( ^Д^)と(*゚∀゚)は魔界のならず者のようです

448: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 15:53 jJGvwnbjO

幕間 『己という存在』


そこは季節が全く存在しない、小さな世界。
空の色は万華鏡のような変化を繰り返し、しかしそれらの色は現世のどの天気にも当てはまらない。
『時空の狭間』というこの場所に位置するのは、侵略者達のアジトである城塞。
そして、三百年前に霊体を人工的に造り出すという、禁断の実験が為された場所。
だが現在部屋の中央に魔方陣はなく、当時あった機械類は全て別の部屋へと移されている。
機械兵士の詰所や、軍の幹部達の個室。
膨大な数ある部屋の需要が増えてきた今、実験室は別の部屋へと移されているのである。



449: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 15:57 jJGvwnbjO

そんな、昔とは少々様子が変わった部屋にて―――

(・∀ ・)「……」

少年は何時ものようにふんぞり返っていた。
彼の正面にはづーがおり、その後ろにはぃょぅとデフラグが突っ立っている。
づー達は魔界から帰還した後、この少年による召集命令でこの場所に集められていた。

爪゚∀゚)「…で、何か言いたいことは?」
(・∀ ・)「当然あるとも…見てた訳だよ、城でのあのgdgdな状況」
爪゚∀゚)「けっ…タチが悪いな」
(・∀ ・)「僕にかかればここで状況を傍観するぐらいどうってことない。
      それにしてもお前達、とんでもない失態だな」

わざとらしく溜め息を吐く。

(=゚ω゚)ノ「でも、今回の侵略によって魔界側は相当な被害を受けましたょぅ。
     あちらの頭数は有限なのに対し、こちらは無限に等しい故―――」
(・∀ ・)「いーや、こっちもこっちで悲惨な目に遭いまくりだよ。それに僕的にも不満があるんだよね」



450: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:08 jJGvwnbjO

少し口調を強め

(・∀ ・)「いくら機械兵士を量産できるっていっても、それなりに時間は必要なのさ。そこはどうしようもないってこと理解してほしいね。
      そして例の奴も抹殺出来ず、さらにはビコーズとシラネーヨが返り討ちに遭う始末。最悪に近いよ」
[゚д゚]「それだけ魔界には強い奴がいて結構なことだと俺は思いますがね」
(#・∀ ・)「ちっともイクナイ!」

相変わらずのんきな発言をするデフラグに腹を立て

(#・∀ ・)「お前達は機械兵士とは違って、消滅すれば再起不能で同じ者は造れない。人間でいえば死ぬようなものだ。
      だからビコーズとシラネーヨはもう直せないし、よってMSPの内の二つが欠けた訳だよ!」
爪゚∀゚)「…酷いことを言うようだが、だったら10以降を造r――」
(#・∀ ・)「そういう問題じゃないんだよ!
      人工霊体の核となる暗黒石、或いは聖石のストックがもう残り少ない…アレがないことには流石のあの方も霊体を造り出すことができないっていうのは知ってるよな!」



451: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:13 jJGvwnbjO

数秒間の沈黙。

爪゚∀゚)「ふむ…ならば、総帥殿の指示を仰ぐしかないな」

づーがそう言った時だ。

「…呼んだー?」

どこからか、明るく間の抜けた女性の声が皆の耳に入ってくる。
部屋の出入口、ドアの前に影のような「何か」がいた。

声がなければ気配を感じ取ることさえ困難であったそれを視界に入れたづー達と少年は態度を改め

爪゚∀゚)「…これはこれは総帥殿。見苦しいところをお見せしてしまいましたな」
「そんなに畏まらなくてもいいよー。
 …で、今回の魔界侵略はどうだったのかな?」
(・∀ ・)「それが斯く斯くしかじかで…」

少年が申し訳なさそうに結果を全て報告する。



452: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:22 jJGvwnbjO

総帥と呼ばれた「何か」は、時折頷きながら無言でそれを聞いていたが、やがて少年に制止をかけ

「要は今回も失敗って訳であって、最後はデフラグ君が助けに入ってゲームエンド、ってことでいいのかな?」
(・∀ ・)「そうです」
[゚д゚]「俺は帰り際にちょいとばかり挑発してきちまったんですけどね」

何気ないデフラグの言葉に、「何か」は反応する。

「何て言ってきたのかな?」
[゚д゚]「要は『近い内にまた攻めてやるからせいぜい準備とけ』的なことですな」
「…デフラグ君、それでいいよ!」
[゚д゚]「…へ?」

予想外の返答に、デフラグは思わず間抜けな声を漏らす。
自分が大した意味を籠めずに言った事が、こうまで褒められるとは。

「こっちがいつでも侵略準備OKってことを伝えれば、向こうはきっと慌てる。
 それで向こうがこの世界に興味持ってくれれば…」
(・∀ ・)爪゚∀゚)(=゚ω゚)ノ[゚д゚]「……?」
「あ、何でもないよー」

明らかに誤魔化すような言い方だが、皆は何一つ問わない。
主の思惑には下手に口出ししないのが彼等のルールの一つなのだ。



453: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:32 jJGvwnbjO

爪゚∀゚)「…さて、我々はどうすれば良いですかね」

今度はづーが指示を待つ。

「それについては…うん」

数秒の間が開いた後

「…あっちの皆さんをもてなす準備をするよ」
(・∀ ・)「…えーと、それはつまり」
「そう、防衛準備!」
(・∀ ・)爪゚∀゚)(=゚ω゚)ノ[゚д゚]「!」

意外な言葉に、皆は思わず戸惑う。
何故わざわざそんなことをするのか解らないが―――

「そんなに驚いちゃ駄目だよー。
 づーちゃんとぃょぅ君は改造部分をまたんき君に修理してもらって。結構故障してるとこもあるはずだからね。
 それと、またんき君は修理ついでに改造強化もしちゃっていいよ」
(・∀ ・)「そうですか……へっへ、解りました」

またんきと呼ばれた少年は腕を鳴らし、絶対的な自信の籠もった笑いを浮かべた。



454: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:43 jJGvwnbjO

[゚д゚]「で…俺の仕事はありますかねぇ。師匠の手伝いとか」
「あー…ごめん、またんき君だけで十分足りるよ。デフラグ君は…自分の部屋に戻って待機。
 そうそう、他の子達にも同じように伝えてね」
[゚д゚]「ちぇー…了解でありますよ」
(=゚ω゚)ノ「あのぅ…」

今度はぃょぅが口を開く。

(=゚ω゚)ノ「地下にいる例の二人はどうしますかょぅ?」

この小さな世界にも、はみ出し者といえるような者が存在するのだ。
ぃょぅはそれを恐れてはいるが

「…うーん、放っておいて問題ないと思うよ?
 別に私達の邪魔をするようなことはないし」
(=゚ω゚)ノ「そうですかょぅ。しかし、万が一ということも――」
「もう、ぃょぅ君ったら心配性なんだから!
 そうなったらそうなったで面白くなる…」

再び疑問符を頭に浮かべたづー達の視線を感じ

「あ、特に意味はないよ。
 さっき言ったように、私は私で魔界の皆さんを出迎える準備をするから、貴方達も指示通りにやってね。
 じゃ、解散!」

同時に、影のような「何か」は部屋から姿を消した。



455: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:45 jJGvwnbjO

それを確認したづーは小さく溜め息を吐き

爪゚∀゚)「…相変わらずお忙しい方だ。
     しかし総帥殿は何をお考えになられているのか…」
(・∀ ・)「そんなことは一々気にするもんじゃない。
      僕達はただ命令通りに動けばいいだけさ」
爪゚∀゚)「命令通り、か…」

彼女が『格下』と侮蔑した女の言葉が一瞬頭をよぎる。
「利用されるだけされて、それで満足なのか」と、問い掛けが己の中で再度響いたような。

爪゚∀゚)「(私は奴を超えるため、そして総帥殿の命に従うために存在する人形…
     だが……何だ、この気持ちは?)」

今まで自分が考えたことのなかった思いが、己のどこかに芽生えた―――ような気がする。



456: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:47 jJGvwnbjO

[゚д゚]「団長さん、何を考えてるんですかい?」

突如飛び込んできた、デフラグののんきな声。
それによってづーは我に返る。

爪゚∀゚)「ん? ああ何でもないさ。
     それよりお前も私のことを団長と呼ぶのはよさないか。さっさと自分の持ち場へ戻れ」
[゚д゚]「へーい」

軽く一礼し、デフラグは部屋を去る。
あの天然男を見ていると悩むことすら馬鹿馬鹿しく思えてくるが、今は不思議とそんな気が起こらない。

爪゚∀゚)「(…いや、そんなことじゃあ駄目だろうよ)」

何かに対する疑問の渦が大きくなる前に、彼女はそれを断ち切る。



457: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 16:54 jJGvwnbjO

爪゚∀゚)「…じゃ、我々も始めるか」
(=゚ω゚)ノ「ドクター、お願いしますょぅ」
(・∀ ・)「よーし、僕に感謝しろよ…最高にデンジャーな兵器に改造してやるからな!」

―――まあ、他人が言っていたよく解らぬことを気に留める必要もないだろう。私は私なのだから。
づーはそんなことを思いつつ、実験室へと足を運ぼうと―――

(・∀ ・)「…おっと、その前にストップだよ」
爪゚∀゚)「何だ?」
(・∀ ・)「僕はぃょぅの方を先にやるから、お前はその間に『ルイン』の強化にかかるんだ」
爪゚∀゚)「…となると」
(・∀ ・)「そうだね、現世にでも行って小さな村を一つ二つ潰してこい」
爪゚∀゚)「…機械兵士は貸してくれるよな?」
(・∀ ・)「当然だけど、なるべくお前が殺れ。その方がそいつも喜ぶだろうよ」

またんきの視線の先には、づーが手にしている漆黒のサーベル。
それは意志を持っているかのように、不気味で禍々しい光を静かに放っている。



458: ◆wAHFcbB0FI :11/08(木) 17:08 jJGvwnbjO

爪゚∀゚)「…承知した。では直ちに行ってくる」
(・∀ ・)「ま、疲れない程度に頑張ってきなよ」

機械兵士達をまとめて現世へ向かうために部屋を出るづーに対し、またんきは涼しげな表情でただそれだけ言った。

(=゚ω゚)ノ「しかしドクター、こんな時に団長殿を現世に向かわせて良いんですかょぅ?」
(・∀ ・)「心配ない、ちゃんと総帥殿に許可はとってある」
(=゚ω゚)ノ「そうですかょぅ」
(・∀ ・)「(本当は僕の独断だけどね。まあ別に問題ないだろうよ)」


その後またんきとぃょぅも実験室へ向かうために部屋を退出し、辺りは一時的に静まり返ることとなった。



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