( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

226: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:08 VVcr7y++O

第七話 『霧深き森の守り人』


現世には見られない、怪しく奇妙な木々や植物で構成されている霧のかかった森。
その入口前で、タカラはじぃに命じられた通りに防衛をこなしていた。

( ^Д^)「これは…俺でもいける!」

魔界にも森や砂漠といった地形や土地があるが、城下町や城の住人がそれらの地に足を踏み入れることはあまりない。
そのためじぃの言葉通り兵士は全くおらず、森の守りは手薄という以前の問題だった。
だが、逆に森に攻めてくる敵兵の数も僅かで、現在タカラだけでも十分対処可能な状況。
守りの手薄さに対して相手が油断しているのか、或いは特に重要性がないと判断しているのか。
解らぬが、タカラにとってはこの上ない好都合である。



227: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:11 VVcr7y++O

( ^Д^)「っしゃあ、ぶっ潰せ!」

集団を相手にするのは苦手だが、二、三程の少数の相手ならばお手のもの。
タカラは両腕に装備した鈎爪で、寄ってくる機械兵を次々と引き裂いていった。


とりあえず一段落つき、タカラはふと辺りを見回す。

( ^Д^)「しっかし、きったねえなぁ…」

機械兵の残骸からは、部品や油が流出していた。
タカラには詳しいことは解らなかったが、相手を引き裂いてこうなったのだから生物でいう血のようなものだということは理解できた。



228: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:14 VVcr7y++O

( ^Д^)「何か変な臭いまでしやがるし…いやいや、俺はもう知らん!」

大体侵略なんて馬鹿げた真似を仕掛けてくる方が悪いのだ。
心の中でそんな正論を呟きながら、タカラは残骸を無視し、再び敵が現れても対処出来るよう森を背にして身構える。

( ^Д^)「さあさあさあ! どっからでもかかって来やがれってんだ!
     このタカラ様がバラバラのボコボコにしてやんよ!」

久々に魔界の住人としての本能が復活したのか、先程集団に襲われかけた時とは打って変わった様子である。
調子の良い奴、と称すのが最も適切なのだろう。



229: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:20 VVcr7y++O

と、その時。

( ^Д^)「…ん?」

ふと、目を凝らして辺りを見回してみる。

( ^Д^)「何だありゃ…?」

前方に、機械兵とは違う何かが確認できた。
相手の正体はよく解らぬが、それは辺りを火の海に変えつつこちらへ向かってきている。

( ^Д^)「休み時間は終わりか」

武器を構えると同時に異変に気付く。

( ^Д^)「…?」

何故か、地が揺れているような感覚に襲われる。
それは一定の間隔で発生し、さらには徐々に大きくなっているようにも感じた。

( ^Д^)「こりゃあ…どういうことなのかね」

その原因はすぐに判明することになる。
注意深く見てみると、今タカラの前方にいる相手は長い首と頑強な四肢を備えており
その足が地を踏む度に地が震えていることが解る。

さらに相手が此方へ近付く度、その地響きが大きくなっているのだ。
それはつまり――

(;^Д^)「待て待て…嘘だろ」

理解してしまった。
敵は異様なまでに巨大な相手であるということを。



230: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:23 VVcr7y++O

そしてタカラが呆然としている間に、敵との距離は数メートル程になっていた。

( ´ー`)「……」

遠くから見た通り、それは長い首と太く強靱な四肢、さらには鞭のように長い尾を持っていた。
喩えるなら、恐竜とも見てとれる緑色の巨獣。
その全長は十メートル程あり、存在自体が周囲に威圧感をばらまいている。

(;^Д^)「…でっけえなおい!」

相手の頭部を見上げながら、タカラはただそれだけ言った。
さらに厄介なことに、巨獣は視線をタカラへと向けている。



231: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:26 VVcr7y++O

(;^Д^)「…おい、お前は一体何だ!」

突如現れた異形の敵に、先ずは単刀直入に問う。
だが、問う以前から既に疑問は数多くあった。
タカラの目には、目前の巨獣は緑色をした大きな魂だけの存在とも読み取れ、しかし何故か得体の知れぬ何かを感じるのだ。

( ´ー`)「…シラネーヨ」

巨獣も巨獣でただそれだけ声を発し、タカラを巨大な足で踏みつけようとしてきた。

( ^Д^)「…おっと、そいつは効かねえな」

素早く宝箱に身を隠し、踏みつけを受け止める。
やはり、傷一つつかない。

( ´ー`)「?」

タカラが潰れていないことを不思議に思ったのか、巨獣は再びタカラを踏みつけようとする。
その際、足を上げた隙にタカラは再び顔を出し、今度は防御せずに後方へ下がり回避。

(;^Д^)「てか、あんなデカいのを俺だけで倒さなきゃいけねえのかよ。
     誰もいねえけど敢えて言わせて頂く、多分無理だって。軍師さんも随分酷なことさせやがるな」

それでもタカラは諦めずに両腕の武器を構え、巨獣と対峙する。



232: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:30 VVcr7y++O

(*゚∀゚)「アヒャヒャ-!」
( )「ッ!」

赤き鎌と黒きサーベルが激しくぶつかり合う。
互いに全く形状の違う武器だが、そのどちらも禍々しいオーラを放っていた。
ビリヤードの球のようにぶつかっては弾き合いながら、二人は言葉を発する。

(*゚∀゚)「ねえねえ、今回はアンタ以外にも何かいたりするの?」
( )「アヒャ…いるよ。その内の一つは馬鹿やって既に消えたようだがな」
(*゚∀゚)「情けないことだねぇ」

敵同士だというのに、まるで昔からの仲であるかのように言葉を交わしながら、両者距離をとり再び突っ込んでいく。



233: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:35 VVcr7y++O

何回かぶつかり合った後、再び攻撃の手が止まる。

( )「しかし、いつまでも私の相手などしていていいのか?
   まだ私の配下は全てが滅していないというのに、数少ない強敵であるお前が、他の地の防衛に回らないでどうする?」

兜の女はつー以外の連中を見下すように言い放つ。
つーがそのように受け取ったのかは解らぬが

(*゚∀゚)「まあ、どうせならどいつもこいつも私一人で潰すのが望ましいけどね。
     私は何よりアンタとの決着着けたい訳よ。わかる?」
( )「へぇ…私もお前との戦いにケリを着けたいことについては同感だ。
   …だが、自分の目的だけに熱くなっていてはきっと後悔するぞ」

後方へ跳び

( )「この世界に森があったな…そこに『巨獣型幽体人形』を向かわせた。
   馬鹿な奴だが、この世界の住人の力ではアレを止めることはきっと不可能だろうな…アヒャアア…」

狂気を纏い、しかし嬉々と続ける。

( )「奴が行くところ全てが火の海と化し、そして無に帰す……さあどうするよ?」

歯を剥いて笑いながら、つーを試すかのように問いを突きつけた。



234: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:42 VVcr7y++O

だが、つーは女の言葉に対し

(*゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ! そりゃ何とも不幸な話だよ!」
( )「…何だと」

予想とは大きく違ったつーの反応に兜の女は一瞬呆気にとられ、反対につーは嬉々とした様子で言い放つ。

(*゚∀゚)「うん、この世界の連中はそんなにヤワじゃないってことを言っておくよ。例えば私の可愛い後輩とか。
     そんな訳だからさ、森に向かったとかいう可哀想な奴が粉々に潰されないよう、せいぜい祈るといいよ!」



235: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 18:59 VVcr7y++O

腹を決めたタカラは、巨獣へ攻撃を仕掛けていた。
あまりにも重量差がありすぎるその戦闘は、タカラが勇敢に思える程である。

( ^Д^)「そらよっ!」
( ´ー`)「……」

タカラは巨獣の足元に潜り込み、両腕の鈎爪で攻撃。
だが、その巨体にはかすり傷程度のダメージしか与えられない。

( ´ー`)「シラネー…ヨ!」

お返しとばかりに、巨獣は前足を繰り出す。

( ^Д^)「あぶねえ!」

見た目以上の素早さを駆使し、踏みつけを回避。
そのまま巨獣へ指先を向け

( ^Д^)「こいつならどうだ!」

指先から火炎球を発生させ、巨獣へと放つ。



236: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 19:41 VVcr7y++O

( ´ー`)「!?」

その巨体では動作が鈍く、火炎球を避けることができない。
そして命中と同時に、巨獣が少し狼狽えたのをタカラは見逃さなかった。

( ^Д^)「お? そうか、炎はちっとばかり効くみてえだな!」

どうにか有効な攻撃手段が見つかった。
ならば後は攻撃の積み重ねだ。
いくら相手が巨大であっても、攻撃が通る以上勝機はある。

( ^Д^)「おらおら、もっと増やしてやれ!」

どこかズレた言葉と同時に次々と火炎球が飛び、それらは正確に巨獣の頭部へ殺到。

( ´ー`)「…!」

その鈍い動作では反撃も叶わず、巨獣は一方的に攻撃を受け続ける。

( ^Д^)「(俺だけでこいつを倒せば、他の野郎共に自慢できるかもな!)」



237: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 19:43 VVcr7y++O

そんな他愛もないことを思う程に余裕が出てきた時。
不意に巨獣が大きく口を開いた。

( ^Д^)「な…何だ?」

考える前に直感で身の危険を察知。
そして、それは現実となる。
巨獣の口内に、何かを充電するような電子音と共に緑色の光が蓄積され――

(;^Д^)「うお…あぶねえっ!?」

次の瞬間、緑の光が解き放たれる。
最早レーザー光線としか呼びようのないそれは瞬く間に周囲を蹂躙し、焼き払う。



238: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 19:46 VVcr7y++O

( ´ー`)「……」

溜めた力を全て放出したのか、数秒後に巨獣は光線放射を止めた。

(;^Д^)「何だよあの怪物…俺も怪物みたいなモンだけど」

何とかレーザーを逃れたタカラが恐る恐る呟く。
幸いにもまだ森は焼かれていないものの、このままではいずれ壊滅させられるだろう。
しかも、未だに標的が消し飛んでいないことが気に喰わないのか、巨獣は再びタカラに迫りつつある。
後には森。逃げる訳にはいかない。

( ^Д^)「なら…ここでケリ着けてやらぁ!」

再び指先を巨獣に向けた時。

( ´ー`)「……」

突如、何かが開くような機械的な音が響いた。



239: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 19:50 VVcr7y++O

( ^Д^)「今度は何だ!?」
( ´ー`)「…シラネーヨ!」

こういうことだ、とでも言わんばかりに巨獣は雄叫び(?)をあげた。
同時に信じがたいことが起こる。

(;^Д^)「え…何アレ?」

巨獣の背部を見る。
その背部は文字通り開いており、そこから大型の砲台らしきモノが左右に伸びていたのだ。
そして次の瞬間撃ち出されるは、先端が尖った灰色の鉄塊。

(;^Д^)「わっ、こっち来るなー!」

無茶苦茶な攻撃に戸惑いながらも、タカラは慌てて回避運動をとる。
彼は鉄塊の正体を知らないが、巨獣から撃ち出されたモノの正体は数発の小型ミサイル。
それもただの火薬兵器ではなく、幽体に対しても有効な、小型ながらも強力な魔力が篭められたものである。



240: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 19:56 VVcr7y++O

( ^Д^)「てかおい、どうすんだアレ!」

見ると、今の攻撃で今度こそ森の入口辺りの植物が燃えている。
しかも巨獣は倒れかかったた木々を踏み倒し、再び光線を放って森を焼き始めた。

( ´ー`)「シラネーヨ!」

バキバキという音と共に木は倒され、そして焼かれていく。
その無惨な破壊活動は徐々に激しくなるだろう。

( ^Д^)「やっべ…止めねえと!」

びびっている場合ではない。戦わなくては。

そう思うと同時に、彼はあの巨獣が森の守り人の逆鱗に触れてしまったことも悟っていた。



241: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 20:06 VVcr7y++O

霧がかかった静かな森の奥地。
まだ被害を受けていないその場所にポツリと位置している、小さな木の小屋。
周辺には、森に生息している不思議な生物達が不安げな様子で集っている。
兎のような小さな魔物から大蜘蛛、蛇まで様々。
木々には蝙蝠がぶら下がっており、巨人のような明らかに現世に存在しないようなものまで集まっていた。

そして、それらの視線はこの小屋に集中している。
まるで、誰かの指示を待つかのように。



242: ◆wAHFcbB0FI :09/22(土) 20:27 VVcr7y++O

その時、小屋から一つの人影が出てくる。
同時に、集っていた生物達が一斉にそちらを向いた。

(*゚A゚)「……」

現れたのは女性。
その華奢な外見は、他の魔界の住人と比べて極めて異質だ。
彼女は小屋周辺に集まった生物達を見渡し、頷く。

(*゚A゚)「安心せい…侵略とかようわからんことは絶対にさせへんよ」

優しく、しかし強い意志が篭もった声。

(*゚A゚)「皆はここにいてや…絶対に入口行ったらあかん。
    どこのドアホウかは知らへんが、自分がしばいたるわ」

言葉と共に、瞬時に何かが姿を見せる。
現れたのは鉄槌。
重量感溢れるそれを、彼女は右手でその柄を握り軽々と担ぐ。

(*゚A゚)「ほな…いくか」

短い言葉を漏らし、現在破壊活動が繰り広げられている森の入口へと向かっていった。



244: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:43 Q3LA2tGVO

最早、それは良い状況とはいえなかった。
タカラは破壊活動を続ける巨獣に対し火炎球を連射するも、これといった変化は現れない。

( ^Д^)「くそっ…止まれよこの野郎!
     俺はここにいるぞ!」

巨獣はタカラに興味を示すことすらせず、木々を徐々にへし折っている。

( ´ー`)「シラネーヨ」
( ^Д^)「何が知らねえんだ、このデカブツめが!」

あらゆる手段を使ってでも止めなくては。
タカラは蓋を開けたまま宝箱に身を引っ込め、そのまま巨獣へ向けて火炎を放射する。
木々にも多少被害が及んでしまうだろうが、この際やむを得ない。



245: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:48 Q3LA2tGVO

炎は一度は巨獣を包み込んだかのように見えたが

( ´ー`)「シラネーヨ」

巨獣は炎を浴びても意に介さなかった。

( ^Д^)「駄目か…なら次は本気でいくぞ!」

今度は瓶を取り出し、中身を一気に飲み干す。
その後の動作は先程と同じだ。
宝箱に身を引っ込め、蓋を開けたまま宝箱から炎を噴き出すのだが、今度はその火力が先程とは比べものにならなかった。

( ´ー`)「!?」

地獄の業火ともいえる灼熱の炎は瞬く間に巨獣の周囲を焼き払い、やがて巨獣にも牙を剥く。
タカラにとって、酒は好物であると同時に強力な武器でもあった。

( ^Д^)「どうだこの野郎、俺の最大火力を甘く見たなwwwプギャーwwwww」



246: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:50 Q3LA2tGVO

だがその時

( ´ー`)「シラネーヨ!」
(;^Д^)「おわっ!?」

残念でした、と言わんばかりに炎の中から生還した巨獣。
そして下らない攻撃を立て続けに受けたことが小賢しく感じたのか、巨獣は再びタカラに視線を向けていた。

( ^Д^)「そ…そう来ねえとな」

とりあえず一時的に破壊活動を阻止できそうだ。
時間稼ぎにしかならないかもしれないが、この間に相手の弱点を探る必要があった。

いずれにせよ状況はよい方向へは向かわず、今は森の侵略を止めることしかできないだろう。



247: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:52 Q3LA2tGVO

そう思った時だ。

( ´ー`)「…!?」

突如、巨獣が何かの力に押され仰け反った。
それを見たタカラは視線を巨獣の首へと移す。
その長い首を打ち据えたのは、茶色い鉄の塊のような物体。
それは長い柄のようなものに付属しており―――つまり規格外の長さの柄を備えた鉄槌と表現するべきであり
それは森の方から一直線に伸びていた。

( ^Д^)「こいつは…」

鉄槌が伸びてきた方を見る。
霧がかかって見えにくいものの、そこに人影があることが確認できた。



248: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:55 Q3LA2tGVO

(*゚A゚)「こら…」

軽く上げている左手に蛍火のような光を放つカンテラをぶら下げ、右手は茶色の柄をしっかりと握っている。
僅かに幼さを残したような雰囲気を漂わせるその女性は無表情のまま、しかし怒りの籠もった目で巨獣を睨みつけていた。

(*゚A゚)「…どこのどいつじゃ、と言いたいとこやけどな」

手にした柄が瞬時に元の長さに戻り、それを背負う。

(*゚A゚)「確か…お前は『MSP-S05』とかそんなんやったな。
    …むしろ『シラネーヨ』言うた方が早いし正確やな…何で魔界にいるんや」
( ´ー`)「!」

言葉とほぼ同時に巨獣もまた女性を睨みつけたかと思うと、タカラそっちのけで女性の方へと向かい始めた。

(*゚A゚)「ほぅ…殺る気か」

手にしたカンテラを足元へ投げ捨て、彼女の目つきが変わる。

(*゚A゚)「お前のような森を焼くドアホウは…自分が地獄送りにしたるわ!」



249: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 10:59 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「うわぁ…あのデカい奴、のーを怒らせちまったな…」

魔界にも、ごく少数ではあるが寛大で優しい心の持ち主がいる。
今森から現れた女性もその一部で、名を『のー』といった。
百五十年前に突如現れて以来、魔界唯一の森でひっそりと暮らしており
さらには自発的に森の見回りや保護まで担当してしまっている。

それだけ自然を大事にする心優しい住人なのだが、逆に自然を荒らす者がいれば徹底的に叩きのめす冷酷な一面をも持ち
彼女は今まさに、その一面を剥き出そうとしていた。

( ´ー`)「シラネーヨ!」

巨獣―――シラネーヨが巨大な足を上げ、そのままのーの華奢な身体を潰すべく踏みつけを繰り出す。
魂を具現化して巨獣の姿を保っている存在であるはずなのだが、その重量は相当のものだ。



250: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 11:01 Q3LA2tGVO

だが、のーは回避を試みず――

(*゚A゚)「阿呆…力で自分に勝てるとか思うな」
( ´ー`)「!」

彼女は潰されるどころか、左腕一つでシラネーヨの足を受け止めていた。
そのままの体勢で右手に持った茶色の鉄槌を大きく振り被り

(*゚A゚)「いくで…『クラッシュ』」

その瞬間、柄が数メートル程伸びる。
そして、シラネーヨの首に届くほどになった鉄槌・クラッシュを即座にシラネーヨへと振り下ろした。

(; ´ー`)「…ネーヨ…!」

決して素早い攻撃とはいえぬが、相手の動作も鈍い。
ゆえに鉄槌は再び首を打ち据え、シラネーヨは呻き声らしき叫びをあげた。



251: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 11:05 Q3LA2tGVO

(*゚A゚)「降参か? 許す気は全くあらへんけど、今なら地獄送りだけで堪忍してやっても―――」
( ´ー`)「……」

降伏を否定するようにシラネーヨの背部が開き、続いてそこから大砲が顔を出す。
あのミサイルを放つつもりだ。

(*゚A゚)「…現世にもあんなような武器があったような…もう訳わからんわ」

言いながら、のーは柄の伸縮・重量操作自在の鉄槌・クラッシュを元のサイズに戻し、構える。

(*゚A゚)「ッ!」

直後、自らミサイル目掛けて飛び込んでいき
それらへ鉄槌による打撃を叩き込む。
言うまでもなく轟音と共に爆発が連続して発生。
魔力の篭もった証拠ともいえる怪しげな紫の爆風はのーを飲み込み、その身を焦がす―――はずなのだが。

(*゚A゚)「こいつ…!」

黒い翼を広げて飛翔し、辛うじて爆風から抜け出したのーは半ば息を荒げつつ、シラネーヨから距離をとって着地した。



252: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 11:07 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「おい、大丈夫なのか!?」

再び駆けつけたタカラが爆風でダメージを受けたと思われるのーへ近寄る。

(*゚A゚)「問題あらへんし、休んどる暇もあらへん。
    アレが暴れとる今、自分が頑張らんでどないするんや」
( ^Д^)「…お前、あいつのこと何か知ってるのか?」
(*゚A゚)「知っとる…けど今はそれどころやない」

それだけ言うと、再びシラネーヨをきっと睨みつける。
そして鉄槌・クラッシュの先をシラネーヨへと向け

(*゚A゚)「…覚悟せい」

再び疾駆を開始した。



253: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:04 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「(何つーか…あいつすげえかも)」

巨獣と対峙するのーを眺めながらタカラはつぐつぐ思う。
まともに戦っても勝機が薄い相手に、怯みもせず立ち向かっている。
森を焼かれたことで生まれてしまった、怒りの感情による向こう見ずな行動にも思えるが、それにしては己を見失うことなく戦闘をこなせている。
火事場の馬鹿力を発揮しているのか、或いは彼女の本来の力なのか。
解らぬが、いずれにせよ彼女は自分より幾分も勇敢であった。

( ^Д^)「(で…さっきから俺は何やってんだ?)」

自分自身に問う。
強大な敵を目前にして怯み、中途半端に攻撃を仕掛けていただけではないか。
思い起こすと同時に悔しさと情けなさが心の底から沸き上がってくるが、自分の力だけではどうにもならない。

だが今はどうだろう。
前線に出て勇敢に戦ってくれる、心強い味方がいる。
仮に自身にまともに戦う勇気がないというならば、やることは一つ。

( ^Д^)「(…よし)」

何かを決意し、タカラは行動を開始した。



254: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:08 Q3LA2tGVO

( ´ー`)「…シラネーヨ!」

完全に狙いをのーだけに絞ったシラネーヨが、緑色の光線を放つ。

(*゚A゚)「…!」

のーはそれを回避し、隙を見てカウンターを叩き込む。
先程からその繰り返しだが、奴は単に巨大な相手ではなかった。
確かにダメージを与えているはずなのだが、力尽きる様子は一向に見られない。

(*゚A゚)「…どんだけしぶといんや」
( ^Д^)「同感だ。アレはまともに戦っても倒せねえな」
(*゚A゚)「うわっ!?」

いつの間にか、タカラが再び戦場に現れていた。

( ^Д^)「うわっとは何だ。せっかく来てやったのに」
(*゚A゚)「いや、別にそういう訳やなく…何でまたここに?」
( ^Д^)「冗談だ」



255: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:09 Q3LA2tGVO

短く言い、続ける。

( ^Д^)「よくわかんねえけど、お前一応つーの後輩なんだろ?
     あの馬鹿の後輩ってことは、魔界在住歴的に見てお前は俺の後輩でもある訳だ。常識的に考えて後輩に任せっきりにしておく奴はいないだろうに?」
(*゚A゚)「はあ…」

よく理解できないのか、首を傾げるのー。
それを見たタカラは

( ^Д^)「早い話、二人でさっさとあのデカい奴沈めちまおうぜ、ってことだ」
(*゚A゚)「ああ成る程、ようわからんけど――」

再び彼女は殺気を前方の巨獣シラネーヨへと突きつけ

(*゚A゚)「頑張ろう、っちゅうことやな」
( ^Д^)「そういうこった!」



256: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:12 Q3LA2tGVO

( ´ー`)「!」

敵が増えても、シラネーヨは何故かのーばかりを狙って攻撃を繰り返してくる。

(*゚A゚)「おりゃ!」

対し、のーは攻撃の合間を狙って接近しクラッシュで攻撃を仕掛けるも、決定的なダメージを与えられない。

(*゚A゚)「…とまあ、こんな調子や。普通に叩いてもなかなか倒れへんよ」
( ^Д^)「あくまで俺の勘だが、お前の最大パワーをぶつけてやりゃくたばるんじゃねえかな」
(*゚A゚)「そのまんまやな…けど、それをぶつける程の隙があらへん」

勝利のために自身の力を最大限引き出すということは当然だが、単にそれだけでは駄目だ。
いくら相手の動作が鈍いとはいえ、接近した直後に反撃されることなく最大の一撃を放つ程の器用さは彼女にはない。

( ^Д^)「そこでチームプレイってモンの出番だ。
     俺が上手いことやってあいつの気を逸らすから、その間にお前が鉄拳制裁を喰らわしてやれ」
(*゚A゚)「成る程…把握や!」

ごくありふれた手段だが、のーは否定することはしない。
そもそもあまり戦いという行為をとらない彼女は、一応歴戦の戦士(?)であるタカラの策に従った方が賢明と判断したのだ。



257: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:14 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「よし…行くぞ!」
(*゚A゚)「はい!」

タカラの合図と共にのーはクラッシュを背に担ぎ、シラネーヨへと向かう。

( ´ー`)「!」

シラネーヨがそれに気付き前足を上げようとするが、その前にタカラが放った複数の火炎球がシラネーヨの頭部へと殺到し動きを阻害する。
その一時の隙を狙ってシラネーヨの足元まで到達したのーは大きく息を吸い込み

(*゚A゚)「ッ!」

短い声と共にシラネーヨの前右足を、気合いを篭めた右拳で殴りつける。

(; ´ー`)「シラネーヨ!」

彼女の放った打撃は致命傷を負わせるまではいかなかったが、それでもシラネーヨの巨体をも後退させた。
華奢なその外見からは到底想定できぬ怪力だ。



258: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:17 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「…お前、直接殴った方が強くね?」
(*゚A゚)「まあ、それは相手によって変わるもんや」

言いつつ

(*゚A゚)「…駄目やな。外したっぽいですわ」

見ると、ちょうどシラネーヨが背部から夥しい数のミサイルを発射しているところだった。

( ^Д^)「…よし、俺が盾になる」
(*゚A゚)「大丈夫ですか?」
( ^Д^)「問題ねえ」

言葉と同時にのーの前に進み出る。
だが

( ^Д^)「あれ…何かおかしくね?」

ミサイルが通るであろう軌道を注意して確認する。
どう見てもタカラを通り越す勢いで迫っている。

つまり、ミサイルの狙いはタカラでものーでもなく―――



259: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:20 Q3LA2tGVO

(*゚A゚)「あかん!」

これに気付いたのーは振り返り、翼を展開し森へと飛翔を開始した。

(;^Д^)「やめろ、いくら何でも無茶だ!」

先程はミサイルの爆風を受けても無事生還したのーであったが、今後は数があまりにも多すぎる。
とても彼女一人で抑えられるものではないと判断したタカラが叫ぶが、彼女は止まらない。

(*゚A゚)「…させるかい」

彼女の飛行速度はそれ程速くはない。
間に合うか―――

(*゚A゚)「これ以上…森焼かれる訳にはいかんのや!」

翼に力を入れ、羽ばたきを繰り返し―――
―――間一髪、彼女の方が森の入口に到達するのが早かった。

そして飛来するミサイルの前にクラッシュを構えて立ちはだかり

(*゚A゚)「かかって来いやぁ!」

叫びと同時に二十発はありそうな大量のミサイルへと飛び込んでいく。
次の瞬間、紫の爆発。
ミサイルは森を前にして次々と空中爆発し、木々を蹂躙することなく散ったが、言うまでもなくのーも巻き込まれてしまった。



260: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:25 Q3LA2tGVO

(;^Д^)「……」

紫の爆風を気が抜けたように眺めるタカラ。
あの爆風を喰らっては、生き残れる可能性は低いだろう。

だが、我に返り後ろを向くと、今度はシラネーヨが自分に向けてレーザーを発射しようとしていた。

( ´ー`)「…シラネーヨ!」

直後、それはすぐに発射される。

(;^Д^)「っ!?」

ギリギリのタイミングで後ろへ下がり回避。
そのまま視線をシラネーヨへと移し

( ^Д^)「てめえよくも…」
( ´ー`)「シラネーヨ」
(#^Д^)「幽霊なのか妖怪なのか、それ以外なのか解んねえけど…殺すッ!」



261: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:30 Q3LA2tGVO

いきり立ってシラネーヨへ攻撃を仕掛けようとした、その時。

「…その必要、あらへんよ」

背後から声。

( ^Д^)「まさか!」

希望を抱いて再び後ろを向く。
爆風の中から飛び出す人影が確認できた。

(*゚A゚)「…シラネーヨ、お前は色々と誤算しとる」

爆発からまたも生還したのーが、淡々と言葉を紡ぐ。

(*゚A゚)「まず、その爆発の破壊力が足りへん。力不足や。
    次に飛んでくる速度が遅いったらありゃせん。自分以下や。クラッシュで遠くから叩いて爆風遠ざける余裕さえあったわ。
    第三に…」

シラネーヨを睨みつつ

(*゚A゚)「自分はつー先輩の後輩であること…要は相手が悪かったっちゅうことや!」



262: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:34 Q3LA2tGVO

言い終えるなり、再び翼を展開しシラネーヨへと向かう。
最後の理由が謎だが、要は簡単にはやられないということだろう。

( ´ー`)「!」

一番の標的が未だ存命であることを悟ったシラネーヨは口を開き、向かってくるのーへと緑の光線を放つ。
それは一直線に彼女へと迫るが

(*゚A゚)「そんなモン――」

柄を握り、強く念じる。
瞬間、クラッシュは先程とは違い、言葉で表現し難い光を放ち通常の三倍程のサイズへと姿を変えた。
そして

(*゚A゚)「こいつでぶっ叩いたるわ!」

力の塊ともいえるそれを、勢いよく振るう。
ちょうど目前まで迫っていたレーザーと激突し―――



263: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:37 Q3LA2tGVO

( ´ー`)「!?」

緑の小さな光が周囲に飛び散り、直後状況に変化が起こる。

( ^Д^)「光線を…打ち返した?」

言葉通り、緑のレーザーは巨大化したクラッシュによる打撃で打ち返され、放ったシラネーヨ自身へと矛先を変えていた。
無論、回避されることなく命中。

(*゚A゚)「もう叩くだけとちゃうよ…名付けるとすれば秘技ミラースイングや!」
( ´ー`)「シラネーヨ!」

それ程度効くか、といった様子で今度はシラネーヨ自身が向かってくる。

(*゚A゚)「…そのでっかい身体で暴れられちゃ困るわ。もっとちっちゃく具現化できへんのか」



264: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 12:40 Q3LA2tGVO

呟きながら、タカラの方を向く。

( ^Д^)「(…そうか、もう一回やるんだな!)」

彼女の視線を感じたタカラはすぐに己のやることを理解する。

(*゚A゚)「(今度こそ決めるで…)」

のーは頭の中を空にし、静かに力を溜め始めた。
それ程精神力のない彼女故、頭の中を空にすることは容易ではないが―――



265: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:09 Q3LA2tGVO

( ´ー`)「シラネーヨ!」

今が反撃のチャンスとでも思ったのか、無防備であるのーへ地響きを立てて迫るシラネーヨ。
そして鞭のように長く、且つ太い尾で彼女を叩きつけようと―――

( ^Д^)「させねえな、この巨大蜥蜴めが」
( ´ー`)「!」

突如立ちはだかったタカラが、火炎球を尾に向けて連射し攻撃を阻止。
続いて両手をシラネーヨの頭部へと向け

( ^Д^)「…俺の奥の手だ、喰らっとけ!」

火炎球ではなく、紫の光弾を発射。
それは動作の鈍いシラネーヨを容易に捉え、同時に光弾は泡が弾けるように消える。



266: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:10 Q3LA2tGVO

( ´ー`)「…?」

それを境に、シラネーヨの様子に異変が起きる。
不思議そうな様子で辺りを見回し始めたのだ。

( ^Д^)「へっへ…成功だ、俺の幻覚術も捨てたモンじゃねえな」

魔力を攪乱作用のある力へと変換し、それらを凝縮して放つ一種の精神攻撃。
それに引っかかった相手は一時的に幻覚を見せられ惑わされる。
つまり、知性の低いシラネーヨは現在完全に機能しなくなっていた。



267: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:13 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「後は煮るなり焼くなり自由だ、やっちまえ!」
(*゚A゚)「把握や…」

右拳を強く握ったのーが混乱しているシラネーヨへと向かう。
幻惑している相手が出鱈目に攻撃してくることを警戒しつつ

(*゚A゚)「さて…」

息を吸い込み、心を整え、目の色を変える。

(*゚A゚)「魔界侵略…それから木々を折った罪は、その魂で償うんやな」

狙いは、目前に位置する巨体。
真っ直ぐに右拳を突き出し、溜めた力を一気に解放する。

(; ´ー`)「…!?」

その強力無比の一撃をまともに受けたシラネーヨは轟音と共に小さく吹っ飛び、さらには仰向けのまま地を少しの間滑り、止まる。



268: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:17 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「おい、あいつまだ――」
(*゚A゚)「そうやな」

実体がないにもかかわらず、何故か起きあがろうともがいているシラネーヨへ再び近付き

(*゚A゚)「…仕方あらへん」

クラッシュを両手で構え、掲げる。
瞬間、茶色の発光。
それと共にクラッシュは形状を歪め、みるみる巨大化していき―――

(*゚A゚)「…っ」

遂にはのーでさえよろけそうになるほどの、通常の数十倍もの重量を持った巨大な鉄槌が彼女の両手に握られていた。

(;^Д^)「おいおい…それって平気なのか!?」
(*゚A゚)「大丈夫や…」

彼女がそう断言できる理由は簡単。

(*゚A゚)「その状態じゃ絶対に避けれへん…よな」

彼女は未だもがいているシラネーヨへと巨大鉄槌を傾け

(*゚A゚)「…永久に、さよならや」

静かに発した言葉と同時に、全てを粉砕する一撃がシラネーヨへと落下した。



269: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:20 Q3LA2tGVO

その破壊の一撃は轟音と共に大地を激しく揺るがし、周囲に地割れを発生させた。
恐らくこの地響きは魔界全土へと轟き、各地の者達は一瞬意識を奪われたことだろう。

大気さえもが振動するような錯覚に戸惑いながらも、タカラは力を使い果たし座り込んでいるのーに声をかける。

( ^Д^)「もう大丈夫だろ、とりあえずそいつを戻せ」
(*゚A゚)「……」

彼女は無言のまま、地に落としたクラッシュを元のサイズに戻す。
そして破壊的な力の下敷きとなった巨獣―――シラネーヨがいた位置には緑色の光が浮かんでいたが、直後間もなく掻き消えていった。



270: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:22 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「しっかし、いきなりあんなヤバい野郎が相手とはな…しかも俺大したことやってねえし…」
(*゚A゚)「そんなことあらへんよ、自分一人だったらあの攻撃当たっとらんかった」

けど、と付け加え、溜め息をつく。

(*゚A゚)「何やろこの気分は…どうもスッキリせえへん」
( ^Д^)「まあ、心優しいお前ならそうなるんだろうな」

彼女は森が襲撃されるという緊急事態によって、内に眠っていた感情を呼び覚ましてしまった。
そしてそれは報復という行為で表され、元凶であるシラネーヨが完全に倒れるまで彼女は牙を剥き続けた。
それだけのことをしておきながらも、彼女は後味の悪い気分である。



271: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:27 Q3LA2tGVO

( ^Д^)「早い話、お前に『復讐』なんて言葉は似合わねえってことだ。俺はそれでいいと思うがな」
(*゚A゚)「……」

何かを思案するような仕草。
そんな彼女を見据えつつタカラは続ける。

( ^Д^)「…もう一度聞く。お前、あいつらのこと何か知ってるのか?」

明らかに前にも出会ったことのあるようなことを言っていたのーなら、何か相手のことを知っている気がする。
そう思ったのだが、彼女は決まり悪そうに返すのみ。

(*゚A゚)「…一度遭遇してもうて戦いになった、っちゅうことにしといてや。自分もはっきりとは解らへん」
( ^Д^)「へぇ…昔のお前のことはよく知らねえけど、まあいいか」

彼女の背に生えた黒く、しかしどこか不思議な翼を眺めながらタカラは言った。



272: ◆wAHFcbB0FI :09/23(日) 14:29 Q3LA2tGVO

暫しの沈黙の後、タカラは思い出したように再度口を開いた。

( ^Д^)「俺は城に戻る。一応だが一仕事終えた訳だし、でぃが心配だ」
(*゚A゚)「そうですか。
    なら自分はここに残りますわ。また何が起こるか解らへんから」
( ^Д^)「それでいいと思うぜ…けどあんまし無理すんなよ」
(*゚A゚)「解っとる」

やる気十分に言うのー。
それを聞いたタカラはふっと笑いを浮かべ

( ^Д^)「また後でな!」
(*゚A゚)「はい!」

互いに言った後、二人は各々の次なる行動へと移っていった。



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