( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

109: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 18:06 MZD85HK3O

第四話 『傷跡』



城を挟んで城下町と正反対の方向に、荒れ果てた土地がある。
あまりに荒んだ土地であるため、魔界の住人達も興味を持つことはなく
ただ『名もなき荒野』として謳われるのみ。


だがそんな孤独を絵に描いたような土地に、木造らしき小屋がポツンと佇んでいる。
そして、その正面には二つの影。

(#゚;;-゚)「…着いた」
( ´∀`)「ここモナ?」

ある場所へ行くために城から出てきたでぃとモナーだ。

( ´∀`)「こんなところに小屋があったなんて…わかりやすそうで、なかなか気付かないモナね」
(#゚;;-゚)「…タカラはもういると思う。
     酒のことになると行動速いんだから……入るよ」



110: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 18:10 MZD85HK3O

でぃが小屋のドアを開け、二人は中に入る。
だが、そこには闇に包まれた空間が広がっているのみ。

(; ´∀`)「…何もないモナよ?」
(#゚;;-゚)「よく見て…ここ」

でぃが示した先を見ると、そこには怪しさ満点の古びた井戸があった。

( ´∀`)「な、なかなか凝ってるモナね」

覗いてみるも、当然暗闇が広がっているだけで底は見えない…が、水が張っていないことだけは何となく理解できた。
恐らくタカラやつーが言っていた『井戸』とはこのことなのだろう。



111: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 18:49 MZD85HK3O

(#゚;;-゚)「…梯子付いてるからそれ使って降りて」

でぃに促されるままに、モナーは梯子に手をかける。

( ´∀`)「暗いから落ちないように気を付けなきゃいけないモナね。
       ところででぃちゃん、君はその身体でどうやって梯子を上り下りするモナ?」
(#゚;;-゚)「…飛び降りる。上がる時は上がる時でノープロブレム」
(; ´∀`)「(大胆モナ…)」

モナーも今では幽霊なのだから飛び降りても大丈夫、とは敢えて突っ込まないでぃである。



112: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 18:51 MZD85HK3O

さて、十メートル程降りたところでモナーは井戸の底へと到達。
少し待っていると、先程自分が降りてきた位置に箱に身を引っ込めたでぃが落下してきた。

(#゚;;-゚)「…成功」
( ´∀`)「お見事モナ。
       それににしても、ここは信じられないくらい広いモナ!」

辺りを見回すとそこは、井戸の底とは考えられぬ程の広大な空間。
やがて、一軒の古ぼけた木造の家がモナーの目に入る。

( ´∀`)「…もしかしてアレモナ?」
(#゚;;-゚)「そう」

よく見ると家は少しばかり右に傾いており、老朽化も進んでいるようで危なっかしいことこの上ない。
だが、魔界の住人にとってはそんな荒廃した有り様が好みなのだ。

( ´∀`)「改めてwktkモナー!」
(#゚;;-゚)「…じゃ、入る」

軽くノックし、ドアノブに手を伸ばす。

(#゚;;-゚)「お邪魔します…よ」

ドアノブを捻り、引く。
鈍い音と共にドアが開いた。



113: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 18:54 MZD85HK3O

( ´∀`)「おお…」

そこは所謂、素朴な喫茶店或いはバーのような所。
だがやはり内部も廃墟に近い状態で、暗い雰囲気が漂っていた。

( ^Д^)「誰だ…ってお前等か!」

そしてカウンター席らしき場所に座り…というか乗っかり、片手にコップを持ったタカラが早速声をかけてきた。

(#゚;;-゚)「…やっぱり酒飲んでるよ…モナー君が来たいって言うから連れてきたんだ」
( ´∀`)「話を聞いて僕も来てみたくなったモナ!
       気になったことは追求するのが人の常モナ!」
( ^Д^)「ほーう…俺が昔つるんでた奴等と似た理論だな。
     まあ今のお前なら大丈夫だろ。とりあえずゆっくりしてけ」

彼はコップの中身を一気に飲み干し

( ^Д^)「おい、ちょっと来てくれ」

店の奥に向かって声をかけ始めた。



114: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:08 MZD85HK3O

( ´∀`)「穴の開いた床に壊れかけた椅子…ここは僕にとっても居心地のいい場所モナ」
(#゚;;-゚)「…ナカーマ」

感心の意を表すモナーと、さり気なく相槌を打つでぃ。
生前から廃墟のような場所を好んでいたモナーは、すぐにこの環境に溶け込んだようだ。

( ´∀`)「でも、荒野の地下にこんな所があるとは誰も思わないモナよ」
川д川「実際、ここを訪れる方は少ないですからね」
(; ´∀`)「やっぱり…って、貴女誰モナ?」

いつの間にか、カウンター越しに白い袴を纏った女性が立っていた。
その黒髪は異様に長く、そして前まで垂らしている。

川д川「…申し遅れました。私、貞子と申します。一応、この家の主です」
( ^Д^)「…そういう訳だ、モナーもここに通うんなら仲良くなれよ?」

成る程、この荒れ果てた店内(?)に暗い感じの主とくると確かに違和感がない。



115: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:10 MZD85HK3O

( ´∀`)「そうだったモナか!
       僕はモナーっていうモナ! よろしくモナ!」
川д川「こちらこそ…ところで、貴方は以前人であられたのでは?」
(; ´∀`)「え…あ、はい確かにそうモナ。けど何でまたいきなり…?」

唐突に話題を変えられ、戸惑いながらもモナーは答える。

川;д川「あ…申し訳ありません」

そして何故か謝罪の言葉を発する貞子。
それを見たでぃがモナーに小声で忠告する。

(#゚;;-゚)「…来る前に言ったよね…ここの方々は人間嫌いだって」
( ´∀`)「そ、そうだったモナ」



116: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:15 MZD85HK3O

この貞子という女性、相当昔からここでひっそりと暮らしているらしく
現にタカラやつーが初めてここに来た時には既に家は老朽化していたという。
そして彼女はここを訪れたごく少数の者とのみ友好関係を結び
どういう訳かそれ以外の連中、特に人間とは交流を深めようとしなかった。
が、特に深い理由がある訳ではなく、単に生理的に受け付けないのだとか。

(#゚;;-゚)「…まあ君は大丈夫だから気にすることないよ」

そう言うとでぃはタカラと同じようにカウンター席に乗っかる。

( ´∀`)「(確かに僕も初めて見るモナ…きっとこの空間がよっぽど好きモナね)」

でぃに続き、モナーも席についた。



117: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:19 MZD85HK3O

皆が席に着いたのを見た貞子は改まって口を開く。

川д川「さて…何か注文は?」
(#゚;;-゚)「…いつものコーヒーを一杯」

決まり文句のようにコーヒーを頼むでぃ。

川д川「…モナーさんは?」
( ´∀`)「…え?」

初めてなので当然何を頼めばいいのかわからない。
第一品書きらしきモノがどこにも見当たらない。
と、その時。

( ^Д^)「よし、俺はさっきのおかわりを、モナーには魔界酒を一杯。
     勿論このタカラ様のおごりでな!」

途端に、でぃと貞子がくすくすと笑う。

川д川「では少々お待ちを。
    …百も承知でしょうが、お金などは取りませんよ」
( ^Д^)「うるせー、一度言ってみたかったんだよ!」

カウンターの奥へ入っていく貞子に、タカラは文句を垂れる。



118: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:23 MZD85HK3O

( ´∀`)「店とはいっても、やっぱりお金とかはないモナね」
( ^Д^)「まあな、飲みたいだけ飲むってのが俺達のルールだ」
(#゚;;-゚)「……」

この世界に、金というモノは存在しない。
幽霊であるモナーのように食事という行為さえもとらない連中もいたりはするが、結局のところ食料さえあれば大方やっていける訳で
一人の者が食料を独占したりしない限りは他人から奪ったりしようが自由。
それが、魔界のルールだった。

( ^Д^)「そう考えるとここは本当にいいよな。
     あっちの世界と違ってタダで酒が飲めて、しかも魔界の地上みたいにやかましい連中もいねえ。安さ爆発ってレベルじゃねーぞ!」
( ´∀`)「それはまさに天国モナー!」

大したことでもないのに、やたらと騒ぎ立てるタカラとモナー。

(#゚;;-゚)「…仲良いなぁ」

一体どうやったらたった二人でここまで盛り上がれるのかなどとでぃは思ってしまうのだった。



119: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:38 MZD85HK3O

( ´∀`)「…今思ったけど、ここは何となく不思議な雰囲気も感じるモナ」

ふと、モナーがそんなことを口にする。
それを聞いたタカラは何かを思い出したらしく

( ^Д^)「そうそう、これはつーの野郎から聞いた噂なんだが…」
(#゚;;-゚)「…?」

タカラは出入口の方を気にしつつ口を開く。
この場所を知る者は数える程しかいないのだが、念の為にという動作だろう。

( ^Д^)「この家の奥には何かすげえモンがあるらしい。武器なのか強大な魔力なのか、わかんねえけど何かがあるんだとよ。
     …あと、貞子ちゃんは現世の技術にも精通してるって話だ」
( ´∀`)「よくわからないけど、色々と凄い秘密があるってことモナね」
( ^Д^)「まあ俺もよくわからんのだがな」



120: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:41 MZD85HK3O

やがて奥に行っていた貞子が戻ってくる。

川д川「お待たせしました…」

続いて、小さい何かが奥から飛び出してきた。

(・∀・)「チュウモンノシナダ!」

通常の数十倍程の牡丹餅に、小さな両手をつけたような外見の小柄な魔物。
それは手にしていた三つのコップをカウンターに置くなり、さっさと奥へ戻っていった。

( ´∀`)「えーと、今のは…?」

驚異的なすばしっこさに驚きつつモナーが訊ねる。

川д川「使い魔、とでも言えばいいでしょうか。ちょっと違うかな…
    因みに名は『ジエン』といいます」
(#゚;;-゚)「あの子の働きぶりは感心できるよ…今見た通り、ちょっとそそっかしいけど」

苦笑しながら、コーヒーの入ったコップを手に取る。
だがその時既に他の二つのコップはなかった。
それはつまり誰かが持っているという訳であり―――



121: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:43 MZD85HK3O

( ^Д^)「どうだ、貞子ちゃん特製の魔界酒は!」
( ´∀`)「これは何とも癖になる味モナ!」

タカラとモナーは各々のコップの中身を一気に飲み干し

( ^Д^)( ´∀`)「おかわり(モナ)!」

共にコップをテーブルにドン、と置いた。

(#゚;;-゚)川;д川「……」

二人のあまりの興奮した様子に一瞬場の空気が凍りついたが、やがて我に返った貞子がカウンターの奥に向かって声をかける。

川д川「ジエン…二人に同じの頼むわ」



122: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:47 MZD85HK3O

(・∀・)「オカワリドゾー!」

間もなくジエンが酒の入ったコップを二つ持って現れ、それをテーブルに置いて脱兎の如く戻っていった。
そして、それらに飛びつくタカラとモナー。

(#゚;;-゚)「…今日タカラは何杯飲んでる?」
川д川「これでもう五杯目」
(#゚;;-゚)「…例によって飲み過ぎだね」

溜め息をつく。
それがタカラの耳に届いたのかは解らぬが

( ^Д^)「平気だ、俺はいくら飲んでも酔わねえから問題ない!」
(#゚;;-゚)「そういう問題じゃないってのに…」

呆れ果てるでぃに、まあまあと言いつつ貞子が割って入る。

川д川「…近い内にまた厳しい戦いが始まるんだから、今はゆっくりしていってよ」
( ´∀`)「モナ? 貞子ちゃんも知ってるモナ?」
川д川「こう見えても私、情報収集は結構早いんですよ」

地下から出ずにどうやって情報収集しているのかは謎だが、モナーは敢えて口に出さない。
これもまた、この家又は貞子の謎の一つなのだろう。



124: ◆wAHFcbB0FI :08/18(土) 19:52 MZD85HK3O

( ^Д^)「…とまあ、そんな訳だから今日はただ飲む! これに尽きる!」

ゆっくりしていくよう言われたことをいいことに、一層気が高まったタカラ。

(#゚;;-゚)「結局いつもと同じじゃん…」
( ^Д^)「そう言うな。お前もコーヒー飲めよ」

言われて、でぃは無言でコーヒーを飲み始めたが、やがてその手を止める。

(#゚;;-゚)「…ねえ」
( ^Д^)「ん? 何だ?」

今度は酒を少しずつ飲みながら反応を返すタカラ。

(#゚;;-゚)「本当に…戦うの?」
( ^Д^)「戦うって…その侵略者とかいう連中とか?」
(#゚;;-゚)「うん…あいつら、凶悪ってレベルじゃないよ」

かつて侵略者達との戦いを経験らしいでぃが呟くように言う。
対し、タカラは少し考えるような仕草をとり

( ^Д^)「…ちょっとばかり話聞こうか。
     相手がどんな連中なのか解った方が、何かとやりやすいからな」

そう言いつつ、酒を一気に飲み干す。
それを確認したでぃは再び口を開いた。



127: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 18:34 23m/RD4mO

(#゚;;-゚)「まず簡単に言うと、あいつらは本当に冷酷で残忍。出来ることならタカラには戦ってほしくない」
( ^Д^)「ほう…それって結局つーの野郎と同じじゃねえか?」

でぃは首を横に振る。
タカラが思っているような相手とは遥かにかけ離れているからだ。

(#゚;;-゚)「…ある意味、つーちゃんよりタチが悪い。何せ感情ってモノがない。
     狂気の笑いもせず、哀愁の表情も出さず…奴等は倒れるまでただ動き続けるの」



128: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 18:42 23m/RD4mO

無論、倒されたのは魔界の住人だけではない。
侵略側も多数が犠牲となったのだが――

(#゚;;-゚)「…味方が倒れても、奴等はまるでそこに何もないかのようにそれらを踏みつけて進んでいった。
     そうして休むことなく破壊と殺戮を繰り返し、やがて倒される…自分の命のことなんか全く考えていなかったよ」

相手は疲れも痛みも感じぬ存在であり、己の命を考えないというよりも、その生命すら感じさせない程であったが
でぃも含め当時の魔界の住人達はそれらが何者なのかは解らなかった。



129: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 18:46 23m/RD4mO

だが敵の中にも言葉を発し、感情を持っていると思える者が唯一存在した。

(#゚;;-゚)「…連中を率いて現れた、一人の女。
     私達と同じ魂だけの存在でありながら、他の侵略者達と同じように…うん、よく解らなかった」
( ^Д^)「(つーが殺り合ったっていう奴か)
     とりあえず、そいつがボスとみていいんだな?」
(#゚;;-゚)「うん…でも血も涙もないような、とっても冷酷な相手だよ」

そこまで言うと、でぃは俯いた。

( ^Д^)「…どうした、調子悪くしたか?」
(#゚;;-゚)「…ううん、何でもない」
( ^Д^)「……」

――いや、何か変だ。
タカラは直感でそう判断し、そして何かを思案する。


感情を持たないという、異質な侵略者達。
その侵略者達の指揮官らしき女。


先程までの話を聞く限り、でぃは敵の特徴を不思議な程によく知っている。
特にリーダーである女のことに至っては、直々に一戦交えているかのような話しぶりだ。

もしや、彼女は―――



130: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 18:49 23m/RD4mO

( ^Д^)「なあ…確かそいつらが攻めてきたのは二百年前、つまり俺が魔界を離れていた時なんだよな?」
(#゚;;-゚)「…そう」
( ^Д^)「そんでもって…お前が全身傷だらけになったのも俺がいない時、と」

返事はない。
だが、それだけで十分だった。

( ^Д^)「今まで聞かずにいたが…何故お前がそんなになっちまったのか、話してくれねえか?」

それを聞いて、でぃは虚ろな目をタカラへと向け重い口を開いた。

(#゚;;-゚)「…もう解ったと思うけど…この全身の傷はその二百年前の戦いで負ったもの」

そして

(#゚;;-゚)「私をここまで追い詰めたのは…あの指揮官の女だった」
( ^Д^)「…!」



131: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:08 23m/RD4mO

二百年前の戦い、つまり一度目の襲撃。
でぃも他の住人達に混じって迎撃を行っていたのだが、やがて彼女は例の女と遭遇する。

もはや、それ自体が何とも不運な出来事であった。
その女が侵略者達を指揮していると知ったでぃは抵抗を試みるが、とても彼女が太刀打ちできるような相手ではなかった。
でぃが持っていた、ありとあらゆる攻撃手段を用いても歯が立たず
逆に女は手にした漆黒のサーベルで、でぃに痛々しい傷を与えていった。

(#゚;;-゚)「あの時は本当に怖かった…もう駄目かと思ったよ」
( ^Д^)「……」

周囲には既に味方はおらず、一対一の戦闘を余儀なくされ、そして相手の力と自分の力には天と地の差。
逃げることもできず、彼女は自身を諦めかけていた。



132: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:13 23m/RD4mO

だがそんな絶体絶命な状況であったでぃは、意外な形で救われることとなる。
二人が戦っているのを見つけたつーが突如二人の間に割って入り、そのまま女と戦いを開始してしまったのである。

(#゚;;-゚)「…多分本人は助けるつもりじゃなかったんだろうけど、そのお陰で私はどさくさに紛れて避難できたという訳」
( ^Д^)「…成る程な」

つーらしい行動だと苦笑しつつ、タカラは思う。

自分が悠々と現世を放浪していた時に、魔界はどれほど恐ろしい連中に攻められていたのか。
そして自分がでぃを護ってやれなかったことを、この時密かに、しかし強く悔やむ。

今まであまり重く捉えなかった彼女の傷跡が、目も当てられない程痛々しく感じられた。



133: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:20 23m/RD4mO

そして

( ^Д^)「…でぃ」
(#゚;;-゚)「?」

彼にしては珍しく真面目な口調で、タカラは目の前にいる者の名を呼んだ。
それに対し、でぃは不思議そうにタカラに目を遣る。

( ^Д^)「お前は今回、下手に戦うな。代わりに俺が頑張るから。
     次にその女に出会っちまったら、今度こそ終わりだぞ。だからお前は外に出ずに魔王さんの所へ行ってろ」
(#゚;;-゚)「……」

返事はない。
それを否定と受け取ったタカラはさらに続ける。

( ^Д^)「…二百年前のような辛い思いはもうお前にさせたくねえんだよ。
     そんな訳で、今度はお前が休んで俺が戦う番だ」

彼の言葉には、普段は見せぬ強い意志が感じられた。


何だかんだで己の身を案じてくれているでぃの気持ちも、わからなくはない。
だが前回自分は戦闘に参加してすらおらず、でぃは深い傷を負ってしまった。

( ^Д^)「(なんつーか、俺も一応…人間でいう男だ。
     ガールフレンドの一人くらい護ってやれなくてどうすんだよ)」

妙な考えを抱きつつ思う。
これ以上でぃを傷つけさせたくない。

その意志は堅く、決して曲がりはしないだろう。



134: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:44 23m/RD4mO

(#゚;;-゚)「…わかったよ」

半ば呆れるように、諦めたようにでぃが口を開いた。

(#゚;;-゚)「…この際、タカラが言うように動くよ。その代わり―――」
( ^Д^)「その代わり?」

彼女は少し口調を強め

(#゚;;-゚)「何が襲ってきても…絶対にやられないで。必ず消滅せずに無事に戻ってきてよ」

するとタカラは考える素振りをみせ、いたずらっぽく言う。

( ^Д^)「できたら、な」
(#゚;;-゚)「……」

でぃの表情が変わったのを見て、軽い口調のまま宥める。

( ^Д^)「待て、冗談だ冗談。約束するから許せって」
(#゚;;-゚)「…もう!」

そうして二人は小さく、しかし楽しげに笑い合うのだった。



135: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:50 23m/RD4mO

さて、彼等の隣ではいつの間にか蚊帳の外となっていたモナーが、相変わらず酒を飲み続けていた。

( ´∀`)「おかわりモナ」
川д川「これで三杯目…結構飲みますね」
( ´∀`)「酒なら酔わない限りいくらでも飲めるモナよ」

そう言って、ジエンが新たに運んできたコップを受け取る。

( ´∀`)「とは言ったものの…流石に酔いが回ってきたかもしれないモナ」

だが、言葉とは裏腹にモナーはまたもや一気に酒を飲み干した。
それを見て、貞子はつぐつぐ思う。

川д川「(…自棄起こしましたね)」



136: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:55 23m/RD4mO

何やら良さげなムードである隣を見て、モナーは深く溜め息をつく。

( ´∀`)「…あーあ、二人が羨ましいモナ」
川д川「(やっぱりね…)
    モナーさんにはやっぱりガールフレンドとかはいないんですか」
( ´∀`)「当たり前モナ…ただでさえ人間が少ない魔界、僕みたいな人間の幽霊には恋愛の『れ』の字もないモナ。
       因みに、やっぱりなんて言い方はやめてほしいモナ」
川д川「はあ…申し訳ありません」

そう言いながらも、恋愛対象となる相手がいない理由を自分でしっかりと述べてしまっているモナーが、貞子には内心可笑しく思えてしまうのだった。

川д川「ま…まあアレです、気にすることなんてありませんよ」
( ´∀`)「そ、そうモナね」
川д川「一人で飲むのが退屈でしたら私が話し相手になりますから」
( ´∀`)「なんと…貞子ちゃんは優しいモナー!」
川д川「……」

普通なら喫茶店やバーの主は来訪者との会話をするものだろうと貞子は思ったりするが、果たしてどうなのだろうか。



137: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 19:59 23m/RD4mO

と、その時ドアをノックする音が聞こえてきた。
ノックというより、寧ろ拳で叩くような音。

川д川「この叩き様は…」

言い終わる前にノックした人物は勝手にドアを開け、中に入ってくる。

(*゚∀゚)ノ「やあ諸君、調子の方はどうかね!
     ちょいと色々用があるから来ちまったよ!」

見るからに一戦交えて満足、といった様子のつーだった。

( ^Д^)「おいてめえ、俺がいるときに来んなよ!」

即座にタカラが不平をぶつけるが、つーはそれを無視。
彼女は、普段この場にいないはずの人物に目を遣る。



138: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:07 23m/RD4mO

( ´∀`)「つーちゃん! 来たモナね?」

話し相手が現れたことで気が高ぶったのか、モナーは嬉々とした様子でつーに声をかける。
……だが

(*゚∀゚)「モナーか。とうとうアンタまでここに来るように…って何飲んでるんだよ!」

彼女は血相を変えてモナーが持つコップを指差す。

(; ´∀`)「……えーと」

ほんの少し前とは打って変わり、モナーは青ざめた様子で曖昧に応える。
コップの中身は言うまでもなく酒である。

(*゚∀゚)「私の目の前でそんなモノを飲むとはいい度胸だな。ちょっと表に出たまえ」
(; ´∀`)「ちょ…また始まったモナー!」

モナーはつーに腕を掴まれ、外に引きずられていき―――

「モナアァァァア!!」

やがて外からモナーの悲鳴が聞こえてきた。

( ^Д^)「あいつら仲良いな」
川д川「…あの様子なら退屈はしなさそうですね」
(#゚;;-゚)「(モナー君…負けるな)」



139: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:11 23m/RD4mO

家の外には何やら悲惨な目に遭わされ倒れているモナーと、彼を悲惨な目に遭わせたつー。

(*゚∀゚)「いつもならもっと叩かんと気が済まないけど…まあ、これくらいにしといてやるか」

理不尽な理由でモナーをサンドバッグにしたつーだが、これ以上やると気絶してしまいそうなので半ばで止めてやった。
そして、敢えて気絶まで追い込まなかったのにも理由があった。



140: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:15 23m/RD4mO

(*゚∀゚)「おいモナー、起きろ」
(メ ´∀`)「…あれだけ蹴っといていきなり起きろは酷いモナ」
(*゚∀゚)「四の五の言うな。この際だから言っとくけど、アンタに色々とやってもらうことがあるんだよ」

強制的にモナーを立たせ、つーはある地点を指差す。
その先に―――


从 -∀从

一人の女性が横たわっている。
しかもそれは魔物でも霊的存在でもなく、人間。
死んでいるのではなく、気絶しているだけのようである。

( ´∀`)「…えーと、あの人はどちら様モナ?」
(*゚∀゚)「ついさっき私が叩きのめした相手だよ。ここまで運んでくるの大変だったよ全く!」

また何かやらかしたのかと思いつつも、モナーは敢えて口には出さない。
下手なことを口にすれば何をされるか解らない。



141: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:19 23m/RD4mO

( ´∀`)「しかし、何でまたこんな所まで運んできたモナ…?」
(*゚∀゚)「訳は聞くな。とりあえずこいつをこの家の奥まで運んで介抱しろ」
( ´∀`)「僕はいいけど…貞子ちゃんは人間嫌いなんじゃ?
       それにこの家の奥って…」
(*゚∀゚)「そこを上手いことやってどうにかするのがアンタの役目でしょ?
     大体元人間のアンタが一番人間のことわかってるんだから、その辺しっかりしてよ。私は忙しいんだから!」


心なしか、先程からつーに落ち着きがない。
普段から落ち着いていないといえばいないのだが、今はそれ以上に慌ただしく振る舞っているような気がしてならない。
酒の臭いが堪え難く感じたのだろうか。



142: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:24 23m/RD4mO

そんなことを思っている間にも、つーは次の要求をモナーに突きつける。

(*゚∀゚)「そうそう、中にいるバカップル共にも言っておいてほしいんだけどさ…」
( ´∀`)「はいはい、どんな用件モナ?」

どうせ大したことではないだろうと高を括り、何の警戒もなしに訊ねるモナー。
それに対し、つーは笑いを浮かべさも楽しそうに言うのだった。

(*゚∀゚)「アヒャヒャ…魔界にお客様が見えてるよ! ってことさ。
     用件は以上…私には約束ってものがあるからね、一足先に行かせてもらうよ!」



143: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:27 23m/RD4mO

町から少し離れた地点に、砂漠が広がっている。
その砂漠と平地の境目辺りに変な連中が集っていた。

「おいお前等、今日は何するよ?」

内の一人がいきなり提案するのに対し

「窃盗!」
「略奪だろ常識的に考えてwwwwww」
「敢えて放火と言ってみるテスト」

と、下品な笑いをあげつつ応じる者達。
その中には魔物や妖怪や幽霊、そして人間までもがいた。

この連中こそ、以前つーが辻斬りしたいなどと口にしていた魔界の不良共である。



144: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:29 23m/RD4mO

何故かこんな中途半端な場所に塒を構え、時折集団で町へとなだれ込む。
そうして彼等が行うことはやはり略奪であり、時には殺戮行為にまで手を染める。
魔界ではごくありふれた存在なのだが、彼等は常に集団行動しかとらず、しかも皆が皆傲慢。
それゆえに、つーを初めとする町の住人達から『不良』などと呼ばれているのだ。

とはいえ彼等は手に負えぬ程手強い存在ではなく、つーによってあっさり辻斬りされ
さらには行き過ぎた悪行に業を煮やしたロマネスクが派遣した城の兵士達によってフルボッコにされたりと、意外に弱い。
ゆえに連中の数は減少するはずなのだが、何故か一向に減る兆しはない。
それだけ頭数が多いのだろう。



145: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:32 23m/RD4mO

「いっそ大規模な殺戮行為なんてどうよwwwwww」

ふいに、不良共の内の一人が言う。
すると他の連中は声を揃えてそれに賛成するのだった。

「うはwwwwたまにはいいんじゃね?」
「よっしゃwwww殺り行くかwwwww」
「ヘッヘェwww把握wwww」

何とも単純かつ残忍、そして愚かな連中なのだろう。
やることを決めるや否や、彼等は何も考えずに町の方へと進み出した。


だが、内の一人が何かに対して不審に思い始める。

「おい…何か、変な音しねえか?」



146: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:38 23m/RD4mO

言われて、他の者達も耳を澄ます。

砂を踏む音。
無機質なカチャカチャという音。

それらが幾重にもわたって聞こえ、そして次第に大きくなる。

これに気付いた不良共が振り返ると、そこには異質な存在があった。

「こいつら…ロボッ――」
「ターゲット、カクニン」

恐怖心に襲われた不良の一人である人間がその俗称を言い終わらぬ内に、音を連続的に流したような声が『それ』から発せられた。
そして―――

「コウゲキ…カイシ!」



147: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:43 23m/RD4mO

砂漠の中心。

そこには紫色に光る怪しい渦が出現しており、その中心からは夥しい数の『異質な存在』が現れては町の方角へと向かっていく。

そして、渦を見守るかのようにそばには四つの影があった。

(=゚ω゚)ノ「ここが魔界かょぅ。僕達にとっても居心地よさそうだょぅ。
     そう思わないかょぅ?」

白い布きれに近い外套を纏った、小柄な男が陽気に言葉を発する。

( ´ー`)「…シラネーヨ」

男の問いかけに対し返答らしき声を発したのは、そばにいる途方もなく巨大な獣。

( ∵)「……」

その男と巨獣の考えにくいコンビから少し距離を置いたところに、静寂を保つ男が一人。
会話(?)に全く興味を示さず、見当違いな方向に目を向けている。



148: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:49 23m/RD4mO

そして、彼等をまとめるかのように立っている者―――

( )「アヒャア…」

赤黒い兜を目深に被り、その身に纏うはやはり赤黒いマント。
血で染め上げたような不気味な装備を揃えたその女性は兜の奥から瞳を光らせ、町の方角を見つめていた。

( )「私にとって、この世界は百年振り…どこまで楽しめるかな」

誰に話しかける訳でもなく、彼女はそのままの姿勢で呟く。
兜の下から露わにしている口元は、楽しみで仕方ないというような笑いを浮かべている。



149: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:51 23m/RD4mO

(=゚ω゚)ノ「団長、この世界は実に素晴らしいですょぅ!」

男が感心した様子で女性に感想を述べる。
対し、女性は半ば呆れたように振り返る。

( )「…私を団長と呼ぶな。それからお前達、目的を忘れていないだろうな」
(=゚ω゚)ノ「勿論ですょぅ」
( ´ー`)「シラネーヨ」
( ∵)「……」

小柄な男だけがまともな返事。
巨獣はまたも同じで、無口の男は相変わらず無言のままだ。

( )「…もういい。早い話、お前達は適当に壊して殺し続けろ」
(=゚ω゚)ノ「…ということだょぅ。解ったかょぅ?」

今度は巨獣は何も発さず、無口の男は黙ったまま小さく頷いた。

(=゚ω゚)ノ「団長、問題はなさそうですょぅ!」
( )「私を団長と呼ぶなと何度言えば解る…私はただ標的を殺し、血を吸うだけの戦人形だよ」



150: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:53 23m/RD4mO

彼女はそう言いつつも、やがて諦めたように言い放つ。

( )「そろそろいいだろう…お前達、存分に暴れてこい!」

その言葉を聞いた小柄な男が、さらに二人(?)に言う。

(=゚ω゚)ノ「…という訳でお前等、暴れてこいょぅ!」
( ∵)「…了解」
( ´ー`)「シラネーヨ」

途端に無口の男が飛び出し、少し遅れて巨獣も動き始める。
それを見送った男は女に一礼し

(=゚ω゚)ノ「では団長、僕も任務に取りかからせて頂きますょぅ!」

そう言って彼は町の方角へと疾駆を始めた。



151: ◆wAHFcbB0FI :08/19(日) 20:59 23m/RD4mO

場に残るは、紫の光の渦から現れ続ける『異質な存在』と同じく『異質』な女性。

( )「…さあて、そろそろ私も始めるか。
   目標、魔界の支配者の討ち取りと『奴』の抹殺」

言葉とほぼ同時に光の渦が弱まり、消える。
それを見届けた彼女の背部から、蝙蝠のような灰色の翼が展開。
だがそれは羽を散らすことはなく、しかし翼は羽ばたき彼女を宙に浮かべた。

( )「行くか…アヒャヒャア…!」

瞬間、女性は空高く飛翔し、かつての宿敵を探すべく飛行を開始した。



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