( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

782: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 16:38 ohwtcJ4vO

第二十話 『世界を越える者』


( ^Д^)「なぁ、何時になったら部屋とかそういうとこに辿り着くの?」
爪゚ー゚)「…我慢しろ」

狭間の世界に聳え立った、要塞らしき建物の内部。
侵入する際にあの飛行物体の攻撃を受けることは不思議となく、戦うために外に残ったロマネスクとボッコスを除いて未だ誰も欠けていない。

何故か屋内でありながら霧がかかっているが、思ったよりも通路は広く
大して圧迫感を感じないその一本道を、彼等は先程から黙々と進み続けている。

機械兵士は全て外の守りに回っていたのか、見張りらしき敵の姿は全くなかった。



783: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 16:40 ohwtcJ4vO

( ^Д^)「おい、そろそろ退屈なんだが」
(*゚∀゚)「黙ってろ迷惑」

( ^Д^)「ちょっt」
从 ゚∀从「まあまあ、落ち着いてこうぜ」

( ^Д^)「あn」
爪゚ー゚)「だから我慢しろと何度言わせるのだ」
(;^Д^)「(無限回廊uzeeeeeeeeee!!)」

――どういう訳か、タカラはあらゆる相手から非難(又は嫌がらせ)らしき仕打ちを受けた。

といってもまだ侵入して五分程度しか経っていないのだが、何時から彼はこんなにせっかちになってしまったのだろうか。

( ^Д^)「こうなったの、お前のせいだぞきっと!」
(*゚∀゚)「何を根拠にそう言う!」

いわれなき責任転嫁の後、例によって喧嘩がスタートする。

(*゚A゚)「また始まってもうたな…」
ミ,,゚Д゚彡「いっつもこんななのか?」
(*゚A゚)「そや。仲がええのか、それとも本当に…」
ミ,,゚Д゚彡「ふーん」



784: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 16:43 ohwtcJ4vO

从 ゚∀从「ほら、お前等がドタバタやってる内に先が見えてきたぞ!」
( ^Д^)(*゚∀゚)「あ!?」

ようやく辿り着いた先は行き止まり。
―――いや、何かがあった。

爪゚ー゚)「……?」

正体不明の機械。
それはカプセルと称すことができるであろうモノで、人一人が足を踏み入れるくらいのスペースはあり
最上部に付けられた赤いランプは起動を示すように点滅を繰り返していた。

从 ゚∀从「…こういうのって何かになかったか?
     昔聞いた話だと…」
( ^Д^)「何を訳の解らないことを言ってるんだ。
     軍師さんはどう思う?」
爪゚ー゚)「…解らない。何を意味しているのだろうか」



785: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 16:56 ohwtcJ4vO

从 ゚∀从「俺の勘が正しければ、ここに入れば次のとこに行けるはず。
     テレポートみたく、ビュッとな。だがそこにはきっと敵も待ち構えてやがるぞ」
(*゚A゚)「うーん、怪しいから叩き壊した方が安全ちゃいますか?」
( ^Д^)「お前乱暴になったなー」

だが、建物内に侵入してからはこの広い通路しか進むべき道はなかった。
それはつまり、高岡の予想が正しいと判断しない日には何も始まらないということ。
壊すという案を挙げる者は他にもいたが(誰かは読者の想像に任せる)、結局腹を決めてこのカプセルに入ることに。


爪゚ー゚)「では、誰からいくか」
( ^Д^)「俺が最初って展開は嫌だぞ!」
(*゚A゚)「自分も」
从 ゚∀从「俺もちょっと…」
ミ,,゚Д゚彡「オイラ、よく解んねえ」

妙な答えが最後に一つ出たが、つまるところどれも初手を拒否するものだった。



786: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:20 ohwtcJ4vO

それを、呆れた様子で見下す者が一人。

(*゚∀゚)「何さ、誰もかれも臆病者のチキンじゃないか!」
从 ゚∀从「いや、誰だってこんな見慣れないモン見せられたら少しはビビるだろ常識的に考えて…」
( ^Д^)「てか、そんなに言うんなら先ずお前からいけや!」
(*゚∀゚)「良いとも!」

言うなり、彼女は躊躇いもなくカプセルに足を踏み入れ―――


次の瞬間彼女は、パッ、という音が聞こえてくるような感覚でその場から消えた。

無論、何の脈絡もなしに、である。



787: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:27 ohwtcJ4vO

(;^Д^)「うぉ!? 本当に消えたぞ!
     あいつ自体の力で瞬間移動した訳でもなさそうだし…」
从 ゚∀从「な? 俺が踏んだ通りだろ!」

彼等が驚くのも無理はない。
何の魔力や霊力も使わずして、その場から瞬時に消えたのだから。
しかし

ミ,,゚Д゚彡「何かおもしろそうだな! オイラもやっていいか?」
(*゚A゚)「…御自由にどうぞ」

今度は好奇心満載のフッサールがカプセルに飛び込むように乗り、またも『消えた』。



そして一瞬の沈黙が流れた後

爪゚ー゚)「…よし、これで安全は証明できたな。
     では我々も行こう」
( ^Д^)从 ゚∀从(*゚A゚)「りょーかい!」

ようやく決心のついたであろう彼等は、今度こそ次のフロアへの入口へと足を踏み入れたのである。

そして皆が覚悟していたように、これこそが厳しい闘争への入口でもあった。



788: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:32 ohwtcJ4vO

建物外の広場。
既に機械兵士は全滅し、しかし円盤型の飛行物体という大きな壁が一つあった。
それは機体の数ヶ所に備えられた砲台から放たれるレーザーや、下部に隠してあった機械腕を振り回して攻撃してくる。
それらに対して行う動作は回避運動だ。

( ФωФ)「遅ぇんだよ、このノロマがぁ!」

宙に浮かぶ相手に向かって、ロマネスクは二本のトマホークを同時に投擲。
その勢いやコントロールは強力且つ正確だが、しかしそれらは円盤を破壊するには至らず硬質な音と共に弾かれる。

( ・ω・)=つ「ふっ!」

ロマネスクが投げたトマホークの回収に向かう際、反対側からはボッコスが高く跳びつつ円盤目掛けて拳を突き出すが、やはり標的を貫くことは出来ない。

先程からこの繰り返しであった。
円盤からの攻撃を避け、反撃として小さな攻撃を仕掛ける。
幸い敵の攻撃は単調なために回避は容易いのだが、このまま続けていても決着はつきそうにない。



789: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:36 ohwtcJ4vO

( ・ω・)=つ「おぉ、手が軽く痺れるんよ」
( ФωФ)「お前でも簡単には壊せないモンってあるのな」
( ・ω・)=つ「ない訳がないんよ」

あっさりと認めたボッコスに対して苦笑しつつ

( ФωФ)「もうこの際、俺達も無視して進むか?」
( ・ω・)=つ「きっと、それは駄目なんよ」
( ФωФ)「ですよねー」

確かに先程じぃ達は何の妨害も受けずに建物に進入することが出来たが、今では何故かそうもいきそうにない。
あの円盤から、もうこれ以上は通さない、という類のオーラが発せられているような気が(少なくとも二人には)するのだ。
かといって現状を維持していても、それはただの無意味な戦闘である。
先に進むことも、敵を倒すことも不可能であれば―――

( ФωФ)「…こうなりゃもう、やむを得ん」
( ・ω・)=つ「お前、もしかしt」

ボッコスの言葉を遮り、彼は堂々と言葉を吐く。

( ФωФ)「あぁ、帰る!」



790: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:51 ohwtcJ4vO

あまりにもあっさりと言い放った退却宣言。
果たしてそんなに簡単に決断してしまって良いのだろうか。

( ・ω・)=つ「…初っ端から負けを認めるんよ?」
( ФωФ)「馬鹿、誰がそんなこと言った!」

彼は吐き捨てるように言い

( ФωФ)「戦略的撤退だ。一旦魔界に戻って、対策練ってまたすぐここに来る。OK?」
( ・ω・)=つ「……」

既に敵の本拠地にはじぃ達が乗り込んでいる。
自分達が囮となって彼女等の進入が成功した以上、それなりの役目を果たしたとも思える。

現時点でこの戦闘の先に待つ最終的な結果は、こちらが倒れるか相手が倒れるかのどちらか。
だが現状、そのどちらにも辿り着きそうにない。

それならば、このまま攻撃と回避を繰り返しているよりは命を大事にして一時的に避難した方が正しい選択である。



791: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 17:54 ohwtcJ4vO

( ・ω・)=つ「…解ったんよ。でも、こんな状況で簡単に逃げれるんよ?」
( ФωФ)「どうだか…なるようになるとは――」

その時、ロマネスクの言葉を遮るかのように
二人の足元へとレーザーが飛んできた。
戦闘中に敵が目の前にいる状態で、何時までも攻撃を再開しない愚者はいない。
二人はそれを避けはしたものの

( ФωФ)「――やっぱ帰るのもムズいぞこりゃ!」
( ・ω・)=つ「どうやらそれで正解みたいなんよ!」


結局、再び不毛な戦闘を強制されることとなった。



792: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:07 ohwtcJ4vO

一種の膠着状態ともいえるこの戦闘。
しかしそれが終わりを迎える時は意外に早く、そして呆気ないものだった。

ロマネスク達がこの世界に足を踏み入れる際に使った、狭く歪んだ空間。
その場所、つまり丘の上に猛スピードで走る何かが出現する。

この時点で二人は回避運動に徹している為、まだそれには気付かない。
だが次の瞬間、『それ』はそのまま凄まじい速度を以て丘から飛び出した。

( ФωФ)( ・ω・)=つ「!?」

当然この段階で気付く。
そして二人は身構えつつも唖然として、この豪快な様を眺めていた。

言うなれば、『それ』が宙に浮かぶ円盤に突撃していた。



793: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:16 ohwtcJ4vO

円盤に大打撃を与えた『それ』の正体は、下部に四つのタイヤを備えた
つまり極めて小型な車のような(といってもロマネスクとボッコスは知らないが)ものだった。
余程加速による勢いがついていたのか、円盤の突撃を受けた部分は著しく拉げ
内部も多大なダメージを受けたらしく機体の各部分が火花を上げて低い位置まで墜ちてきている。

( ・ω・)=つ「…何かよく解んないけど、今がチャンスっぽいんよ」
( ФωФ)「お、おう!」

我に返った二人は壊れかけた円盤に向き直り疾駆。
もう徹底的に訳が解らないと思いつつも接近と同時に跳躍し、円盤の上に着地する。
そして――

(# ФωФ)「いくぞ!」
( ・ω・)=つ「がってん!」

ロマネスクは全ての腕に力を入れて計四本のトマホークを真下に振り下ろし、ボッコスは右手に持てる力を集約し真下に打撃を叩き込む。

破砕音、少し遅れて耳をつんざくような爆破音。

それまで通ることのなかった攻撃は、しかし脆くなった円盤の防御を打ち破るには十二分に強力であった。

二人がすぐさま退避した直後、円盤は眩い光を周囲に撒き散らしつつ大破した。



794: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:21 ohwtcJ4vO

(# ФωФ)「俺達に!」
( ・ω・)=つ「敵はないんよ!」

自分達は大したことをした訳でもないのに、無駄にカッコつけてみせる二人。
だが、トドメを刺したのもまた二人だ。

( ФωФ)「…ところで、何だありゃ」

ロマネスクが指差した先には、先程円盤に突撃した物体の変わり果てた姿が。

猛スピードで宙に浮かぶ円盤に突っ込んだまでは良いが、所詮それは加速をつけた勢いによるものであり、自力で飛行することは出来なかったらしい。

結果、車は重力に従って墜落し
円盤と同じような運命を辿ることになったらしい。
なったらしいのだが――

( ФωФ)「中に、誰かいる…?」

耳を澄ましてよく聞くと、確かにスクラップと化した車内で何者かが抜け出そうもがいているのが解る。

( ・ω・)=つ「やっぱりよく解んないけど、命の恩人みたいなモンだから助けてやんよ」
( ФωФ)「そうだな」

一応恩は感じていたようである二人は、中にいる人物の救出に向かった。



795: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:28 ohwtcJ4vO

………………………


lw´‐ _‐ノv「…何というか、私的にはあまり他人に言わない言葉を今から口にする」
|  ^o^ |「つまるところ、ありがとうございます」
( ФωФ)「いや…その、何だ、何なんだお前達は」
( ・ω・)=つ「ひとまず、こっちこそサンクスなんよ」

車の残骸から出てきたのは、なんと人間の男と少女だった。
しかしこの二人が、あのタカラの知り合いであることには続かない。

( ФωФ)「とりあえず、お前達は何者だ? 人間だってことは解るが」
|  ^o^ |「私の名はブーム、貴方が仰った通り人間です」
lw´‐ _‐ノv「…シュー。私は別世界から来た女」
( ФωФ)「ちょ……って、別世界ってのはもしかして現世か!?」
|  ^o^ |「そうです。現世からとある手段を用いて『時空間の狭間の世界』といえるこの世界まで来たのです」



796: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:30 ohwtcJ4vO

自分達が今いる場所のことを把握している辺り、それなりに知識を頭に叩き込んできているようだが

( ФωФ)「どうやってこんな所まで来た、そんでもって何が目的だ?」
|  ^o^ |「どうやって来たのかの説明は、長くなるのでまた後程にでも。
       しかしわざわざこんな世界にまで来た目的は――」

僅かに友好的な笑みを浮かべ

|  ^o^ |「――貴方達と同じですよ」

と、言うのである。



797: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:33 ohwtcJ4vO

それはつまり、侵略者達を滅ぼしにやって来たということ。
しかも一見魔力も持っていないような人間が、たった二人で。

( ФωФ)「…何故だ? これは俺達魔界の住人と侵略者共の問題なはずだが。
       現世の人間は今まで通り平凡に暮らしてりゃ―――」
lw´‐ _‐ノv「本当にそうだったら、こんな危険を冒してまでここには来ない」
( ・ω・)=つ「と、いうと?」
lw´‐ _‐ノv「既に私達の世界も被害に遭ってる」
( ФωФ)( ・ω・)=つ「!?」

全く知らなかったことを聞かされ絶句する二人に対し、シューは吐き捨てるように続ける。

lw´‐ _‐ノv「詳しくは言えないけど、少なくともその連中のせいで私の住む村は壊滅した」
|  ^o^ |「最早これは貴方達だけの問題ではなく、私達現世の人間にも関わることなのです」



798: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:40 ohwtcJ4vO

( ФωФ)「…それで?
       そんな長々と喋って、お前等は俺達に何を求めてやがる?」

聞き取れない程小さく乾いた笑い声を発した後、ロマネスクは問う。

|  ^o^ |「簡単なことです。
       侵略者達の撲滅という共通の目的を果たすため、貴方達と手を組みたいと思っています」
( ФωФ)「ほぅ」

彼は躊躇することなく、寧ろその言葉を待っていたかのように

( ФωФ)「…よし解った。こっちは猫の手も借りてえ現状だし
       さっきみたいな特攻やってピンピンしてるような連中なら足手纏いにもならんだろうからな!」

四つある手の内の一つを差し伸べ

( ФωФ)「その話、乗った!」
|  ^o^ |「おや、意外とお人好しなんですね」

対するブームもその手を掌握し

|  ^o^ |「では、これからよろしく」
( ・ω・)=つ「展開早い気がするけど、こっちこそ宜しくなんよ」
lw´‐ _‐ノv「(…でも私達が無傷なのはまるで関係ないような)」



799: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:45 ohwtcJ4vO

改めて互いに自己紹介をした後、そして四人は自分達が行くべき道を見る。

( ФωФ)「さて、そうと決まれば何時までもぼさっとしている訳にはいかねえな」
|  ^o^ |「あの途方もなく巨大な建物……ですか。
       さっきはどうにか皆無事に妙な兵器を壊せましたが、私達人間にとって早くも厳しそうですね」
( ФωФ)「大丈夫だよ。お前等だって何の覚悟や準備もせずに突っ込んできた訳じゃあるまい」
lw´‐ _‐ノv「まあね」



800: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:56 ohwtcJ4vO

( ФωФ)「戦ってモンはな、死と隣り合わせだってことをそれなりに覚悟しなくちゃいけねえ。
       だが死ぬなんて思ったら駄目だ。『絶対に生き残る』って意志があればなるようになるモンさ」
|  ^o^ |「軍人らしい方ですね」

思わず感嘆の溜め息をつくブーム。
これから戦いに向かう者にとって、これ程心強い言葉はあまりないだろう。

lw´‐ _‐ノv「でも、こういうこと言う奴に限って真っ先に犠牲者になる」
(# ФωФ)「んだとてめぇ!」
( ・ω・)=つ「落ち着くんよ、きっと油断するなってことなんよ」
lw´‐ _‐ノv「…イエス」



801: ◆wAHFcbB0FI :03/30(日) 18:59 ohwtcJ4vO

それから暫しの短い休息の後。
新たな戦力を加え、今度こそ本拠地に向けて走り出す四人。

こんな忙しい時に、何だってそんな暢気にやっているのだ、と誰もが思うだろう。

ロマネスク曰く「先に行っている連中より遅れていった方が、敵を攪乱出来る」らしいが。



しかしいずれにせよそんな彼等は、当たり前と言うべきか―――とてもじゃないが最終決戦に臨む者達には見えなかった。



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