( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

461: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 22:54 tJy8wlXYO

第十二話 『時代を越えた出会い』



魔界二度目の危機となった戦いは、結果的に辛うじて魔界側の防衛成功という形で幕を閉じた。

その後城内に居合わせていたタカラやつー、でぃは何もする気になれぬまま城にて寝泊まりすることにし。
魔界軍師ことじぃは休む間もなく一部の無事な兵士を引き連れて城下町へ向かい、魔王ことヒッキーは今後の動きについて色々と考えを巡らせ―――要は皆、各々の時間を費やしていた。



462: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 22:57 tJy8wlXYO

そして、翌日。

( `・ω・)「チャーハン作るよ!」

城の台所では、一匹の小柄な魔物が忙しなく動いている。
片手にフライパン、もう片方の手には何か色々持っている。

( `・ω・)「ご飯と卵をフライパンに入れて、よく炒める!」
( `・ω・)「それに豚肉も入れて、適当に炒める!」
( `・ω・)「野菜も入れて、やっぱり適当に炒める!」

…………………

(;`・ω・)「やった、今日はこぼさなかったよ!」
( `・ω・)「最後に胡椒とかトッピングみたいなのを色々入れて…」
( `・ω・)「できたよ!」

      。・。゚・。゚・
( `・ω・)つ\・゚・。・/



463: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:00 tJy8wlXYO

('(゚∀゚∩「おまちどうさま!」
( ^Д^)「…成る程、料理係とはこういうことか」
(*゚∀゚)「こんな日常的な食事なんて何ヶ月振りだろうねぇ」

ここは城の食堂。
料理係が作った適当チャーハン(仮称)を、なおるよ二匹が運んでくる。

( ^Д^)「うん、味は悪くねえな」
(*゚∀゚)「…アンタ、スプーンの使い方変だぞ」
( ^Д^)「米飯食うのにフォーク握ってる奴に言われたくねえよ」

それをがっつくように食べる二人。
無論タカラやつーは生き延びるために食事という行為を必要としないが、食べ物を口にして味覚を感じ取ることはできる。
つまり彼等にとって、食事とは娯楽の一種なのだ。



464: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:03 tJy8wlXYO

(#゚;;-゚)「……」

二人の横には、料理を黙々と口に運ぶでぃの姿。
タカラがそれを目にし

( ^Д^)「おい、何をそんなに沈んでるんだ? いつも以上に暗いぞ?」
(#゚;;-゚)「…ごめん」
( ^Д^)「は?」

不意に飛んできた謝罪の言葉。
何に対してそう言ったのかは解らぬが、考える間もなく横から拳が飛んできた。

(*゚∀゚)「女の敵! 付き合ってるくせに、何ででぃの気持ちが解ってやれないんだ!」
( ^Д^)「いってえな…お前こそ何が解るってんだ」
(*゚∀゚)「私には解るさ。アンタと交わした約束みたいなのを破っちゃって、それについて謝ってるんだと思うよ。
     …そうじゃないのかい、でぃ?」



465: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:05 tJy8wlXYO

言われて、でぃは申し訳なさそうに小さく頷いた。

( ^Д^)「すげえ洞察力だなおい」
(*゚∀゚)「女の勘ってやつだよ。
     …どんなこと約束したんだか知らないけどさ、こうして互いに残ったんだから水に流してやりな」
( ^Д^)「…おう。
     という訳だからもう気にすんな。俺は気にしてなかったぞ」
(#゚;;-゚)「…ありがとう」

侵略者達が攻めてくる前に、でぃと交わした約束。
彼女もまた、タカラが心配だったが為にそれに反したのだろう。
ならば最早でぃを止められるものはなく、それはつまり戦いの場にて、消える時は一緒であることを意味するのかもしれない。
そう考えるしかなく、しかし最愛の者と運命を共にするのならばそれも良いとさえタカラは思ってしまうのであった。



466: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:09 tJy8wlXYO

( ^Д^)「……何か、この頃お前が良い奴に思えるのは気のせいか? 百年前のあの時みたいに」
(*゚∀゚)「そこでそう来るかね普通」
( ^Д^)「あのづーとかいう、お前のそっくりさんを諭してた時とか正直かっこよかったぜ?」
(*゚∀゚)「スルーかよ…あれは私の思うがままを言ったまでさ」

当たり前というべきことなのであろうが、つーに家族は存在しない。
彼女は魔界に存在するようになってすぐにタカラやでぃと知り合ったというが、それまで(というか今に至っても)自分の意志に正直な暮らしをしてきたのだろう。



467: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:12 tJy8wlXYO

(*゚∀゚)「存在しているからにはどんな奴にも自由というものがあるはずさ。
     その折角の権利みたいなのを捨ててまで誰かの元に縛られるなんて私はお断りだね」
( ^Д^)「…そこまで思ってるんならモナーをパシったりすんのやめてやれよ」
(*゚∀゚)「あいつはあれで満足じゃないのかな?
     生きてた頃からあんなだったし、死んでなお魂だけの存在となっても同じ暮らし方を続けてるだけ。
     よっぽど何かに対する執念が強くないことには魂だけが残るなんてことは絶対にないはずだから、生前の頃と全く変わらない=生前の暮らしを手放したくない=私にこき使われて満足、って風に私は解釈してるよ」
( ^Д^)「…そういうものかね」

流石に生死や死後のことについては彼女の方が詳しいのだろう。
よく解らないまま、しかしタカラは納得したような素振りを見せた。



468: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:15 tJy8wlXYO

そこへ、ヒッキーとじぃが入ってくる。
休息の暇もないまま臨時会議でも開いていたのだろうか、彼等―――特にじぃからは微かに疲労の色が伺えた。

(-_-)「やあ諸君…昨日の戦闘による負傷とかは大丈夫かな?
    特にタカラとでぃちゃんはあの時サーベルの攻撃をまともに受けていたけど…」
( ^Д^)「あれくらいじゃくたばらねえよ」
(*゚∀゚)「所謂ノープロブレムってやつ」
(#゚;;-゚)「…どうにかこうにか問題なしです」

口々に言葉が返ってくる。

(-_-)「ならいいけど……そのチャーハン食べながらでいいから、少しばかり今後の我々の動きについて聞いてほしい」
(*゚∀゚)「へえ、レディの食事中にそんなこと要求するんだ?」
爪゚ー゚)「これは遊びじゃないんだ。少しは我慢しろ」



469: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:20 tJy8wlXYO

( ^Д^)「てかそれ以前に城下の方はどうなってんだ?
     俺達昨日はそのまま城で一泊してたから解んねえんだが」
爪゚ー゚)「それはだな…」

言葉に詰まったじぃはヒッキーとアイコンタクトを交わし

爪゚ー゚)「…死傷者がかなり出たようだが、結果的に陥落は免れた、という報告を受けている」
( ^Д^)「そっか…」

多くの犠牲者が出ることは覚悟していたが、やはり多くのごろつき仲間が帰らぬ者となったことは少々心が痛む。

爪゚ー゚)「だが……奇妙なことに、最終的に敵軍を退けたのは動く死体の群だというのだ」
( ^Д^)(*゚∀゚)「な、何だってー!?」

話によると城下での戦闘が互角のまま膠着状態に陥り、魔界側の連中に疲労の色が見えてきた時
突如として地中から魔物の死体が大量に現れて機械兵士達を手当たり次第襲い始めた、ということらしい。
そしてそれを聞いたタカラとつーは顔を見合わせ小声で囁き合う。

( ^Д^)「なあつー、まさかとは思うが…」
(*゚∀゚)「かもしれないというか、多分そうだろうねぇ」

二人は何が起きたのかを既に察知できていた。



470: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:24 tJy8wlXYO

爪゚ー゚)「…とまあ、それが城下町の現状だ」
( ^Д^)「…そうは言うけどよ、隊長の野郎はどうなったんだ?
     今ここにいねえけどまさか死んだのか?」
(;-_-)「……」

短い沈黙の後。

爪;゚ー゚)「…多分どこかで状況確認でもしてると思うぞ…というかそういうことにしておいてくれ」

戦闘が終了した後も何故か城下で怒り狂っていたというのが隊長ことロマネスクのその時の行いである。
今は落ち着いてはいるようだが、このことをタカラやつーに漏らせば彼等は確実にロマネスクをからかいに向かうだろう。
理由は解らぬが本人も相当気が立っていたらしいので、下手に火に油を注ぐことはやめておこうとじぃは判断したのであった。



471: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:28 tJy8wlXYO

(-_-)「…さて、そろそろ僕が話してもいいかな?」

一つの件を片付けた皆が視線をヒッキーに移す。
それを確認したヒッキーは小さく頷いた後、再び口を開いた。

(-_-)「…君達は、突然現れたデフラグという男が最後に残していった言葉を聞いていたかな」
( ^Д^)「あのフランケン野郎か。それがどうした?」
(-_-)「彼の言葉が本当なら、こちらも再び対策をとらなきゃならない訳だ」

まだ別の軍勢を持しているとデフラグは言い、親切(?)にも防衛準備をしておけとまで言い残していった。

一回目の襲撃と二回目の襲撃には二百年もの間があったが、次はあまり間を開けずに攻撃を再開して一気にケリをつけようと考えているらしい。

今の状況で再度襲撃を受ければこちらの壊滅は明白で、運良く撃退する事が出来ても再起不能な状況となる可能性は高い。

それに相手に倒し損ねた者がいれば、奴等は何度でも魔界に攻め込んでくるだろう。



472: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:31 tJy8wlXYO

(-_-)「…だから、こちらからその世界に徹底的に攻撃を仕掛けて黙らせてしまいたい。要はやられる前にやる訳だ」
(*゚∀゚)「お!」

ヒッキーの言葉と同時につーが目を輝かせるが皆は無視。

(-_-)「でも、現時点で問題は二つ程あるんだ」

まず、現在の戦力で侵略者達を完全に潰せるかどうか甚だ疑問であること。
疲れを知らぬ兵士達に様々な銃器を扱う女、さらにはあの巨大な飛行兵器。
相手の力は未知数であり、そんな相手に対して何も考えずに突っ込んでいくのは無謀である。

そしてもう一つ、侵略者達がどこの世界の存在なのかが不明である点。
侵略者達は別世界から魔界へと攻め込んできている連中で、無論トップもその世界の住人であるはず。

そこまでは解るのだが、しかしそれは現世の者とは到底思えず
他に天界や冥界といった現世とは異なる世界も存在するのだが、それらの世界の連中に攻められる理由が解らない。
相手がどこからやってきているのかが解らなければ、攻め込みようがないのだ。



473: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:34 tJy8wlXYO

( ^Д^)「でもよ、そんなにマジに考えなくったってもっと簡単に片付く方法あるんじゃね?」
(-_-)「…一応、どうぞ」
( ^Д^)「軍師さんが稀にぶっ放す神々の裁きとかいうので敵を片っ端から黒こげに…」

あのなあ、と食堂にいた者の内のほぼ全員が溜め息をつく。

爪゚ー゚)「アレはそんなに頻繁に扱えるような力ではない。
     第一あれほど隙のある雷が必中してしまう程、敵も馬鹿ではないだろう」
( ^Д^)「だったら現世にいる強い奴に協力要請するとか…」
(-_-)「それは僕も少し考えた。けど、そんな理由で人間を故意的に魔界に連れてくるようなことはしちゃ駄目だ。
    いくら危機的状況とはいえ、その辺の秩序は守らなくちゃいけない」



474: ◆wAHFcbB0FI :11/22(木) 23:39 tJy8wlXYO

戦いにおいて戦力が不足している、といった問題にぶち当たった場合、その不足分の戦力を補うことができれば万事解決である。
それだけを考える分には非常に簡単なことではあるのだが、内容的には一筋縄ではいかぬことを全く解っていない、タカラの安直な提案は呆気なく潰された。

( ^Д^)「現世の人間だって、戦争とか馬鹿なことをやるとき無関係な奴まで巻き込んでるじゃねえか…? アレはどうなんだよ!?」

と反論してみたものの、結論が覆ることは結局なかった。


(*゚∀゚)「てか、大体現世にそんな有能な奴はそうそういないだろうに。
     もうあの連中はいないんだぞ?」

そしてつーにまで正論を言われる始末。

( ^Д^)「くぅ…現実突きつけやがって」
(*゚∀゚)「それに、下手に現世から戦力連れて来ちゃったら私の楽しみが半減するじゃん」
( ^Д^)「おい待て、俺の案否定した大方の理由それだろ」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、そうだよ」

殴り合いの喧嘩が勃発しそうになったその時、それを阻止した勇者がいた。



475: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 00:01 FAvWnyKuO

(#゚;;-゚)「…大丈夫ですよ」

でぃである。
それはヒッキーとじぃに対してさり気なく放った言葉で、さらにタカラとつーの耳にも入り攻撃の手を止めさせた。

(-_-)「…それはつまり、どういうことかな?」
(#゚;;-゚)「…先程の件は何とかなりますよ、ということです。
     戦力不足の件も侵略者達が潜む世界についても、私達できっとなるようにします」
爪゚ー゚)「しかし、これは遊び半分で取りかかられては困るのだが…」

言われて、でぃは少しいたずらっぽい笑みを浮かべ

(#゚;;-゚)「…魔王様も軍師さんも忘れちゃいましたか?
     私とタカラとつーちゃん……今となってはモナー君とのーちゃんも。
     五人揃えば貴方達を超えられますよ」



476: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 00:05 FAvWnyKuO

(;-_-)「…でぃちゃん、何が言いたいのか僕にはよく解らないんだけど」
(#゚;;-゚)「要は私達に任せておいてくださいな、ということです」

暫しの沈黙。
でぃが辺りを見回すと、タカラが戸惑いながらこちらを見ている。

当然といえば当然だ。これは確かに出任せであるのだから。


が、そんなタカラの心情とは関係なく

爪゚ー゚)「…信用して良いんだな?」
(#゚;;-゚)「…良いですよ」
(;^Д^)「ちょ…軽くね?」

呆気なく承知したじぃを見て、タカラは異議を申し立てるが

(-_-)「何か、でぃちゃんなら信頼できる気がしてきてね。
    何せ君達と違って幾分真面目で素直だから」
( ^Д^)(*゚∀゚)「……」



477: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 00:09 FAvWnyKuO

(;^Д^)「お前あんなこと言って後どうすんだよ!
     俺責任取れねえぞ!」

結果的にタカラ達で問題をどうにかする、という形で臨時小会議は終わり、チャーハンも食べ終えたタカラとでぃは回廊にいた。
つーは何故か食後にじぃから呼び出されており
城の兵士達もまた休養中であったり城下町へ向かっていたり、デフラグにぶち抜かれた壁の復旧作業等に回っていて現在二人きりである。


(#゚;;-゚)「…正直言っちゃうと、さっきのはgdgdな流れになるのを止めるための出任せだよ」
( ^Д^)「そらみろ、やっぱ適当言ってたんじゃねえか!」

喚くタカラをでぃは宥めながら

(#゚;;-゚)「…こんな非常事態の時に何も考えずにそんなこと言わない。ちゃんと突破口はあるよ」

と、やはり小さく笑いながら口にするのであった。



478: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 13:30 FAvWnyKuO

( ´∀`)「…今は水を一杯頼むモナ」
从 ゚∀从「俺もそれで頼む」
(・∀・)「リョーカイ!」

結局、動く死体の大量発生の謎を解くことが出来なかったモナーと高岡は地下のこの場所へと戻っていた。
今は酒を飲む気分ではなく、とりあえず水を頼んでいるのである。

从 ゚∀从「そういやタカラとかいうあの宝箱はどうなったんだ?」
( ´∀`)「ああ、彼のことだからきっと上手いことやって戦いを切り抜けてると思うモナ。
       多分今頃ここに向かってきてる…」

そこまで言った時、入口のドアをノックする音が響く。

从 ゚∀从「…噂をすれば、ってやつだな」



479: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 13:32 FAvWnyKuO

( ^Д^)「おーっす! 俺様がカムバックしたぜ!」
(#゚;;-゚)「…ついでに私もカムバックしましたよ」

開いたドアから、タカラとでぃが現れる。

( ´∀`)「おかえりモナ」
(・∀・)「ヨクキタ!」

口々に応答が返る中

从 ゚∀从「よー宝箱! 生きて……いや消されずに戻って来やがったか!」
( ^Д^)「あっ、ハイン! 俺やでぃと地上に出たと思ったらどこで何やってたんだ?」
从 ゚∀从「うるせー馬鹿! 何だっていいだろ!」
(; ´∀`)(#゚;;-゚)「……」

昨日知り合ったばかりであるにも関わらず、タカラと高岡は妙に慣れ親しんでいる。
そのムードに戸惑いながらもでぃ達が理由を訊ねたところ、その返事は

( ^Д^)从 ゚∀从「 何 と な く !」

であった。



480: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 13:55 FAvWnyKuO

( ^Д^)「そういや、貞子ちゃんがいないぞ」
( ´∀`)「彼女は今、お疲れみたいモナ」
( ^Д^)「あー、やっぱりな」

納得したように頷く。

( ´∀`)「…やっぱり?」
( ^Д^)「何だ、お前達からくりが解らなかったのか?
     地上で死体がうじゃうじゃ歩き回ってたよな。アレ貞子ちゃんがやってたんだぜ」
从;゚∀从(; ´∀`)「何だってぇ!?」

驚く二人を見据えながら、タカラは続ける。

( ^Д^)「ああ見えても凄い力を持ってるらしくてな、その気になれば死体を意のままに操ることも出来るっていう。
     言うなれば『屍術』ってモンだ」
( ´∀`)「…よく解んないけど凄いモナ!」

どうやってやったのかは解らぬが、彼女はその力を利用して死体を大量に操っていたようである。

从 ゚∀从「ここに居ながらそんなことをしちまうのか…ホントすげぇ。こいつはやられた」

と、高岡は悔しげに呟いた。



481: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 14:28 FAvWnyKuO

(; ´∀`)「それはさておき…二人とも『何となく』なんて理由で、そんなに仲良くなれるものモナ?」
( ^Д^)「俺とハインか。いや、一応ワケみたいなモンがあるんだよな」

大したことじゃねえんだけどよ、と前置きし

( ^Д^)「何かこいつ、初めて知り合った時…といっても昨日だけどな。どっかで会ったことがあるような気がしたんだ。
     いや、当然昔に会ったことなんてないぜ」
从 ゚∀从「俺も同じ理由な」
(#゚;;-゚)「…それ何てデジャヴ?」

つっこまれ、短い沈黙の後に高岡は小さく唸る。

从 ゚∀从「…言われてみると変な話だよな。
     俺だってお前に会ったのは昨日……なはず。何でそんなことになるんだろうな?」
( ^Д^)「全くだ。意味分かんねえ」

二人して首を捻る。
実際に一番訳が解らなくなっているのはでぃ達なのだが、タカラはそんな周囲の空気を無視し、カウンター席に乗っかる。



482: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 14:58 FAvWnyKuO

そして思いついたように再度、口を開く。

( ^Д^)「…そういやハイン、お前って現世ではどうやって生きてきたんだ?
     よかったら話してくれよ」
从 ゚∀从「俺か? 別にいいが少し長くなるぞ」
( ^Д^)「一向に構わない。お前みたいな人間の過去の話程酒の御供になるモンはねえ」
(#゚;;-゚)「(…まーた始まった)」

現世のどこかに存在する魔界への扉は、人目に付かぬ隠された場所に位置しているという。
故にそれを見つけるのは言わば好奇心に満ち溢れた物好き達であり
現世から魔界に転がり込んでくる人間は、現世にいたときから平凡とはかけ離れた生活を送っていた連中と決まっているのだ。



483: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:01 FAvWnyKuO

( ´∀`)「その話、僕も興味あるモナよ」

そして同じく強い好奇心を持った人間であったモナーも、この手の話題に首を突っ込んでくる。

( ^Д^)「…てな訳だ。
     お前も一年この世界にいるんなら解ってるとは思うが、俺達魔界の住人は波乱万丈な人間共の生き様ってモンを知りたがるものなのさ。だから頼むよ」
从 ゚∀从「…面白いこと言いやがるな。
     見せ物にされるのは好きじゃねえが、それでてめえらの気が済むんなら聞かせてやるよ」

それを聞いたタカラは思わずガッツポーズをとり

( ^Д^)「よーし決まりだ!
     おいジエン、『バチバチ』を一杯頼むぜ!」
( ´∀`)「あ、じゃあ僕もやっぱり魔界酒で!」
(・∀・)「オーケーハアク!
    …トコロデ、ディハドウスンダ? セッカクダシ、キイテケヨ」
(#゚;;-゚)「(…まあいいか)
     …コーヒー一杯で」

気休めということで、皆は一杯やることにした。



484: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:04 FAvWnyKuO

( ^Д^)「この爆発的な酸味…バチバチってのはこういうことなんだよなー」

ジエンが運んできた『バチバチ』という名のサワーを口にしながら、高岡が話を切り出すのを待つ。

从 ゚∀从「言っておくが別に感動できるような話じゃねえぞ」
( ^Д^)「ああ、わかってる。わかってるから早く進めてくれ」

並大抵のことじゃ驚かないぞ、とタカラは心の中で身構えてみる。
それは他の者も同じで、そんな皆の心情を察知した高岡は語りはじめる。

从 ゚∀从「…初めに言っとくと俺、孤児だったんだよな。
     捨てられたのかどうかは知らねえけど最初から両親はいなかったし、当然顔なんて見たことがなかった」
( ^Д^)「…いきなりそうきたか」



485: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:07 FAvWnyKuO

人間であろうとなかろうと、魔界の住人は孤児のようなものであり別に驚くようなことではない。
しかし生まれた時から誰もいなかったとなると、恐らく相当辛い生活を強いられてきたのだろう。

(#゚;;-゚)「…さぞかし大変だったろうね」
从 ゚∀从「物心ついたときにはもう孤児院暮らしだったよ。
     孤児院ってのも名ばかりで、実際には監獄みたいなとこだった気がするけどな」

それもそのはず、その孤児院は現在なお発展を続ける、現世の大都市・ニューVIPの郊外に築かれたスラム街に位置していたのである。
都市が大きく豊かになるほど貧富の差も広がるもので、貧しい側はやがて秩序が乱れた無法地帯という形となって現れる。
高岡はその汚れた環境で、外の世界を知らぬままの暮らしを強要されていた。

从 ゚∀从「俺はその時から自由を奪われたりすんのが嫌いだったからさ、ある日とうとうやっちまった訳よ」
( ^Д^)「要は…」
( ´∀`)「逃げた、モナ?」
从 ゚∀从「そういうこと」



486: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:11 FAvWnyKuO

五歳の時、彼女はその生活に自らの手で終止符を打つことになる。
真夜中に短い隙を狙って自分の部屋から抜け出し、脱走を試みたのだ。

意外にもそれは簡単に成功し、誰からも追われることもなく彼女は自由を手に入れた。

从 ゚∀从「自分で言うのも変かもしれねえが、それからの俺は結構やばい毎日を送ってた」

まだ幼かった彼女を待ち受けていたのは、スラム街での過酷な暮らし。
自由を手に入れたものの、平穏とは真逆の生活が始まった。

( ^Д^)「それで…お前は生きるために、一体どれだけの事に手を染めてきた?」
从 ゚∀从「さあな…そんなこと一々覚えてられねえよ。
     とりあえずやれることは全部やったつもりだ」

汚れた環境で生き延びるためには、やはりそれなりに荒んだ生き方が必要だった。

彼女は孤児院を脱走して間もなくスリを働くようになり、八歳の時は放火にも走った。
十二歳になる頃には殺人にまで手を染め、十五歳を過ぎる頃には少女にして他の連中からも恐れられるような大悪党となっていた。



487: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:14 FAvWnyKuO

当然、警察からは追われるようになる。
いつまでも同じ場所に滞在するわけにもいかず、街での行動範囲も次第に狭められていった。

从 ゚∀从「だから俺は他の街に潜伏することにした。要は逃避行…みたいな?」

仲間などはおらず、決して誰かと行動を共にすることもなかった彼女は、街や都市を転々としながら行き当たりばったりな生活を送るようになる。
無論、必要なものは如何なる手段を行使してでも入手した。
そうして、人としての生活を完全に捨て去った高岡。

しかし

从 ゚∀从「…それまで適当に生きてきた俺も、ある日ようやく目標みたいなモンを掴めたのさ」



488: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:17 FAvWnyKuO

言いながら、彼女は懐から何かを取り出した。

( ^Д^)「…?」

それは年季を感じさせる、小さく古びた鍵だった。

从 ゚∀从「こいつは俺が最初から持っていた代物……つまり俺がまだ何もわからなかった頃に両親が残していったモンだ」
( ´∀`)「形見モナ?」
从 ゚∀从「多分…というか、どう考えたってそうだ。
     犯罪やるようになる前から持ってたんだからな」

両親の顔を知らない高岡と、その親との唯一の繋がりがその鍵であった。
だが彼女が孤児院で暮らしていた時にその鍵が役目を果たすことはなく、しかしそれは彼女の内に眠っていた好奇心を目覚めさせることになる。



489: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:21 FAvWnyKuO

从 ゚∀从「俺はこいつの使い道ってモンをどうしても知りたかった。
     だから俺は逃げ回りながらこいつに合う鍵穴を探すことにしたのさ」
(#゚;;-゚)「…無茶なことを…」

当然その鍵の用途は解らず、それを聞ける相手もいない。
それこそ雲を掴むようなもので、親の形見であるという手掛かりだけでは到底成し遂げることはできない話だ。

( ^Д^)「…んじゃ、やっぱ駄目だったわけだな」

タカラは半ば同情するような目で高岡を見据える。
が、それとは裏腹に高岡は口元を歪め

从 ゚∀从「……本当に、そう思うか?」

と念を押すような言い方で返してみせた。

(;^Д^)「ッ!? まさか」
从 ゚∀从「そういうこった…どんな人間にも、一生に一度は奇跡ってモンが起きるみたいだぜ?」



490: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:24 FAvWnyKuO

十八歳の時、逃亡を続けていた彼女はとある平凡な町へと辿り着く。
そして潜伏するための一時的な塒を探し求めていた時、高岡は小さな廃ビルを発見した。
外観からして今にも崩れそうな建物ではあったが、これほど隠れ家に向いている場所はない。
彼女はその幸運を喜び、しばらくはそこを拠点とすることにした。

从 ゚∀从「結構居心地よかったな。
     相当昔に建てられたビルだったようだが、寝床もちゃんと確保できたし」

過去にどんな人物がいたのかは解らぬが、そこには昔の雑誌やソファや椅子などが散乱しており、微かに人が住んでいた面影が残っていた。



491: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:30 FAvWnyKuO

そんな小さな廃ビルのとある一室にて、高岡は宝箱のような金属の箱を目にする。
それはテーブルの上に堂々と置いてあり
どう考えても怪しく、しかし意味ありげな存在であった。


当然高岡がこれを見逃すはずがなく、箱を開けようとして色々と試みる。
だが如何に力を入れて開けようとしてもそれは叶わず、巧妙なピッキングも通用せず、高岡はすぐに専用の鍵が必要であることを理解する。
そこで、駄目元であの鍵を箱の鍵穴に差し込んでみたところ―――

从 ゚∀从「なんと箱は開きましたよ、なーんてね。何が入ってたと思う?」
( ^Д^)「さあ…形見っていうくらいだから指輪とか宝石か?」
从 ゚∀从「いや、もっと凄いモンだ」

言いながら、高岡はその実物を取り出してみせる。



492: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:33 FAvWnyKuO

( ^Д^)「…何だよこれ」

次から次へと不思議なものが出てくるので皆は戸惑いがちだが、今高岡が出したものは一枚の黄ばんだ大きな紙。
それには何かを示すための黒や赤の線と矢印だけがやや雑に描かれており、一見訳が解らない。

从 ゚∀从「簡単にいうと地図だな。
     何でも、俺の曾祖父さんが残した財宝の在処を示してるらしいぜ」
( ^Д^)「よく解んねえけどある意味ホントにすげえ……でもそれで運全部使っちまって、もうずっと何も良いことなかったりしたんじゃねえのか?」
从 ゚∀从「そうかも知んねえな」

その言葉の意味は言うまでもないだろう。
奇跡としか思えないような展開で鍵が役目を果たしたのは良いが、表に出ることの出来ない己の立場が悪かった。

結果的に、その地図は何の役にも立つことはなかったのである。



493: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:38 FAvWnyKuO

ドンマイ、とタカラは口にしようとして―――

( ^Д^)「…待てよ? 何でお前はこの地図っぽい紙が、曾祖父さんが残した財宝の在処を示してることだって言い切れるんだ?」
从 ゚∀从「…慌てんな、まだ続きがあるんだよ」
( ´∀`)「…この長ったらしい文モナね」

紙を裏返してみる。
そもそも紙自体が相当古くて読みづらいものの、そこには多少汚い文字が長々と書かれていた。




20XX年 X月 X日

この地図を俺以外の者が目にした時には、もう俺はこの世にいないことだろう。
そしてあの特殊合金製の箱を開け、これを見ている者がいればそいつはきっと俺の子孫だ。箱の鍵を代々受け継ぐよう、頼れる俺の息子に託したんだからな。
それ以上は誰にも全く伝えてないし、箱を置いた場所…つまり俺達の本部の存在さえ息子は知らないので永久に誰にも見られぬままで終わるのかもしれない。
だが、いつかは俺のように馬鹿な子孫が現れ、これを手にする時が来ることを俺は願っている。

もしかしたら何かの事故で子孫ではない奴の手に渡っているのかも知れないが、それはそれで構わない。
そいつもきっと、俺みたいに頭のイカレた物好きであるに違いないから。



494: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:42 FAvWnyKuO

さて、俺はとある時代に猛威を振るった物好き連中の内の一人だ。
野蛮な言い方をすると墓荒らし或いは盗賊のボスみたいなモンだが、この辺はどうだっていい。

自分で言うのも難だが、俺達はなかなか腕の立つ奴等の集まりだった。
だから財宝の類も色々手に入ったんだが、俺達だって所詮は人間。人の寿命には限りがある訳で、現に今この遺書みたいなものを書いている俺も、もうジジイになりつつある年頃。
それでも俺は未だにあちこち飛び回ってるモンだから、いつくたばってもおかしくない状況だ。よって、まだ何ともない内にこいつを書いてしまおうと思った。

悲しいことに若くして死んだ奴もいるが……これを



495: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:48 FAvWnyKuO

俺がわざわざこんなモンを残した理由はかなり下らないことなのだが、一応簡単に記しておこう。

知っての通り、人間はいつか死ぬ。
そして人間は一度死ねば何も残りはしない。が、それでも俺達が生きていたという形跡みたいなものだけは残しておきたかった。
だから俺は『俺達が生きていた証拠』をとある洞窟の奥地に封印することにしたのだ。

そして、その場所をアバウトに示した地図もこの裏に記しておくことにする。丁寧に描き過ぎて簡単に見つけられてしまうようじゃたまらんからな。



496: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:50 FAvWnyKuO

さて、今これを読んでいる諸君。

初めに記したように俺の子孫であろうとなかろうと、或いはまだ純粋な心を失っていない夢見がちなガキでも良いおっぱいした姉ちゃんでも構わないから
どうか俺達のタイムカプセルみたいなモンを掘り出してやって欲しい。
手掛かりゼロに近いこの状況から、俺達が残したモノを見つけ出してみろ! ってこった。これが、俺が俺の子孫に突きつけた最初で最後の挑戦状のつもりだ。
無茶苦茶言ってるのかもしれないが、少なくともこれを読んでいる奴が俺の子孫ならば、きっと成し遂げてしまうことだろう。先祖である俺が、そういう馬鹿なんだからな。



497: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 15:56 FAvWnyKuO




从 ゚∀从「…てな感じだ。20XX年ってことは今から七十年程前、だったらこの手紙の限りだと俺はこれを書いた奴の孫か曾孫に当たることになるはず。
     そしてさらに、これが書かれたときの時代と今の俺の年齢を考えると俺は曾孫である可能性の方が高いはずだ」
( ´∀`)「どんだけいっちゃってる人モナ…『良いおっぱいした姉ちゃん』とか変態にも程があるモナ」
(#゚;;-゚)「…女の敵ですよねー」
( ^Д^)「……」

皆が談笑を始める中。
薄々ではあるが、この時点で一人の男がタカラの頭に浮かび上がっていた。
それはかつて現世をふらついていた彼が親しくしていた者達の内の一人であり―――

( ^Д^)「(…まさか、とは思うが)」
从 ゚∀从「ん、どうかしたか?」
( ^Д^)「…俺、これを書いた奴に会ったことがあるかもしれねえ」
(#゚;;-゚)( ´∀`)从 ゚∀从「!」



498: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:00 FAvWnyKuO

( ^Д^)「いや、本当かどうかはまだ解んねえ。けど、何か似てんだよな…特に『良いおっp(ry』とかいうところとか」
( ´∀`)「ちょwwwww」

どれだけ変な連中と連んでいたんだ、と言わんばかりの視線をでぃから感じるが、今回ばかりはタカラも気にしない。

从 ゚∀从「そうは言っても、お前はこの世界の住人だろ?
     いくら年をとらないって言っても現世にいる人間と関わりを持つなんて――」
「…出来ますよ」

カウンターの奥から声。

川д川「タカラさんが高岡さんの曾祖父と会っていたというのは…有り得ないことではありません」

いつもの如くと言うべきか、いきなり且つさり気なく貞子が現れた。

( ^Д^)「おっ…もう大丈夫なのか?」
川д川「皆さんがいるときに、ジエンにばかり任せっきりには出来ませんよ」



499: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:07 FAvWnyKuO

从 ゚∀从「で、どういうことなんだ? タカラが俺の曾祖父さんに会ったことがあるっていうのは」
川д川「言葉通りですよ」

言ってから、しかし付け加えるように

川д川「…貴女はまだ御存知ではないんですね。
    この世界に住む存在の中には、空間を自由に行き来できる者もいるんです。もっとも、ほんの一握りだけですが」
从 ゚∀从「へぇ…そうなのか。
     んじゃ、タカラが俺の曾祖父さんに会ったことがあるってのは、百年程前に現世へ行ってた時に会った訳か」
川д川「そういうことになりますね。彼は二百五十年前から百五十年間に渡って現世にて放浪していたようですから」
从;゚∀从「気が遠くなるような年月だな」

人間である高岡からすればそのように感じるのだが、妖怪という存在であるタカラは時間の感覚が人間とは異なっており
百年以上の年月も、ほんの数十年にしか感じないのだ。



500: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:10 FAvWnyKuO

从 ゚∀从「そういや、俺の曾祖父さんってどんな奴だった?
     やっぱり俺と同じ凶悪犯だったのか?」

先祖のことを聞くこの上ないチャンスだと思ったのか、高岡はふとタカラに問う。

( ^Д^)「その逆。殺しなんてしたがらない奴だった。
     …いわゆる冒険家っていう奴で、そりゃ面白い奴だったぜ。
     お前程棘のある野蛮人じゃなかったが、性格自体は似てたぞ」
从 ゚∀从「じゃあどんな最期を迎えたのかも知ってるんだな?」
( ^Д^)「…すまん、それは俺も解らねえ」


とある世界的な事件が百年前の現世にて発生した。
タカラや高岡の曾祖父(と思われる人物)達もその事件に少なからず関わっていたのだが――



501: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:13 FAvWnyKuO

そしてその大事件の後、タカラは数年間は時たま彼等と行動を共にしたりしていたが、ある時を境にタカラは彼等と関わりを持つのを止めた。
だがそれは決して喧嘩別れなどではなく―――自分だけが全く変わらぬ中でその連中が老い、やがて死んでいく様を目にすることを恐れたから。
そして、でぃと過ごす時間ももっと欲しかったこともあっての判断であった。
とても辛いことではあったが、彼等には何も知らせぬまま、予告なしに彼等との関係を断つことにした。

( ^Д^)「…でも、あいつらと出会って色々と楽しかったことは今でも覚えてる。そいつらの内の一人の子孫が今目の前にいるってのはやっぱり不思議なことなんだろうな…
     んでもって、そいつの名は確かジョr――」



502: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:18 FAvWnyKuO

勢い良くドアが開く音が、それを中断させた。

(*゚∀゚)「やっほ! みんなのアイドルファイターつーちゃんのカムバックだよ!」
(*゚A゚)「…自分も来ちゃいましたよ。裏のアイドルのーちゃんや!」

御約束の台詞と共に乱入してきたのはつーとのーであった。

( ^Д^)「あっ、ったく何だよお前等! 折角良いとこだったのに」
(*゚∀゚)「五月蝿い五月蝿い! こっちは軍師さんにしつこく言われて大変だったんだよ!」
( ´∀`)「何があったモナ?」
(*゚∀゚)「そんなこと聞く暇があったら私に水を持って来い!」
(; ´∀`)「…すいませんでしたモナ」



503: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:21 FAvWnyKuO

話によると、侵略者づーの外見がつーに酷似していることに対して不信感を抱いたじぃが、徹底的につーとのーを追及したらしい。
それに対し、二人は全面的に否定をし続けた後にようやく帰してもらえたようだ。

(*゚∀゚)「とにかく、私はもう疲れた!
     だから休む! 邪魔だけはするなよ!」
川д川「あ…シャワーなら御自由にどうぞ」
(*゚∀゚)「サンキュウ! いつも悪いね。
     んじゃ諸君、また後で会おうか!」

それだけ言うと、つーはカウンターの奥へさっと姿を消した。

( ^Д^)「…ありゃちょっときてるな」
从 ゚∀从「…あの野郎」

突如話を中断された彼等は、のーも来たこともあって全く別の話題に花を咲かせるのであった。



504: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:23 FAvWnyKuO

城のとある一室。
そこでは二人の男女(?)が向かい合って椅子に座っている。

爪゚ー゚)「…こんな時に呼び出して済まぬな、ロマネスクよ」
( ФωФ)「そんなこたぁないですよ…例の馬鹿共なら兎も角、貴女の命ならば従わぬ方が愚かというもの」
爪゚ー゚)「そう言ってもらえるとありがたい。
     で、今お前を呼び出したのはその例の者達についてなのだが…」
( ФωФ)「また、何か問題でも引き起こしやがりましたか?」
爪゚ー゚)「いや、そういう訳ではないのだがな」



505: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:27 FAvWnyKuO

……………………


(; ФωФ)「ちょ…あいつらに任せておいちゃ、きっと危ないですぜ!」

事情を聞いたロマネスクは即座に意見をする。
じぃもまた頷きながら

爪゚ー゚)「…実は私も内心不安なのだ。
     全く信用出来ぬ訳ではないのだが、あまり危険な賭けは好まぬのでな」

そこでだ、とじぃは続け

爪゚ー゚)「確かお前には、古くからの友人がいたな」
( ФωФ)「ああ、いますね。
       百五十年程前に『現世の魔境』とされる地へ修行に行ったきり帰ってきませんが」
爪゚ー゚)「噂によれば相当の実力を持っているというではないか。その者ならばあの機械兵士相手に互角以上に渡り合えるかもしれんぞ」
( ФωФ)「…連れてくるんですかね?」
爪゚ー゚)「話が早い。私は現世へ行くわけにはいかないのでお前に行ってほしいのだが」



506: ◆wAHFcbB0FI :11/23(金) 16:31 FAvWnyKuO

( ФωФ)「…しかし、俺はあいつらみたく空間移動なんて真似は――」
爪゚ー゚)「解っている。だから魔王殿にお前を現世へ送り迎えしていただくのだ。
     本来ならお前のような者が無闇に現世へ向かうべきではないが、事情が事情である故に魔王殿も承諾して下さるだろう。
     後はお前さえよければ話はまとまるのだが……行ってくれぬか?」
( ФωФ)「……」

ロマネスクはここで暫し考える。
今、魔界は戦力を増強しなければならぬ状況。自分の行動によって、今後が変わってくるのかもしれない。
さらに自分は今、己が尊敬する者から命を受けている。これを断る理由が一体何処にあろうか。

以上から自分は彼女の命に従うというのが両方の意味で考えて最良の判断であり、それはつまり―――

( ФωФ)「…承知しました。このロマネスク、必ずや強力な助っ人を連れてきますぜ」



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