( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

861: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:37 WkAaYwLlO

第二十三話 『命なき番人』


要塞内部、薄暗く殺風景な空間。

(*゚∀゚)「さて、どうしたもんかねぇ…」

大鎌・ロストを構えた姿勢で、つーは思案する。
その横には同じくのーとフッサールが並んでいた。

(*゚A゚)「どないしますかね」
ミ,,゚Д゚彡「……」

三人の先に立ちはだかっているのは、あの鉄屑を寄せ集めて製造されたような巨人。

「―――」

頭部の赤いモノアイを不気味に光らせ、すぐにでも次の攻撃に移ってきそうである。



862: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:40 WkAaYwLlO

だが、その攻撃自体は腕による殴打や脚部による踏みつけといった原始的なものばかり。
機体全身からは対霊体用としての魔力を感じるものの、三人がかりで攻めれば容易く破壊出来る程度の相手であるはずなのだ。

それなのに、つー達は不思議と攻め倦ねていた。
――いや、攻めることまでは出来るのだが

(*゚A゚)「あの復活すんの、何とか出来へんのかなぁ…」
(*゚∀゚)「む〜…」

破壊出来なかった。
どういう仕掛けになっているのかは解らぬが、機体の一部を壊してもたちまち形状を整え『再生』してしまうのだ。
腕を砕いても数秒経過すれば破砕部分へ鉄屑が集結して再生され、脚部を切断しても自然と元の形状を取り戻し
そして胴体を引き裂いても問題なく復活してしまう。

厳密には、『完全に』破壊することが出来ずにいた。



863: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:42 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「んじゃ、ここで問題。こういう時はどうやって戦えば良いかな?」

不意に、つーが何やら妙なことを二人に問う。
だが当然のことながら、それは問い掛け方としてはあまりにも場違い過ぎるものだ。

(*゚A゚)「うーん、とりあえず殴る!」
ミ,,゚Д゚彡「オイラ、よく解んねえぞ!」

そしてその妙な問い掛けに対して素直に応じる二人の返答もまた、所謂どうしようもないものであった。

(*゚∀゚)「…ま、アンタ達のレベルじゃその程度の答えだろうと思ったよ」
(*゚A゚)「今僅かに傷つきましたが」
(*゚∀゚)「アヒャヒャ、流石に言い過ぎた。多分25%ぐらいは正解だよ」
(*゚A゚)「多分て何ですか多分て……あと25%ってのも」

疑問に満ちたのーの問い掛けは残念ながら無視されることになる。



864: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:45 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「んで……私の考えだとね、さっきみたく中途半端に攻めないで再生する暇を与えなければ良いと思うのさ!」
ミ,,゚Д゚彡「おーっ、よく解んないけど何かすげーっ!」

別に凄いことでもないのに、フッサールは妙に感心の意を表している。

(*゚A゚)「…猫さんがあんなこと言うてますが、つまるところ三人で一斉に叩けばええ訳ですね」
(*゚∀゚)「うん、だからそういうことを今言った訳だけど…それだけ解ってりゃいいよ」

何だそりゃ、とのーが内心で思ったのは言うまでもない。
しかし、何がどうしてそんな単純な攻め方を思いつくことに、これほどの時間を要したのだろうか。



865: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:47 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「ま、とにかくやってみるしかないっしょ」
(*゚A゚)「どうやって始めますか?」
(*゚∀゚)「私が合図する。いち、にの、さん! …でいくよ」

そう言ってフッサールにも同じことを伝えるべくその方を向くと、在るはずのフッサールの姿がない。
そして直後に別の方面から金属音が鳴り響いた。

(*゚A゚)「…あ、先輩。猫さんが勝手に突撃しとります」
(;*゚∀゚)「えー!?」

流石につーも慌てて音がした方を見ると――

ミ,,゚Д゚彡「ガルルッ!」
「―――」

…そこには、フッサールが自分の数十倍の重量を持った鉄屑の巨人と格闘しているという光景があった。
獣特有の四肢から生み出される敏捷な動きで相手を翻弄し、隙を見て爪による引き裂きを繰り出している。

(*゚A゚)「…多分、さっきの『いちにのさん』が本番って風に思うたようやなぁ」
(*゚∀゚)「今時あるのか、そんな展開…」



866: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:49 WkAaYwLlO

と、その時。
フッサールの鋭く硬い爪が、遂に巨人の右腕を破壊した。

ミ,,゚Д゚彡「お、やったぞー!」
(*゚∀゚)「いやいやいや、ダメっしょ。片手しか壊せてないし」
ミ,,゚Д゚彡「え、ダメなの?」
(*゚∀゚)「さっきまでの見てて解んなかったのかい?」
(*゚A゚)「……」

そんなことを言っている間に、巨人は散らばった鉄屑を破砕部分へと寄せ集め再生してしまう。
それに気付いた三人は

(*゚∀゚)「…あ、ほら。見ての通りだよ」
ミ,,゚Д゚彡「あ、そうだったっけな…へへ、ごめん」
(*゚∀゚)「ねぇ、これじゃつまらないコントやってるみたいだよ!」
(*゚A゚)「そう言う前にお二人方、避ける準備を!」
(*゚∀゚)ミ,,゚Д゚彡「!」

言われて、二人は即座にその場から退避。
その直後、彼等がいた位置に重い鉄の拳が落ちる。
空気が震えるほどの破壊的な力ではあるが、しかし幸いそれは標的、つまりつー達を捉えることはなかった。



867: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:52 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「ふぅ…そりゃ、いい加減怒るよねぇ」

幾ら何でも敵を目前にしておきながら、何時までも喋っていれば痺れを切らして襲ってくるのは当然だ。

(*゚A゚)「…今度こそ、どうします? 猫さんに難しいこと強要するのは厳しそうでっせ」
(*゚∀゚)「仕方ないねぇ。んじゃ、のーは目を狙え!」
(*゚A゚)「目…?」

即答されたこともあって疑問の声を漏らすのーに対し、つーは自信満々に続ける。

(*゚∀゚)「ああいう一つしか目がない奴って、大体目が弱点じゃん。それに、万一目が弱点じゃなくたって視界を奪っちゃえば勝ったも同然なのさ!」



868: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:53 WkAaYwLlO

(*゚A゚)「成る程…何となくいけそうな気が、しないこともあらへん」

たとえ普段何を考えているのか解らないような者の指示であっても、魔界軍師のように指揮する者がいない以上、このような自信に満ちた発言は頼れるものである………はずなのだ。

(*゚∀゚)「じゃ、私とフサで状況作るから、アンタはクラッシュで目をぶっ叩いておくれよ!」
(*゚A゚)「イェッサーでっせ!」

再び鉄槌・クラッシュを構え、のーは巨人の方へと向き直る。

ミ,,゚Д゚彡「そんで、オイラは何をすれば…」
(*゚∀゚)「うん、アンタはもう手当たり次第にやっちゃって! 私もそうするから。
     自由奔放、やっぱ私達にはそれが一番合ってるよ!」
ミ,,゚Д゚彡「解ったぞ!」

のーを残して、二人は鉄屑の巨人と相対する。



869: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 20:57 WkAaYwLlO

ミ,,゚Д゚彡「いっくぞー!」

威勢の良い声と共にいち早く攻撃を叩き込むのはフッサールだ。
流石は嘗て『魔獣』と謳われた存在であり、力を殆ど失った今でも戦闘は十二分にこなせる程だ。

まるで予めどこに攻撃が落ちるのかを把握しているような動作で、巨人が振り回す鉄腕には掠りもせず
且つ鋼鉄をも凌駕する硬度を備えた爪で確実に攻撃を入れていく。

再び巨人の右腕を粉砕するために、それ程時間を要することはなかった。



870: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:09 WkAaYwLlO

ミ,,゚Д゚彡「一つ壊したぞ!」
(*゚∀゚)「よーし、私のターン!」

続いてつーの攻撃。
手にした大鎌・ロストを高速で回転させながら、危険をも顧みず巨人の懐へと斬りかかる。

(*゚∀゚)「アヒャヒャ、それそれー!」
「―――」

何時もと変わらぬ戦意を剥き出しにした攻撃だが、それだけの効果はある。
その刃はたった一撃で巨人の胴体を深々と切り裂き、さらにつーは頭上から迫っていた左足も見逃さない。

(*゚∀゚)「おっと!」

身を弾くようにしてその場から離れ、直後彼女がいた位置に鉄の左足が落とされる。
その隙だらけの足につーは狙いを定め、ロストで薙ぐようにして切り払った。

片腕と片足を破壊され、さらには胴体に大きな一撃を受けていることで巨人は完全にバランスを崩しており――

(*゚∀゚)「アヒャ♪」

つーが一蹴りすると、それはいとも簡単に倒れた。



872: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:15 WkAaYwLlO

(*゚A゚)「さぁ、自分がカッコええとこ見せる番や!」

そこへ待ち構えていたのーが疾駆を開始する。
そのまま跳躍しつつクラッシュを大きく振りかぶり、狙うは巨人の赤い目――

(*゚A゚)「…何や、まだ降参せえへんの?」
「―――」

狙った部分への攻撃は叶わなかった。
つーの指示通り目を狙うはずだったのーの力任せの一撃は、残っている左腕で阻まれていた。
だが、一度に数ヶ所もの部分を破壊された故か、巨人の再生能力は全く追いついておらず、さらには今の一撃で左腕までもが粉砕されている状態だ。



873: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:18 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「ほら、今がチャンスだよ。そのままもう一発やっちゃえ!」
(*゚A゚)「よーし、も一度自分のターン!」

つーに指示された通り彼女は再び真上に飛び、先程以上に力を込めて再度クラッシュを振り下ろす。
今度こそ、攻撃を阻むモノは何一つとしてなく―――

(*゚A゚)「…手応え、アリや」

破砕音と同時、頭部に力の塊が突き刺さったのを確認してから、のーは満足気に呟く。
彼女がその場から身を退いた次の瞬間、鉄屑の巨人は潰れた頭部から火花と電子音を撒き散らし、そして爆発。
巨人の姿を成していた無数の鉄屑は弾けるように周囲へと散らばり、二度と再生することはなかった。



875: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:22 WkAaYwLlO

(*゚∀゚)「よし、とりあえずラウンド1クリアだよ! 偉い偉い」
(*゚A゚)「ども、お疲れした〜」
ミ,,゚Д゚彡「1があるってことは……えーと、何だっけ?」
(*゚∀゚)「2以降があるってことさ!」

当然といえば当然だが、いまいち数字を理解出来ていないフッサール。

ミ,,゚Д゚彡「でも、オイラ腹が減ったぞ。飯にしよう」
(*゚A゚)「こんな時に何言うてんの!」
(*゚∀゚)「そうだぞ、早く先に進んで次の戦いを始めたいから―――」
「いんや、悪いが今すぐラウンド2を始めてもらうぜぃ」
(*゚∀゚)(*゚A゚)ミ,,゚Д゚彡「!」

またもやgdgdな展開になりかけたその時、聞き覚えのある気さくな声が三人の耳に届いた。
巨人がいた位置に再び目を遣ると――

[゚д゚]「よっ」

何時どこから現れたのかは解らぬが、あの全身継ぎ接ぎのフレンドリーな男―――デフラグが何時の間にか居座っていた。
その傍らには、よく解らないが戦闘機械と思われるモノが。



877: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:25 WkAaYwLlO

[゚д゚]「しっかしまあ、やるじゃねえか。俺の『再生型鉄屑巨人』の核部分をぶっ壊すたぁ、お前さん達なかなか賢いねぇ」
(*゚∀゚)「?」
[゚д゚]「…あー解った解った、説明不足の俺が悪かったよもう」

単語一つ一つを理解出来ていないつー達を見て、デフラグはさも呆れ気味に続ける。

[゚д゚]「要は頭ンとこに一種の強力な磁石みてえなモンを設置してあって、そいつが原動力兼再生担当だった訳よ。
    んでもって、そいつがカメラアイごとぶっ壊されたから巨人も崩れた訳。OK?」
(*゚∀゚)(*゚A゚)ミ,,゚Д゚彡「全然解んないでーす」



879: ◆wAHFcbB0FI :06/17(火) 21:28 WkAaYwLlO

不覚にも苦笑を漏らしたデフラグであったが、しかしその表情はすぐに消える。

[゚д゚]「まーそんなことはどうだって良い。じゃ、今度はこいつと遊んで貰おうか。
    悪いが前に言った通り、今度こそお前さん達は俺の敵だ」

言い終えるなり、デフラグはそばに連れていた戦闘機械に飛び乗る。
そして彼が電源を入れると同時、起動を意味する小気味良いモーター音が徐々に響き始めた。

[゚д゚]「さぁ、俺が俺のために開発したこいつに勝てるかな?」
(*゚∀゚)「休みなしかい! これが俗に言う『勝ち抜きボスバトル』みたいなやつだね!」
(*゚A゚)「(何時どこでそんな言葉習ったんやろ…でも、現世以外考えられへんよなぁ)」
ミ,,゚Д゚彡「腹減ったぞー」

口調こそ変わりないものの、どうやら奴は今度こそ本当に敵意を示しているらしかった。



884: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 22:57 l/UmxxYBO

灰色を基調としたそのマシンは、見ての通りデフラグが自ら搭乗して操作するタイプのものであった。
がっしりとした鉄足に、人間のものより数倍は太い機械腕。
大きさは先程破壊した鉄屑巨人より幾らか小型だが、やはりその機体は全身に魔力を纏っており
さらに各部分には幾つかの武器を搭載しているらしく、鉄屑巨人よりも手強い相手であると戦う前から悟ることが出来た。



885: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 22:59 l/UmxxYBO

[゚д゚]「んじゃ、始め!」

途端、エンジン音を上げつつデフラグの乗るマシンが突進してくる。
どうやら足にはローラーか何かが備わっているらしく、歩行という動作なしでの高速移動を可能としている。

(*゚∀゚)「その程度、どうってことないね!」

つーの声を合図に、三人は突撃を回避。
直後、背後で急ブレーキの音が聞こえたのを確認する。

(*゚∀゚)「こうなりゃもう何時も通りの作戦! 皆、好き勝手に戦え!」
(*゚A゚)「先輩、それ作戦じゃなく単なる暴勇や!」
(*゚∀゚)「その暴勇こそが、私達にとっちゃ極上のウェポンさ! 何か問題ある?」
(*゚A゚)「…問題あらへんです」



886: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:02 l/UmxxYBO

こうなれば、ただひたすらに攻めるのみ。
つーはロストを構え直すと、一瞬でその姿を消した。

[゚д゚]「お?」
(*゚∀゚)「ほいさ!」

次の瞬間にデフラグが搭乗するマシンのそばに現れ、続けて薙ぐような斬撃を放つが
しかしそれはマシンに一筋の傷を入れるだけに留まる。

[゚д゚]「やるねぇ。こいつに傷を刻むたぁ、その鎌相当硬い金属で出来てるな」

意外そうに呟き、しかしそれ以上にデフラグは楽しげに口元を歪めた。
どうやら、奴は自分が製作した兵器に相当な自信を持っているらしいが―――

(*゚∀゚)「…でも、そんなに余裕持ってて本当に大丈夫なのかなぁ?」

彼女がそう言うと同時、デフラグの後方からのーが飛び出した。



887: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:05 l/UmxxYBO

(*゚A゚)「おりゃッ!」

彼女はそのまま勢いに身を任せてクラッシュを振り下ろすが、それは瞬時にハンマー状と化したマシンの右腕によって阻まれる。

[゚д゚]「危ねぇなあ…不意打ちは良くねえよ」
(*゚A゚)「…自分自身で戦ってからモノを言うんやな」

防がれることなど意に介さず、再度打撃を繰り出し破砕を試みる。
が、強固な機械腕が相手ではそれも叶わない。

いくらのーが怪力の持ち主であっても、そもそも彼女が扱うクラッシュの通常時の重量ではマシンの腕を破壊するには至らなかった。



888: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:07 l/UmxxYBO

このような場合、相手の防御を打ち破るために出す答えは簡単。
何らかの手段で、その耐久力を上回る破壊力を生み出せば良い。
そしてのーが扱う鉄槌・クラッシュならば、それを実行するのはさらに簡単だ。

(*゚A゚)「頼むで…クラッシュ!」

彼女が念じると同時、クラッシュは茶色の光と共に文字通り『巨大化』した。
通常の三倍程のサイズと重量を得たクラッシュを、のーはまだ余裕をもって軽々と振りかぶる。

[゚д゚]「!?」

これにはデフラグも、様々な意味で驚きを隠さずにはいられなかった。
彼の表情を目にしたのーは一瞬戸惑うものの、しかしすぐに気を取り直してクラッシュを振り下ろす。

[゚д゚]「こんちくしょう!」

それでも、デフラグは敢えて回避という手段を選ばずマシンの機械腕二本を用いて防御。

――流石に強化版クラッシュの一撃は防ぎきれず、マシンの両腕が破砕音と共に大破するが、それだけで済むのであればまだ軽い方だ。
のーの扱う鉄槌が『クラッシュ』というモノであることを知った以上、デフラグは距離をとっても無意味であることをも同時に悟っていた。



889: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:12 l/UmxxYBO

[゚д゚]「お前さん、何だってそんなモン持ってんだよ…」
(*゚A゚)「何だってええやろ。こいつは自分っちゅう存在が生まれた時から持ってた大事なモンや」
[゚д゚]「そうか。そうだろうな」

何気なく口にしたその言葉と同時、のーを見るデフラグの目つきが僅かに変わる。

[゚д゚]「お前さんが、ドクターや団長殿が言ってた『問題児』だな?
    だからどうこうって訳じゃねえけど」
(*゚A゚)「そっち側の方々に何と言われようが、自分は自分や。
    自分はどこまでいってもつー先輩の後輩や!」



890: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:15 l/UmxxYBO

戦闘の最中に言葉を交わす二人だが、しかしその状況を断ち切る者も当然いる。

(*゚∀゚)「ストップ。何さっきから勝手に二人だけで事進めちゃってるのさ。
     私達だって戦ってるのに、蚊帳の外とかナシだよ!」
ミ,,゚Д゚彡「そだぞ、オイラだって流石につまんないぞ」

のーの左右に、それぞれつーとフッサールが並ぶ。

[゚д゚]「…解った、もう何も言わねえ」

デフラグは今にも攻撃を再開しそうな二人を見て宥めるように言葉を吐き

[゚д゚]「もう誰が何だとか、そういうのはこの際一切ナシだ。
    先に行きたきゃお前さん達三人で俺を倒してみろ、話はそれからだ」



891: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:20 l/UmxxYBO

(*゚∀゚)「だーから、最初っからそうするって言ってるでしょ!」

言うなり、つーは翼を展開させて飛翔。
一応ここは屋内ではあるものの、幸い飛び回るには十分な広さがある。
そうして、彼女は両腕をクロスさせると

(*゚∀゚)「よーし、久々の出番! 全部あの『キカイ』とかいうのに刺され!」

彼女が両手から生み出したナイフ状の刃―――魔光刃をばらまくように放つ。
それらは一糸乱れぬ動きで、命令通りデフラグが乗るマシンに迫るが―――



892: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:21 l/UmxxYBO

[゚д゚]「そんな、小手先の攻撃は無駄だぜぃ」

実際、言葉に偽りはなかった。
彼がマシンに操作を施すと同時に、大破した両腕に代わる新たな機械腕がマシンのボディから出現。

それを用いて魔光刃を払ったかと思うと、デフラグはすぐに次の操作へと移る。

[゚д゚]「よーし、ちょっとだけ秘密装備見せちゃうぜぃ」

コックピットにある幾らかのボタンを適当に押すと同時に事は起こった。
ガシュ、という音と共にマシンの背部からブースターが現れ、それは早速機能し始める。
――つまり、火を噴くブースターの勢いは重装備を施された機体をも宙に浮かび上がらせ、さらに飛行さえも可能としたのだ。



893: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:33 l/UmxxYBO

(*゚∀゚)「何だい何だい! 飛んで来ちゃってるじゃないか!」
[゚д゚]「お前さんにだけ空飛ばれちゃ厄介なんだよなぁ。だからこいつも飛ばすぜぃ!」

たった数秒でつーと同じ高さまで到達したデフラグのマシンは、そのままつー目掛けて殴打を繰り出す。

(*゚∀゚)「遅いよっ!」

つーは回避するも、相手はその重量と裏腹に素早く次の攻撃を繰り出してくる。

それでも彼女は、一発一発が致命傷となる重く暴力的な攻撃を回避していく。
そして時には避けきれないとも感じ、ロストを用いてガードも試みるが、しかし重量の差があり過ぎる。

(;*゚∀゚)「うわっ、危なっ!?」

耐えきれずに押し負けることさえ出てきた。

[゚д゚]「さあ、どうする?」
(*゚∀゚)「…でもさ、アンタそれよりも自分の心配したら?」
[゚д゚]「あん?」

下を見る。
そこにはのーもまた翼を展開させて飛翔し、この空中戦に介入しようとしている様があった。



894: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:35 l/UmxxYBO

だが

[゚д゚]「そうは問屋が降ろさねえぜぃ!」

マシンの片腕が『レーザー砲』とでも言うべき巨大な銃器へと一瞬で変形し、その銃先は即座に向かってくるのーへしっかり向けられた。

(;*゚A゚)「ッ!? もしかして自分、狙われとる?」
[゚д゚]「御名答。そんでもって御退場を命じるぜぃ!」

言葉と共に電気の束が容赦なく放たれる。
一瞬ともいえる速度で、それはのーに牙を剥く。

(*゚A゚)「…ッ!」

――が、のーは敢えて回避せず、クラッシュ全体を盾にするようにして受け止める。
電撃の速度から考えて、避けるよりもなんとか受け止める方が被害を抑えられると判断したのだろう。
現に多少のダメージがあるとはいえ、彼女は一応ガードに成功している。



895: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:41 l/UmxxYBO

それに―――

(*゚A゚)「どうせならその力、逆に利用した方が省エネにもなるしな…」

そう呟くのーのクラッシュは、何時も通りの茶色ではなく、表現し辛く不気味ともいえる輝きを放っている。
対シラネーヨ戦でも使用した、本人曰く『ミラースイング』なる攻撃の反射を試みるつもりだ。
だが

[゚д゚]「良いのか? 俺の予想だと、お前さんの味方に当たりそうだが」

現在デフラグの近くにはつーがいる。
このままでは、彼女も巻き込んでしまう可能性があった。

しかしのーは

(*゚A゚)「誰もそっちなんて狙うとらん。こうするんや!」

電撃を受け止めているクラッシュを、抵抗に逆らい強引に真下へと振り下ろす。
矛先を変更された電撃の先にデフラグの姿はなく、それは完全に狙いを外していると思われた。

だが、事は彼女の計算通りに進むこととなる。



896: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:47 l/UmxxYBO

ミ,,゚Д゚彡「え?」


嘗ての飛行能力さえも失ったために地上で空中戦を眺める他に何も出来ずにいたフッサールに、頭から突き刺さるような形で電撃が落ちる。
無論、それはのーによって向きを変えられたものである。

突然の強烈な衝撃に、当然フッサールは自身に起こったことを理解する間もなくその場に倒れ込んだ。

[;゚д゚]「お、お前さん…頭大丈夫か?」

――まさか、攻撃を味方に受け流すとは。
のーの『策』を何も知らないデフラグからしてみれば、これほど馬鹿なことはなかった。
だが

(*゚A゚)「今に見ておれ、この継ぎ接ぎ男!」

捨て台詞を吐くような勢いで未だ嘗て口にしたこともない悪態をついたのーは、身を翻して地上に降り立ち
すぐに気絶したばかりのフッサールを叩き起こしに向かう。



897: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:49 l/UmxxYBO

(*゚A゚)「ほら猫さん、早よう起きるんや」
ミ,,-Д゚彡「…んー、おはよう…」

何事もなかったように起き上がるフッサール。
頭から電気の直撃を受けたにも関わらず、その身体にダメージは全くと言って良いほど見られない。

(*゚A゚)「(よし。これなら、きっと…)
    早速出番やけどええな?」
ミ,,゚Д゚彡「へ?」

返事を待つことなく、のーはフッサールの胴体を掴む。
そして両手でフッサールを抱くようにして、彼女は何を思ったかそのまま再び飛翔を開始した。



898: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:52 l/UmxxYBO

ミ;,,゚Д゚彡「な、何するんだよいきなり!
       ってかオイラ飛んでるよ!」
(*゚A゚)「(…昔は普通に自力で空飛んでたんやけどなぁ)」

妙な気分にさせられるも、彼女は気を取り直し

(*゚A゚)「そんなことより猫さん、さっきの脳天ショックで何か変わったことあらへん?」
ミ,,゚Д゚彡「えーと……………
      言われてみれば、ちょっとだけ力が湧いてきたような…」
(*゚A゚)「それちょいと鈍感過ぎ……自分以上や」

せやけど、と彼女は続け

(*゚A゚)「とりあえずは、作戦成功や!」

――と、小さな笑みを浮かべて言うのである。



899: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:54 l/UmxxYBO

彼女が咄嗟に思い出したのは、あの百年前の戦闘。
フッサールが『魔獣』として現世に復活し、破壊の限りを尽くそうとしていた頃のことだ。

あの時も、フッサールが電気による攻撃を受けたことがあった。
それはあらゆる生物を灰と帰してしまう程の強烈なモノであったが、しかしフッサールは何故か絶命するどころか
逆にそれを吸収して凶悪だった嘗ての力を増幅させたのである。



900: ◆wAHFcbB0FI :06/18(水) 23:56 l/UmxxYBO

だから、たとえフッサールが当時の力を失っていようとも
再び電撃をぶつけてやれば吸収程度は可能なのではないかとのーは考えた。

電撃が発射されたその時点で、彼女はデフラグへの反撃ではなくフッサールの強化を狙ったのである。

(*゚∀゚)「…なーるほどねぇ。そっか、あいつも随分と知恵つけたな」
[゚д゚]「どういうことだよ」

未だに事を理解出来ていないデフラグが、現在は完全に敵と判断したつーに問う。

(*゚∀゚)「…残念だけど、この戦いではもう私の出番ないかも」



901: ◆wAHFcbB0FI :06/19(木) 00:04 Gpm8UA3nO

本当に残念そうに言うつーに対して、デフラグは再度敵意を向ける。

[゚д゚]「出番がねえっていうなら、今ここで排除してやるぜぃ!」
(*゚A゚)「そうはさせへん!」

デフラグがつーに攻撃を再開しようとしたその時、フッサールと共に再びのーがデフラグの前に現れる。

流石に、フッサールに飛行能力や魔力を用いる能力が復活することはない。
だが、現在のフッサールは先程までよりも全てにおいて格段と強くなっていた。

[゚д゚]「…だったら、先にお前さん達二人からだ!」

それを知らないデフラグは、マシンを操作する。
銃器と化したままの機械腕を二人に向け、即座に電気を放出するが――

(*゚A゚)「猫さん!」
ミ,,゚Д゚彡「任しとけ!」

瞬時に飛んでくる電撃を、フッサールは前足だけで打ち払う。
続け様に発射されたものも、彼(?)は事も無げに無力化した。



902: ◆wAHFcbB0FI :06/19(木) 00:13 Gpm8UA3nO

[;゚д゚]「え、冗談だろ…!」
(*゚A゚)「冗談やない! 今度はこっちの番や!」

のーはそう叫ぶと、フッサールと共にデフラグが乗るマシン目掛けて飛び込んでいく。

[゚д゚]「ちっくしょう!」

マシンに搭載されているあらゆる武器を開放するも、それらは効果を成さなかった。

のーは機械腕による殴打を避け、銃弾やレーザー砲の嵐をかいくぐり、時にはフッサールが受け止めもした。

そして、二人がマシンの目前まで接近した時―――

(*゚A゚)「猫さん、準備はええ?」
ミ,,゚Д゚彡「多分!」

曖昧な合図ではあったが、のーは機械腕がギリギリ届かない位置からフッサールをデフラグのマシンへと飛び移らせた。



903: ◆wAHFcbB0FI :06/19(木) 00:19 Gpm8UA3nO

ミ,,゚Д゚彡「成功! かな?」
[;゚д゚]「…マジかよッ!」

マシンに直接攻め込まれるとは思っていなかったデフラグの精神は、相当揺れ動いていた。
慌ててフッサールをマシンから落とそうとするが、時既に遅し。

ミ,,゚Д゚彡「おりゃ!」

つーのロストの刃をも通さなかった強固なマシンの装甲を、先ずフッサールはその爪で易々と引き裂く。
さらに露出した内部機械へと前足を突っ込み、そのまま出鱈目に引っ掻き回したものだから堪らない。

[;゚д゚]「何しやがる!」

コックピットから顔を出してフッサールに対して怒鳴るデフラグだったが、次に起こる現象は既に理解できてしまっている。
彼は速やかにそれを判断し、『脱出』という行動をとった。

内部メカを滅茶苦茶に狂わされた戦闘マシンが、空中で派手に爆発を起こしたのはその直後。



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