( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

158: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 09:57 z245DWniO

第五話 『襲撃』


城下町は既に戦場と化していた。
皮肉にも砂漠から町へ逃げ込んできた不良共のおかげで敵の襲来を早い段階で確認できた為、幸い住人達は突然の事態に混乱することなく戦闘に持ち込めている。

それに加え、城から派遣されてきた兵士達によって、少なからずさらに勢力を増していた。

そうして町の住人と城の兵士達の連合軍が即席結成されたのだが―――



159: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:01 z245DWniO

「あいつら…何者なんだ!?」
「お前百年前はいなかったのか? とりあえず硬くて厄介な連中ってことだけ言っておく!
 そんな訳だから絶対気を抜くな!」
「へ、へい!」

彼等の視線の先には夥しい数の敵。
相手は皆が皆同じ外見で、しかし魔界の住人から見ても全く『異質』な存在だった。
足は四本あって首はなく、頭と胴体がそのまま繋がったような形状。
そのボディは硬質で白く、さらには赤く不気味に光る単眼を備えている。

命を持たぬ『それら』はまさに人間でいう『ロボット』という存在だった。
右手は大型のサーベル、左手は斧と同化しており、そのどちらにも対幽体と思われる魔力が篭められている。
まさに戦いのためだけに存在している、といった感じだ。



160: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:04 z245DWniO

「コワス…」

感情が篭もっていない不気味な声を発しつつ、それは自身の武器を振り回す。
その予測不可能かつ的確な攻撃の前に、地上で戦っている即席連合軍は徐々に鮮血と共に倒れていく。

だが、その機械兵の上半身が突如拉げた。
その頭部には斧が突き刺さっており

「ヒャハハ、隙あり杉だっての!」

空には翼で滞空している魔物。
それ以外にも空から奇襲を仕掛けている者は数多くいる。
侵略者である機械兵達は攻守共に優れているが、飛行能力は持ち合わせていない。
ゆえに翼を持ち空を飛べる魔物達ならば幾らか有利に応戦できるのだ。



161: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:19 z245DWniO

だが、先程一機の機械兵を破壊した翼の魔物の命もそう長くなかった。
別の機械兵が単眼から放ったレーザーによって、空中にいるまま焼き払われてしまったのだ。

「レーザーカイジョ、コロス…」

何事もなかったかのように次の行動に出る。
その機械兵は地上にいた魔物の鋭利な爪によって斬り裂かれ、その魔物はまた別の機械兵に無情にも斧で全身を叩き割られる。
さらにその機械兵は接近してきた幽霊によって内部を滅茶苦茶にいじられた挙げ句に内側から壊され
その幽霊は得意気になっているところを背後から魔力の篭もったサーベルでバッサリと斬られて掻き消された。


互角の戦いにも見えるが、相手は疲れることを知らず
自身が壊れて動かなくなるまで攻撃の手を緩めることはない。
逆に機械の身体を持たぬ魔界側は次第に疲労が濃くなっていった。
数では勝っていても、これではじり貧である。



162: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:20 z245DWniO

だが感情すら感じさせない異質な敵に対して、ただ苦戦を強いられている者ばかりではなかった。

(# ФωФ)「オラオラオラァ!!」

ロマネスク―――頑強な巨体を持ち、兵士達から『隊長』と呼ばれる人型の魔物。
その強靭な四本の手全てに巨大なトマホークを握り、それらを豪快に振り回しつつ目の前にいた二機の機械兵を紙を破るような勢いで粉砕する。
その姿は、怒り狂う阿修羅を彷彿とさせた。

(# ФωФ)「てめえら、何だってこんな雑魚に手間取ってやがる!」

ただ一機の機械兵に手こずっている兵士達に雷のような大音声で怒号を放つ。
部下達が慌て、必死で反撃を開始したことを確認したロマネスクは、前方から新たに迫ってきた三機の機械兵をまとめて頭部から一気に叩き割った。



163: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:22 z245DWniO

( ФωФ)「ったく、この変なのは百年前と全く同じ奴じゃねえか。
       全く訳が解らん。何とかならんのかね」

足下の残骸を蹴り飛ばしつつ呟く。

( ФωФ)「その上、同じ面を沢山並べて結局今回も集団戦法と来たもんだ。
       何時になっても手口の変わらぬ馬鹿共が。どうせまたあの女もいやがるんだろうな」

誰も聞いていないであろう、独り言ともいえる悪態。



164: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:24 z245DWniO

だがその時

「はいはい、誰が馬鹿なんだょぅ?」
( ФωФ)「あ?」

突如耳に入った声の主を探すべく、ロマネスクは辺りを見回す。
だがそれが背後や左右にいないことを確認し、再び前方に目を遣る。
するとそこには――

(=゚ω゚)ノ「やっと気付いたかょぅ」
( ФωФ)「な…何だお前?」

一体何時現れたのか、布きれのような白い外套を纏った小さな男がそこにいた。
見たところ実体を持たぬ幽体のようだが、同時にどこか得体の知れない気配も感じ取れた。
そう、あの女のように。



165: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:28 z245DWniO

その小さな男はロマネスクを睨みつつ口を開く

(=゚ω゚)ノ「やいお前、団長の悪口は許さないょぅ」
( ФωФ)「団長ねぇ…てめえさてはあの女の部下だな。
       あの野郎、今後は一味違う部下連れて魔界侵略か。おめでてーな」
(=゚ω゚)ノ「黙れょぅ」

男は隠し持っていた二本の細身剣を両手に構えながら

(=゚ω゚)ノ「僕はMSP幹部の一人にして団長直属の配下。名は『MSP-I03』、ぃょぅと呼びやがれょぅ」
( ФωФ)「な、何だって?」

妙な名称に、ロマネスクは思わず首を傾げる。
ぃょぅというのはまだしも、前者の『MSP-I03』とやらがどうしても引っかかった。
そして『MSP』なる、何かの組織名のような単語。
結局、敵軍の幹部であるらしいことしか解らない。



166: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:30 z245DWniO

( ФωФ)「よく解んねえが…俺はここで軍の隊長やってるモンだ。
       敵と解った以上、手加減はしねえぜ」

四本の腕で四本のトマホークを構え、戦闘態勢をとる。

(=゚ω゚)ノ「んじゃ、始めるかょぅ…覚悟するょぅ!」
( ФωФ)「けっ、てめえこそ覚悟しな!」

次の瞬間、双方の得物が鈍い音と共にぶつかり合う。

魔軍の隊長と侵略側の幹部が戦火を交えた瞬間であった。



167: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:33 z245DWniO

元々荒れていた町の入口周辺は、もはや原形を留めていない。
既に町内に侵入した敵が幾らかいるが、入口にいた住人はこれ以上の侵入を阻止するだけで精一杯だった。

だが他の連中が悪戦苦闘している中、やはり余裕綽々で戦闘に臨む者もいる。

「ギギギ…」

耳障りな音を立てて崩れ落ちる機械兵。
その周辺にいた機械兵も次々と倒れていく。

(*゚∀゚)「アヒャヒャ…弱いなぁ」

つーは手にした大鎌で機械兵の胴体を貫きながら、つまらなそうに呟く。
彼女の目的は機械兵士達ではなく、別にあった。



168: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:34 z245DWniO

(*゚∀゚)「あいつはまだお見えにならないのかなぁ? 私はもうお待ちかねだよ!」

住人や兵士が戦火を交えている中、つーは自分に向かってくる機械兵だけを破壊しつつ、町に背を向け悠々と歩いていた。

(*゚∀゚)「あの時は周りに誰もいない場所で戦ったよね…もしかしてこの町みたいに五月蝿い連中が集まる場所は嫌いなのかな?」

自分が一番五月蝿いということに気付いていないようだが、果たしてそれで良いのだろうか。



169: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:37 z245DWniO

そうこうしている内に、つーは町から少し離れた荒地に足を踏み入れた。

(*゚∀゚)「気がついたらこんなとこまで来ちゃったよ。
     …そういや、確か百年前もここで戦ったんだっけ…奇遇だよ全く!」

人気のない場所で、やはり独り言を連発する。
その時だ。

「…ここにいたか」
(*゚∀゚)「!」

凛とした女性の声が上から聞こえたかと思うと、続いて計三発の黒い光弾がつーへと襲いかかる。
無論つーは咄嗟の判断でそれらを回避。

(*゚∀゚)「いきなり何だい…不意打ちとはらしくないぞ?」
「済まないな、ほんの挨拶代わりにと思ったんだが」

言葉の後、つーの前に人影が降り立つ。

( )「我が好敵手よ…ようやく見つけたぞ」

赤黒い兜を目深に被り、身を纏うはやはり赤黒いマント。
背部には蝙蝠のような大きな翼を生やしており、その姿は吸血鬼を彷彿とさせる…というか、それにしか思えない姿。
彼女こそ、つーが目的としていた相手であった。



170: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:40 z245DWniO

(*゚∀゚)「待ってたよ! 百年前と変わってないね!」

不意打ちをされたにも関わらず、つーは嬉しそうに笑いを浮かべる。

( )「アヒャア…お前もな!」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、相変わらず私の真似かい?
     つーかもうそれとったら? 堅苦しくていかんよ!」

相手の頭の兜を指差すも

( )「だが断る。これが私の戦闘態勢なんでね。
   ついでに言うと、お前の真似をしているつもりはない」
(*゚∀゚)「(ちぇっ)」

内心ではつーも彼女の素顔を知りたいと思っているのだが、相手は素顔を見せるつもりはないらしい。



171: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 10:42 z245DWniO

さておき、互いに戯言を言い合った後、二人が行う動作は一つ。
つーは血のように赤い大鎌・ロストを、兜の女は瞬時に現れた漆黒のサーベルをそれぞれ無言で構える。

次の瞬間、二人の姿が消えた。
同時に人気のない荒地に、金属が激しくぶつかり合うような音が暫し響きわたる。

幾らか経ったところで目視不可能の攻防が止まり、再び二人の姿が確認できるようになる。

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャ! 実に流石! 相変わらずやるじゃないのさ!」

嬉々とした様子で言うつーに対し、相手は変わらぬ口調で言葉を返す。

( )「お前もな…それでこそ我が好敵手だ」
(*゚∀゚)「それは私の台詞だよ…今回こそはじっくりと楽しませてもらうんだからね!」

つーの言葉を最後に二人の姿が再び消え、そして高速攻防が再開される。

長い年月を経た今、再び二人の宿命の戦いが開始された。



175: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:23 z245DWniO

さて、報告を聞きつけて地下から出てきたタカラだが、どうすればよいのかわからず城の前をウロウロしていた。

( ^Д^)「…えーと、俺は一体何をすればいいんだ?」

因みに突如運び込まれてきた人間の女性はモナーと貞子に任せてあり、でぃは城内にいる。
これならば双方の心配も無用なはずだ。
だが

( ^Д^)「…結局俺はどうすりゃいいか解らん。軍師さんはどこにいやがるんだ?」

仕方がないので城門の前に居座ることにする。
兵士達は町と城内の防衛に回っているのか、現在周りには誰もいない。
自分が頑張らないとまずいな、と薄々感じるのだった。



176: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:26 z245DWniO

と、その時。

( ^Д^)「…お、何か来るぞ」

前方から、見慣れぬ何かが此方に向かってきている。
タカラは初めて目にするが、現在魔界各地で戦火を広げているあの機械兵だ。

( ^Д^)「アレが侵略者御一行様ですかぁ? 何か中途半端に強そうだな。
     でも確か現世にあんなのいたな……いやいや、まずは敵を潰すのが先だ!」

両手に鉄の爪のような武器を装備し、戦闘態勢をとる。



177: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:28 z245DWniO

「ターゲットハッケン…コウゲキカイシ!」

相手は二機。
タカラを見つけるや否や、斧を激しく振り回して襲ってきた。
だが、タカラにそれ程度の攻撃は通用しない。

( ^Д^)「よっと…」

彼はすぐさま自らの下半身ともいえる宝箱に身を引っ込める。
直後、機械兵の斧が宝箱に命中し鈍い音が鳴り響くも、宝箱には傷一つつかない。

( ^Д^)「見たかこの野郎!」

咄嗟に宝箱から上半身を出したタカラは両手の武器で機械兵の内の一機を深々と引き裂いた。

「ガガッ…」

煙と火花をあげ、倒れる機械兵。



178: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:30 z245DWniO

早くも一機目を破壊したタカラは得意気に言い放つ。

( ^Д^)「俺の宝箱は魔力とか霊力使って攻撃されないことには絶対にやられねえ。
     その斧に魔力はあるみてえだが、俺の宝箱を壊す程の力はねえようだな! プギャーwwwww」

元々タカラは魂だけの存在であり、宝箱の方は魔界にて拾った物である。
彼の上半身こそがタカラの魂部分、つまり本体であり
宝箱の方を攻撃されても痛みは全く感じない。
最も、宝箱が中の本体諸とも両断されたり、宝箱を貫通するなどして内部を攻撃されればそれまでだが
彼の宝箱は元々の高い硬度と強い魔力によるコーティングを受けているために、そのような状況にぶつかることは特に気にはならなかった。



179: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:45 z245DWniO

( ^Д^)「さあ、後は残りの奴だな」

距離をとり、一旦身構える。
魔力によって僅かに宙に浮かんでいるため、その動作は見た目以上に素早い。
そしてタカラはすぐさま右腕を機械兵に向ける。

( ^Д^)「てめえにはこれをくれてやる!」

指先に大型の火球を生成し、機械兵に向けて放つ。
煉獄の炎ともいえるそれは高速で機械兵へと突っ込み、たちまち機械兵を飲み込んだ。



180: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:47 z245DWniO

( ^Д^)「まあ、これで跡形もなくなる訳だが」

そう確信した時だ。

「ボウギョカイジョ、コウドウ サイカイ」
(;^Д^)「…え!?」

音のような声を発しつつ、機械兵は炎の中から生還した。
驚くのも無理はない。
威力こそ最大でないとはいえ、相手はあれほどの火球を受けて火傷一つ負っていないのだから。
だがタカラはすぐに我に返り

( ^Д^)「駄目なら本気でぶっ放すまで! いくぞ!」

さらに大きく、より高温の火球を生成し、投げつけるように機械兵へとぶつける。
炎は一瞬で燃え上がり、火は周囲をも焼いた。
灼熱地獄、と称すのが適当かもしれない。
だが相手は炎をものともせず、此方に迫ってくる。

(;^Д^)「待て待て待て! 何で俺の炎が効かねえんだ!?」

どうやら相手は熱に対する耐性があるらしい。
炎は諦め、結局装備の爪で残りの一機を破壊することとなった。



181: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:49 z245DWniO

ひとまず敵を撃退し、タカラは安堵の溜め息をつく。

( ^Д^)「最初からこうすりゃよかったな…」

だがそれも束の間、すぐに次の敵が向かってきていることが確認できた。
しかもその数は―――


( ^Д^)

m9(^Д^)プギャー


…ざっと見ただけで二十機は確認できた。



182: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:50 z245DWniO

(;^Д^)「…って一体俺は何をやっているんだ!」

タカラの持つ広範囲にわたる攻撃手段が通用しない以上、爪で一機ずつ壊していくしかない。
だが二十の軍勢を単身で相手にするなど、流石のタカラでも些か無茶だ。

( ^Д^)「どうしよ…」

城内に避難してはでぃや他の連中も危険に晒されるだろう。
宝箱に閉じこもって時間を稼ぐことも考えられたが、それではいつ出られるか解らない。

敵は近くまで接近してきている。
この際つーでもいいから、誰か助太刀に来て欲しいなどと思い始める。



183: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 14:52 z245DWniO

だがそれは現実となった。

機械兵の群の頭上で、突如青白い発光。
光はやがて球体を型どったかと思うと、機械兵達の間を青白い雷が雷鳴と共に駆け回り、次々と機械兵を打ち払っていく。
対し、タカラは初めこそ呆然としていたものの、やがて見覚えのあるものだと解り我に返る。

( ^Д^)「…こんなことができるのは――」

振り返る。
そこには一つの人影があった。

爪゚ー゚)「久々だな…大丈夫か?」
( ^Д^)「やっぱりアンタか…助かったぜ、軍師さんよぉ!」



184: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:03 z245DWniO

どういたしましてと言いつつ、軍師と呼ばれた女性は小さく笑ってみせる。

黒い外套を身に纏い、手には薄暗い魔界を照らさんとする白銀の刀。

そして長い黒髪と青く澄んだ瞳を持ち、思わず見とれてしまうほど美しい女性だ。
そして、どう見ても人間の女性である彼女に変わったことといえば
彼女は元人間でありながら、現在は魂がその身を具現化している―――つまり幽霊であることだった。
(因みにこれはモナー等も同様で、彼もまた生前の頃の己の身体を具現化している)



185: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:09 z245DWniO

爪゚ー゚)「話は魔王殿から聞いている。軍師とあろう者が遅れをとって済まない」
( ^Д^)「いや気にすんなって。
     …で、随分長いこと城を離れていたようだが見回り兼偵察とやらは上手くいったのか?」

軍師は首を横に振った。

爪゚ー゚)「済まないが…敵はどこか別の世界から送り込まれているということしか明白になっていない。
     …いや、さらに言うと敵兵は命を持たぬ存在だ」
( ^Д^)「へぇ…幽霊とかそういう類には見えなかったが?」
爪゚ー゚)「そうではない」



186: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:09 z245DWniO

彼女は人差し指を立て

爪゚ー゚)「最近、現世には『ロボット』なるモノが普及しつつあるという。それは人間が人工的に造り出し、そして造られた時から既に命も魂も持っていないらしい。
     …おそらく百年前と、現在襲撃してきている敵兵もそのロボットとやらなのだろう」

情報を的確に説明する。
数秒間沈黙が流れ―――

( ^Д^)「すっげえなおい! 流石は軍師さん、賢くて物知りだな!」
爪;゚ー゚)「…そ、そうか」

予想外の反応に、思わず拍子抜けさせられる。



187: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:12 z245DWniO

( ^Д^)「…けどな、そのロボットとやらについては俺もちょっとばかりご存知だったりするぜ?」

今は現状を考えなければ。
それを機に、双方の表情が引き締まる。

爪゚ー゚)「む、そういえばお前は現世で放浪していた時期があったな。
     何か知っていれば私に教えて欲しい」
( ^Д^)「そうだな、今は防衛が先って訳で。
     けどそんなに役に立つようなこと俺が知ってるかどうか―――」
爪゚ー゚)「待て」

言い終わる前に突如言葉を制された。
彼女の表情からは警戒の念が伺える。



188: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:15 z245DWniO

爪゚ー゚)「いいか…そのまま動かず表情を変えずに聞け」

小声だ。
タカラは彼女の意図を読みとり、同じく小声で応じる。

( ^Д^)「何だ?」
爪゚ー゚)「近くから何者かの殺気を感じる。恐らく暗殺者か何かだろう。
     私が返り討ちにするから、お前は空間移動で他に向かってくれ」
( ^Д^)「おう…で、俺はどこに行くべきだ?」

軍師だけあって彼女の戦闘能力は尋常ではなく、あのつーをも凌駕し魔界最強の戦士とさえ謳われるほど。
ゆえに彼女がやられる心配はほぼ無いに等しい。
だが自分はどうすればよいか解らないため、軍師である彼女に指示を仰いでおこうとタカラは思ったのだ。



189: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:19 z245DWniO

そして彼女の判断は

爪゚ー゚)「…森へ向かってくれ。あそこが一番守りが手薄だ」
( ^Д^)「森か。あいつがいるし、別にあそこは大丈夫だと思うがな…
     けど軍師さんの命令だし、引き受けてやるよ」

思わず苦笑。

爪゚ー゚)「あまり無理はするな。時には逃げることも賢い考えだぞ」
( ^Д^)「はいはいわかってるって…『ジィ・コルト=クロス』さん!」

その発言と同時に、彼女の表情が固まった。



190: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:23 z245DWniO

それからきっかり三秒。

爪;゚ー゚)「…待て、何故我が名を?」

非常に焦った様子でタカラに問う。
それに対し、タカラは意地悪く笑みを浮かべ

( ^Д^)「へっへ…俺百年前に現世でアンタの子孫に会ってきちまったんだよな。
     軍師さんの魂が魔界にいるってこと言ったらショック受けてたぜ!」

そう言うと、彼女は諦めたように

爪゚ー゚)「…確かに我が名は『ジィ・コルト=クロス』。
     遥か昔、大魔獣ギコ・フッサールを封印し、英雄や賢者と呼ばれた…元人間。だが」

冷静に言葉を紡ぎ

爪゚ー゚)「今では天界より堕落した魔界軍師。
     …仕方ない、私のことは『じぃ』と呼べ。それだけだ、さあ行くがよい」
( ^Д^)「それって一体どう違うんd」
爪゚ー゚)「な、何だっていいだろう。今は時間がない、早く行け」
( ^Д^)「…へーい」

納得いかぬ表情のまま、タカラは爪で空間に切れ目を発生させ、そこに飛び込んでいった。



191: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:25 z245DWniO

それを見届けた魔界軍師こと『じぃ』は油断なく白銀の刀を構え、瞬時に心を落ち着かせる。

爪゚ー゚)「!」

次の瞬間、ヒュッという風切り音と共に何かがじぃ目掛けて飛び込んでくる。
だが、じぃの反応の方が速かった。

爪゚ー゚)「はっ!」

目に見えぬ程の速度で刀を振るい、それと同時に何かがじぃを目前にして斬り落とされた。

爪゚ー゚)「これは…やはりな」

一旦刀を鞘に戻し、足下に落ちた両断された物体を確認する。
それは、十字形の刃物―――つまり、手裏剣。



192: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:27 z245DWniO

今度はそれが飛んできた方向を睨む。

爪゚ー゚)「私一人になるまで何もしてこないとは…意外と律儀なんだな」
( ∵)「……」

どこからか殺気を噴き出していた相手が、今じぃの前方に立っていた。

( ∵)「…狙った者は時間をかけてでも確実に殺す、それが暗殺者というもの」

頭を頭巾で覆い、黒装束を纏ったその男は無表情で、しかし口惜しそうに言葉を発する。

( ∵)「…暗殺を十八番とする我が、暗殺をしくじるとは実に情けない」
爪゚ー゚)「何が言いたいのか解りかねるが、私は無意味な争いは好まない。
     できることなら早急に立ち去ってほしい」

だが、と言って彼女は付け加える。

爪゚ー゚)「とても、そうしてはくれそうにないな」



193: ◆wAHFcbB0FI :08/26(日) 15:33 z245DWniO

( ∵)「…無論、このまま引き下がるつもりはない」

男は無表情のまま殺意を剥き出し

( ∵)「我が名称は『MSP-B04』、又の名を『ビコーズ』。
    『MSP(mechanical spirits)』の一人にして寡黙なる暗殺者なり」

大きく後方へ跳び、刹那に懐から短刀を取り出し構える。

爪゚ー゚)「(何だ…?)
     ふむ…寡黙という割には口数が多い気がするが、まあ良い」

相手の敵意を一身に受け止めたじぃは、目の色を変える。

爪゚ー゚)「…私もそう易々と倒れる訳にはいかぬ身。
     ゆえに降かかる火の粉は…払わねばな!」

鞘から白銀の輝きを放つ刀を抜き、正面に構える。

現世のかつての英雄が、魔界軍師として今一度戦いに臨む瞬間だった。



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