( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

324: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:02 Q2tEBdMXO

第十話 『Confusion』


城一階・中央の広間。
普段とは明らかに違う雰囲気の中、侵略側の大将(?)と魔界の支配者が相対している。
精鋭部隊の兵士達は勿論、タカラやじぃ、つーまでもが沈黙をまもって彼等に視線を向けていた。

( )「あれ、ノコノコと出て来ちゃっていいのかな?
   今の自分の立場解ってるのかね?」
(-_-)「ああ、解ってるとも」

馬鹿にするように問いかける女に対し、ヒッキーは澄ました様子で答える。

( )「なら、何故に出てきた? 死ぬぞ」
(-_-)「この世界を侵略者から守るために皆が戦い、血を流し、さらには倒れた者も多数いる。
    そんな中、支配者である僕が何もしないというのはとんでもない話ではないか」
( )「アヒャア…? この世界に住む連中は血も涙もない奴ばかりなのに、よくもまあそんな考えが出来るもんだな?」
(-_-)「そうとも…救いようのないくらい野蛮な連中ばかりだよ」



325: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:05 Q2tEBdMXO

けど、と付け加え

(-_-)「僕はこの殺伐とした世界が何となく好きだし、故に当然守る義務もある……一応魔王だしね」
( )「そうかそうか、最もらしい理由出したな?」

途端に女は笑いを止め、入れ替わりに全身から鋭い殺気を噴き出す。

( )「よし…とっとと死んでもらおう!」

言葉と共に駆け出す。
瞬速ともいえる速度でヒッキーに接近し、そのまま一気に両断するつもりで手にした漆黒のサーベルを―――



326: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:07 Q2tEBdMXO

(-_-)「やられんよ」
( )「…む」

斬撃は目に見えぬ何かによって止められていた。
そこで女はふと違和感を覚える。
正体不明の力によって一撃が阻まれたこともだが、奇妙なことに『止められた』という手応えすらも感じられないのだ。

(-_-)「僕をただの根暗だと思わないでもらいたい。要はそれなりの防衛術ぐらいは持ち合わせているという訳だ」
( )「流石は魔界の支配者…だが」

バックステップで距離をとり、一瞬の動作で取り出した巨大な銃器を担ぐ。

( )「こいつならどうかな!」

射出。
計三発の黒い光弾は真っ直ぐ軌道を描きながらヒッキーに迫る。

(-_-)「……」

対するヒッキーの出方は目を疑いたくなるものだった。
無言のまま、回避運動へ移ろうとしない。
当然、直後に爆風がヒッキーを呑み込むが

( )「流石にこれくらいじゃ……やられないよなぁ」

次の瞬間、爆風が吹き飛ばされるように晴れる。



327: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:09 Q2tEBdMXO

(-_-)「…随分と迷惑な話だ。その手の攻撃をされては城が壊れるではないかね」

何時の間にか右手に錫杖を携えたヒッキーが姿を見せる。
それは不気味な黒色をしており、しかし同時に吸い込まれそうな神秘さも併せ持っていた。

(-_-)「さて、今度は僕の番だ」

左手を軽く掲げる。
その先に、影で形成されたような球体が浮かび――

(-_-)「ッ!」

投げつけるような動作と共に発射。
魔の力の集合体ともいえるそれは、唸りをあげて女へ飛び込んでいく。

( )「…!」

そのスピード故に一瞬反応が遅れるが、しかし女は左方へ跳んで回避。
直後、先程まで彼女がいた位置を爆発が蹂躙する。



328: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:15 Q2tEBdMXO

( )「何かね…壊れるからやめろとか言っときながら、自分も同じことしてるではないか!」
(-_-)「…もう仕方ないよ。
    建てられてからもう数千年経つらしいけど…壊れたら、皆ごめんね。」

さり気なく言葉を漏らし、まあ多分平気だと思うけど、と付け足す。
そして手にした錫杖の先を女へ向け

(-_-)「『魔法円・業火』」

瞬間、女の足下に赤い魔方陣が描かれる。

( )「何だ…?」

魔方陣の周辺の温度が急激に上昇しているのを感じる。
まるで、地の底からマグマが沸き上がってきているような感覚だ。
直感で危険と判断した女は即座に後退。

(-_-)「…あ」

その直後、魔方陣の中心から轟音をあげて火柱が上がった。



329: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:24 Q2tEBdMXO

その迫力は相当なものだが、相手は既に回避してしまっている。
結果的に、火柱はその役目を果たすことなく姿を消す。

(-_-)「あー…やっぱり、タイムラグがあると当たりにくい―――」

言い終わる前に銃声。
ヒッキーの左耳を銃弾が掠め、人間とは違ったどす黒い血が少量だが流れる。

(-_-)「…これは正直驚いた」
( )「次はその頭をぶち抜くぞ」

火柱を逃れ、再びヒッキーの前方に姿を現した女は左手に拳銃を構えていた。
そして不敵な笑みを浮かべ

( )「そのよく解らない結界…攻撃の際は消えるようだな?」
(-_-)「…正解だよ」

ヒッキーを守護している、不可視且つあらゆる攻撃を和らげる結界。
先程の斬撃をいとも簡単に防げた原因もそれだが、当然ながら多少の制約も存在する。



330: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:27 Q2tEBdMXO

完全無欠といっても過言ではない防御性を誇る結界を維持するには、限りなく安定した精神状態が最前提となる。
ゆえに結界を維持出来るのは精神が完全に落ち着いている時のみであり、攻撃や回避運動等で少しでも精神が傾くと結界は崩れた状態となるのだ。

( )「ま、ありがちな厨能力だな。厄介っちゃあ厄介だが」
(-_-)「その余裕、なくしてあげるよ…『魔法円・鏡』」

今度は錫杖を床に突き立てる。
そこを中心として、ヒッキーの前に灰色の魔方陣が一瞬で浮かび上がった。
さらに、その真上に何かが生成されていくが―――



331: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:31 Q2tEBdMXO

( )「馬鹿が…頭をぶち抜くと言ったよな!」

何かが来る。
だが、逆に考えれば相手は今無防備。
ならば来る前に一発かましてやればいい。

そう判断した女は即座に狙いをヒッキーの頭に定め、拳銃の引き金を引くが

(-_-)「引っかかったね…自滅乙」
( )「!?」

既に遅かった。
音速超過の紫の銃弾は、灰の魔方陣の真上に出来上がった巨大な円形の鏡に吸い込まれる結果となっていた。
鏡は割れることはなく、代わりに灰色の光を放ち始める。

(-_-)「さて…銃弾というのは怖いからね、返すよ」

言葉と同時。
キィン、という音と共に鏡から銃弾が発射された。
紫の拳銃から放たれたときよりも早く、そしてより強力なものとなって。

( )「…ッ!?」

その奇抜としか言いようのない反撃を見切ることは出来ず、銃弾は女の左肩に牙を剥いた。
直後、役目を果たした鏡は魔方陣共々掻き消える。



332: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:38 Q2tEBdMXO

(-_-)「…どうかね、謝って退散するなら今のうちだよ」
( )「おのれ…」

拳銃を持つ方の手が痛手を負ってもなお、女は戦意を失っていなかった。

( )「(しかし、どうするか)」

内に隠した殺気を剥き出しそうになるが、しかし思いとどまる。
焦っては駄目だ。
冷静に、しかし手早く確実に敵を仕留めろ。
自身にそう言い聞かせ――

( )「退散などお断りだよ。
   我々は魔界侵略を命じられた故、最後に勝つのは我らだよ」

そして

( )「…たとえ何があっても、我々の敗北はないものさ」



333: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:40 Q2tEBdMXO

安全圏に退避している者達は、様々な思いで傍観している。

( ^Д^)「さてさて、俺たちゃ一体どうしたものかね。
     ってか魔王さんsugeeeeeee!!」

普段のヒッキーが見せぬ数々の技に感嘆の意を表すタカラ。

(*゚∀゚)「……」

両手でロストを構えたまま、無言で両者を眺めているつー。
どう見ても乱入するタイミングを伺っているとしか思えない。

( ^Д^)「この状況、軍師さんはどう思う?」
爪゚ー゚)「うむ…当然だろうが、やはり我々も向かうべきだろうな」

そうは言うも、じぃは考えるような素振りをみせ

爪゚ー゚)「…しかし、下手に飛び出しては魔王殿を阻害する結果になりかねない。
     卑怯かもしれんがやむを得ん…暫し様子を伺い、相手の隙を見計らって我々三人で死角から一気にかかる。いいな?」
( ^Д^)「不意打ちか…腕が鳴るぜ」
(*゚∀゚)「…wktk」



334: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:44 Q2tEBdMXO

攻撃の数は増し、戦闘は次第に激しくなっていた。

(-_-)「っ!」

ヒッキーは結界で身を守りつつ錫杖を振りかざし、生成された黒い魔弾を次々と女へ向けて放ち

( )「それ程度の攻撃では、私は倒れんよ!」

女はそれを軽いステップで回避し、さらには肩に担いだバズーカ砲で反撃さえ仕掛ける。
一種の銃撃戦ともいえるような状況だが、戦況が大きく傾くことはなく、ある意味膠着状態に近い状況でもあった。
女は回避運動をとりつつ隙をみて反撃を行うのに対し、ヒッキーはその場から殆ど動かずに攻撃と防御をこなしているからだ。



335: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:48 Q2tEBdMXO

( )「一つ問おう」

バズーカ砲を担いだまま、女は口を開く。

(-_-)「どうぞ」
( )「いや、どうってことはない。
   お前は私を嘗めているのか、それを聞きたいだけだ」
(-_-)「とんでもない」

両手を軽く上げ

(-_-)「生憎、僕は争いを好まないのでね。
    君達が何を理由に侵略を目論んでるのかは知らないけど、出来ることなら今すぐにでも話し合いで解決したいと思っている」
( )「そうか。血を流さずに終わらせる方法もなくはない」

試すような口調で

( )「今すぐお前達が我々に降伏し、この世界を我々に明け渡せばそれで万事解決だよ」
(-_-)「(我々…?)」

それはつまり、敵は女の他にまだ存在するらしいということを意味する。
現在広間の端にいる白の男も、彼女の配下なのだろうが―――



336: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:51 Q2tEBdMXO

(-_-)「…ごめん、話し合いは無理そうだ」

残念そうに呟く。
その言葉に偽りはなく、彼は本気で和解を求めたのだが―――

( )「もう挫折か。先程の言葉と矛盾してないかね?」
(-_-)「だって魔界を渡すとは言ってないし。
    そっちが退く条件がそれしかないなら…もう武力行使しかないのかもしれないな」
( )「今更そんなことを言うか…少なくとも私はまだまだ負ける気がしない」
(-_-)「その様でよく言うよ…なら少し思い知ってもらおうかな」
( )「ん?」

疑問の声を発する女に対し、ヒッキーは小さな笑みを浮かべた。
その視線は女を捉えてはおらず―――

(-_-)「まあ、今に解るよ…この世界のルールが」



337: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:53 Q2tEBdMXO

言葉と同時に事は起こる。

( )「ちっ…そういうことか!」

咄嗟に振り返り、銃身とサーベルで何かを受け止める。
その先には

( ^Д^)「あー…外したな」
爪゚ー゚)「…正直言って私は今、良い気分ではないのだが」

銃身で防いだのはタカラの鉤爪、サーベルで防いだのはじぃの刀だった。
じぃはどこかやむを得んといった表情だが、タカラはごく平然とした様子だ。

(-_-)「…何が言いたいかっていうと、結局魔界に正々堂々なんて概念はないってこと。
    城下で殺し合いなんて面倒なことが起きたとしても、大勢対少数なんてことはよくある。要は、勝てばそれでいい訳だよ」



338: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 17:57 Q2tEBdMXO

それに、と付け加え

(-_-)「…僕は争いを好まないと言ったが、非常事態となれば別。
    あらゆる手段を行使してでも、侵略は阻止しなくちゃいけない」

そして八方塞がりである女の真上に視線を移し

(-_-)「今回ばかりは君に命ずるよ……思う存分戦いたまえ!」

対する返答は

(*゚∀゚)「その言葉を私は待っていた!
     血みどろ戦争ならこのつー様にお任せあれ!」

赤き大鎌を構えたつーが、一気に急降下。
一瞬の交差と同時に女を切り刻もうと迫るつーに気付いた女は小さく舌打ちし

( )「愚かな…」

呟きと同時に姿を消した。

爪゚ー゚)「なっ…これは」
(;^Д^)「どういうことだ! 目の前でいきなり奴が――!」

言い終わる前に、鋭い斬撃がタカラを襲った。

(;^Д^)「痛ってぇぇぇぇぇ!?」
( )「…お前は阿呆か。説明口調で言葉を吐く暇があったら少しは警戒しろ」

のたうち回るタカラを後目に、再び姿を現した女が呆れ気味に呟く。



339: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:02 Q2tEBdMXO

爪゚ー゚)「何ということだ…これはまるで―――」

どうにか状況を理解をしようとするじぃに、つーが不機嫌そうに言う。

(*゚∀゚)「そうだよ…何か知らないけど、そいつは私と同じようなことをしやがってくれるのさ」
( )「いや、そいつは違うなぁ」

そのつーを前にして、女は否定の言葉を述べる。

( )「私は所詮殺戮の為の戦人形だが、同時にそれなりの知能・判断力・自我も授かっている。
   ゆえに私はお前よりも――」

言い終わらぬ内に、衝撃と鈍い音が女の耳に響いた。
何かが兜に攻撃を仕掛けてきたのだ。



340: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:04 Q2tEBdMXO

( ^Д^)「この大馬鹿野郎! 余裕ぶっこき過ぎなんだよ!
     このまま兜割って、てめえの首も一緒に刎ねてやる!」

腕に力を入れていく。
だが、機械兵の身体を紙のように引き裂いた鉤爪は、しかし赤い兜に傷を刻むだけに留まる。

( )「頭は大丈夫か? いや、私ではなくお前の方な」
( ^Д^)「ちっ!」

即座に振られたサーベルを鉤爪で往なしつつ後退。
入れ替わりに大鎌を高速回転させながらつーが飛び込む。

(*゚∀゚)「よし来た、私のターン!」
( )「またお前か…後にしてくれよ」

屈むような姿勢で大鎌を回避し、そのまま斬りかかる。

(*゚∀゚)「おっと!」

つーは一歩下がって横に薙ぐような一撃を避け、左手から魔光刃を女目掛けて数本投げる。
それらは風切り音と共に女を襲うが

( )「っ!」

間一髪で回避し、再度の攻撃を試みるために戻ってきた魔光刃をサーベルで斬り落とす。
が、至近距離からの攻撃によってその動きに乱れが生じた。



341: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:07 Q2tEBdMXO

そこに迫るは青白い雷光。
女はどうにか高く跳躍し、その直後に雷は女の真下を突き抜けていった。

そして着地した途端、先程雷を繰り出したじぃが迫る。

爪゚ー゚)「覚悟!」
( )「…む」

迅速な斬撃を、反射的に上げたサーベルで阻止。
そのまま鍔迫り合いとなるが、女は再度の不意打ちを恐れたのか、刀を打ち払うと同時に再び跳躍し離れた位置へ着地する。
その先には

(-_-)「…やれやれ、いつまでgdgdな戦いを続けるつもりかね」

錫杖を構えたヒッキーが棒立ちしていた。



342: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:09 Q2tEBdMXO

(-_-)「三人に攻撃するよう仕向けたのは僕だ。けど、君の狙いは結局のところ僕だろう?
    無駄に戦いを長引かせるのは止めたまえよ」

両手を軽く広げ

(-_-)「…さあ、改めてかかってきたまえ」
( )「…そうかね」

呟きと同時に女の姿が消えた。
それを見届けたヒッキーは一時的に、しかし瞬時に精神力を高め―――

(-_-)「そこか」
( )「……!」

ヒッキーが錫杖を突き出した先に、ちょうど女が姿を現した。
女は今、錫杖の先端を突きつけられている状態なのだが―――



343: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:12 Q2tEBdMXO

(-_-)「チェックメイトだ」
( )「…違うね」

女は不意に左腕を前に突き出し

( )「『マインドショック・ノイズキャノン』」

言葉と共に、彼女の左腕が一瞬で形状を変え―――銃のような形となった。
そして

(;-_-)「ッ!?」

銃口から放たれたのは銃弾ではなく、音。
その攻撃の対象は相手の身体ではなく、耳。
不可視の、しかし破壊的な音波は至近距離にいたヒッキーを一時的な放心状態へと追い込む。



344: ◆wAHFcbB0FI :10/13(土) 18:15 Q2tEBdMXO

(;^Д^)「ぬおっ、何か五月蝿えぞ!?」

離れた位置にいたタカラ達にも破壊音波は降りかかる。
タカラは宝箱に身を隠し、つーとじぃは耳を塞ぐ。
だがそれだけで防げるはずはなく、最早耐えるしかない。

女はその様子を冷淡に眺めている。

( )「アヒャアア…私の奥の手を甘く見たな。
   まあ折角だし、この場にある魂全て喰らい尽くすか…」

目標となる相手を決め

( )「じゃあ、さよなら」

一撃でとどめを刺すべく、放心状態となっている敵との距離を一気に詰め―――



347: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 18:59 RtSzIojrO

( )「…?」

攻撃は止められていた。
――否、動き自体を阻害されていると称した方が適切であった。
原因は女の足元、瞬時に生み出された氷。
右足の踝に絡みつくように発生したそれは脆いとはいえ、とどめを刺す機会を逸すことに成功していた。

( )「これは―――」

そこで女は気付く。
先程まではこの場にいなかった、新たな存在に。



348: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:07 RtSzIojrO

(#゚;;-゚)「…」

全身に痛々しい傷を未だに残した付喪神―――でぃがそこにいた。
周囲には僅かな冷気が取り巻いており、彼女が女の足元に氷を生成して攻撃を妨害したことは明白だった。

(#゚;;-゚)「…また会っちゃったね、侵略者側の指揮官さん。
     まあ、今回はこっちから来た訳だけど」
( )「その傷と箱は…そうか!」

傷跡だらけのでぃを見て、かつての大戦を思い出した女が神経を逆撫でするように笑う。

( )「お前は二百年前、私に喧嘩を売った愚か者だな!
   まーだしぶとく残っていたのかね!」
(#゚;;-゚)「…貴女のお陰で、今では人間達にはゾンビ呼ばわりされる始末だよ」

冷たい視線を放ちながら、しかし現状には合わぬ苦笑を浮かべる。



349: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:25 RtSzIojrO

(#゚;;-゚)「けど…私はあの時、魔界出身でありながら現世で放浪していたとあるならず者を、この世界でずっと待ってた。
     そいつは酒ばっか飲んでて頭は足りてないし、すぐ調子に乗る……でも、不思議と頼りになる奴」

彼女は自身が現在この世界の、この場に存在していることを証明するように言葉を紡ぐ。

(#゚;;-゚)「私はそんな彼が…何故か好きだった。だから彼が戻るまで、私は簡単に倒れる訳にはいかなかった」

現在、その人物は自分と同じ場に居合わせ、驚愕した様子で此方を見ている。
恐らく自分がこの『戦場』という場に現れたことをまずく思っているのだろうが―――



350: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:39 RtSzIojrO

( )「……」

女は黙ってでぃを見据えていたが、やがて小さく溜め息をつき

( )「…下らない…実に下らない!」

鋭い視線をでぃに向け

( )「そんな馬鹿な理由で、ここまでしぶとくなれる理由が私にはわからんなぁ!?」
(#゚;;-゚)「……」

その言葉には僅かな憤りが籠められていた。
余計な情など、戦場において邪魔でしかない。
それ程度の情を自らの存在の糧とするのは愚者がやることだ。
馬鹿馬鹿しい。
そんなことを戦闘の最中に言われては、自分が嘗められているようにすら思える。

備えられた高度な知能で、彼女はそんな考えを導き出していた。



351: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:43 RtSzIojrO

対し、でぃは暫し視線を女に向けていたが

(#゚;;-゚)「…解らないなら解らなくてもいいよ…傍らから見れば、確かに下らないことなんだし。
     けど―――」

瞬間、でぃが動き出す。
真っ直ぐ女へ接近しつつ右腕を掲げる。

(#゚;;-゚)「…今なお、私が存在していることは事実」

掲げた右腕に黒い光が集結し、先端が鋭く尖った手甲タイプの武器を象った。
影の爪、と称すのが適切であるそれを女の喉元目掛けて突き出すが

( )「弱い、な」
(#゚;;-゚)「…っ」

漆黒のサーベルによって呆気なく止められる。
そのまま打ち払い

( )「はっ!」

一閃。

でぃは左腕にも形成した影の爪で防御するも、衝撃までは防げずに後退。
だが、でぃが次の攻撃に備えるべく身構えようとした時には、足元の氷を砕いた女が既に接近してきていた。

( )「やはり…遅いな」
(#゚;;-゚)「!」

勢いをつけてからの強烈な斬撃を放つ。
間一髪、でぃは反射的に動いた両腕で身を裂かれることはなかったものの
力任せの一撃はその腕に纏った力を貫き、新たな傷をでぃに刻みつけた。



352: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:47 RtSzIojrO

( )「これでもまだ解らぬというのか?
   お前の考えが、戦いにおいてどれほど無駄で愚かなものなのかが!」
(#゚;;-゚)「違う…私は戦いも争いも好まない」

傷を負ったでぃは、女を見上げながら抵抗するかのように言った。

( )「そうなるとお前はチキンか?」
(#゚;;-゚)「…言われてみれば確かにそうかも」
( )「なら、私の前に立ちはだかる理由は何だ」

言われて、でぃは視線だけで周囲を確認し、さり気なく小さな声を漏らした。

(#゚;;-゚)「…時間稼ぎ、かな?」



353: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:49 RtSzIojrO

女はその言葉の意味を知るまでにそう時間を要さなかった。

( )「…そうか」

左手を真横に差し出す。
直後に左方から迫ってきた炎の球を、その片腕一本で受け止めて弾き

続いて右方から飛んできた雷を、軽いステップでギリギリ回避し

さらに振り返り、背後から迫っていた複数の黒い刃を、サーベルで斬り落とした。

( )「また不意打ちとは…大した度胸ではないかね」
( ^Д^)「そいつはむしろ俺の台詞だな…うん、間違いねえ」

でぃと対称の場所に位置し、身構えているタカラ。
その隣にはつーとじぃが各々の武器を構えて控えている。



354: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:54 RtSzIojrO

( ^Д^)「どうでもいいけどよ、そいつに手を出すんじゃねえよ馬鹿」
( )「…ほう?」

言いながら、タカラとでぃを見比べる。
( )「そうか、こいつが言っていたのはお前のことか!」
( ^Д^)「は?」
( )「いいだろう…」

サーベルを軽く一振りし

( )「お前達のその下らぬ考え、今ここで断ち切ってくれる!」
(;^Д^)「ちょ、いきなり言われても意味分かんねえし!
     つーかお前、まさかでぃを…そうはさせるかよ!」
(*゚∀゚)「…あ、そればかりは同感だよ」

タカラとつーが同時に前へ出る。

( )「ほう…闘争心の塊であるお前が、他人のために立ちはだかるか?」
(*゚∀゚)「あー、一応でぃとは長い付き合いだから。
     目の前でダチが酷い目に遭わされたりすりゃ、流石の私もちょっと引くわ。
     べ、別に友人だとか思ってないからな、勘違いするなよ!」
( ^Д^)「ちょwwwwww」



355: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 19:59 RtSzIojrO

( )「…まあ待て、私は別に人質をとったり拉致するような真似はしない」

何やら勘違いをしていると感じた女が、落ち着いた口調で言った。
だがそうは言われても、敵の言葉など信用しきれるものではない。
そんな皆の心情を読みとったのか、女はその疑念を否定する。

( )「出来る限り卑劣な手段はとるな、と命じられているのでね。人質や拉致などは以ての外だ。
   そしてあまり本気で潰しにかかるな、とも言われている」
( ^Д^)「何だって…?」

疑問に思うのは当然。
前者は兎も角、後者は明らかにおかしいからだ。
住人達が多くの犠牲を出しているというのに、手加減しているとは到底思えない。

爪゚ー゚)「お前達は何者かに造られた存在だと聞いたが、その人物がそんな命令を下しているのか?」
( )「ビコーズが言ったのかね…まあ大方正解だな。
   …とはいえ、このgdgdな状況ではあの方に合わせる顔がない…少し手を抜き過ぎたかもわからんね」

兜の女や、機械兵達のさらなる統率者。
その目的も正体も解らぬが、それは人間とは考えにくく
しかし魔物や妖怪等とは尚更考えられない。



356: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:04 RtSzIojrO

( )「…という訳だ、いい加減ファイナルラウンドといこうではないか」

言葉と同時、女が巨大な銃器を肩に担ぐ。
そして女の周囲を取り巻いていた殺気が再び強くなるのを感じる。

爪゚ー゚)「来るぞ!」
( ^Д^)(*゚∀゚)「おうよ!」

じぃの声に即座に応じ、二人は戦闘姿勢に切り替える。
それを見たでぃは女から距離をとり、相手の出方を伺う。

( )「アヒャヒャヒャ! いくぞッ!」

言葉と共に銃口から射出される黒き光弾。
一カ所に固まっていたタカラ達三人は、それを素早い身のこなしで回避。
そしてすぐさま反撃に切り出したのはじぃだ。

爪゚ー゚)「お前と魔王殿との戦い、無意味に眺めていた訳ではないぞ」
( )「…そうか」

白の刃と黒の刃が交わる。
だが直後にタカラが放った火炎球を避けるために、女は後方へ跳んで退避。
その途中で、女はサーベルの切っ先をじぃへ向ける。

( )「ならば違う芸も見せてやろう!」



357: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:07 RtSzIojrO

( )「ならば違う芸も見せてやろう!」


そこから放たれるは、前につーに牙を剥いた、あの黒き雷。
だが、一瞬にして相手の全身を蹂躙するはずのそれは、同じくじぃが刀から放った青白い雷によって相殺される。

爪゚ー゚)「…力は互角、か」
( )「違うね、私の方が優秀だよ」

当然のように言い放ち、再度斬撃を叩き込もうとじぃへ接近―――


(#゚;;-゚)「…えいっ!」
( )「!?」

少し離れた位置にいたでぃが、女の足元に指を向けていた。
直後、その地点から少数の氷柱が発生し女の動きを阻害する。



358: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:10 RtSzIojrO

(*゚∀゚)「一人勝ち狙ったら軍師さんに怒られそうだしなー。
     仕方ないから、誰がトドメ刺すかで勝負しようよ!」
( ^Д^)「そんな勝負やってる場合じゃねえからお断りだが、共闘なら賛成な」

緊張感のない会話を交わしつつ迫るのはタカラとつー。
だが、氷柱に足を取られていた女は二人が距離を詰める直前に一瞬にして消えた。

( ^Д^)「まただ…どうする?」

先ず誰が攻撃の対象となるかを把握しなければ防ぎようがない。
だが、つーは平然とした様子で

(*゚∀゚)「慌てない慌てない…こういう時は頭数増やしゃいいのさ」

両手から生み出した複数の魔光刃を宙へ放り投げる。
少し前の女との戦闘の時と同じ手段だ。



359: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:13 RtSzIojrO

(*゚∀゚)「さあ、殺っちまいな!」

命令と同時、やはり魔光刃はつーの周囲を取り巻いた後、一点へと集中する。
だが、その付近には

(#゚;;-゚)「!」

現在無防備な状態のでぃ。
つまり、奴の狙いは―――

( )「……」

女が姿を現す。
でぃの目前に。

即座に魔光刃を全て斬り落とした彼女は、続け様にでぃへと攻撃の矛先を向ける。

( )「さっきのお返しをしてなかったな!」

高速且つ鋭い、殴り飛ばすような勢いの斬撃。

(#゚;;-゚)「うわ…!?」

でぃは両手の影の爪でガードするが、防ぎきれない。
そのまま派手に吹っ飛ばされ、壁に激突する。

(;^Д^)「で、でぃ!?」

タカラが慌てて助けに向かおうとするが

( )「そら来た…他人様の心配をしてる暇はなくてよ?」
(;^Д^)「な…!?」

タカラの目の前に、女が瞬時に現れる。
タカラがでぃを助けに向かうことを予め考慮していたのか、相手は既に攻撃態勢に入っており宝箱に身を隠す隙もない。
でぃと同じように両手を上げて防御に回すが

( )「敵に隙を与えるその甘い考え、癪に障る!」
(;^Д^)「ッ!?」

鉤爪だけでは防げず、タカラもまた吹き飛んだ。



360: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:17 RtSzIojrO

爪゚ー゚)「貴様…どういうことだ!」
(*゚∀゚)「そうだそうだ、約束ぐらい守れよ!」

じぃが鋭い視線を女へ向けて言い放ち、それに乗じてつーが非難の言葉を浴びせる。

( )「あいつは私にとって厄介となる故、先に始末すべきと判断したまで。
   それにな――」

途端、辺りが何かに支配される。
言うなれば、空気が凍り付いたような錯覚―――或いは、恐怖とも読みとれるような感覚だ。
そして

( )「弱者をいたぶることはしない、なんて言ったかね?」
爪;゚ー゚)「…!?」



361: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:22 RtSzIojrO

事も無げに、さらりと言ってのけた。
兜でその表情は伺えぬが、明らかにじぃ達を見下すような冷淡な視線とオーラを放っていることは明確だった。

( )「もう一度言ってやるとすると…お前達は全く理解していないな。
   大事な人だか何だかを護るとかいう、甘ったるい思考が戦場において邪魔であることを!」

朗々と言葉を紡ぐ。

( )「さっきの付喪神が良い例だ。下手に強がっておきながら、愛する者だか何だかが攻撃されると全てを忘れて助けようとする。
    そこをズバッとやっちゃえばおしまいだよなぁ? 所詮馬鹿がすることであって、つまりあいつは馬鹿さ」
爪゚ー゚)「仲間を助けようとするのは当然のことではないか…!
     お前は相手の弱みにつけ込むような戦い方で勝とうというのか?」
( )「ああそうさ。ってかそんなの当たり前だよ」

即答。
じぃが驚愕の表情を浮かべる前に女は再度、声をあげた。

( )「よーく聞け…今ここは戦場だ。
   強いも弱いも関係なく、何時消されてもおかしくない無法地帯!
   友情ごっこや恋愛なんざ、余所でやれってことさ!」
爪;゚ー゚)(*゚∀゚)「……」



362: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:26 RtSzIojrO

これが彼女の本性なのか。
じぃもつーも、恐怖に満ちたそのオーラに戦慄するしかなかった。

そしてそれを楽しげな様子で見つめる女。

( )「アヒャア? 私に恐れをなしたか?
   ま、そりゃそうだよなぁ! お前達からしてみればいきなり現実突きつけられた訳だし。
   しかしこれぞまさに外d――」

その時、またも甲高い音が女の耳に鳴り響いた。
また何者かが兜に半端な不意打ちを仕掛けたのだろう。
前方にいるじぃとつー、離れた壁に身を預けているタカラとでぃ以外の者は―――

( )「…ああ、成る程」

振り返り、その人物を確認する。



363: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:31 RtSzIojrO

(-_-)「…うん、放置プレイはあまり好きではないのでね。しかしこれは堅い」

今まで何をしていたのかは解らぬが、槍にも匹敵する程の鋭利さを持った錫杖の先を女の兜に突き出しているヒッキーがいた。
が、それも赤黒い兜を貫くには至らず、ヒッキーはすぐに距離をとった。

( )「…私としたことが、愚者共を口説くのに熱くなり過ぎた。本来の目的を忘れかけてたよ」
(-_-)「随分と嘗められたものだ…ならばついでに言おう」

両手で錫杖を握り

(-_-)「あまり我々を馬鹿にするな、と」

そのまま錫杖を床に突き立てた。



364: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:41 RtSzIojrO

そこを中心として発生するは黒い波動。

( )「!?」

輪状に広がったそれは、女に回避の隙を与えずに牙を剥くには十分な速度だった。
女は思わず膝を折り、その体勢が崩れる。

(-_-)「復帰して早々だけど…もう変に時間をかけるのはよそうと思ってね。
    いきなりだけど、僕がとある遊戯においてもよく使う言葉を言わせてもらうよ」

錫杖の先から中程までが黒い光を放ち―――
最早、槍以上の殺傷力を備えた錫杖を正面に構える。

(-_-)「…チェックメイト」

途端、ヒッキーの姿が消え―――

次の瞬間、鋭い金属音と何かを切り裂くような音が鳴り響く。
先ずは一撃。

(-_-)「…ッ!」

そして、何時の間にか女の背後から少し離れた位置にヒッキーが立っていた。
気付かれる前に錫杖の先で女を指し示す。
直後に発生する現象は爆発だ。
高岡のように魔力を直接変換して引き起こす爆発ではなく、大気中のエネルギーを一点に集め、それに魔力をぶつけて爆発の力へと変えるものである。

それは反応する暇さえも与えず、轟音をあげながら女を飲み込んだ。



365: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:44 RtSzIojrO

それから、数秒間の沈黙の後。

爪゚ー゚)「…これで終わったのでしょうか」

どうにも呆気ない、といった様子のじぃは『一応の主』に問う。

(-_-)「…いや、奴は存命だよ。もっとも、元より生ある存在ではないだろうけど」
爪゚ー゚)「…え?」

戸惑いもなしに彼は言った。
何故そう言い切れるのか。
確かに呆気なさ過ぎるということもあるが―――


そう思う間にも煙が晴れていく。
そこにあった光景は

( )「……」

未だに人の姿を保っている女。
一見かなりのダメージを受けていそうだが、彼女は戦意を喪失していないようだった。



366: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:49 RtSzIojrO

( )「…お前、わざと外したろう?」

何故本気でとどめを刺そうとしないのかと、訝しげに訊ねる。
侵略者である自分は魔界の住人からしてみれば敵であり、一刻も早く排除されるべきであるはずだが。

(-_-)「ちょっとした理由があってね…気絶だけで止めとこうと思ったんだ」
( )「だが気絶どころか、兜さえも割れていない。手抜きにも程がある」
(-_-)「さて…どうかな」

言葉と同時。
ピシ、と鈍い音が耳に入ってくる。

( )「なっ…!?」

それは紛れもなく兜に亀裂が入る音だった。



367: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 20:52 RtSzIojrO

(-_-)「爆発の前、僕が君に一発かましていたのには気付いたかな。
    その一突きで兜に軽くヒビを入れて、そこに爆発をぶつけて後押ししてやれば壊れるかもしれない…って何となく思ったんだけど、どうやら上手くいったようだ」
( )「杖如きが兜の防御力を上回った、とでもいうのか…?」

ありえない、と思う。
あくまで頭部を守るためだけの存在とはいえ、この兜は相当な耐久性を誇っているはずなのだ。

(-_-)「…杖如き? 馬鹿を言ってはいけないよ。
    闇と魔に満ちたこの世界でさえ稀にしか見つからない『暗黒石』を加工して作った錫杖なんだから」
( )「暗黒石、だと…」

女にも覚えがあった。
強力な闇の力が凝縮されている、魔界にのみ存在するという宝石。
それはとある宝石と対をなす存在であり、体内に魔を宿す者が口にすることによってさらなる力を得ることができるという。
さらに言えば、自身もその力で生み出されたらしいのだが―――



368: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 21:00 RtSzIojrO

女が攻撃を仕掛けてこないと判断したヒッキーは、警戒の念を崩さずに緊張を解す。

(-_-)「さて…どうでも良いことが、素顔を晒すのが嫌だったら回れ右して帰りたまえ」
( ^Д^)(*゚∀゚)「わーくてか! わーくてk」
爪゚ー゚)「…いい加減空気を読んだらどうだ」

何時の間にか復帰したタカラとつーはじぃに制され、その後ろではでぃが冷めた目で見つめている。
特に理由はないが、空気の読めぬこの二人も女の正体を暴きたいのだろう。

だが、次に女の口から出た言葉は意外なものだった。

( )「…なら仕方ない、少し驚かしてやろうか」
( ^Д^)「…え?」

続いて彼女は動作でそれを証明する。
両手を兜に当て、何事もないようにそれを脱ぎ、投げ捨てる。
ヒビの入っていたその兜は床に落ちると同時に、呆気なく砕け散り―――女を隠していた仮面はその存在を消した。



369: ◆wAHFcbB0FI :10/14(日) 21:09 RtSzIojrO

爪゚∀゚)「…アヒャーン!」

兜の女は、遂に素顔を見せた。
だが、皆がそれを理解するには少しの時間を要した。
理由は簡単。


( ^Д^)「…つ、つー?」

数秒の沈黙の後、タカラが恐る恐る悪友の名を呼ぶ。

(*゚∀゚)「私ここにいるよ…?」

それに答える悪友。

( ^Д^)「……」
(*゚∀゚)「……」

タカラは狐に摘まれたようにつーと女を見比べ、つーは同じく女にだけ目を向け。
それが少しの間続いた後

(;^Д^)(;*゚∀゚)「えええええええええ!?」

爪゚∀゚)「………けっ」

―――女のその顔は、全く同じと言っても過言ではないほどつーに酷似していた。



403: ◆wAHFcbB0FI :10/21(日) 22:42 bZ3ngkMDO

[゚д゚]「言っとくけどよ、俺達が退散するからっていい気にならないこったな。
    こっちはすぐにでも別の戦力引っ連れてかかることだって出来るし、その気になれば明日にはこの世界も侵略出来ちまうかも知れねえのさ。
    それが嫌だったら、何が起きてもいいように準備しておくことをお勧めするんだぜぃ」

飛行物体が浮上する前、デフラグが吐き捨てるように残していった言葉。
それは未だこの戦いに完全な終止符が打たれていないことを意味し、再度の襲来を予告するものである。


奇妙な飛行兵器を操縦する、外見とは裏腹にフレンドリーな男ことデフラグ。
初めの会話からして、彼が侵略者側のトップではないのは明白だが―――


彼は一体何者なのかという議論がその場に居た者達で繰り広げられたと同時に、次なる戦いに向けての会議もその後に開かれることとなった。



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