('A`)ドクオは方舟に乗るようです

3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:02:59.19 ID:SVWWm0TYO



『第四話 月に吠える』





4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:05:42.96 ID:SVWWm0TYO
深夜、広場で『詔』を伝え終わった後例の二人のスーツの男は酒場にいた。

「バーボンハウス」と書かれた古びた看板を掲げている今にも崩れそうな程老朽化したこの建物は、今はもう誰にも使われていない。

( ^ω^)「ブッヒヒ……これはこれは中々どうして」

肥えた男は嬉しそうな顔で棚に残っているお酒を物色している。


( ^ω^)「まだ結構残っているお。ついていたお。ただビリヤードとダーツがないのが残念だお」


(´●ω●`)「いいんですか? こんな廃墟に来るよりもちゃんとした酒場があるのに」



6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:09:08.27 ID:SVWWm0TYO
黒スーツはランプに火を灯して席につく。
そしてサングラスを外としんみりとした顔が現れた。

( ^ω^)「いいんだお。ここなら人もいないからゆっくりと話もできるし、仕事の後の一杯もできるお
見てみろお、このワイン相当の年代ものだお。
こう世間から忘れられた所には思わぬ掘り出し者があるものだお」

肥えた男は懐に何本かの酒を抱いて宝物でも見つけたような顔をして黒スーツの横に座る。


(´・ω・`)「確にまぁ……ここなら存分に酒を交しながら話もできますね」


( ^ω^)「何を飲むお?」


(´・ω・`)「ここは私がつぎましょう。ブーンさん」



7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:09:51.36 ID:SVWWm0TYO
そう言うと手慣れた具合にワインの栓を抜きグラスに半分程注ぎブーンに差し出す。
そして自分にはテキーラを注ぐ。

( ^ω^)「そういえばショボンはバーテンの経験があるといっていたおね」

ワインを下品に喉を鳴らしながら飲みこんでいく。

(´・ω・`)「……昔の話ですよ」


ショボンは少し遠い目をすると、テキーラをいっきに飲み干しまた並々注ぐ。
ランプには既に虫が群がりだしていた。


( ^ω^)「しかし、まあ本当にこんな村があったとは驚きだお」



8: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:10:27.88 ID:SVWWm0TYO
(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「実際この目で確かめるまでは半信半疑だったお。
世界に忘れられし村……いや、消された村と呼ぶべきか」


ブーンは鼻を鳴らして笑う。

( ^ω^)「まるで500年間その文化も暮らしも変わっていない村。
村人ごと世界遺産に登録できそうだお」

(´・ω・`)「………」

ショボンはそれを聞いて笑えないジョークだと思った。
そしてまたテキーラを口にする。



12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:15:28.99 ID:SVWWm0TYO
( ^ω^)「逆にこっちがカルチャーショックを受けたお。
でもその村がこんな形で世界の役に立つ時がくるとはね。
見たかおあの盲心的な村人達を、こうも僕のシナリオ通りにいくとは思っていなかったお」


(´・ω・`)「しかしいい趣味だとは思えませんね。別にあんな方法をとらなくとも……」

( ^ω^)「せっかくなんだから楽しまなくちゃ損だお。
こんな僻地まで来た甲斐ってやつが欲しいお」


ブーンは楽しそうに笑うがショボンはあまり乗り気な様子ではなかった。
何か気掛かりなのか、明らかに気分を悪くした顔をする。
勿論ブーンがそれを意に介すことはない。



13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:16:18.88 ID:SVWWm0TYO
(´・ω・`)「では、アダムとイブについてはもう検討はつけているのですか?」


( ^ω^)「う〜ん。それについては正直誰でもいいお。
ブーンが楽しみたいのは結果までの過程だお」


(´・ω・`)「………」

( ^ω^)「辛気臭い顔するなお。せっかくの酒がまずくなるお。
ノヴィス・ノアに乗ればこんなうまい酒は飲めないお?」



夜空には満月がうっすらと雲に覆われその輝きを妖しくさせている。

それに向かって吠える様な狼の声が木霊する。


( ^ω^)「消された村に、乾杯」



15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:19:26.64 ID:SVWWm0TYO
その遠吠えを家のベットに横になっているドクオも聞いていた。
彼は思うように眠れず窓から月を眺めている。


(;A`)「…………」


今になってドクオは震えていた。
あんなに人がいた広場でさえ一人孤独に耐えねばならなかった少年は、家に帰った途端に自分の目に涙が溢れているに気付いた。

それから顔を洗い食事をとりベッドに横になりまた彼は泣いた。


その孤独に、恐怖に、絶望に。



16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:20:27.63 ID:SVWWm0TYO
(;A`)(誰も……誰も俺が行くことを止めてくれなかった……誰一人として俺の為に泣いてやくれなかった………)


(;A`)(もうこの窓から月を見ることはないのかもしれない……。
かあちゃんと過ごしたこの家にも戻れないかもしれない)


彼はなんとなくエデンに旅立てばこの村に戻れないような予感がしていた。
村にはもう未練はなくなっていたが両親が残したこの家と畑だけが気掛かりであった。

この家で育ち、母と過ごし、畑を耕し、動物と戯れた事を思い出しすすり泣く。


('A`)(…………)


ドクオは涙を拭い少し散歩をしようと決めた。



17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:21:30.60 ID:SVWWm0TYO
川の畔は涼しく、水面に月が映る。
ドクオはゆらゆら揺れる明かりをしばらく無心で眺めていると後ろの方から誰かが砂利を踏む音が聞こえた。


('A`)(…………まさか獣か……!?)


ドクオは一瞬で血の気が引き恐る恐る後ろを振り向くとクーがいた。
月に照らされた髪が艶として美しい。


('A`)「クー……」


川 ゚ -゚)「ドクオ……」


クーはゆっくりとドクオに歩みより膝を下ろして物思いにふけるように流れる川を見つめる。



18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:22:07.33 ID:SVWWm0TYO
川 ゚ -゚)「お前も眠れないのか……」


クーの目と頬は赤く腫れている。
ドクオはその訳をあえて聞かなかった。
そして少し羨ましいなと思う。


('A`)「……まあ、ね」


クーは立ち上がり後ろからドクオを抱き締めた。
いきなりのことにドクオは戸惑う。



20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:23:08.70 ID:SVWWm0TYO
(*'A`)「お、おいクー!」


川 - )「なあ、ドクオ……」

('A`)「え?」

川 - )「私は許されないことをしようとしているのかもしれない……」


川 - )「……少しだけ……こうさせて欲しい」

(;'A`)「お、おい!」

クーがドクオを抱く力がちょっとだけ強くなる。



21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:25:37.29 ID:SVWWm0TYO
川 - )「…………」

('A`)(クー………)


ドクオは彼女が嗚咽しているのに気付いた。
それが両親との別れを悲しむものなのかまた違う理由なのかドクオには分からない。
そして彼はまた彼女に何故志願したのかを聞きそびれたな、と思った。


('A`)(…………)

川 - )「…………」

(;A`)「うっ……うう……」

背中でむせび泣く彼女に感化されて次第にドクオの目にも涙が滲み始める。



22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/08/12(日) 23:26:17.44 ID:SVWWm0TYO
(;A;)「うああああ!!!」


そして彼はこの日初めて声をあげて泣く。
その声につられたのか同情したのか、また狼が遠吠えをあげた。

月は相変わらず水面に揺れている。




第四話 終



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