( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

691: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 18:59 hPM1+vxKO

第十八話 『残された時間』



( ФωФ)「…すると、お前達は侵略者がいる世界への入口を探すために砂漠地帯に行っていたと」
从 ゚∀从「ま、そういうことになるな」

城下町へ戻ってタカラ達と一旦別れた高岡は、単独で堂々と城へ入り込み
そして今、じぃとロマネスクを一階の広間に呼び出して報告をしていた。
周囲では城の兵士達が「ありゃあの時の姉ちゃんだ」とか「度胸のある人間だな」などと小声で言い合っている。

爪゚ー゚)「…では、タカラ達がどこにいるかも解っているな?」
从 ゚∀从「あぁ、あいつらなら心配ないぞ。
     ちゃんとこの世界のとある場所にいるし、戦いが始まるまでは大人しくするって言ってるから」

初対面であるはずのじぃに対しても、日頃から顔を合わせているかのような態度で会話に臨む。

恐らく高岡は今まで一度も敬語というものを使ったことがない。
だが、それこそが昔から変わらぬ彼女流の付き合い方なのだ。



692: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:03 hPM1+vxKO

( ФωФ)「じゃあ、馬鹿共がいるその場所を教えろ」
从 ゚∀从「それは出来ねえな」
(# ФωФ)「何故だッ!?」
从 ゚∀从「個人のプライバシーってモンがあるだろうが。そんなことも解んねえのか」
(# ФωФ)「てめえもあいつらと同じで俺を苛つかせることに関しては天才的だな!」
从#゚∀从「あぁ!? やんのかてめえ!」

ここまできて、じぃは喧嘩が勃発しそうな状況に制止をかける。

爪゚ー゚)「…それで、侵入手段は見つかったのか?」
从 ゚∀从b「おう、ばっちしだ」

自信たっぷりなその言葉に、じぃは安心したように微笑む。

爪゚ー゚)「…よし、よくやってくれた。
     後はまだ治療中の兵士達が完治すれば――」
从 ゚∀从「あー、その事でちょっと言いたいことがあるんだが」



693: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:06 hPM1+vxKO

爪゚ー゚)「何だ?」
从 ゚∀从「兵士達連れてくの無理」

理由を訊ねるじぃに対し、高岡はわざとらしく溜め息を吐いて続ける。

从 ゚∀从「あっちの世界へ行く手段なんだが、砂漠地帯のど真ん中にある空間の歪みが入口になっている。
     問題なのはその入口の大きさから考えて、そんなに数百人も兵士が通れねえってことだ」
( ФωФ)「…? そいつはつまり、兵士をいっぺんに連れていったらそこで詰まって大変なことになるという訳か」
从 ゚∀从「そういうこったな」
爪゚ー゚)「…ならば、どうやって攻め込めばいい?」

言われて、高岡は考えるような素振りを見せた後

从 ゚∀从「兵士達には念のために周辺で待機だけしてもらって、この世界で特に強い奴数人で殴りかかるのが妥当じゃねえかな」
( ФωФ)「…ふん、こっちの駒が少ない状態でチェスを始めて勝つとでも?」



694: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:11 hPM1+vxKO

魔王であるヒッキーを視野に入れずとも、つーや魔界軍師など十二分に戦える存在はいる。
しかし、いくら一騎当千の強者がいても敵の存在自体がはっきりしない以上は油断出来ないというのがロマネスクの考えである。
だが

从 ゚∀从「お前は実に馬鹿だな。
     そのために新しい戦力加えたんじゃねえのか?」
( ФωФ)「…ちっ、てめえに言われると不愉快だが、それはもっともだ。
       俺は現世に行ってダチを連れ戻してきた訳だが、お前等は強い武器でも手に入れたりしたか?」

まさか現世に行った訳じゃあるまいな、とじぃが念を押してくるも

从 ゚∀从「ああ、現世なんか行ってねえ。けどこっちも強い奴を見つけたぜ」

と、平然と言ってのけた。



695: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:15 hPM1+vxKO

爪゚ー゚)「して、その者は魔界のどこにいたのだ?」
从 ゚∀从「えーとそうだな……」

適当に考えること三秒。

从 ゚∀从「…そう、森だ。この世界の森に強い獣がいた」
爪゚ー゚)「…どうも、引っかかるな」
(# ФωФ)「おかしい、おかしすぎる!
       そんなに強力でありながらてめえらの言うこと聞く程の奴が、何で今まで姿も見せずに大人しくしてきた?」

――このやろう、しつけえ。
心の中でそう毒突いた高岡は、そろそろ退散を考える。

从 ゚∀从「どうも疑り深いな。そんなことを追求する暇があったら誰を連れてけばいいかを考えた方がいいんじゃねえのか?」
( ФωФ)「…お前、そんな簡単に言うけどよぉ――」

だが、相変わらず喧嘩腰で高岡に食ってかかるロマネスクをじぃは制止し

爪゚ー゚)「…解った。もう下らないことで一々責め立てるのはやめよう」

と、静かに言った。



696: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:20 hPM1+vxKO

( ФωФ)「なっ…軍師さん、いいんですかい?」
爪゚ー゚)「彼女が言っていることはもっともだ。今は現状を考えて行動すべきだろう?」
( ФωФ)「……」

ロマネスクも流石に魔界軍師であるじぃの命を退けることは出来ないようである。
そして

( ФωФ)「…はあ、軍師さんがそういうなら」

ということだから下がれ、とロマネスクが高岡に言ったのを機に、彼女の(適当に誤魔化して口説くという意味での)戦いは終わった。

从 ゚∀从「(…へへっ、上手くいったようだな)」

そうして、じぃとロマネスクが別の事について話し始めたのを見た高岡は、安心した様子で城をあとにした。



697: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:25 hPM1+vxKO

一方、城の後方にある忘れられた荒野の地下に建つ『右に傾いた家』では


( ^Д^)「今日は俺達の最期の晩餐になるかもしれねえからな、沢山飲もうや」
( ´∀`)「賛成モナ!」
(#゚;;-゚)「(…結局何時もとやること同じだね)」

何時ものカウンター席にはタカラとでぃ、そしてモナーが座っている。
それは当然、何時もと変わらぬ風景に思えるが

( ^Д^)「…今日は何時もよりは静かな気がするな。

城に行っている高岡はさておき、またもやつーとのーの姿がない。
もっとも、のーが一緒にいればバカ騒ぎが起こる心配もあまりないのだが。



698: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:26 hPM1+vxKO

ミ,,゚Д゚彡「ハムッ、ハフハフ…ハフッ!」

その代わり、文字通り獣特有の怒涛の勢いで食事にありつく存在がいた。
因みにその姿勢は犬食いである。

( ´∀`)「本当によく食べるモナね」
( ^Д^)「全くだ」
ミ,,゚Д゚彡「もっとくれ!」

食事を始めて早五分。
既に大皿四枚分もの生肉を、その腹の中に収めている。

川д川「まだまだありますよ。さ、どうぞ」
(・∀・)「クイタイダケ、クエ!」
ミ,,゚Д゚彡「そう言われたからには、オイラ幾らでも食べるから!」

そして今、五皿目に手を―――いや、顔を突っ込んだ。



699: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:29 hPM1+vxKO

フッサールがなかなか満腹感を得ないせいで、タカラやモナーは待たされっ放し。
さらに、今は五月蝿いメンツがいない。
だから

( ^Д^)「どうも盛り上がりに欠けるな。せめてハインは戻っても良い頃だが」
(#゚;;-゚)「…あの人、どっかで黄昏てたりして」
( ´∀`)「やっぱりあのことを引きずってるモナ?」
( ^Д^)「どうだか」

現世から魔界に戻る直前。
高岡は曾祖父であるジョルジュの形見と思われるあの鍵と地図を、ブームに渡してきてしまったのである。
当の本人は、『自分が魔界の住人となっている今、もう必要のないモノ』と言っていたが――



700: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:33 hPM1+vxKO

( ^Д^)「なんつーか、アレで良かったのかね。
     あの地図が指し示す場所を探すことがあいつの現世での生き甲斐だったんだろうに。
     それをああまで呆気なく手放しちまうなんて」
( ´∀`)「人間っていうのは、タカラが思ってる以上にナイーブでデリケートな生き物モナ。
       ハインちゃんも何時も通りに振る舞ってるようだけど、本当はきっと――」

勢いよく出入口のドアが開いたのはその直後。

从 ゚∀从「おーっす、ハインリッヒ高岡参上!」
( ^Д^)(#゚;;-゚)( ´∀`)「あ」

突然現れた高岡に、三人は一斉に視線を向けた。
そしてその妙な反応に対して頭に疑問符を浮かべた高岡の様子には―――全く苦悩の色は伺えない。



701: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 19:56 hPM1+vxKO

从 ゚∀从「…何やってんだお前等」
( ^Д^)「いや、どうもしねえよ」

適当に誤魔化し、そしてモナーに向きなおり小さな声で

( ^Д^)「ナイーブでデリケートなのってお前だけなんじゃねえの?」
(; ´∀`)「ちょ、だからそれは――」

(#゚;;-゚)「…ちょっとこっちのことで取込み中なのです」
从 ゚∀从「…? まあいいや。空いてるとこ座るぞ」

もう既に慣れきったらしく、彼女はさっと席に座る。
そこは、モナーの隣。

(* ´∀`)「ワォ、思いがけない幸せモナ♪」
从 ゚∀从「どうやら勘違いされてるみてえだから言っておくが、俺はこんな豆狸は頭の隅にも置いてねえぞ」
(; ´∀`)「…前より酷い呼ばれ方モナね」

豚と豆狸ではどちらがより酷い言い回しなのかはさておき。
高岡は他人事のようにフッサールに目を遣り

从 ゚∀从「どうやらあっちでも取込み中のようだな。あの猫、ある意味で俺か想像していた以上だ」
( ^Д^)「な、凄いだろ。あの食べっぷりはまさに魔獣だよ」
从 ゚∀从「お前が対峙した時も食ってばかりだったのか?」
( ^Д^)「それはない」



702: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 20:16 hPM1+vxKO

それから他愛のない話を始めて数分が経過した頃。
まだ酒にはありつけそうにないと悟ったタカラは、ふと話題を変える。

( ^Д^)「…今のうちに、ハインとモナーに見せておきたいモンがあるんだがな」
( ´∀`)「?」
从 ゚∀从「それは後の戦いにおいて大事なモンか?」
( ^Д^)「これから重要になる」

そう言ってタカラは、未だフッサールに食事を与え続けている貞子に視線を送る。
それに対して、どうぞ、と彼女がジェスチャーで応えたのを確認すると、ハインとモナーを連れてカウンターの奥へと向かう。



703: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 20:19 hPM1+vxKO

( ^Д^)「この家は実に不思議でな、外観からは考えられねえほど中は広くて部屋が多いんだ」
( ´∀`)「それは僕にだって大体見当がつくモナ」
从 ゚∀从「俺も。ぼろっちい個室なのにシャワールームあったりするよな。だがそれがいい」
( ^Д^)「でもお前等がまだ入ってない部屋もあるはずだ。
     そこに…つまり大事なモンがある訳だが」

そこは、廊下の一番奥にある部屋のドアだった。

从 ゚∀从「意味ありげだけど…他の部屋のドアと同じに見えるな」
( ^Д^)「…俺もあんまし入らないとこだ。まあ見ておくだけでも見ておけ」

ドアを開け、入るよう促す。
そして――

从 ゚∀从( ´∀`)「!」

二人は、思わず言葉を失った。



704: ◆wAHFcbB0FI :02/16(土) 20:27 hPM1+vxKO

部屋に足を踏み入れて最初に彼等の目に入ってきたのは、黒く神秘的な光を静かに放っている大きな球体。
それが、どういう訳か部屋の奥の方で宙に浮いているのだ。

( ^Д^)「モナー。これが何だか解るな?」
( ´∀`)「…さては、『暗黒石』モナね」
( ^Д^)「正解。それも欠片とかじゃなく…純粋な闇の力が凝縮されている、いわゆる超レアモノだ」

何故か得意気に説明し、そして思い出したように

( ^Д^)「…因みに貞子ちゃんが死体共を操作していたのは、彼女の魔力とこの巨大な暗黒石の力を使ってやってたんだぜ」
( ´∀`)「何と!」



706: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 01:43 0ulEFJJHO

从 ゚∀从「…で、何なんだよ。その暗黒石ってのは」
( ^Д^)「おっと、ハインにはまだちゃんと話してなかったな。
     暗黒石ってのは…俺達魔界の住人にとっての強力な力の源だ」

誰がどうやって作ったかも解らない、二つの摩訶不思議な物質。
一方は光のように明るく透き通った緑色の宝玉で、もう一方は暗く吸い込まれそうな輝きを放つ黒色の宝玉。

その後者が、今彼等の目の前にある暗黒石である。

( ^Д^)「もう一つの方は『聖石』といってな、そっちには俺達が苦手とする――つまり聖なる力が凝縮されている。
     それから聖石は本来天界にしか存在しないし、暗黒石は普通ならこの魔界にしかない」
从 ゚∀从「へぇ…その力を我が物にした日には、世界を救うようなこともできそうだな」
( ^Д^)「そうだ。実際にこの力で世界を救った奴がいる」
从 ゚∀从「…それって、現世から帰る前に耳にしたあいつのことか」
( ^Д^)「鋭いな。その通りだ」



707: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 01:49 0ulEFJJHO

聖石には聖なる力の他に空をも自由とする力を与え、暗黒石は単純に魔の力を増幅・強化させる。
ただし両者ともそれ自体は魔力を持っておらず、一種の超能力という存在とされている。

そして、その相反する二つの力を手にし
さらに扱うことをも可能とするならば―――

( ^Д^)「…『光と闇の融合』と俺達は言っている。
     聖なる力と闇の力の双方が混ざり合った、要は滅茶苦茶な力が発生しちまう」

だが、それほどまでの強大な力を抑えきれる器などそうそうあるものではない。
そもそも聖なる力を身に宿した者が暗黒石の力をも我が物にしようとしたり
或いはその逆の場合も、普通ならば拒否反応ともいえる苦しみに耐えきれず――文字通り身を滅ぼしてしまう。



708: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 01:53 0ulEFJJHO

ならば、何故『彼』はその二つの力を制御することができたのか。
現世で生まれ育ったごく普通の存在は、一方の力を手にすることさえままならぬはずなのだ。

( ^Д^)「…それなのにあいつはどういう訳か既に聖石の力を持ってて、『拒否反応』にも耐えて暗黒石の力も制した。
     それを根性とかいうモンなのかどうかは俺には解らねえ」
( ´∀`)「何か百年前の現世には色々と凄い人がいたみたいだけど、そのブーンって人は特にハイレベルモナね。
       それで最期は『とある谷間を探索中に行方不明』ってブームさんが言ってたモナね」
从;゚∀从「(おま、空気読めよ馬鹿!)」



709: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 01:55 0ulEFJJHO

タカラにとってあまり触れるべきではないことを平気で口にしてしまったモナー。
それに対し、タカラは澄ました表情で

( ^Д^)「…だが、それはあくまで『行方不明』だ。悪足掻きみたいな言い方だが即死した訳じゃねえはず。
     もしかしたらその後生き延びて、もっとまともな死に方したかもしんねえだろ? もうちっと良い方向に考えようぜ」
从 ゚∀从「(そんなんでいいのか…?)」

百年前に復活したフッサールから世界を救った人物であり、タカラの友でもあった『ブーン』という人間の男。
結局、彼のその後を正確に知ることになるのはまだ先の話であった。



710: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 02:00 0ulEFJJHO

( ^Д^)「とにかく、俺達はこの後に待ち受ける戦闘でこの力が必要になってくるということだ」
从 ゚∀从「それはもう解った。けど、俺みたいな人間が使っても本当に大丈夫?
     そもそも数は足りるのか?」
( ^Д^)「心配ない、暗黒石のストックならある。
     そんでもって魔界の力を持つ今のお前なら拒否反応なしで扱えるはずだ」

そう言いつつ辺りを見回し

( ^Д^)「…この部屋には武器とかも色々置いてある。お前等も戦うっていうんなら使えそうなモン貰っとけよ」
从 ゚∀从「何か、貞子って奴の考えることは俺には理解出来ねえな……しかもいつの間にか俺も参戦することになってるし」



711: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 02:05 0ulEFJJHO

別にいいけど、と高岡が腕を組みつつぼやいていると

( ´∀`)「ちょっと見るモナ、こういうのは子供の頃の夢だったモナよ!」

突如叫んだモナーがさも楽しそうに指差す先には、魔法の杖と言わんばかりの短めのステッキと大きな鍔の黒い帽子があった。
だが、タカラはそれを見て即座に首を横に振り

( ^Д^)「…そいつは多分、お前に扱えるようなモンじゃねえ。
     前に暴発して軽い騒ぎになったこともある」
( ´∀`)「ちぇー…残念モナ」

从 ゚∀从「おい、それよりもこっちの剣は軽くて使いやすそうだな」

がっかりするモナーを尻目に、高岡は一つの剣を手に取ってみる。



712: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 02:07 0ulEFJJHO

( ^Д^)「あ、それは――」

というタカラの止めも間に合わず、剣は独りでに高岡の手から離れると同時に彼女に切りかかった。

从;゚∀从「っ!? 何だよこいつは!」

最初の一撃を間一髪で回避し、続け様に攻撃してくる剣を避けながら言葉を発す高岡を前にして、タカラは平然とした様子で答える。

( ^Д^)「一人で武術の実践練習ができる剣だ。良い修行にはなるが本気でやらねえと死ぬぞ」
从;゚∀从「なんじゃそりゃあ!?」

――結果的に止め方を知っている貞子が慌てて駆けつけるまで、高岡は魔剣の無慈悲な攻撃を避け続けることになった。



713: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 16:54 0ulEFJJHO

深く霧がかかった森。
今のところどうにか平穏を取り戻したここ一帯では、蝙蝠や蛇などの小動物から巨人といった大型生物までもが思い思いに暮らしていた。


それは奥地に建つ小屋でも同じことである。

(*゚∀゚)「いやはや、この森にある茸ってのは美味しいもんだねぇ」
(;*゚A゚)「先輩…いくら戦いが近いから言うても食べ過ぎは堪忍して下さいよ?」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、解ってるって」

いつもの場所に姿を現さないつーとのーはここにいた。
森で穫れた茸をそのまま二人で摘みながら言葉を交わし―――こっちはこっちでそれなりに戦闘前の自由時間ともいえる時を楽しんでいた。

(*゚∀゚)「でも…前にタカラから奪った時の方が美味しかったような?
     『アンタの物は私の物』ってな感じで」
(*゚A゚)「どこかのガキ大将みたいなこと言わへんで下さい」



714: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 16:59 0ulEFJJHO

粗方森の茸を二人で平らげた後、つーはふと言葉を漏らす。

(*゚∀゚)「にしても、こんなこと何時まで出来るのかな」
(*゚A゚)「……」

返事はない。
そしてその様子からして―――言葉を耳にさえしてないと確信する。

(*゚∀゚)「聞いてる?」
(*゚A゚)「…あ、すんまへん。ここでは普段一人で過ごしてるんで」
(*゚∀゚)「全く、アンタって奴はホントに天然なんだから…」

呆れ気味に言い

(*゚∀゚)「こんなところにいつも一人で居て、寂しいとか思わないのかい?」
(*゚A゚)「うーん、自分は静かな方が好きですからなぁ」
(*゚∀゚)「そういうとこ私の後輩らしくないよねぇ」

もっと積極的になれと口説くつーに対し、のーはきまりが悪そうに

(*゚A゚)「自分は普通とちゃうし…変に外に出ていって迷惑かけたらあかんのですよ」
(*゚∀゚)「何さ、この期に及んでまだ昔のこと引きずってるのかい?」



715: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:02 0ulEFJJHO

二人は魔界の住人の中でも特殊な存在だった。
現に生ある者が死んで霊体になったり、魂が物体や物質に宿ったような奴は沢山いる。
だが、つーとのーの場合は何の脈絡もなく
他の連中から見て『気付いたらそこにいた』とでも言うべき存在なのだ。
それはある意味、魔界で一番存在意義が薄いということを指し示してさえいる。

だが、それでも

(*゚∀゚)「あのさ、もうそんな百年以上も前のことをあれこれ考えてどうする?
     今は今なんだから今らしくやりなさい」
(*゚A゚)「ちょ…そう言うても、自分の――」

自分が異質であることを定義付けている部分を口にしかけるが

(*゚∀゚)「たとえ他の奴等と違ってたってアンタはアンタ、私は私だよ。
     他人の目なんて気にせずに自分の思った通りやってくのが本当の正しい道さ」
(*゚A゚)「…それ微妙に受売りですね」
(;*゚∀゚)「うっさい黙れ」



716: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:04 0ulEFJJHO

そしてつーはさっと立ち上がり、のーを見て満足した様子で

(*゚∀゚)「…さて、悩みが飛んだなら私はあそこに行ってくる」
(*゚A゚)「(悩み…なのかな?)
    どちらへ?」
(*゚∀゚)「決まってるじゃん、いつもの所だよ。
     そんでもってアレを盗ってくる」
(*゚A゚)「…アレとは?」

首を傾げるのーに対して、彼女はさも楽しそうに笑いながら

(*゚∀゚)「私の『夢』ってモノを実現させる道具さ。今に役に立つよー」

と言うのだった。



717: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:08 0ulEFJJHO

(・∀ ・)「……」

時空の狭間にある小さな世界。
態度の大きい少年―――またんきは、旧研究室のいつもの椅子に座っていた。
まるでテレビでも観るかのように目の前のモニターに釘付けになっていたが

(・∀ ・)「…やっとみたいだね」
爪゚∀゚)「奴等が攻めてきたか」
(・∀ ・)「急かすな、まだだ。
      けど、少なくとも三日以内には攻めてくるよ」
爪゚∀゚)「いい加減な情報だな」

しかし、と彼女は付け加え

爪゚∀゚)「正直言うと、今の私は何時奴等に襲われようと倒される気は全くしない」
(・∀ ・)「油断は禁物…と言いたいところだけど、僕も今の君がそうやすやすと潰されることはないと思う」

外見こそ変わっていないものの、『改造手術』を受けたづーはより強力な存在となっている。
そして、その手に持つ漆黒のサーベルはとてつもなくどす黒い光を放っていた。
まるで、死者の怨念が形を成しているかのように――



718: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:12 0ulEFJJHO

爪゚∀゚)「…何故だろうな、僅かながらこれからの闘争が楽しみに思えるのだ」
(・∀ ・)「僕も、今度こそ魔界のゴミ共を完全に潰せるという意味では同感出来るね。面倒な奴等から消してそのまま魔界を侵略してやるさ」

恐らく宿敵との最後の戦いになるだろう、とづーは確信する。
自分と瓜二つでありながら理性に欠け、機械改造などされておらず、その癖自分を見下した死神を名乗る女。
今度こそは逃げ場などなく、退く理由や要素も全くないのだ。

どちらかが倒れるまでそれは続き、どちらかが倒れればそれは終わる。



719: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:15 0ulEFJJHO

爪゚∀゚)「…それはそうと、私とぃょぅ以外の改造手術をしていない者達はどうなっているのだ?」
(・∀ ・)「大丈夫だとは思うよ。何せ残りは強者揃いだし。
      そんなことより――」

またんきはふと、訝しげに表情を歪め

(・∀ ・)「…デフラグはどこにいる?」
爪゚∀゚)「? あいつがどうかしたのか」
(・∀ ・)「いや、あいつの持ち場を見ても姿がなくて――」

と、その時。
勢いよく入口の扉が開いたかと思うと

[゚д゚]「どうも。戻りましたよ、と」
爪゚∀゚)「…あ、帰ってきた」

づーが口にした通り、突如デフラグがひょっこりと姿を現したのである。
当然、またんきが黙って見ている訳がない。

(・∀ ・)「デフラグ、どこ行ってやがった!
      あれほど自分の持ち場に居ろと言ったのに」
[゚д゚]「いや、ちっとばかりその辺散歩してきたんですぜぃ」
爪゚∀゚)「相変わらずののんきっぷりだな…だがそれがいい」



720: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:18 0ulEFJJHO

(・∀ ・)「散歩も何も、この小さい世界のどこを散歩していたと?」
[゚д゚]「戦いが始まる前ってことで見回りがてら適当に廻ってました」

こんなことを言われ、またんきはばつが悪そうに舌打ち。

(・∀ ・)「ったく、機械兵士とかは全部お前が担当なんだからしっかりやってくれよ!」
[゚д゚]「へーい」

軽い返事とともにデフラグは来て早々部屋をあとにする。
幸か不幸か、その際彼が安堵感の籠もった溜め息をついたことに気付く者はいなかった。



721: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:22 0ulEFJJHO

(・∀ ・)「何なんだあいつは…」

仲間であるまたんきにさえ、文字通りよく解らないデフラグ。
づーは流石に慣れたのか

爪゚∀゚)「構うな。元より変わった奴なんだからな」

と、平然と言い放つ。
それに

爪゚∀゚)「あいつ…どうやらこれからの戦いに対して躊躇いを抱いているらしい」
(・∀ ・)「戦える自信がない、とでもいうのか?」
爪゚∀゚)「さあ、そこは私にも解らんさ」
(・∀ ・)「そうかい…もし、そうだというなら――」



722: ◆wAHFcbB0FI :02/17(日) 17:23 0ulEFJJHO

一息入れ

(・∀ ・)「――大馬鹿野郎だな。あんなゴミ共なんて総力を上げてかかれば大したことない」
爪゚∀゚)「果たしてそんなに上手く事が進むだろうか。
     ならぬならならぬでこちらは楽しめる訳だが」
(・∀ ・)「おや、今回は妙に遊び心があるな」
爪゚∀゚)「『これからの闘争が楽しみに思える』と先程言ったろう。
     向こうが攻めてくるというなら、こちらも存分に戦ってやる」
(・∀ ・)「ふん、やられるなよ」
爪゚∀゚)「やられんさ」

そう言うづーの心中は、何時になく闘争心が支配しつつあった。
それが、過去の戦いで決着がつくことのなかった宿敵を倒せ、と自分に言い聞かせる。

爪゚∀゚)「――次こそ、勝つのは私だよ」



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