( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

658: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:05 sA4NHs7iO

第十七話 『客人』


魔王が構えている城の玉座の間。
荘厳としたその部屋には魔界を統べる男と、如何にも強そうな戦士が二人。

( ФωФ)「…という訳で、俺は無事に故郷に戻ってきましたよ」
(-_-)「ご苦労様。ちゃんと連れて来れたんだね」
( ФωФ)「当然。俺の辞書に不可能という文字はねえのさ」

誇らしげに発言するロマネスクの隣には、そわそわしているボッコスがいる。



659: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:08 sA4NHs7iO

( ・ω・)=つ「初めて会ったか、或いは久しぶりなんよ」

そうヒッキーに言い放つ彼は、相変わらずハチマキを頭に巻いている。

(-_-)「多分初めてじゃないかな…。
    とりあえず初めまして、ボッコス君」
( ・ω・)=つ「こっちこそ初めましてなんよ。
       そんなことより、敵はどこにいるんよ?」

早く戦いたい、と言わんばかりに腕を振り回すボッコス。
成る程―――先程から妙に落ち着きがないのはそのせいか、と他の二人は思う。

(-_-)「いや、君達の出番はまだなんだ。だから今は自由に過ごしていてほしい。
    ただし、この世界から出ないという条件つきでね」
( ・ω・)=つ「そうなんよ? なら俺はちっとウォームアップといくんよ」
(-_-)「頼もしいね…行っておいで」
( ・ω・)=つ「ボコボコにしてやんよ」



660: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:11 sA4NHs7iO

威勢良く部屋を飛び出していったボッコスを見届けたヒッキーは、思わず苦笑。

(-_-)「いや、彼は実に元気がいいね」
( ФωФ)「あいつはそういう奴さ。元気すぎて鬱陶しい程だけど」
(-_-)「その方がこれからの戦いでは期待できるよ。
    …さて、ロマネスク隊長。君もとりあえず一仕事終えた訳だし、少しの間なら休んだっていいんだよ?」
( ФωФ)「そうか」

数日後、或いはすぐに自分は未知の敵との戦いを覚悟しなければならないだろう。
当然命の保障などは出来ず、今から最期の晩餐の支度をしても決してふざけたことではないのだ。

( ФωФ)「…んじゃ、御言葉に甘えさせてもらうぜ」
(-_-)「どうぞ」

少し考えた挙げ句、ロマネスクはそう言って部屋から出た。

( ФωФ)「(…軍師さんのところにでも行こう)」



661: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:18 sA4NHs7iO

そんなことを思いつつ、彼は地下から一本のワインを取った後に魔界軍師の部屋へと向かった。
ドアをノックし、そして開ける。

( ФωФ)「失礼しますぜ」
爪゚ー゚)「おおロマネスクよ、無事に戻ったか」

重要な立場故に色々と疲労がたまっているはずなのだが、それでも彼女は凛々しげな笑みで迎えてくれる。

爪゚ー゚)「こんな時にわざわざ現世まで行って…御苦労だったな」
( ФωФ)「いやいや、長年かけて身につけた俺の実力と何事にも対応できる柔軟性があれば、こんなことは幾らでもできますぜ」

ヒッキーの時と比べて明らかに言葉遣いが違うのは、ロマネスクが彼女に密かに想いを寄せていることの表れ。

種族が異なる故、無駄であることは解っているのに、だ。



662: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:19 sA4NHs7iO

そんな彼の切ない(?)思いに、じぃは当然の如く気付かない。

爪゚ー゚)「それはそうとロマネスク。お前は今ワインなど持っているが、私に何か用か?」
( ФωФ)「ああ…休みが出来たから、折角なので軍師さんと一杯やろうかと」
爪゚ー゚)「それも良いかも知れないな」

しかし

爪゚ー゚)「…生憎だが、その前に私にはすべきことがある」
( ФωФ)「はて、それは何事で?」

別に大したことではないのだが、と彼女は前置きし、そのままさらりと言葉を紡いだ。

爪゚ー゚)「例の連中が見つからない」



663: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:21 sA4NHs7iO

(; ФωФ)「ちょ、例の連中ってあいつらですかい!?」
爪゚ー゚)「その通り。まあ今に始まったことではないし、流石に現状ぐらいは理解していると思うのだが」

どうやらそれほど問題視してはいないようだが――

( ФωФ)「…それでも探さなくてはなりませんなぁ」
爪゚ー゚)「いや、お前はもう休んでいろ。お前に頼りっぱなしでは悪いからな」
( ФωФ)「俺からしてみればそれこそ軍師さんに迷惑はかけれませんよ。俺が何とかしますぜ」
爪゚ー゚)「…そこまで言うなら好きにしろ」

諦めたように苦笑し、彼女はロマネスクに命令を下したのである。



664: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:25 sA4NHs7iO

そうしてロマネスクが退室し、部屋内に自分以外の者が誰もいなくなった後で、彼女はふと呟く。

爪゚ー゚)「…今更ながら、この世界では私も良い御身分に在るものだな」

彼女は元々魔界の住人ではない。
気が遠くなる程の古代の現世にて生を授かった、元人間である。
そして人間でありながら強い魔力と聖なる力を身に宿していた彼女は、数人の同志と共に世界を破滅へと導くほどの力を持っていた魔獣―――あのギコ・フッサールとの死闘を繰り広げ
結果としてその力を五つに分散して封じることに成功した。

現在なお伝説とされ、勇者とも賢者とも呼ばれた彼女は、しかしそれから数年後に若くして息を引き取り現世を去った。
幼い子孫を残したとはいえ、現在その血を引く者が現世に存在しているかどうかは定かではない。
少なくとも、百年前までは存在していたらしいのだが。



665: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:26 sA4NHs7iO

若くして死んだ彼女の魂が辿り着いた先は、文字通り天の上の世界―――天界であった。

正しい神聖な魂として天界に召された彼女は、一人の幼い天使の世話をする任務を与えられた。

一説でその天使は世界の一つ二つを容易く支配してしまうような力を秘めているとして恐れられたが、まだ幼かった故じぃによく懐き
彼女もまたその天使に対して、我が子のように優しく接していた。



――思い出すはあの日の出来事。
じぃが自らの意思で魔界へ来ることとなった事件。

その天使が、他の天界の住人を殺めたのだ。
詳しい経緯は覚えていない―――否、じぃも知らない。
しかし前々から危険視されていたその幼い天使は、直ちに追放命令を受けた。

じぃはそこで「彼女が力を開放してしまったのは自分が不注意だったせい」として、自ら魔界へ堕ちたのだが――



666: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:31 sA4NHs7iO

あれから、その天使がどうなったのかはじぃにも解らない。
今はどうしているのか。
彼女もまた人間のように成長して、立派になっているのだろうか。

爪゚ー゚)「……ふぅ」

再び逢いたいと思っても、それは叶わぬ願い。
立派になった姿を、一目見ることさえも出来ないという現実。

彼女の小さな溜め息は、誰の耳にも入ることなく消えた。



667: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:33 sA4NHs7iO

魔界軍師の部屋をあとにしたロマネスクはというと、韋駄天もびっくりのスピードで階段を一気に駆け降り
そうして城の一階まで降りると大急ぎで兵士を数人召集し

(# ФωФ)「てめえら、例の馬鹿共を探せ!!」

と、怒鳴り声で命じた。

「…隊長、例によって機嫌悪いな」
「また何かあったんじゃね? 例えば軍師さんに酒勧めて拒否られたとか」
「あるあるwwwwwwwww」

囁き合う兵士達の声は、幸いにも興奮状態であるロマネスクの耳には入らない。



668: ◆wAHFcbB0FI :01/27(日) 17:34 sA4NHs7iO

いつもならばここで確実にロマネスク隊長の鉄拳制裁を喰らうことになるのだが、今回はそんなことをする間もないらしい。

(# ФωФ)「今すぐ非常線を張れ! 見つけ次第連れてくるんだ!
       抵抗するようなことがあったら反撃を許可する!」
「「サー、イエッサー!」」
(# ФωФ)「それからどんな手を使ってでも連れてこい! 奇襲でも火攻めでもゲリラ戦でも、何でもしろ!
       たとえ奴等が見つからなくても、いるということにして連れてきやがれ!!」
「「ちょwwwwwww」」



669: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:07 7MDm2XeMO

(*゚∀゚)「『世界蹂躙計画』? 何その在り来たり且つ馬鹿っぽい計画名」

城から離れた、魔界の砂漠地帯。
日がさすことのない世界故に暑さも感じられないこの場所で、つーは敵であるはずのデフラグの話に耳を傾けていた。

[゚д゚]「そう言ってくれるな。
    俺も何がしたいのかよく解んねえんだが、どーやら総帥殿はこの世界と天界を潰したいらしいぞ」

懐からキセルを取り出し、それを燻らせながら語るデフラグ。
その落ち着き過ぎた態度と性格は、外見の痛々しさを和らげるには十分である。



670: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:12 7MDm2XeMO

[゚д゚]「…特に後者。理由は知らねえが天界の住人に恨みか何かあるらしい。
    魔界侵略はそのついでで、天界侵略の踏み台に過ぎねえのかも」
(*゚∀゚)「そうかい…」

となるとこいつもまた、つまらない日々を送っているのか。
そう思ったつーは

(*゚∀゚)「それで、アンタはどう思ってるのさ? その偉い総帥様みたく恨みでもある訳?」
[゚д゚]「俺は特にねえぞ」

即答。
のんきに答えるようなことではないのに、この男はどこまで気ままなのだろうか。

(*゚∀゚)「…なら、何でする必要のないことに手を出すのさ?」
[゚д゚]「何でってそりゃ……俺がMSP幹部の一人だから、かな」



671: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:14 7MDm2XeMO

何者かによって人工的に『造られた』魂が、姿形を具現化している存在。
手段などは全く謎だが、具現化した身体の一部をさらに機械改造し、戦闘用として強化された連中。
――先日の襲撃後、魔界軍師から耳にした話をまとめると大体そういうことなのだが。

[゚д゚]「『Mechanical spirits』、又の名を霊機械兵団。下っ端として魂なき機械兵士が沢山。
    魂があって感情もある幹部は全員で確か……師匠入れて七体だったか」

その内の二体は先だっての戦闘でいなくなっちまったけどな、と彼は苦笑する。
彼の性格から考えて無理しているな、とつーは思う。

[゚д゚]「…そうそう、んでもって俺は『MSP-D07』、デフラグさ」
(*゚∀゚)「てか師匠って誰よ」
[゚д゚]「ドクター。総帥殿に造り出された俺達を機械改造した方でもあって、団長殿や俺達に指令出したりもする」
(*゚∀゚)「成る程ねぇ…」
[゚д゚]「あ、それと今思ったことなんだが」
(*゚∀゚)「ん?」

不思議そうに、しかし滑稽な笑いを見せ彼が口にしたことは

[゚д゚]「…お前さん、団長殿にそっくりだな」
(;*゚∀゚)「今更言うか」



672: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:17 7MDm2XeMO

[゚д゚]「いやはや、何で今まで気付かなかったんだろーなぁ」

ハハ、と笑いながらつーの顔をまじまじと見つめるデフラグ。

(*゚∀゚)「…ところでさ」
[゚д゚]「あ?」
(*゚∀゚)「アンタ、今のその立場に満足してるのかい?」

ふと投げかけたその問いかけは、以前づーに対しても投げかけたもの。

(*゚∀゚)「また、上の命令だからってそんな立場にいる訳?」
[゚д゚]「ん、そりゃなぁ…俺だって一応総帥殿に造られた訳だし
    『俺』っていう存在を定義付けて下さった方だからn」
(*゚∀゚)「違うね」

言い終わる前に、彼女はデフラグの考えを真っ向から否定。

(*゚∀゚)「存在を定義付けた奴に絶対服従? ばーっかじゃないのって私は思うね。
     誰かに命令されて動くなんてダメダメ、自分の考えってものを持つべきなのさ」
(*゚∀゚)「(…なーんか私この頃皆の相談係みたくなってるな)」

心の中で自分に対して呆れつつも、言葉一つ一つに偽りはない。
それが、彼女にとっての正しい道理なのだから。



673: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:21 7MDm2XeMO

[゚д゚]「…まあ待て、あんまし結論を急ぐな。俺には俺の考えがあるんだからな」

律儀にもつーの言葉を最後まで聞いたデフラグはふぅ、と紫煙を吐き出し、再度口を開く。
その際に彼が口にしたことは――

[゚д゚]「俺さ、皆と一緒にいるのが楽しいんだよ」
(*゚∀゚)「…え?」

意外な告白。
そしてデフラグは何故か、自身について少しだけ明かしはじめた。

[゚д゚]「俺が造られたのは今から百年以上前、団長殿が最初に魔界侵略戦争を始めて失敗した後だ。
    正直、俺なんかが戦闘と機械兵士量産の担当として造られたって聞いた時は色々な意味でビックリしたさ」

しかし

[゚д゚]「…普段はな、掛け替えのない仲間達と切磋琢磨する毎日だったさ。
    それはとっても楽しかったし、今も楽しい」
(*゚∀゚)「……」
[゚д゚]「俺はお前さん達と争いたくない……でも俺はあくまで総帥殿から離れるつもりはねえ。
    家族ともいえる皆と、出来ることならずっと一緒に居てえから」



674: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 16:50 7MDm2XeMO

――成る程、こいつはそう考えるのか。
血の繋がりさえもない『仲間』という、それ以上でも以下でもない存在を、家族であるかのように視る。
家族などいないと決め込んでいるつーとは真逆で、ある意味前向きな考えでもあった。

[゚д゚]「そういや…俺も詳しくは知らねえんだが、俺達MSPの元となった『プロトタイプ』ってモンが存在するらしい。
    師匠よりも前に造られた奴だから機械改造されてなくって、今もどっかの世界にいるみてえなんだが」
(*゚∀゚)「…まさかそれが私だなんて言うんじゃないでしょうね」
[゚д゚]「ん…その様子だと違うみてえだな。
    団長殿と瓜二つだし、総帥殿から逃げた奴が考えそうなこと口にすっからお前さんだと思ってもみたが、やっぱそんな訳ないか」
(*゚∀゚)「もし仮に私がそのプロトタイプとやらだとしたら?」

試すような問い掛け。
デフラグはそれを知ってか知らずか

[゚д゚]「どうもしねえ。ただ幸せに暮らせよ、とだけ言ってやるさ」



675: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:20 7MDm2XeMO

[゚д゚]「さて、俺はもう帰らねえとまずい。休憩も終わりだ」
(*゚∀゚)「黙って来てたのかい?」
[゚д゚]「ったりめーだ。ここはあくまで敵陣地なんだからな」

キセルを拭き、再び懐へしまいながら

[゚д゚]「そだ、お前さんに二つ程教えておいてやる事がある」

自分の後ろの、一見何もない空間を指し示す。
そこは僅かだが、景色が陽炎のように揺らいでいた。

[゚д゚]「今俺が立ってる場所の後ろに、歪んだ空間がある。ここに飛び込めば俺達の世界まで来れるぜぃ」
(*゚∀゚)「へぇ…じゃ、これで一応私の任務は完了か」
[゚д゚]「?」
(*゚∀゚)「いや、こっちの話さ」



676: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:27 7MDm2XeMO

[゚д゚]「そんでもう一つ。
    …これは寧ろ俺からの御願いなんだが、城の兵士なんかは連れてこないでくれねえか」
(*゚∀゚)「…why?」
[゚д゚]「早い話、俺達MSP幹部に対抗出来るような強い奴だけで来てくれねえか、と。例えばお前さんとか。
    あんまし大人数が血を流すようなことにはしたくねえ」

それは紛れもない、デフラグの本音であった。
出来ることなら戦い自体がなくなることを望んでいるであろうが、彼にそこまで事を動かす力はない故の苦肉の策である。

(*゚∀゚)「ん、でもそっちって変な駒が沢山いるよね。
     こっちの駒が少なけりゃそれだけ存分に戦えるから私は一向に構わないけど、他の奴に何て言われるか」
[゚д゚]「なぁに、この職人デフラグさんに任しとけ。
    お前さん達が俺の注文通りにしてくれりゃ、そこはフェアにしてみせるぜ」



677: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:30 7MDm2XeMO

彼は歪んだ空間へと近づき

[゚д゚]「さて、一旦お別れだ。寂しいことだが次に会う時は敵同士だかんな」
(*゚∀゚)「…あ、うん、敵としていつ出てくるか楽しみだねぇ」

つーが放った動揺混じりの言葉をデフラグは無視。
そして

[゚д゚]「…下手すりゃ二度と会えないかもしれねえから、最後に一つ言っておく」

一息つき

[゚д゚]「さっきも言ったけど、お前さんにはお前さんの考え、俺には俺の考えってモンがある。
    けど、結局のところ何が正しくて何がダメなのかは自分で決めるモンだ」
(*゚∀゚)「はあ」
[゚д゚]「自分で打ち立てた道理を他人に押しつける権利なんてモンは、絶対にねえ。
    それだけは憶えておくといいんだぜぃ。じゃな」

そう言って、デフラグは魔界をあとにした。
残されたつーは一人首を傾げ

(*゚∀゚)「…あいつ、結局何しに来てたんだ?」



679: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:45 7MDm2XeMO

(*゚∀゚)「…さーて、全員揃ったところで地獄に叩き落とされたい奴は誰かな?」
(;^Д^)「ちょっと待て! 何がどうしてそうなる?」
(*゚∀゚)「決まってるじゃん、皆して私をはぶったんだから。
     おまけに趣味の悪い立ち聞きなんかして…その報いは受けてもらうよー」

――まずい、さり気なく怒ってる。
岩影に隠れてデフラグとの会話を聞いていたまでは良いが、このままでは魔界に帰って早々、文字通り地獄に落とされかねない。


…と、皆が思ったその時。

「うがぁ。飯はまだかよぅ」

タカラ達が隠れていた大岩の方から、状況に似合わぬのんきな言葉が飛んでくる。

つーを含めた皆がその方向を向くと

ミ,,゚Д゚彡「オイラ、もう腹減ったぞ」

子供のようにダダをこねるフッサールの姿があった。

( ^Д^)「もうちょっと待ってくれよ、今取り込み中だかr――」

と、同じく子供を宥めるような言い方をするタカラだったが

(*゚∀゚)「あれって…もしかして、フサ!?」

つーの方は懐かしげにフッサールを見つめていた。



680: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:51 7MDm2XeMO

そして


ミ;,,゚Д゚彡「うわぁ、何だお前!?」
(*゚∀゚)「会いたかったよフサー! もう逃がさないぞ、このっ!」

訳が解らずにいるフッサールと、出し抜けに彼を抱き上げるつー。

从 ゚∀从「…その様子だと、お前もそいつのこと知ってんだな」
(*゚∀゚)「そんなの当然でしょ?
     それよりフサ、あの時の続きってことでお姉さんと存分に殺り合わないかね?」
ミ;,,゚Д゚彡「へ? あの時? オイラ何も知らないぞ」
(*゚A゚)「先輩。猫さんはもう乱暴しまへん」

余計に頭がこんがらがったフッサールに対して、のーが助け舟を出す。

(*゚∀゚)「え、どゆこと?」
( ^Д^)「戦いはするけどもう凶暴じゃねえし、俺やのーやお前のことも覚えてねえ。
     要は俺達の仲間になったようなモンで、お前があれだけ戦いたがっていたフサはもういねえよ」
(*゚∀゚)「へぇ…残念といえば残念だけど、これでいつでもフサを拝める訳か…ちょっと色が変わってるみたいだけどね」

どうやら機嫌を直してくれたらしい。
つーとフッサールを除く者達は、安堵の溜め息を吐く。



681: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 20:54 7MDm2XeMO

それからさらに少し時間が経過し、つーのテンションがいくらか戻った後。

(*゚∀゚)「…ところで、何で私がここにいるって解ったのさ?」
( ^Д^)「なに、どうってことはない。
     俺達が現世から魔界に戻ったらたまたま砂漠の方に出ちまった。そこでお前があのフランケン野郎と話してるのが聞こえた訳だ」
(*゚∀゚)「なーんだ。因みにどの辺から立ち聞きしてた?」
( ´∀`)「デフラグとやらが、家族がどうこうって言い出した辺りからモナ」
(*゚∀゚)「んじゃ、あいつが言ってたことも把握してるね?」
(#゚;;-゚)「…おk」

それでも一応、つーはデフラグが話していた重要なことを再度タカラ達に伝える。
敵が構えている世界への侵入方法も判明し、ひとまず任務は完了したということも。



682: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 21:05 7MDm2XeMO

( ^Д^)「しかしまあ、あの連中が何を考えてるのかは全く以て解んねえが
     少なくともあいつだけは本気で平和を望んでるようだな。
     だったらこっちもそれに応えてやりてえよな」
从 ゚∀从「けどよぉ、そんなにあっさり信じちまっていいのか?
     あのデフラグって奴はあくまで敵なんだろ?」
(#゚;;-゚)「…確かにね。それに応えるってどんな風に?」
( ^Д^)「そりゃ簡単だ。あいつが言ってた通り、城の兵士達を連れてかなきゃいい」
( ´∀`)「ここにいるメンバーの数人と、隊長と軍師様ぐらいでかかるモナね」

それぞれの意見が飛び交うが、正直なところはタカラ達も余計な犠牲は出したくなかった(つーはどう思っているのか謎だが)。
魔界を防衛するための戦いで犠牲が多く出るようでは、それはもはや防衛とはいえないのだ。



683: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 21:08 7MDm2XeMO

( ^Д^)「…問題は上の方々をどう口説くか、だな」

ただ単に兵を使うなと言っても理由を問われるだろうし、無論そこで『デフラグがそう言っていたから』などと答える訳にもいかない。
嘘でもいいから、何か手の込んだ口実を考えなくては――

从 ゚∀从「…そこまで言うんならしゃあねえ、俺がちゃっちゃとお偉いさん達に説得してやるよ」

そこでどういう訳か、高岡が名乗りを上げた。

( ^Д^)「そんなに上手くいくようなことなのかね」
从 ゚∀从「あのな、一つの狭い回廊を何百人もの人間がいっぺんに通れると思うか?
     つまりはそういうことを言えばいいんだよ」

よく解らぬ喩えだが、どうやら彼女に考えがあるらしい。
絶対的な自信の篭もった彼女の言葉に、皆も賛同する他なかった。



684: ◆wAHFcbB0FI :01/28(月) 21:17 7MDm2XeMO

( ^Д^)「…けど、本当に信用して大丈夫なんだな?」
从 ゚∀从「大丈夫だ、俺にやらせとけ。いい仕事するぜ。
     それから魔獣に飯も食わせてやらなくちゃだしな。ひとまず砂漠とおさらばしようや」

もうすっかり皆の中に溶け込んでいる高岡。
昔の荒んだ生き様はもはや感じられず、かつて現世に存在していた、優れたリーダーシップを持った男のような存在となりつつあった。



そして

ミ,,゚Д゚彡「おぉ、やっと飯だ! ヒャホーイ!」
( ^Д^)(*゚∀゚)(#゚;;-゚)从 ゚∀从( ´∀`)(*゚A゚)「ちょwwwwwww」

――そんなことがあって、結局一同は城下町方面まで戻ることにしたのである。



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