( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです
- 56: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 12:56 ucOLlAW8O
第三話 『爆炎の狂戦士』
人間が住む現世でも、魔物や妖怪達が多くを占める魔界でもない―――三百年前は人気のなかった世界。
小さなその世界に建つ研究所のような城塞は、未だ存在していた。
かつて禁断の実験が行われた、研究室のような部屋には別の人影があった。
(・∀ ・)「……」
部屋の中央に新たに構えられた椅子に、ふんぞり返るように座る少年が一人。
右手にグラスを持ち、中には橙色の液体。
目の前にあるテレビらしきモノを眺めながら、グラスの中身を少しずつ飲んでいた。
- 57: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 12:59 ucOLlAW8O
そこへ、重い音と共に部屋の扉が開く。
( )「…失礼するぞ、ドクター」
兜を目深に被った女性。
その表情を伺うことは出来ないが、彼女の凛々しい外見からは強いオーラと無機質な何かが感じられた。
だが、それらをものともせずに少年は口を開く。
(・∀ ・)「ハハハ…君、何か用かな?」
ドクターと呼ばれた、子供っぽい口調の少年に対し、女は凛とした声で返す。
( )「再び魔界侵略を開始する訳だが」
(・∀ ・)「うん、それで?」
グラスに入った液体を一気に飲み干し、耳を傾ける。
- 58: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:15 ucOLlAW8O
( )「そこでだ、我が軍の幹部の…そうだな、『MSP-I03』『MSP-B04』『MSP-S05』のメンテナンスを頼みたい」
(・∀ ・)「ふーん…別にいいけど。
そう言う君はメンテナンスしなくていいのかい?」
少年の問いに対し、女はふっと笑う。
( )「私は問題ない。『奴』を抹殺することばかり考えていたくらいだから、自身に異常がないことぐらいはわかる」
(・∀ ・)「そうかい?
よくわかんないけど、君達の中では一応君が団長みたいなものなんだから本番でガタ起こさないでくれよ?」
( )「アヒャア…まあ、我々に任せておけ…!」
兜という仮面の奥で、女は歯を剥いて笑う。
凛々しき姿とは裏腹に、内に激しい狂気を宿した存在。
それが彼女の本性。
そして、この笑いは魔界のある住人のそれと似ていた。
- 59: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:19 ucOLlAW8O
(・∀ ・)「もう二百年前みたいなヘマはするなよ、こっちの頭数増えたんだから。改良するってんなら全員連れてきなよ。
…あと、その前に」
( )「…その前に?」
彼女の疑問に対し、少年は呆れ喚く。
(・∀ ・)「君は二百年以上もここにいながら何をすればいいのか解らないのか?」
グラスを女に突きつけ
(・∀ ・)「ジュースのおかわりだよ、解るか!?」
( )「はあ…(それぐらい自分でやれよ…このカス)」
呆れ果てた女は心の中で文句を言いながら仕方なしにグラスを持ち、渋々部屋を出ていった。
そして再び一人になった少年は呟く。
(・∀ ・)「まあ、頑張っておくれよ……僕の大事な大事な『人形』達…
全てはあの方の為にね」
- 60: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:22 ucOLlAW8O
ロマネスクの突然の報告により、ヒッキーとつーは驚きを隠せずにいた。
…つーは別の意味でのようだが。
(*゚∀゚)「マジかい? 城下で人間がアヒャってるってのは」
( ΦωΦ)「それはお前だろ……何度も言うが、部下から聞いたことだから俺も詳しくはしらん。
だがこれだけは言っておく…こんなことマジじゃなきゃ言わねえよ!」
(*゚∀゚)「こりゃあ面白くなってきたね。wktkが止まらないとはこのことだな!」
理由は何であれ、彼は隊長の称号を持つ者。
時と場合によってはそれなりに真面目になるようだ。
- 61: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:33 ucOLlAW8O
(-_-)「全く、何てことをしてくれる…城下の方の連中にも警戒するよう知らせてあるはずなのに
これでは敵軍が攻めてくる前から混乱してしまうではないか。しかも相手が人間となるとどうやって止めれば…」
( ΦωΦ)「やれやれ…相変わらず魔王さんも甘いな」
『人間』という言葉が出た途端、ロマネスクは嘲笑するように言い放つ。
( ΦωΦ)「相手がどうした? 相手が人間だから手加減すんのか?」
(-_-)「いや、そういう訳じゃ――」
( ΦωΦ)「そいつはズルいってモンだぜ。極端且つ難しく言うと、魔物とかには平気で制裁加えるのに、か弱い人間は何をやらかしても手出ししねえってのと同じだ。
相手が何だろうが、肝心な時に厄介事引き起こす馬鹿は叩き潰すべきじゃねえのか?
情けは無用、慈悲だけじゃやってけないぜ…お分かり?」
(-_-)「(…僕が大人しいのをいいことに次々と意見吐いてくるな…)」
そう思いはするが、彼の発言は最もだ。
行き過ぎた慈悲の心こそ、今の自分を惑わしているのかもしれない。
- 62: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:34 ucOLlAW8O
(-_-)「仕方ない…どんな手段を使ってでもいい、その人間を止めてきてくれ」
だが
( ΦωΦ)「あー…俺が行く必要ないと思う」
(-_-)「…それはまた、何故?」
あれほど自分を口説いていた癖に、行く必要がないとは何事であろうか。
( ΦωΦ)「いやだってさ、いつの間にかあの馬鹿が消えてるし」
(;-_-)「…あ!」
先程まで玉座の間にいたはずのつーが、忽然と姿を消していた。
彼女が向かった先も、何が目的で向かったのかも考えることなく解る。
(-_-)「…一番の問題は彼女なのかもしれないね」
( ΦωΦ)「まあ…何というかその…ドンマイ」
この時点でロマネスクとその部下達を派遣しても、余計に騒ぎが増すだけ。
こうなったからには彼女に任せてしまえ、と二人は思うのだった。
- 63: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:37 ucOLlAW8O
城下町。
とはいえ、まともな建物はごく少数しかなく、原形を留めていない建造物が多くを占め
道の端でゴロゴロしている、よくわからない連中も多数いる。
どちらかというとスラム街に近い町で、住人はそれをゴーストタウンと呼んでいた。
だが、現在ここは時折爆発が発生し、普段以上に無法地帯と化している。
その爆発を引き起こしている元凶が、我が物顔で町中を歩いていた。
从 ゚∀从「ハァーッハッハッハインリィーッヒ!!」
所々破れた白いロングコートを纏い、髪は炎のように赤く、長い。
狂気ともいえる笑いをあげている、若き女性だ。
そして、狂気の空間を作り出している彼女を遠巻きに眺める者、恐れおののく者、何故か小さく拍手する者もいた。
- 64: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:40 ucOLlAW8O
彼女の数メートル先には、槍を構えた獣人が数人立っている。
ロマネスクに状況を報告した、要は下っ端兵士達だ。
「信じられんなぁ…あんなに強い人間がいるとか…」
「そんなことはどうでもいい、久々に俺達が暴れる時が来たんだからな!」
「それはいいが、まだ隊長から指示が――」
「馬鹿言うな、隊長のことだから突っ込めと俺達に命ずるに決まっている!
相手はまだ気付いていないはずだ…いくぞ!」
「そうかな…?」
先頭の獣人に続いて、下っ端兵士達は突撃を試みる。
だが
从 ゚∀从「バーカ!」
「うお!? 何だこいつ!?」
一瞬ともいえる程の速度で、女の方から接近してきたのだ。
そして彼女はうろたえる兵士達に強烈な蹴りを次々と叩き込んでいき
反撃の隙さえ与えぬまま、彼等を叩きのめしてしまった。
- 65: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:44 ucOLlAW8O
从 ゚∀从「ヒャハハハ、コテンパンのフライパンだな!」
気絶した兵士を片足で踏みつけ、彼女はなお壊れたように笑う。
そしてある意味凄まじいその光景を、何かに取り憑かれたように魅入る野次馬達。
「有り得ねえ…兵士がゴミのようだ」
「あの姉ちゃん、本当に人間か?」
「どう見たって人間だろう?
魔力は感じられるものの、魂だけでなくちゃんと身体もあるし、姿形からして魔物でもない。正真正銘の人間だよ!」
その人間業とは思えない強さに、ただただ恐れ入るしかなかった。
- 66: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:46 ucOLlAW8O
と、その時だ。
「アヒャヒャ…随分と派手にやっちゃってるねぇ!」
从 ゚∀从「な…何だ? つーか誰だ?」
どこからか高笑いが聞こえてきた。
これに気付いた人間の女性は辺りを見回すが、野次馬共の方は既に状況を理解しているようだ。
「この声は…間違いねえな!」
「…いつものあの方か」
そして次の瞬間、突如出現したナイフのような八本の黒い刃が輪を描くように地面に突き刺さり
それらの中心に人の姿ををとった―――
(*゚∀゚)「ヤッホゥ! 皆の衆お待たせー!」
…野次馬達の言う『あの方』が御光臨なさったという訳だ。
- 67: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 13:50 ucOLlAW8O
「うはwwwwwwつー様ktkr!」
「これは間違いなく面白くなるな!」
「wktk」
火に油を注いだかのように、野次馬達は騒ぎ立てる。
恐らくこの後の展開が読めているのだろう。
(*゚∀゚)「はいはいどうもどうもー」
そして彼等に手を振ったりなんかして反応を示すつー。
ある意味実にシュールな光景だ。
从 ゚∀从「けっ、随分と人気だな…てめえがボスか」
連中が小賢しく感じたのか、つーの目の前にいる女が半ば苛立ちながら口を開く。
それに気付いたつーは
(*゚∀゚)「ま、そりゃ私だから。
…そんなことより、アンタ誰?」
女は腕を組み、声高々に言い放つ。
从 ゚∀从「俺の名は『ハインリッヒ高岡』。
喧嘩と爆破を何よりも快感とする、ぶっ壊れた人間様だ!」
彼女の言葉と同時に、野次馬達がどよめく。
「自分で自分をぶっ壊れたって…これまたすげえ方が現れたもんだ」
などと呟いている者もいたが、二人は気にしない。
(*゚∀゚)「成る程ねぇ…要は腕試し&快感目的で城下を破壊して回ってるわけか」
从 ゚∀从「そういうこった」
- 68: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 14:01 ucOLlAW8O
そこでふと、高岡の表情が曇る。
从 ゚∀从「けどよぉ…この世界に来てからずっと連中の目を忍んで生きてきたが、この町には俺を楽しませるほどの強い奴が居ねえんだよな。
これじゃ何のために今まで頑張ってきたのかわかりゃしねえ!」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ…そんなに戦いたいならこのつーお姉様が相手になってあげるよ?」
既に戦う気満々であるつーに、高岡は少し目を輝かせる。
从 ゚∀从「…お前、強いのか?」
(*゚∀゚)「こいつらの千倍以上の強さは保証するよ」
つーもまた、気絶している獣人達を指差しながらサラリと言ってのける。
やがて野次馬の内の数人が獣人達の足を掴み、どこかへ引きずっていった。
- 69: ◆wAHFcbB0FI :08/10(金) 14:06 ucOLlAW8O
从 ゚∀从「ヒャハハハ…そいつは楽しくなりそうだな」
高岡は右拳をつーへと向け
从 ゚∀从「俺と戦え…存分に殺り合おうじゃねえか!」
ストレートな宣戦布告。
その狂気の混じった鋭い視線は、しっかりとつーを捉えていた。
対し、つーはその言葉を待っていたかのように
(*゚∀゚)b「OK、その挑発乗った!」
この瞬間、野次馬達の興奮が頂点に達したことは言うまでもない。
そして結局、戦闘狂対戦闘狂の壮大な戦いが始まってしまった。
- 72: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 12:41 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「っしゃあ、いくぞ!」
言葉とほぼ同時に高岡が疾駆。
その速度は並の人間のそれを大きく越えており―――
(*゚∀゚)「…こりゃあ凄い」
最早、人間の出せるようなスピードではなかった。
(*゚∀゚)「すっごく殺気を感じるよ。
アンタ人間だけど間違いなく強いな」
从 ゚∀从「余裕ぶっこいてる暇はないぜ?」
すぐ近くまで迫っていた高岡の右拳が、橙色の輝きを放ち始めた。
- 73: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 12:47 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「吹っ飛びやがれ!」
そのまま拳を繰り出すが、それは思い通りには通らない。
(*゚∀゚)「ッ!」
反射的に動いたつーの両腕が、橙色の右拳を阻んでいた。
だが
从 ゚∀从「ヒャハハ…!」
攻撃を止められたはずの高岡が、何故か不敵な笑みを浮かべた。
(*゚∀゚)「何だよ…ッ!?」
互いに接近していた二人の間で突如閃光が走り、続いて爆発。
その衝撃によって両者共々吹き飛ばされ、宙を舞う。
だが至近距離から爆風を喰らったにも関わらず、高岡もつーも空中で姿勢を整え
大したダメージもなく着地。
- 74: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 12:49 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「…何が起きたんだ?」
状況を掴めていないつーが、同じく着地した高岡に目を遣る。
从 ゚∀从「俺がお前に爆発ってモンを披露してやった訳だが、何か?」
(*゚∀゚)「やっぱねぇ…でもどうやって?」
高岡の右手を見る。
橙色の輝きは止まり、しかし右腕の一部がほんの少しではあるが焦げていた。
(*゚∀゚)「まさか…!」
从 ゚∀从「気付いたかよ? その通りだ」
彼女は口の端を歪めて笑う。
从 ゚∀从「俺がこの世界に来て修得した力だよ」
- 75: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 12:56 wVOTV8pbO
魔界の大気に触れた食糧を口にし続ければ、それが普通の人間であっても多少の魔力を得ることができる。
つまり魔界に生きるということは必然的に魔力を身に宿すことを意味する。
(*゚∀゚)「(…ってことはさっきの捨て身っぽい爆発も魔力で起こしたのか)」
よくわからないが、どうやら高岡は魔力によって爆発を引き起こすということが出来るらしい。
ヒッキーなら何か知っているかもしれないが、今はそんなことを考えるものではない。
(*゚∀゚)「今の豪快な爆発、やるじゃん…私とは気が合いそうだよ!」
从 ゚∀从「そいつはどうも。
…んじゃ、続きといくか!」
今度は両腕から橙色の輝きが放たれる。
- 76: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 12:58 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「(こりゃ危ないね)」
これにはつーも少しばかり攻め倦ねる。
相手は、常に両腕に爆弾を仕込んでいるも同然。
下手に接近すれば爆発に巻き込まれる。
(*゚∀゚)「(けど、逆に考えると近付かなけりゃいい話で…)」
そう判断したつーは両腕をクロスさせ、拳を握る。
同時に彼女の指と指の間に、計八本の黒い刃が出現。
それを上に放り投げ――
(*゚∀゚)「魔光刃…あの女を引き裂け!」
命令。
从 ゚∀从「!?」
同時に黒い刃は意志を持ったかのように一斉に高岡へ牙を剥く。
从 ゚∀从「ちっ…」
迫る刃をかわすものの、いくら避けても執拗に襲ってくる。
術者の命令に応じて自由自在に動く、つーが扱う武器の一つ『魔光刃』。
ナイフのように鋭利なそれは、術者であるつーを黙らせるか
刃そのものを破壊しない限り止まることはない。
- 77: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:02 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「アヒャヒャ…さて、どうするのかなぁ?」
武器を持たぬ高岡が魔光刃を破壊するには、接近して爆発を起こすことを選ぶ必要がある。
自分に接近してきた際には蹴り飛ばしてしまえばいい。
だが
从 ゚∀从「…甘いな」
人間とは思えない勢いで高く跳躍。
そして彼女を追う魔光刃。
(*゚∀゚)「…?」
彼女は右腕を迫る刃に向け―――
从 ゚∀从「よーく見てやがれ…こんなことも出来るんだぜ!」
彼女の手の先に、橙色の球体が生成される。
次の瞬間、発射。
- 78: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:04 wVOTV8pbO
球体は束になっていた八本の刃の中心に飛び込んでいく。
そして次に起こるは―――
(*゚∀゚)「また、爆発…?」
閃光の後、やはり空中で爆発が広がる。
やがて爆風が収まると、魔光刃は跡形もなく消えていた。
从 ゚∀从「ヒャハハハハ!!」
地に降り立った高岡が、狂ったように笑う。
(*゚∀゚)「面白いことしてくれるね」
从 ゚∀从「離れてたって無駄無駄!
次はてめえの魂を粉々にしてやるよ!」
瞬時に右腕が橙の輝きを放ち、そして今度はつー目掛けて球体を発射。
(*゚∀゚)「アヒャ…?」
だが彼女は回避姿勢をとらない。
从 ゚∀从「馬鹿かてめえは。避けねえと吹っ飛ぶ――」
だが途中で思わず言葉が止まる。
標的の姿が、一瞬で消えたのだ。
そして球体はつーがいた地点を空しく通過し、何もない場所で爆発。
从;゚∀从「な、何だと!?」
慌てて辺りを見回すが、遅い。
既につーは高岡の背後に回っており―――
(*゚∀゚)「…どーん!」
从;゚∀从「――ッ!?」
力を込めたつーの鋭い蹴りが、高岡の背に叩き込まれた。
不意を突かれた高岡は抵抗できずに吹き飛び、地を滑る。
- 79: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:07 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「まさか、それだけでダウン…なんてことはないよね?」
从#゚∀从「ったりめえだろうがぁ!」
つーの言葉に応えるかのようにすぐさま立ち上がる。
从 ゚∀从「俺は! 喧嘩で誰にも負けねえ人間であり続けてきた!
だからこれからも…俺が負けることなんか絶対にねえんだよ!」
野次馬達が、感嘆の意を表す。
それはつーも同じだった。
(*゚∀゚)「…因みに、魔界に来て何年になる?」
対し、高岡は
从 ゚∀从「夜しかねえのにそんなの解るか!
…ま、せいぜい一年経つか経たねえかってとこだな!」
(*゚∀゚)「はぁ!?」
これにはつーも野次馬達も、驚愕を隠せない。
どうやって生き延びてきたのかは謎だが、たった一年前後の魔界での生活でここまで魔力を扱えるようになった人間など、見たことも聞いたこともなかったからだ。
- 80: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:10 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「…おかしいとか思ったか?」
つーを見据えながら、野次馬にも聞こえる声で高岡は言った。
从 ゚∀从「人間、その気になれば大抵のことは出来る。
俺の曾祖父さんがそういう人間だったらしいから間違いねえ!」
(*゚∀゚)「要は『根性』ってやつかい…戦う者として、それはいい心掛けだよ!」
今度はつーの方から地を駆け接近。
瞬間移動を用いずとも、その速度は相当なものだ。
从 ゚∀从「……」
高岡はそのまま動かず、迫るつーを見据えながら身構える。
(*゚∀゚)「っ!」
高岡が動こうとしないのに違和感を感じながらも、つーは助走からの回し蹴りを繰り出す。
だが
从 ゚∀从「…当たらねえな」
瞬間、高岡はそれをギリギリのタイミングで回避。
それと同時に彼女の両腕が橙色の輝きを放つ。
从 ゚∀从「わざわざ近付いてきてくれてありがとよ!」
即座に『魔力』という爆弾を仕込んだ打撃をつーへと放つ。
- 81: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:15 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「そう来たか…けど!」
それはやはり、つーを捉えることなく宙を掠めるに留まる。
たとえ高岡の攻撃が常人より素早くとも、つーの瞬間移動を捉えることは容易ではない。
そして瞬間移動で再び高岡の背後に回ったつーは、力を篭めた蹴りを放つ。
从 ゚∀从「何度も同じ手は喰わねえよ!」
高岡はすぐさま振り返り、拳を突き出してつーの足を阻む。
直後、彼女はそのままの姿勢で爆発を引き起こした。
爆発の影響で両者、後退させられる。
- 82: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:18 wVOTV8pbO
爆発後の判断に慣れているのか、先に動き出したのは高岡。
足を踏ん張って反動を強引に抑え、すぐさま次の動作に出る。
从 ゚∀从「もう一発だ!」
一気に距離を詰め、再び橙色に輝く右拳を繰り出す。
(*゚∀゚)「爆発って面白いけど…怖いねぇ」
軽い言葉を発しつつ、つーは回避運動をとる。
从 ゚∀从「まだまだぁ!」
打撃はそれだけに留まらない。
右拳を繰り出し、避けられては即座に左拳で攻撃を仕掛け―――
並の人間には到底真似できぬ、高速の連続打撃。
だが爆弾を仕込んだ危険な両拳を、つーは余裕な表情で回避していく。
(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャヒャ…」
彼女の目は、高岡をしっかりと捉えている。
それはまるで、何かを試すかのよう。
何のことはない。彼女はこの戦闘で、未だ自身の力の半分も出していなかった。
- 83: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:24 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「ちっ…ならこうだ!」
このまま続けても全て回避されると判断した高岡は、真上に高く跳ぶ。
そして両腕を地上にいるつーへと向け
从 ゚∀从「吹っ飛びやがれ!」
橙の球体を乱射。
次の瞬間、地上で起こるは閃光と爆発の嵐。
轟音が鳴り響き、土は爆風で蹂躙され、砂が派手に舞う。
从 ゚∀从「さあ、どうなったかな」
地に降り立ちながら、爆発を見据える。
だが爆風と砂煙が収まると、そこにつーの姿はなかった。
从 ゚∀从「マジかよ…さては、避けやがったのか?」
注意深く辺りを見回すが、見えるのは先程の連続爆撃を目の当たりにし、呆気にとられている野次馬達のみ。
では、奴はどこに?
- 84: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:26 wVOTV8pbO
そう思った時だ。
「どーこ見てるのかなぁ?」
その声は上空から聞こえてきた。
从 ゚∀从「まさか――」
慌てて空を見上げるが、遅い。
从;゚∀从「…!?」
次の瞬間、高岡の周囲では無数の黒い刃が風切り音を奏でながら高速で飛び回っていた。
つまり、完全に包囲された状態。
从;゚∀从「…くそっ」
悔しげに再び空を仰ぐ。
不気味な赤い月しかないはずの魔界の空に、見えにくいものの確かに何かがいた。
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、ここまでおいでー!」
その正体は鷲のように大きく、烏のように黒い翼を広げたつー。
無論、今高岡を包囲している無数の黒い刃―――魔光刃を放ったのも彼女。
- 85: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:29 wVOTV8pbO
魔光刃は単純に相手を狙う以外にも、いくつかの攻撃パターンを持ち
その内の一つが今、実行されていた。
相手を無数の魔光刃で包囲し、回避運動を封じた後に一斉に切り刻むというものだ。
そして相手を切り裂く際に魔光刃は鮮血で赤く染まるため、つーはそれを『Blood Rose』と称している。
从;゚∀从「何なんだよあいつ…」
悪態をついてはみるが、それは無駄な足掻きだ。
避けようにも回避運動の可能な範囲が限られているのでそうもいかない。
(*゚∀゚)「(さあ…どう出る?)」
地に降り立ち、様子を眺めるつー。
まるで、高岡がどうやって攻撃を回避するのかを楽しみにしているようだ。
- 86: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:34 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「(仕方ねえ…こうなりゃ!)」
何を考えたか、高岡は動作を止め、その場で神経を集中させ始めた。
その両手は前に差し出し、警戒するように辺りを見回す。
そして彼女はそのままの姿勢で刃を見据えるのみとなる。
(*゚∀゚)「……」
まだ魔光刃は高岡の周囲を飛び回っている。
が、やがて―――
(*゚∀゚)「……kill」
殺戮命令。
同時に、魔光刃の動きが止まる。
そして次の瞬間、無数の刃が高岡へと牙を剥く。
―――が、それは叶わなかった。
- 87: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:37 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「!?」
魔光刃が一斉に高岡へと飛び込む直前、彼女を中心に爆発が発生したのだ。
(*゚∀゚)「わざわざ自分を巻き込んでまで爆発起こして、それで魔光刃を破壊した…?」
つーや野次馬達は唖然とした様子で煙を眺める。
何がしたいのかよく解らないが、これで奴も相当の痛手を負ったはず。
やがてそう思ったつーは大した警戒もせず、未だ煙が昇っている方へ歩み寄る。
- 88: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:42 wVOTV8pbO
だが、予想は違った。
突如煙の中から飛び出してくる人影があったのだ。
从#゚∀从「いくぞこの野郎!」
(*゚∀゚)「!?」
それは紛れもなく高岡。
服やコートは爆発で大部分が焼け焦げ、身体にも多大なダメージが及んでいるとみえる。
だが戦意は未だ消えておらず、その両腕は橙の輝きを放っている。
そして高岡は既に、無防備なつーの目の前まで接近していた。
(*゚∀゚)「嘘だろ…!?」
从 ゚∀从「嘘じゃねえよバーカ! これが現実だ!」
そのまま両拳をつーへと繰り出す。
対し、つーは突然の事態に反応できず、瞬間移動という回避手段まで頭が回らない。
慌てて防御姿勢をとり、高岡の拳を阻むが――
从 ゚∀从「砕け散れ! ゲームセットだ!」
(*゚∀゚)「!?」
次の瞬間、高岡の拳に仕込まれた魔力が暴走を始める。
それは爆発という形となり、一瞬でつーを飲み込む。
从 ゚∀从「…ッ!」
爆発の反動で高岡自身も後退させられるが、両足を踏ん張り強引に勢いを止めた。
- 89: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:44 wVOTV8pbO
从 ゚∀从「俺にミスなんて有り得ねえのさ。流石に無傷ではいれねえけどな!」
つーが飲み込まれた爆発に目を遣り、勝ち誇った笑みを浮かべながら呟く。
魔力の影響なのか、高岡の身体はある程度の誤爆には耐えられるようになっており
自分を中心に爆発を起こしたにも関わらず、致命傷を受けなかったのもそのためである。
从 ゚∀从「へっへ…終わったな! どうだこの野郎!」
今まで幾度となく引き起こした爆発で全身を負傷した高岡が、今度こそ勝利を確信する。
だがその時、野次馬の一人が口を開いた。
「姉ちゃん…アンタまだわかってねえな」
从 ゚∀从「あ?」
不意に言葉をかけられ、思わず間の抜けた声を発する高岡。
だがその直後、全てを理解することとなる。
- 90: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:47 wVOTV8pbO
「つーちゃんが、その程度の攻撃でやられる訳がない、と言いたいんだが」
从 ゚∀从「…え?」
慌てて爆発地点に目を向ける。
まだ煙が昇っているが、それは徐々に薄らいできている。
そして視界が晴れていくと、やがて高岡の表情は大きく変わった。
从;゚∀从「う…嘘だろ!?」
煙の中に、人影が確認できたのだ。
(*゚∀゚)「アヒャヒャ…嘘じゃないんだなこれが!
そんでもってこれが現実よ! アーッヒャッヒャッヒャ!」
どう見ても先程止めを刺したはずの相手―――つーだった。
マントは所々破れてスーツが露出しており
しかしフラフラになりながらも、彼女は戦意の欠片も失っていなかった。
从;゚∀从「な…何だよ、お前一体何なんだよ!?」
(*゚∀゚)「うん、このチャーミングな姿を見りゃ解るだろうけど、私はそんじょそこらの魔物や幽霊とは違うの。
なにせ私はつー様だからな!」
もはや理屈の欠片もない、ある意味凄まじい返答。
だが高岡は言葉を返すことはない―――というか、返せない。
魔力を用いた強力な爆発をあれだけぶつけても平気な顔をしているつーが、怖かった。
- 91: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:53 wVOTV8pbO
その心境を悟ったのかは解らぬが、つーは笑いを浮かべたまま続ける。
(*゚∀゚)「それだよ…その怖がる表情を拝むのが私は好きなのさ…でも」
从;゚∀从「……」
(*゚∀゚)「…アンタ、なかなか出来る! 気に入った!
だからほんのちょっとだけ、私の本気ってやつを見せてあげるよ!」
言うなり、右手を掲げる。
そして次の瞬間、彼女の右手には血のように赤く不気味な大鎌が握られた。
異常なまでの禍々しさを放つ、つーだけが扱えるという大鎌『ロスト』だ。
- 92: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 13:57 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「さ、続きといこうか!」
その右手で即座にロストを振るう。
それと同時に赤き刃から新たな刃が生成され、高岡へ向けて放たれる。
从 ゚∀从「!」
ようやく我に返った高岡は左方へ跳び、迫る刃を回避。
だが先程までに比べ、その動作は敏捷度に欠けている。
いくら自らが引き起こす爆発の衝撃を抑えられるとはいえ、それは完全に防げる訳ではなく
さらに自分の足下で爆発を起こしたりした結果、彼女の体力は確実に削られていたのだ。
- 93: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 14:00 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「アヒャヒャ! 近寄ってこれるものなら来てごらんよ!」
そして次々と襲いかかる赤い刃。
これ以上避け続けていても、いずれは切り裂かれると思った高岡は右腕を重々しく振り上げ―――
从#゚∀从「近付かなくたって…もう一発お見舞いしてやらあぁぁ!」
咆哮と共に橙の球体を放つ。
从 ∀从「ハァーッハッハッ…」
その後狂ったように笑い始めた高岡であったが、力を使い果たしたのか
やがて彼女は糸を切られた操り人形のように、その場に倒れた。
(*゚∀゚)「…それが最後の一撃ってやつか…残念」
高岡が倒れたのを見たつーは攻撃を止め、飛んでくる球体にロストを直接投げつける。
すると宙に飛んだロストは独りでに動き、球体を両断したかと思うと再びつーの元へと戻った。
結果、高岡が放った最後の球体は空中爆発し、跡形もなく消滅。
この瞬間、戦闘狂同士の戦いはようやく幕を閉じる。
- 94: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 14:02 wVOTV8pbO
「乙! 見てて興奮した!」
「次回も活劇を見せて下さい!」
(*゚∀゚)ノ「アヒャヒャ! サンキュウ!」
野次馬達の拍手喝采を一身に受け、それに満足げに反応を表すつー。
だが
(*゚∀゚)「さて…次だね」
ふと笑うのを止め、倒れている高岡へと歩み寄る。
(*゚∀゚)「ん…こいつ、体力的ダメージと魔力の使い過ぎで気を失ってやがるな」
そして彼女が次にとった行動は―――
(*゚∀゚)「さて、行くか」
どういう訳かつーは、気絶している高岡を両腕で掴み、翼で飛び立とうとしていた。
- 95: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 14:05 wVOTV8pbO
「えぇ!? 何するつもりですか!?」
(*゚∀゚)「見ての通り、どっかで休ませてやる訳だよ」
驚きを隠せない野次馬の質問に、つーは平然と答える。
それを聞いた野次馬達は、一層頭に疑問符を浮かべた。
そう思うのも無理はない。
つーはいつも、気絶まで追い込んだ相手はそのまま放置するか
場合によっては容赦なく止めを刺すかのどちらかだった。
そんな残忍なつーが、倒した相手を介抱(?)するというのだ。
「しかし…一体どこへ連れていくつもりだ?」
(*゚∀゚)「そうだな…それは内緒!
嗅ぎ回るような真似したら魔光刃千本プレゼントの刑だからね!」
「は…把握!」
…彼女ならやりかねない。
皆が皆そう思い、そして野次馬達は追うことをやめた。
- 96: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 14:09 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「それじゃ、私はもう行くよ。
そろそろ例のあいつらが攻めてくるっぽいから、各自死なぬ或いは消滅しないよう十分に気をつけたまえ!」
野次馬達にそう言い放ち、つーは大きく羽ばたく。
彼女の身体が一瞬で数メートル程飛び、一気に魔界の空を翔る。
空を巡回しながら、彼女は一人呟く。
(*゚∀゚)「あー、本番前の良いウォーミングアップになったかな?」
その両腕は落としたりしないよう、しっかりと高岡を掴んでいる。
从 -∀从
彼女はこの戦いに満足したというような表情をしていた。
(*゚∀゚)「(こいつとはまだまだ遊びたいしね。ここで殺すのは勿体ないってもんだよ)」
つーは小さく笑いながら、ふと溜め息をつく。
(*゚∀゚)「(しかし私も駄目だね。魔界の人間となるとやっぱり殺す気には…)」
そう思いかけて、彼女は慌てて首を横に振った。
- 97: ◆wAHFcbB0FI :08/11(土) 14:16 wVOTV8pbO
(*゚∀゚)「…ま、こいつを休ませるついでに私もパーッとやるかな!
あいつは人間嫌いだけど、まあなるようになるよ!」
そうして彼女はある方角へと向かおうとし、ふと地上を見下ろす。
(*゚∀゚)「…アヒャヒャ?あれは…」
その際、彼女は魔界に存在しないはずの何かが多数いることを見つけ―――嬉しそうに笑いを浮かべた。
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