( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

806: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 20:46 cfXasr7LO

第二十一話 『分岐点』


[゚д゚]「おっ、あいつらなかなかやるなぁ」

飛行円盤が大破したのと同時に反応を示さなくなったリモコンとモニターを見て、デフラグは楽しげに、しかしほっとしたように呟く。
ここで早くも犠牲者が出てしまうことを多少気にしていたものの、要らぬ心配のようだった。

うんうん、と一人で勝手に頷きながら、彼は手元にある受話器のような形状の通信機を取り

[゚д゚]「…こちらデフラグ、どうぞー」
「…言わなくたって解る。僕だ」

すぐに返ってきた声はまたんきのものである。



807: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 20:48 cfXasr7LO

「こっちのモニターで結果は既に解ってる。が、一体何が起こったんだ?」
[゚д゚]「まあ、ちょっとしたイレギュラーですな。
    何かがいきなり突っ込んできてどっかーんティウンティウンティウンみたいな」
「正直に言おう、意味が解らない」

まあいいや、と彼は続け

「奴等が既に各々の通路まで来てやがるからな。
 お前も他の奴と同じように戦闘準備をしろ」
[゚д゚]「えー…俺もですかい?」
「バカ、当たり前だ。お前がやらないでどうするんだよ」



808: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 20:50 cfXasr7LO

躊躇うデフラグには構わず、一方的な我が儘……ではなく命令を押し付けてくるまたんき。
当然それに反することなど出来ないので――

[゚д゚]「…わかりやした。なるようになr…いや、必ずや撃退しますぜぃ」
「それでよし。盛大に迎えてやれ」

そのまま通話は終了。
通信を切った後、彼はまたもや溜め息をつき

[゚д゚]「一難去ってまた一難、と。平和的に事を済ませるにゃどうすりゃ良いか…大変だなぁ」

と、再び何かしらブツブツと言いつつ次の行動を開始した。



809: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 20:52 cfXasr7LO

( ^Д^)「うおーい、ここはどこだー?」

どことも解らぬ場所で、タカラは気の抜けた声を周囲にバラまいていた。

ここは薄暗く、地下通路のような空間。
所々にある電灯らしき明かりのお陰で身の回りの視界程度ならば確保できるものの
先には深い闇が広がっており、人間よりは暗闇でも視界を確保できるタカラの目をもってしても確認出来ない。

( ^Д^)「他の奴はどこにいるんだぁ?」
「何を言っている、ここだ」
( ^Д^)「その声は、軍師さんか?」

声のした方を向くと、当然見覚えのある女性の姿。

爪゚ー゚)「全く、お前には『冷静に状況を把握する』という選択肢が無いのか?」
( ^Д^)「仕方ねえよ、俺馬鹿だし」

つーの野郎よりはマシだけどな、と付け加えるも、残念ながらじぃはそれについて反応を示すことをしなかった。



810: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 20:55 cfXasr7LO

( ^Д^)「そういや、他の連中はいないのか?」
爪゚ー゚)「ああ、現在ここにいるのはお前と私だけらしい」
( ^Д^)「何やってんだ……で、ここは一体どこなんですかね」
爪゚ー゚)「私にも解らない。
     だが、どうやら建物内のどこか別の場所に飛ばされたらしいぞ」

あの奇妙なカプセルに足を踏み入れた次の瞬間、この暗闇ばかりの空間に放り出されていた。
ただそれだけのことで別に複雑な点などはないのだが、しかし不思議極まりない話だ。

爪゚ー゚)「周囲に敵は見当たらない。
     もしかしたら他の者達は既に先の地点にいるのかもしれないな…先を急ごう」
( ^Д^)「へーい」



811: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:02 cfXasr7LO

そこでは『熱気』が場を支配していた。

タカラとじぃがいる暗闇の通路とは全く別の通路。
どこをどう見渡しても暗闇は一切なく、代わりに通路一帯を通じての、異様なまでの暑さはなかなかのものだ。

从;゚∀从「何なんだよ…このクソ暑さは」

そんな空間に放り出された高岡は、ただ一人歩いていた。
特別厚着をしている訳ではないが、何時もの白いコートは相変わらず身に纏ったまま。
が、そこは彼女の意地というかプライドというものなのか、暑さに屈せず頑張っている。

从 ゚∀从「(大方俺の予想は正しかったが…実に変なとこに来ちまったな)」

流石に長時間ここにいると暑さでやられてしまいそうなので、彼女は先を急ぐ。



812: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:08 cfXasr7LO

从 ゚∀从「(…もう一々独り言吐くのもだりぃな)」

高温の中で歩きながら、しかし彼女は冷静に現状を受け入れる。

敵の姿が見当たらないとはいえ、味方の姿も一切見られない。
そして仮に味方が先に進んでいるのであれば、それを阻むであろう機械兵士達の残骸さえも一切ないのである。

从 ゚∀从「(…先に行ったとも考えづらい。あいつらはこの通路にはいないし、敵も出ねえだろうな。
     別の部屋に飛ばされたと思って正解かもな)」

さらには退路も分岐点もなければ、これからやることは一つ。

从 ゚∀从「(こんなところに長居は無用。とっとと行かせてもらおう!)」

そう思うと同時、彼女は走り出す。
後先を考えない全力ダッシュだが、それを阻む者はいない。
いや、それを承知した上での行動であった。

何の障害もない一本道を疾走する時の気分はなかなか爽快である。



813: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:13 cfXasr7LO

しかし、それもある地点でストップ。

从 ゚∀从「…何だ、この意味ありげな扉は」

高岡の前には、文字通り意味ありげな赤い扉が一つ。
燃え盛る炎のような彩りが施されたそれは、どう考えても奥に何かが待ち受けていることを示唆している。
が、しかし

从 ゚∀从「そこで引き返したら何も始まらねえし、そもそも俺は何しに来たんですかぁ? って事になるわな」

たとえ魔力を扱う点を除けば普通の人間の女性であっても、彼女は冒険家ジョルジュの曾孫である高岡様。
ここまで来たからには簡単に退くことなどするはずもなく

从 ゚∀从「失礼するぜ、敵さんよぉ!」

――と、大胆にも喧嘩を売るかのように勢いよく扉を蹴り開けたのである。



814: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:14 cfXasr7LO

ミ,,゚Д゚彡「おわー、何か変なトコに来たな」
(*゚A゚)「この建物そのものが、既に変とちゃいますか?」
(*゚∀゚)「一々そんなこと言ってたら、きりがないよ」

他の者達のことなど気にも留めず、あれこれと喋っている。
半ば遠足気分で真面目の『ま』の字も脳内にないような二人と一匹は、鉄の床と壁と天井で構成された通路にいた。
そして例によって敵の姿はない。

(*゚∀゚)「…で、ここは一体どこなんだろうねぇ」
(*゚A゚)「いや、ですからそれを今…」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、冗談だよ冗談!」
(*゚A゚)「(冗談て…)」



815: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:16 cfXasr7LO

ミ,,゚Д゚彡「でも、これから何すりゃ良いんだろな」
(*゚∀゚)「とりあえず進め。敵が出てきたら、殺れ。ただそれだけさ」
ミ,,゚Д゚彡「…オイラでも協力出来るのか?」
(*゚∀゚)「何言ってんのさ、当然でしょ?」

たとえ過去の記憶が全て飛んでいようが、フッサールの魔獣としての力が消え失せた訳ではない。
本人はまだ自身が持つ本来の力に気付いていないものの、その力の全てを再び我がモノにした日には事実上最高の切り札でありながら、味方でさえも畏怖の念を持つ程の危険な存在と化すだろう。
もっとも、それはそれでつーが望んでいることなのかもしれないが。

(*゚A゚)「まあ何にせよタカラはんが言うてた通り、体当たりで岩砕くぐらいは余裕で出来まっせ。
    敵さんが襲うてきたらそれなりに暴れてや」
ミ,,゚Д゚彡「おう、解ったぞ」



816: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:19 cfXasr7LO

そのようなことをだらだらと話しながら先へと進む内に、彼等は通路の終点に辿り着く。
そこにあるのは、やはり灰色がかった鉄の扉。

(*゚∀゚)「なーに? これだけ?」
(*゚A゚)「いや流石にそれはないかと…」
(*゚∀゚)「じゃ、これは何なのさ」
(*゚A゚)「さあ…奥に何かおるのでは」

そう言った途端、のーはつーの精神が臨戦モードに入ったことを悟る。

(*゚∀゚)「んじゃ、ようやく本番ってことだね!」
(*゚A゚)「多分そうなりますが、あまり変なことしないで下さいよ?」
(*゚∀゚)「平気平気、最初だしウォームアップのつもりでやるから。
     という事でフサ、頑張ろうね!」
ミ,,゚Д゚彡「お、おー!」
(*゚A゚)「(ウォームアップて……大丈夫かなぁ)」

不安を残しつつも、のーはとりあえず目前の屈強な扉を『拳で』叩き壊した。



817: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:28 cfXasr7LO

(*゚∀゚)「おぉ、これは凄い」
ミ,,゚Д゚彡「でっけえトコに、でっけえ奴がいるな」

扉の先には倉庫のような、薄暗く殺風景な空間が広がっていた。
そして、そこには全長五メートル程の大型兵器が行く手を阻むように配置されている。

さらにそれは人の姿こそしているが、しかしその機体は一見全てが継ぎ接ぎの粗悪品。
起動していることを示す、頭部らしき部分にある赤いモノアイが不気味に光っている点を除けばスクラップに見えても過言ではない程だ。

無数の鉄屑を寄せ集めて造られた鉄の巨人、と称すのが最も適切かもしれない。



818: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:34 cfXasr7LO

(*゚A゚)「このデカいのを、今から三人で叩く訳やなぁ…」

ばつが悪そうに呟きながらも、彼女は横にいるつーに目を遣る。
当の本人はというと、既に大鎌・ロストを構えており

(*゚∀゚)「こいつはなかなか狩り甲斐がある!
     一人でやりたいところだけど、先も長いし三人がかりで潰すよ。それなら余裕だよね?」
(*゚A゚)「やっぱりそう考えますか…」

自分より遥かに巨大な相手にも、彼女は時にはたった一人で勇猛果敢に立ち向かう。
それだけの実力を持っている為に、つーはほぼ常に自信に満ち溢れた姿勢を見せることが出来る。

そしてそれを十分承知しているからこそ、後輩であるのーはつーを信頼出来、それでいて向こう見ずな彼女を案ずるのだ。

ミ,,゚Д゚彡「なぁ、オイラでも平気かな?」
(*゚A゚)「きっと、大丈夫や。だってこっち三人やし」

続いて残りの二人も言葉を交わしながら戦闘態勢をとる。
のーは瞬時に姿を現した専用の鉄槌を構え、フッサールはその四肢でがっちりと床を踏みしめ身構える。

鉄屑の巨人と三人が衝突したのは、その直後。



819: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:38 cfXasr7LO

爪゚ー゚)「……」

暗闇の通路の終点にて、じぃは無言のままで考えを巡らせている。
目の前には長年使われていないとしか思えぬ程の、朽ち果てた扉がある。
後方ではタカラが退屈そうにしているが、流石に今ばかりは空気を読んでいるらしく
馬鹿な発言をすることもなく大人しくなっていた。


それよりも気になるのは他の連中と、何故このように戦力が分かれてしまったかである。



820: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:44 cfXasr7LO

爪゚ー゚)「…タカラ」

ふと、彼女はタカラの方へと振り返る。

( ^Д^)「ん、どうかした?」
爪゚ー゚)「唐突だが、今のこの状況をお前はどう思っている?」
( ^Д^)「どう思ってるかって…暗い通路に俺と軍師さんがいて――」
爪゚ー゚)「そういうことではない」

半ば呆れ気味に否定し

爪゚ー゚)「…おかしいとは思わぬか? 先程までは皆、確かに同じ道を通ってきた。
     それなのにあの装置に足を入れ、私とお前が暗闇の通路に来た時には他の者達はいなかった」
( ^Д^)「それが、どうかした?」
爪゚ー゚)「いや…何故わざわざこんな面倒なことをするのか、と思ってな。
     今のような形で我々の戦力を分割したところに、予め残しておいた多勢をぶつけてきそうな気もするが、どうか?」



821: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:46 cfXasr7LO

( ^Д^)「考え過ぎじゃねえかな…俺には戦略とか策略とかそういうのはよく解んねえけど。
     それよりも気になる事が、俺にはあるんだけどな」
爪゚ー゚)「…何だ?」
( ^Д^)「こっちの世界に来てからのことだよ。外にいた敵の群は何故か勝手にくたばっちまったし、中に入ってからは今のところ鼠一匹出てこねえ。
     幾ら何でも守りが薄すぎると思う。これじゃ『攻めて下さい』って言ってるようなモンだ」

それ故

( ^Д^)「理由というか真意なんて知らねえが、もしかしたら敵の方は本当に俺達が攻めてくることを臨んでるのかも…
     変な言い方すれば、悪い意味で『招待』されてる気がするのは俺だけか?」

そして、或いは単に嘗められてるだけかもな、とタカラは続ける。



822: ◆wAHFcbB0FI :04/20(日) 21:53 cfXasr7LO

それを聞いたじぃは、再度考える素振りを見せた後に小さく頷く。

爪゚ー゚)「成る程…お前にしては良い推測かもしれない」
( ^Д^)「おっ、俺も遂に馬鹿卒業かな」
爪゚ー゚)「だがな、招待という言い回しはどうかと思うぞ。
     何せ我々はそれらしき待遇を全くされていない訳であって…」
(;^Д^)「ちょ、そういう問題かよ…」
爪゚ー゚)「冗談だ。少し緊張を解すべきと思ってな」

そう言いつつ扉を指差し

爪゚ー゚)「この先から何者かの気配がする。確実に敵と考えていいだろう」
( ^Д^)「っ…マジか!」
爪゚ー゚)「この期に及んでつまらない嘘などつかぬ。
     覚悟が出来たら突入するぞ」
( ^Д^)「覚悟なら、もう出来た!」
爪;゚ー゚)「…そうか」

やはり何時もと全く変わらないな、とじぃは内心呆れるが、しかし同時に安心も出来た。
如何なる状況下に置かれようが常に同じペースを保つことが出来る者は、戦闘でも自分の力を発揮しきれると思うが故だった。

爪゚ー゚)「では…行くか」
( ^Д^)「がってん!」

そうして、二人は扉を押し開いた。



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