が呼んでたのはタカラとつーちゃんだけなんだよなwwwww
そんな訳で、悪いけどでぃちゃんはここにいてくれwwwwサーセンwwwww」
( ^Д^)「…だそうだ。ということだからその辺で待っててくれ」
(#゚;;-゚)「…うん、また後でね」
一旦でぃと別れ、タカラとつーだけで魔王の下へと赴くことに。
( ^Д^)「…ったく、何でよりによってこんな時に呼び出すんだよ」
(*゚∀゚)「私に聞かれてもなー。
今頃が丁度あの時から百年後になるのがアンタ達にとって不運な訳で、私は知ったこっちゃなーい! ア-ヒャヒャヒャ!」
(#^Д^)「(マジうぜぇ…一度でいいからこの低脳な騒音女をフルボッコにしてしまいたい)」
時々だが、本気でそう思ってしまうことがある。
つーは彼等のデートらしきものがぶち壊しになったことを楽しんでいるようであった。
- 39: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:34 YXwxW9s1O
そんなこんなで二人は扉を抜け、城内でも一際荘厳な空間に出る。
その先には
(-_-)「…やあ、待ってたよ」
玉座に、一見若そうな男が座っている。
( ^Д^)「よう、来てやったぞ魔王さん!」
(-_-)「…悪いね」
彼の名はヒッキー。魔界を統べる存在、つまり魔王である。
あまり威圧感を感じさせない姿ではあるが、その力は想像を絶するという。
だが本人はお人好しで意外にも優しく
魔軍を率いて現世侵略…などということは考えたことすらなかった。
- 40: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 18:58 YXwxW9s1O
そしてそのそばにはさり気なく一人の男がいるのだが…
( ´∀`)「…二人共、来たモナね」
( ^Д^)「お前は確かモナー…だっけ?
長いこと姿を見てなかったから忘れちまっt…あれ?」
( ´∀`)「それについてはちょっと訳ありモナ」
モナーと呼ばれた男の言葉を最後に、数秒間沈黙が流れる。
タカラは何かがおかしいことに気付いたのだ。
( ^Д^)「…お前って確か百年前には既に魔界に居た人間だよな?
何で百年経った今もいるんだよ…?」
( ´∀`)「聞かれると思ったモナ。
さっきも言ったように、ちょっとした訳があるモナ」
- 41: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 19:07 YXwxW9s1O
現世の特定の場所には魔界に通じる扉があり、そこから人間が魔界に迷い込むことがある。
モナーは百五年程前にそれを通じて現世から魔界へ転がりこんできた人間であった。
だが、いくら魔界に住み着いた者であったとしても、モナーはあくまで人間なはず。
タカラが初めて出会った当時既に成人であった彼が、それから百年も経って生きているはずがない。
だが、その時。
( ^Д^)「…あ! そうか、お前さては…」
タカラやつー等、一部の連中は、生きている者と死んでいる者とを見分けることが出来る。
今のモナーは、魂だけの存在としてタカラの目に映っている。
それはつまり
( ´∀`)「そう…実を言うと、僕は九十五年前にくだらない理由で命を落としたモナ。
けど…住み慣れた魔界を離れたくないっていう執念みたいなもので、魂だけがこうして残っている状態モナ」
( ^Д^)「何かどっかで聞いたことあるような話だな…よっぽど魔界に馴染んじまった訳か」
などと感心しつつ
( ^Д^)「おいつー、あいつが死んだこと知ってたのか?」
(*゚∀゚)「うん、知ってた。
ま、あいつにいなくなられちゃパシリが……おっと失礼!」
(; ´∀`)「(酷いモナ…)」
何やら妙に関心をそそられる発言だが、皆は敢えて問わなかった。
- 42: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 19:55 YXwxW9s1O
(-_-)「さあ、雑談はそれくらいにして…本題に入ろう」
( ^Д^)ノ「せんせーい、ちょっといいですかぁ?」
始める前から手を挙げて質問するタカラ。
(-_-)「何かな?」
( ^Д^)「俺は何で召集されたか全くわからないんだが。とりあえずkwsk」
( ´∀`)「そういえば、僕も詳しいことはわからないモナ」
そんな二人に対し、ヒッキーは心得たという様子で頷く。
(-_-)「そうだね…先ずは今一度、皆に全てを話しておこうか」
(*゚∀゚)「じれったいなあ…さっさとしてよ!」
( ^Д^)「お前は一旦黙れ」
- 43: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:00 YXwxW9s1O
(-_-)「…事の始まりは二百年前。この魔界に、どこか別の世界から正体不明の軍団が攻め込んできた」
その軍団は魔界に住む魔物や妖怪、そして人間と比べても極めて異質な存在であった。
言うなれば、己の身を持ちながら、しかし心も魂も持たぬ存在。
そんな連中が、この魔界に攻めてきたのだ。
( ´∀`)「(…僕はその時のことを知らないから何とも言えないけど、もしかしてそれは…?)」
元人間であるモナーはこの話を聞いた時点で、人為的に造られた何かが絡んでいるのではないかと睨む。
だがそんな侵略のための兵器を量産出来るほど、人間はまだ優れた存在ではないはずだった。
- 44: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:08 YXwxW9s1O
(-_-)「そして…言うまでもなく、その軍団を指揮していた者もいた」
侵略者達を指揮・統率していたのは一人の女。
見たところ肉体を持たぬ魂だけの存在だったのだが、不自然な点があった。
彼女は幽体でありながら、しかし無機質な何かが感じられたのだ。
(*゚∀゚)「そいつは私が相手したよ。
あいつは実に面白かった! 色々と妙な攻撃してきたけど、逃げられちゃった。次は絶対ぶっ倒してみせる!」
( ^Д^)「次ってことは…そいつはまだやられてないのか」
魔界の住人達が総力を結集して戦いに望んだ結果、二百年前は正体不明の軍団を何とか撃退することが出来た。
だが、軍団を指揮していた女にも逃げられてしまったのだ。
(-_-)「つーちゃんが言うには、その際女はこう言ったという。
『二百年程後に、更なる勢力を率いて再び現れる』と」
( ^Д^)「なーるほどなぁ…それで今が二百年後に当たるって訳か」
ヒッキーは黙ったまま頷く。
- 45: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:19 YXwxW9s1O
(-_-)「それ以来、君達もよく知っている例の者にこの城の兵士を率いて定期的に魔界を見回ってもらっている。
無論、今もそうだ」
(*゚∀゚)「…それで今ここにいないんだね」
( ^Д^)「例のあの方かい…流石だな」
先程見張りの兵士の片割れがいなかったのはそのためのようだ。
(-_-)「話を戻そう…簡単に結論を言うと、君達にも警戒態勢をとってもらいたい」
( ´∀`)「それって…今度は僕やタカラにも戦いに参加して欲しいってことですモナ?」
ヒッキーは小さく溜め息をつき、そして頷く。
(-_-)「流石はモナー君、読み込みが早い……その通りだ」
- 46: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:23 YXwxW9s1O
女が言い残した言葉が真実ならば、もはやいつ攻められても不思議ではない。
そして更なる力を率いてくるというのであれば、こちらも有力な戦力を増やす必要がある。
(-_-)「…どうだろう。相手が誰であろうと…君達は戦えるか?」
とりあえず問いかけてはみたが、やはり答えは即答だった。
( ^Д^)「把握したぜ魔王さんよ…
その戦いとやらが終わるまでは魔界から出ずにいてやる。安心しろ!」
(*゚∀゚)「私もあいつを絶対にキルするからね、今度も喜んで戦っちゃうよ!」
( ´∀`)「魔王様の命令なら…僕も出来る限り力になるモナ!
…戦うかどうかは別として」
( ^Д^)(*゚∀゚)(-_-)「(うわっ、チキン乙…)」
大方予想は出来ていたものの、彼等の反応を見たヒッキーは思わず苦笑する。
荒くれ者やタチの悪い戦闘狂も、こんなときばかりは助かるものだ、と思った。
- 47: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:35 YXwxW9s1O
(-_-)「ありがとう…とりあえず話は以上だ。
もうあまり時間がないだろうけど、後は戦いに備えつつ、いつも通り適当に過ごしていてくれ…では、解散」
言葉が終わるや否や――
( ^Д^)「っしゃあ、井戸行って酒飲むぞ!」
(*゚∀゚)「あ…待てよ、私が先に行くんだから!」
(;-_-)(; ´∀`)「……」
よく解らないが、早速喧嘩が始まった。
( ^Д^)「うっせえ、お前は猛獣の血とか頼みやがるから折角の酒が臭くなる!
俺が先に行くと言ったんだから俺が先だ!」
(*゚∀゚)「っ…」
不覚にもつーは言葉が詰まる。
(*゚∀゚)「仕方ないねぇ…さっさと行ってきな!」
( ^Д^)「俺の勝ちだ、ざまあみやがれバーカwwwww」
(*゚∀゚)「馬鹿って言った方が馬鹿だよ…バーカ!」
…悪言雑言の末、タカラは去っていった。
(-_-)「(何というか…どっちもどっちだな)」
普段通りにとはいえあまりに普段通りすぎる光景に、ヒッキーやモナーは呆れるしかなかった。
- 48: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:43 YXwxW9s1O
(-_-)「…それにしても、井戸って何だろう?」
ふと、『井戸』という単語が気になったようであるヒッキーが呟く。
( ´∀`)「僕も知らないけど…何か面白そうモナ」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ…素人にはお勧めできない、素晴らしいところさ!
ただ、あそこの方々はちょっとばかし人間嫌いでね。いずれにせよ、魔王さんが行くような所じゃないよ」
( ´∀`)「人間嫌い…どういうことモナ?」
暫し沈黙が流れ
(*゚∀゚)「アヒャヒャ…それは私の口からは言えないなぁ…」
(;-_-)(; ´∀`)「ちょ…」
正直彼女の勿体ぶった言い方がまず怖いのだが、敢えて誰も口に出さない。
- 49: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:47 YXwxW9s1O
(*゚∀゚)「ま、今のアンタなら大丈夫だろうよ」
( ´∀`)「そ、そうモナ? ならちょっと…」
言い終わらない内に、つーは部屋の出入口を指差し
(*゚∀゚)「外にでぃがいるから、そんなに行きたいなら彼女に案内してもらいな。
私が行ったらあの宝箱に何言われるか解らないからな」
( ´∀`)「wktkモナ!」
期待に胸を膨らませ、モナーも退出していった。
- 50: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:52 YXwxW9s1O
さて、玉座の間に残るは魔王ことヒッキーと、死神ことつー。
(*゚∀゚)「暇だー。タカラの奴早く戻ってこーい。
あいつが酒なんざ飲んでたら私が行けないじゃないかよー」
(-_-)「(五月蝿いなあ…)」
一体、何がどうしてこんなぶっ壊れた性格になってしまったのだろうか。
無駄に騒がず、そして好戦的でなければ文句なしに可愛いのだが。
(-_-)「(さて、僕も今は普段通りに過ごすべきかな…)」
そうなると今は特にやることはない。
(-_-)「…つーちゃん、チェスとか出来たりしない?」
(*゚∀゚)「アヒャ?」
(-_-)「いや、知ってるならちょっと手合わせしてもらいたいな…って思った」
などと言ってみたものの、考えて展開を進めるような遊戯を彼女がするとは思えなかった。
そして彼女が発した言葉は
(*゚∀゚)「決闘ごっこならやってあげるよ?」
(-_-)「丁重にお断りするよ」
- 51: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:55 YXwxW9s1O
それから少しして…
(*゚∀゚)「ねぇ、私の可愛い後輩は何してんの?」
(-_-)「…兵士を遣わして事件のことを伝えたら、森に篭もって出てこないらしい…いつものことかな?」
さらに少し経った後…
(*゚∀゚)「暇だからさ、町にたまってる不良共辻斬りしてきてもいい?」
(-_-)「こんな時にいいわけがないだろう…頼むから事が収まるまでは面倒なことをしないでくれ」
近い内にこの世界全体が戦場と化すかもしれぬのに、そうなる前から騒ぎを起こされてはたまらない。
…こんな調子で二人は暫し時間を費やしていたのだが。
- 52: ◆wAHFcbB0FI :08/04(土) 20:59 YXwxW9s1O
玉座の間の入口の扉が、突如開いた。
( ΦωΦ)「失礼するぜ…魔王さん!」
(-_-)「…ロマネスク隊長?」
隊長と呼ばれし人型の魔物、ロマネスク。
先程は散々タカラ達を怒鳴りつけていたが、今は不思議と落ち着いた表情だ。
(*゚∀゚)「隊長! もしかして私と殺り合いに来たのかなぁ?」
( ΦωΦ)「悪いがそれどころじゃねえ。割と厄介な話だ」
(-_-)「…?」
厄介な話と聞いたヒッキーは表情を曇らせる。
それを確認したロマネスクは言う。
( ΦωΦ)「用件だけ簡単に言うぜ。城下のあちこちで爆発がおきてやがる」
(-_-)(*゚∀゚)「!」
彼の言葉を聞いた途端、ヒッキーの背筋が凍りついた。
(-_-)「何…まさかもう奴等が?」
だがロマネスクは首を横に振る。
そして彼は言いづらそうに、しかし意を決したように言い放った。
( ΦωΦ)「部下に偵察させたんだがな…
そいつが言うに、爆発をおこして暴走してやがるのは……人間だ」
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