( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

541: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:03 7T3mZ7kEO

第十四話 『幻の先に待つものは』


(# ФωФ)「どうだ! 俺はついにやったぞ!」

その後の道のりは険しいものだった。
巨大な蜥蜴と蝙蝠を合わせたような怪物を倒した先からは、数々の生物を繋ぎ合わせたような『怪物』としか言いようのない敵が湧くように現れるようになってきたのである。
尻尾にもう一つの頭がある大蛇や、額に第三の目を備えた猿らしき生物等々。
ロマネスクはそれらを退けながら進み続け、多少の傷を負いながらもようやく最深部と思われるこの場へ足を踏み入れたのである。



542: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:06 7T3mZ7kEO

が、喜んでばかりはいられない。まだ目的を果たしていないのだから。
辺りを見回すも、問題の人物はいない。

( ФωФ)「…まさか、死んじゃいねえよな」

それらの独り言を聞く者は当然いない。
―――いや、前方に何かがいた。
ロマネスクは視線をその相手に集中させる。

( ゚∋゚)「……」

上半身は鳥で、しかし下半身は人のような姿。
強靱な腕と足を持った鳥人とでも喩えるべき存在が、腕を組んで突っ立っていた。

( ФωФ)「…知ってるぞ。てめえは昔っからこの世界に生息している無口且つ凶暴な稀少生物で……
       名は確か『クックル』だったな。なおるよに似たようなモンだとは聞いていたが、ここが住処の一つなのか?」



543: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:08 7T3mZ7kEO

( ゚∋゚)「……」

クックルと呼ばれた鳥人からの返事はない。
まるで、ロマネスクの存在に気付いていないかのように棒立ちしたままだ。

( ФωФ)「喋れるのかどうかは知らねえが一応聞くぞ。
       ここを塒にしてる奴が他にいるはずだ。今そいつはどこにいる?」
( ゚∋゚)「……」

やはり返事はない。
そして自分のことを完全に無視しているようなクックルの態度に、気の短いロマネスクは当然の如くキレた。

(# ФωФ)「よし、いっぺん死ね!」

手にしたトマホークの一つを、不意にクックル目掛けて投擲したのだ。
出会い頭にして、それはあまりにも非常識且つ粗暴な選択である。



544: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:10 7T3mZ7kEO

だがクックルはそれを―――

( ФωФ)「!?」
( ゚∋゚)「……」

先程までの棒立ちが嘘のように思えるほどの、素早い身のこなしで回避した。
そして地面に突き刺さったトマホークを拾い上げ、まじまじと見つめた後

( ゚∋゚)「……」

クックルは無表情のまま、しかしぎろりとロマネスクを睨みつける。

(# ФωФ)「何だてめえ、やる気か! やる気なんだな!?
       そうかよーく解った、殺す!」

相手が無言である中、ロマネスクは残りのトマホークを構え一方的に怒鳴る。

(# ФωФ)「でもその前に俺の武器返せやぁぁ!!」



545: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:16 7T3mZ7kEO

そう言っている間にもクックルはこちらへ向かってきていた。
本来己の武器であるトマホークを手にしたまま。

( ФωФ)「ちっ…何か面倒なことになっていませんかぁ?」

流石に己を少し落ち着かせたロマネスクは、頭を戦闘モードに切り替える。
今のクックルは武器を持ってはいるが、普段から扱っていない武器をまともに使いこなせるはずがない。
奴は素手で相手を襲うということを、昔に軍師辺りから耳にしていたが故にそう確信できた。
だが

( ФωФ)「ッ!?」
( ゚∋゚)「……」

クックルは手に握ったトマホークを、棒のように軽々と振り回して攻撃してきたのである。
幸いにもそれは大振りの動作であるため、軌道そのものは読みやすい。
しかし

( ФωФ)「こいつは予想外の展開だな……油断してたぜ」

後退しつつ舌打ち。
魔界の住人のように不思議な力などは持ってなさそうだが、人間でない以上は何かしら強力な力を備えている可能性は否定できない。



546: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:19 7T3mZ7kEO

( ФωФ)「…だがな」

このような状況にありながら、彼は現状に似合わぬ不敵な笑いを浮かべる。

( ФωФ)「正直、負ける気はしねえんだ」

そう言うと今度はロマネスクの方からクックルへ迫る。
重装備とは裏腹に、その動作は素早い。

( ゚∋゚)「……」

そんなロマネスクにクックルは狙いを定め、トマホークを振りかぶる。

――直後、心地悪い音が鳴り響いた。
ロマネスクが二つのトマホークを用いてクックルの攻撃を受け止めた結果である。



547: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 15:59 7T3mZ7kEO

その衝撃は武器を持つ手にも及ぶ。
腕が痺れる感覚に襲われながらも、ロマネスクは退避という行動を選ばない。

( ФωФ)「見ての通り、俺はちょいと常識がはずれた姿なんでね…故に戦い方も他の奴とは違う。
       そいつをてめえの死体に刻み込んでやるよ」

その状態のまま、クックルがもう片方の腕で殴りかかってくる。
その力任せの殴打を、現在何も手にしていない三つ目の手でロマネスクは止めてみせる。

( ФωФ)「くっ…」

予想以上の衝撃に小さく唸りをあげるも、ロマネスクの太い腕はクックルの一撃を止める程度の力ならば十分に備えていた。
そして、それを確認した彼は再度不敵に笑うのである。



548: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 16:01 7T3mZ7kEO

相手の腕が二に対し、ロマネスクは四。
ならば攻撃の手数は必然的にロマネスクの方が上となる。
今、クックルは両腕を押さえられており
しかしロマネスクにはまだ腕が一つ。
その残る一つの手には、巨大なトマホークが。
つまり――

(# ФωФ)「くたばれッ!」

最後の腕にありったけの力を込め、ロマネスクはクックル目掛けてトマホークを振り降ろした。

( ゚∋゚)「!?」

両腕を押さえられていては、当然回避運動などできない。
至近距離から斧による斬撃をまともに受けたクックルは仰向けで血を撒き散らしながら地を滑り、やがて止まる。

(# ФωФ)「ハッハッハ……どーだ、ざまー見ろ!!」

憎々しげに言葉を吐く、最早極悪人にしか見えないロマネスク。
そんな彼の前で―――

( ФωФ)「…へ?」
( ゚∋゚)「……」

クックルは、事も無げに立ち上がった。



549: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 16:02 7T3mZ7kEO

(; ФωФ)「ど…どうなってんだよ…
       てめえ、何でそんな状態で生きてんだよ!?」

先程の一撃によるクックルの出血は凄惨なものであった。
普通の人間――いや、魔物であろうと怪物であろうと、並大抵の生物ならば確実に絶命するほどに。
しかしクックルは立ち上がり、しかも相変わらず無表情のままでロマネスクに視線を向けているのだ。

( ゚∋゚)「……」

未だにロマネスクから奪ったトマホークを手にしたまま、クックルはゆっくりとこちらへ向かってくる。
さらに見ると、傷口からの出血は既に止まっていた。



550: ◆wAHFcbB0FI :12/16(日) 16:09 7T3mZ7kEO

その異常なまでの回復力と生命力に、ロマネスクは戦慄する。

(; ФωФ)「(まさか、とは思うが―――)」

恐ろしいケースが脳裏に浮かぶ。
それは目の前の鳥人が、生物の範疇にあってはならぬ存在であることを意味する。
如何なる場合であっても命を保ち、如何なる事態に陥ってもその命を失わない。

(; ФωФ)「てめえは…不死身、か…?」

その有り得ないはずの言葉を、ロマネスクは思わず漏らす。
だが、その答えを彼に告げる者がいるはずはなかった。



551: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:47 nWhU96bwO

―――否。
その人物は突然現れた。
地を蹴る、小刻みな音と共に。

( ФωФ)「…この足音は」

ステップを踏むような軽やかなその音に、ロマネスクは聞き覚えがあった。
それは彼が探し求めている人物の参上を意味するものでもあった。

( ゚∋゚)「……?」

クックルもそれに気付いたのか、動きを止めて訝しげに辺りを見回す。



552: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:48 nWhU96bwO

「こいつは驚きなんよ」

暗闇からの第一声。

「晩御飯食べに森まで行って、帰ってきたら何か見慣れた顔がいるんよ」
( ФωФ)「…来るのがおせーぞ」
「…百五十年振りに再会した友人に対して、それはちょっと酷いんよ」
( ФωФ)「俺たちゃ結構ドライな友人関係だったはずだがなぁ。
       ま、今は慣れ合ってる場合じゃねえな。そんな暗いとこにいねえでとっとと出てこい」

催促の言葉と同時。
一瞬ともいえる速度を以て、戦士は暗がりから姿を現した。



553: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:51 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「俺の修行場へ、改めてようこそ」

現れたのはロマネスクより一回り程小柄な、人型の魔物。
ただ、腕が四本あるロマネスクとは違い、その腕の数は二。
頭には赤いハチマキを巻き、外見上は人間と寸分違わぬ姿だ。

( ФωФ)「相変わらずだな、ボッコス。
       …で、早速聞きたいことがあるんだが」
( ・ω・)=つ「教えてやんよ。そいつは確かに『不死身』ではあるんよ」

ボッコスと呼ばれた魔物は、ロマネスクに詳しく問われる前に呆気なく言い放った。



554: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:51 nWhU96bwO

(; ФωФ)「いや、ちょっと待て。そんな簡単に―――」
( ・ω・)=つ「詳しくは後にすんよ。そんでもってロマネスクは下がってるんよ。
       お前がここにいる理由は知らないけど、折角だから修行の成果、とくと見せてやんよ」
(; ФωФ)「おーい、他にも色々と納得できねえことがあるんだが!?」

叫ぶロマネスクをスルーし、ボッコスはクックルに向き直る。

( ゚∋゚)「……」

巨躯の鳥人に対するは、小柄な戦士。
その迫力には圧倒的な差があった。
しかし、その小さな戦士は巨体の気迫をも全く感じていないといった様子で

( ・ω・)=つ「ボコボコにしてやんよ」

その一言を最後に、彼の姿が掻き消えた。



555: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:54 nWhU96bwO

いや―――

( ゚∋゚)「!」
( ・ω・)=つ「はっ!」

次の瞬間、ボッコスの拳がクックルの鳩尾にヒットしていた。
それはつまり、クックルが反応出来ぬほどの速度で接近し打撃を叩き込んだということ。
尚且つ鋼の如き拳は、筋肉の塊ともいえるクックルの身体をも後退させた。

( ゚∋゚)「……」

それでも、クックルは倒れない。
苦悶の声をあげることもなく、ボッコスの攻撃に反応出来なかったことに対して悔やむこともない。

( ФωФ)「おい、そいつが不死身っていうのはどういうことだよ!
       つうか仮に不死身なら殴っても無駄なんじゃねえか?」
( ・ω・)=つ「心配しなくても、俺は全部わかってるんよ」
( ФωФ)「…それ違う奴が言う台詞じゃね?」
( ・ω・)=つ「気にしたら負けなんよ」

油断なく身構えたまま

( ・ω・)=つ「話は後にすんよ。今は俺にやらせておくんよ」
( ФωФ)「…好きにしろ。だが、なるべく早くな」

その言葉にボッコスは頷き、再び戦いの場へと戻る。



556: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 18:56 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「さっ、続き始めるんよ」
( ゚∋゚)「……」

彼等は再び相対する。
一瞬の沈黙の後、先に動き出したのはクックル。
右手にトマホークを持ったまま、ドスドスと大きな足音を立てながらも素早い動きでボッコスへと走る。
その迫力だけで相手を圧倒してしまうほどの威圧感が、彼(?)にはあった。

( ・ω・)=つ「…でも、迫力だけじゃ全ては決まらないんよ」

対するボッコスはそう呟くと腰を小さく落とし、回避運動に備える。



557: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:00 nWhU96bwO

そして

( ゚∋゚)「……!」
( ・ω・)=つ「ほっ!」

クックルが繰り出す攻撃を、ボッコスは全て避けている。
その絶妙なフットワークは大振りの殴打をかわすには十分すぎるほどであった。

( ・ω・)=つ「隙有りッ!」

ついでに、時折反撃さえ入れている状況。
一瞬の隙を突くそのカウンターは、相手のさらなる反撃を許さない。


( ゚∋゚)「……」

その時だ。
一辺倒な攻撃は通用しないと思ったか、クックルは右手のトマホークを振りかぶる。



558: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:02 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「それはロマネスクの…でも、俺の武器は――」

振り降ろされた、ギロチンのような巨大刃をサイドステップであっさりとかわし

( ・ω・)=つ「――この拳なんよっ!」
( ゚∋゚)「……!?」

クックルが突き出した隙だらけの右腕に強烈なアッパーを見舞う。
それにより、クックルは強制的に突き上げられた手から思わずトマホークを離した。
回転しながら宙を舞う大斧。
それを見たボッコスは真上に高く跳び―――

( ・ω・)=つ「砕いてやんよっ!」

空中で一回転し、勢いをつけての一撃をトマホークの重心目掛けてぶちかます。
爆発が起きたような破砕音と共に、大斧はその形状を完全に失った。



559: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:03 nWhU96bwO

(; ФωФ)「おいこら! 俺の武器ぶっ壊してんじゃねえよ!!」
( ・ω・)=つ「…悪かったんよ。後で何とかしてやんよ」

ボッコスは悪びれる様子もなく、クックルを見据えたまま言う。

( ・ω・)=つ「時間ないみたいだからそろそろ終わりにするんよ」

そう付け加えると彼は疾駆を始めた。
言葉通りに次の一撃で終わらせるつもりなのか、先程とは気迫が違う。

( ・ω・)=つ「!」

瞬く間に、ボッコスがクックルの目前に到達する。
そのまま拳を繰り出すボッコスを前にクックルが何もしないはずはなく、太い腕を突き出す。



560: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:05 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「……!」
( ゚∋゚)「……」

まさに殴るような音と共に、二つの力の塊がぶつかり合う。
その力は互角。
続け様に二撃目を繰り出すため、両者とも一旦腕を引っ込める。
その一瞬の隙を、ボッコスは突いた。

( ゚∋゚)「!?」

クックルが二撃目を放つよりも前にボッコスの二撃目が繰り出され、無防備な胴体を直撃。

( ・ω・)=つ「まだまだなんよ!」

続いて足払いを繰り出す。
防御が疎かとなっていたクックルの脚部を捉えるのにさほど苦労はしない。
その浮いた鳥人の身体に、小柄な戦士はここぞとばかりに狙いを定める。
己の一部であり、最高の武器でもある両腕に力を篭め、全神経を集中させてボッコスは言い放つ。

( ・ω・)=つ「ボコボコにしてやんよ」

言い終わるか言い終わらないかの内に、彼はその言葉を現実のものとした。



561: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:09 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「ッ!!!」

神速且つ、破壊的な拳。
ある意味凶悪ともいえるその拳を繰り出した数は無限と称せるほどで、到底人間に真似出来るものではなかった。

何発放ったかもわからない、鉄拳の嵐が牙を剥いた後には、全身に酷い傷を残し気絶したようであるクックルの姿が残っていた。
それを、ボッコスは表情を変えずに見据える。

( ・ω・)=つ「これぞ俺の究極必殺奥義……ボッコス・インファイトなんよ」



562: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:11 nWhU96bwO

( ФωФ)「…ボッコス」

戦闘が終了したものと判断した、古くからの友人が近づいてくる。
その際、彼が初めに口にしたことは

( ФωФ)「…お前、何時からそんなに厨臭くなった?」
( ・ω・)=つ「ああ、アレは思いつきで言ってみただけなんよ。別に名称なんてないんよ」
( ФωФ)「そうか。ところであのクックルが不死身だっていうのは――」
( ・ω・)=つ「まだわからないっていうなら種明かししてやんよ」
( ФωФ)「た…種明かし?」

戸惑うロマネスクを尻目に、ボッコスは広間の隅に何気なくあった大岩に歩み寄り

( ・ω・)=つ「ボッコス!」

思いきり殴る。
破砕の音を立てて大岩は砕け散り―――

('、`*川「…あーあ、見つかっちゃった」

その裏から現れたのは、紫のローブを纏った女性だった。

( ・ω・)=つ「また、そんなところに隠れて見てたんよ?」
( ФωФ)「おいボッコス、誰だこいつは」
('、`*川「こいつとは失礼しちゃうわねー」



563: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:17 nWhU96bwO

紫のローブの、謎の女性(少なくとも人間とは考えにくいが)はおもむろに自己紹介を始める。

('、`*川「私の名はペニサス。
     今はボッコス君の修行とやらのお手伝いしてる者ですよー」
( ФωФ)「はあ、そうなのか…いきなり言われてもよく解んねえが、まあ無礼を許してくれ」
('、`*川「はは、いいっていいって。
     それにしても貴方達、さっきはなかなか良かったような気がするよ。幻相手によく頑張った」
( ФωФ)「…幻だって?」

突如告げられた事実に、ロマネスクは再度問うが

('、`*川「そ、貴方達はさっきまで私が作り出した幻に悪戦苦闘してたの」
(; ФωФ)「なぁんだってぇ!?」



564: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:20 nWhU96bwO

しかし、言われてみると確かに辻褄は合っている。
幻ならばどれだけダメージを蓄積させても倒れないはずで、動作に支障を来すこともない。
ボッコスが言っていた通り、確かに『不死身』ではあるのだ。
さらに先程までクックルがいた場所を見ると、そこには地面に血が残っているのみであった。

( ФωФ)「…ってことは俺がここに来るまでに出てきた変な連中も全部幻か。
       どうりで倒した奴の死体が残らないと思ったら……最近の奴はリアルな幻術を使いやがる」
('、`*川「あら、私は三代目の魔王さんの時代からここで暮らしてる訳だけど?」

ごく当たり前のように彼女は言ってのける。
因みに現在の魔王ことヒッキーは五代目。
人間とは寿命が大きく異なる彼等故に
三代目の時代から存在しているとなると、途方もない年月を過ごしてきたことを意味する。



565: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:21 nWhU96bwO

( ФωФ)「それって普通に俺より御長寿さんじゃねえか…何故こんな所に住んでる?」
('、`*川「…いいわ、今教えてあげる」

そう言ってペニサスは最初にクックルが立っていた場所の岩壁を叩く。
どうやら壁に見せかけた扉になっていたらしく、それを開くと奥にあるもう一つの広間へと繋がった。


そしてそこにあったものは

( ФωФ)「…こいつは驚いた」

高さ三メートル程の黒く大きな扉が、壁に埋め込まれるように存在していた。
そこからは妖気に満ちた、しかし自分にとって慣れきっている雰囲気が漂ってきている。
予想だにしなかったものを見せられ、ロマネスクは内心動揺していた。



566: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:24 nWhU96bwO

('、`*川「これが何だか解るかしら?」

唖然として扉を眺めるロマネスクにペニサスは問う。
対し、彼は言われなくともこの扉の正体を直感で予測することができた。

( ФωФ)「俺も初めて見るが……魔界へ続く、一方通行の道への入口か」
('、`*川「御名答。正しくは『魔界門』って名称があるんだけどね」

現世と魔界を繋ぐ唯一の存在が、ここにある。
一度先へ進めば基本的に現世に戻る道はなく、それはある意味でそれまでの人生を捨てるようなものでもあるのだ。

('、`*川「…だから私は魔界へ行くべきじゃない人間が魔界へ行っちゃわないように、こいつを昔からずーっと見張ってるの。年をとらない自分の年齢が解らなくなるくらい昔からね。
     その退屈凌ぎ的な感じでボッコス君の修行とやらに付き合ってあげてる訳よ」
( ・ω・)=つ「戦闘用の幻を色々作ってもらって、そいつらとひたすら戦うんよ。
       攻撃のタイミングや相手の攻撃の回避とかまで勉強になるんよ」
( ФωФ)「なんちゅう単純な修行だ」



567: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:26 nWhU96bwO

詳しいことは解らぬが、どうやらこのペニサスとかいう正体のよく解らない女が幻の怪物達を使って門を守っているらしい。
しかしその幻をも凌いだり、或いは打ち破ってまで進むような者達に対しては魔界への進入を止めようとはしないという。
そのような連中ならば魔界でもやっていける、というペニサスの考えなのだろう。

因みにロマネスクが現世から魔界へ来た高岡やなおるよ達のことを聞いてみたところ、それらしき人物を見たことがあると二人は口を揃えて言った。



568: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:31 nWhU96bwO

( ・ω・)=つ「…んでロマネスク、お前一体何しにここまで来たんよ?」
( ФωФ)「あーそうそう、それが斯く斯くしかじかでな…」



('、`*川「何っ、魔界が変な侵略者に襲われてピンチだって!?」
( ФωФ)「…会話で説明口調使うなっての」
('、`*川「そういや何事もなく話進めてきたけど貴方誰?」

今更聞くか、とロマネスクは苦笑する。
彼は外見や口調から大方の見当をつけていたが、やはりペニサスはなかなかの天然馬鹿のようだ。

( ФωФ)「魔界軍隊長のロマネスクだ。軍師さんの命でここを訪れた訳だが」
('、`*川「それはそれは凄い方がお見えになったことで」

戦力強化を図るために現世で修行中のボッコスの協力が不可欠であることをロマネスクは話す。
それを耳にしたペニサスは

('、`*川「ボッコス君、行ってきなさい」

と、あっさり言い放った。



569: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:35 nWhU96bwO

('、`*川「常識的に考えて自分の故郷が危ない時に協力しない奴はKYっしょ?」
( ・ω・)=つ「俺も実力発揮できそうだし、喜んで行ってやんよ」

口々に呼び戻しを承諾するようなことを言う。
どうやら無駄に面倒な話し合いをすることなく、万事上手く進みそうである。

( ФωФ)「そいつはありがたいことこの上ねえ。
       ってかペニサスはどうすんだ。お前さんの言い分だと来なきゃKYになる訳だが」
('、`*川「残念だけど私はダメ。ここをお留守にすることは出来ないわ」
( ФωФ)「冗談だ。そんくらい解ってる」

流石に魔界への入口を見張る者がいなくなってはまずいだろう。
結局、予定通りにボッコスを連れて帰ることにした。



570: ◆wAHFcbB0FI :12/17(月) 19:38 nWhU96bwO

('、`*川「…よし、じゃあ二人とも頑張るんだよ!」
( ФωФ)「お前さんも見張り番頑張ってな」

掌握し、別れの挨拶を交わす二人(?)。
ボッコスはその横で、やる気十分と言わんばかりに腕を振り回している。

( ・ω・)=つ「敵は例の鉄の悪魔か、ボコボコにしてやんよ」
('、`*川「ボッコス君、暇になったらまたこっちに来てね。私はいつでも退屈だから」
( ・ω・)=つ「解ったんよ、ボコボコにして帰ってくるんよ」

かくして、ロマネスクとボッコスの強力コンビが再び結集したのであった。

そしてボッコスと共に魔界に戻る際、ロマネスクは一つの質問をペニサスに投げ掛ける。

( ФωФ)「…そういや、お前さんは結局何者なんだ?
       人間じゃねえのは解るんだが、後は謎ばっかだ」
('、`*川「…それは内緒。
     私から言う気はさらさらないけど、魔界に隠れ住んでる誰かさんなら何か知ってるかもね」
( ФωФ)「?」



戻る第十五話